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第四十一話 子猫のレベルアップに関する考察

○子猫のレベルアップに関する考察 その1○


 午後3時、清川ダンジョン2階層の大部屋内では未だ特異個体の討伐で湧く賢斗達の姿。


「さっきのワザとだったんだぁ~。

 円ちゃん、凄ぉ~い。」


「当たり前です、桜。

 何なら今度教えて差し上げます。」


「やったぁ~♪」


「まあ何にせよ、これで応援要請の必要もなくなったわね。」


「ええ、オマケに俺はレベルが一つ上がりましたし、いや~目出度し目出度し。」


 最大MPが22になったって事は今後普段のダンジョン活動でサンダーランスを1回使っても大丈夫。

 少しは雷魔法のレべリングも捗りそうだ。


「ああ、それなら私もさっき上がったわ。」


「私も上がったよぉ~。」


「私も上がってますよ、賢斗さん。」


 ほう、みんな揃って・・・まっ、あれだけの格上だったもんなぁ。


「あっ、そう言えば今回小太郎君も経験値共有しておいたわよね。

 賢斗君、どうなってるか早く確認してみて。」


 そういやそうでしたね。


 賢斗は未だ右肩に乗っている小太郎を横目で解析する。


~~~~~~~~~~~~~~

名前:小太郎 0歳(0.2m 0.6kg)

種族:ペルシャ猫

レベル:1(1%)

HP 3/3

SM 3/3

MP 1/1

STR : 1

VIT : 1

INT : 1

MND : 1

AGI : 2

DEX : 1

LUK : 3

CHA : 6

【スキル】

『九死一生LV2(2%)』

『ジャイアントキリングLV1(1%)』

~~~~~~~~~~~~~~


 何だろう、てっきり小太郎の奴は2つくらいレベルアップしていても可笑しくないとか思ってたけど。

 レベルアップはおろか経験率が1%になっただけとか、う~ん、もしかして人間と猫じゃレベルアップに必要な経験値量がかなり違うのかな?


 探索者の中にはテイムや魔物召喚、はたまたカプセルモンスターといった手段で魔物を自分達の戦力として活用する者達が居たりする。

 しかし普通の動物であるペットをダンジョンに連れて行き一緒に魔物と戦おうとする探索者は賢斗達の様な無知な者が極稀にといった程度である。


 その理由は今し方彼が考察した通りで普通の動物のレベルアップには人間のソレとは比較にならない程大量の経験値が必要とされる為。

 でもこれは身体レベルの経験値に限った話でスキルの取得やレベルアップに関連する習熟値に関しては・・・


 でもこいつの九死一生は普通にレベルアップしてるんだよなぁ。

 まっ、そういうもんだって言われりゃそれまでだけど。


「賢斗君、小太郎君のレベルは上がってた?」


「いえ、それについては見事に失敗です。

 こいつの経験率見たらまだ1%しか上がってませんでしたし猫はレベルアップに必要な経験値が人より桁違いに多いのかもしれませんね。」


「ふ~ん、あっ、そういえば私も今までペットを連れてダンジョンに入る探索者の話って聞いた事なかったわね。」


「そっかぁ~。」


「折角皆さんに協力して頂いたのに残念です。」


「いやでも皆、そんなガッカリする必要無いって。

 こいつのステータスを見る限り体力的には普通の子猫と遜色ないと思うし。」


「そうなのですか?

 でもこの間は朝ヨロヨロしていたんですよ、賢斗さん。」


「うん、だからその原因は・・・寝てる時ベットから落ちたりしたんじゃないかな。

 円ちゃんが寝返りでも打った時にさ。ハハ」


「あっ、そういえば確かに最近私の寝相は少し悪くなっていたかも・・・

 あの夢を見た時は何時もお布団がベットの下まで落ちていますし。」


「へぇ~、どんな夢なの?」


「それはですねぇ、猫ちゃんに変身して強くなった私が悪い魔物から皆さんを守るんです。

 子供っぽいって笑わないで下さいね。」


 うん、笑えねぇな、その夢。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○子猫のレベルアップに関する考察 その2○


 まあそれはそれとして、さっき小太郎の所持スキルにとても興味深いモノをお見かけしているんだが・・・


~~~~~~~~~~~~~~

『ジャイアントキリングLV1(1%)』

種類 :パッシブ

効果 :自身よりレベルの高い敵を倒すと、取得経験値がレベル差×2%加算される。

~~~~~~~~~~~~~~


 何っ、経験値系スキルだとっ。

 こんな勇者っぽいスキルを何故こいつが・・・


 先程の特異個体はレベル12、つまり小太郎にとってはレベル10以上離れた超格上という事になる。

 そしてその戦闘に於いてはドキドキ星人をスキル共有すると共にEXPシェアリングによりその討伐経験値をこの子猫も獲得していた。

 ハイテンションタイム中にこんな事を成し遂げていたとすれば・・・


 あれ、意外と納得できるな。

 にしても何て羨ましい・・・


 スキル効果に関して言えば一見自身よりレベルが上という一癖ある条件が付いている。

 しかしパーティーを組んでいる者達なら自身より2つ3つレベルの高い格上を相手にすることはままある事。

 またほんの数%と思うかもしれないが今後この効果を継続して享受できるのであればそれは馬鹿に出来ない結果を生み出してくれる事は間違いない。

 加えてこのレベル1段階でのレベル差×2%の取得経験値上乗せという効果がレベルアップにより更に上昇する可能性もかなり高いだろう。


 こんなの俺達が取得しようったってまず無理だし。


 このスキルの取得条件としてはレベル差10以上の格上を討伐、またはレベルが自分の10倍以上ある魔物を討伐、あるいはこの両方を満たさなければならない可能性も考えられる。


 高ランク探索者にでも依頼すれば賢斗達にも取得出来る可能性はあるだろうが、高額な依頼料に加えスキル情報の開示も少なからず必要、何かとハードルが高過ぎるお話であった。


「どうしたの?賢斗君。

 さっきからそんな面白い顔して。」


 誰の顔がハンサムだって?


「いや実は小太郎の奴、レベルアップはダメでしたけどジャイアントキリングっていう経験値系のスキルを取得していたんですよ。

 効果についてはまあ・・・な感じで、全く羨ましくて仕方がないっすよ。」


「それ程でもないにゃ~♪」


「おお~、すっごぉ~い、小太郎。」


「はい、流石は私の小太郎です。」


「でも小太郎君ってそんな凄いスキルを取得したのにもかかわらず、経験率は1%しか上がってなかったのよね?

 何か宝の持ち腐れって気がするんだけど。」


 そうそう・・・スキルは凄いけど、小太郎は凄くならない不思議。


 先程まで上機嫌だった子猫の顔に落雷ショックが走っていた。


「ねぇ賢斗君、取得方法はどんな感じか分かる?

 私達が取得出来ればきっと大いに役に立つだろうし。」


「それは考えましたけどちょっと無理っぽいですよ。

 多分・・・な感じだと思うんで。」


「そっかぁ、そんな取得条件だと確かに厳しいわねぇ。

 なら小太郎にそのスキルを共有させて貰うっていうのはどうかしら?」


 つってもなぁ・・・


 確かに俺達にはその手がある。

 しかしジャイアントキリングを必要とする場面といえば格上との戦闘時。

 あまつさえ普段以上の危険が予想されるそんなところへ小さな子猫を連れて行くというのは、人間様のエゴ以外の何物でもないよな。


「お~かおるちゃん、冴えてるぅ~。」


「はい、流石はかおるさんです。」


「でしょでしょ。」


 そんな賢斗の思いを余所にどんどん話を進める少女達。


「じゃあこれからは小太郎もナイスキャッチのメンバーだぁ~。」


「そうねぇ、可愛いマスコットキャラっていうのはどう考えても必要よね。」


「よかったですねぇ。

 小太郎もパーティーに入れてくれるみたいですよぉ。」


 業を煮やした賢斗はようやくここで言葉を挟む。


「いやちょっと皆、待ってくれ。

 こんな子猫を俺達の都合でホイホイダンジョンを連れ回すのは良くないだろ。

 レベルアップもしない小太郎に取っちゃ只危険なだけだと思うし。」


「でも仲間外れは良くないよぉ~、賢斗ぉ~。」


 まっ、仲間ってのは認めてるけど。


「小太郎は強い子ですから大丈夫ですよ、賢斗さん。」


 朝方フラついてたんじゃなかったか?


「別に良いじゃない、小太郎君に戦わせる訳でもなし私達が責任もって守って上げれば良いだけの話よ。

 それに何かの役に立ってくれるかもしれないでしょ。」


 確かにさっきの戦闘じゃこいつのアドバイスに助けられた。

 だがまあそれはそれとして、う~ん、3対1か、俺的には皆が小太郎の可愛さに目が眩んでるだけにしか思えんのだが・・・


 あっ、そうだ。


 こうなったらもうここは小太郎自身の意見って奴をこいつ等に聞かせてやるのが一番だ。

 小太郎は基本食っちゃ寝だし、ダンジョン探索になんて進んで行きたがる訳がない。

 うん、これならきっと大丈夫。


「いや~でもさぁ、やっぱり一番大事なのはこいつの意思だろぉ?

 ここは一つ小太郎さんのご意見も伺ってみようぜ。」


「まあ、それもそうねぇ。」


「賢斗さんがそこまで言うなら仕方ありませんね。

 小太郎の気持ちなど私は聞かなくても分かってますけど。」


「もぉ~賢斗は考え過ぎだってばぁ~。

 別に良いけどさぁ~。」


 ふぅ~、何とか土俵際で踏み止まったな。

 あとはこの小太郎さんに「面倒臭いにゃ」とでもご返答頂ければこの件は一件落着。ニヤリ


「なあ小太郎、皆がお前をうちのパーティーに加入させたいらしいんだが、お前どうする?」


「何でだにゃ?」


「そりゃ皆小太郎が大好きだからだよぉ~。」


「ええ、皆さん小太郎といつも一緒に居たいと言って下さっているのです。」


「そうそう、小太郎君は私達のパーティーに無くてはならない存在なのよ。」


 先程まで落ち込んでいた子猫は何処へやら。

 誰かに必要とされる喜びに目覚めた子猫の表情は次第にほころんで行く。


 ちっ、不味い。

 小太郎の奴、コロッと乗せられやがってっ!


「いや小太郎、パーティーに入るって事はさっきのデカいスライムみたいな奴との戦闘にまたお前も駆り出されるって話だぞ。

 お前も滅茶苦茶怖かっただろぉ?」


「あんなの全然大したことないにゃ~♪」


「良くぞ言いしました、小太郎。

 褒めてあげます。」


「ほら小太郎君だってこんなにやる気満々じゃない。」


「やっぱりだいじょぶだったじゃぁ~ん。」


 いや今コイツは調子に乗ってるだけだ。

 目を覚ませ、小太郎っ!


「ホントにそれでいいのか?小太郎。

 もっとよく考えてみろ。」


「だっておいらはあにきと約束したからにゃ~。

 今度あにきがピンチの時はおいらが助けてやるってにゃ。」


 なっ、おまえあんな・・・ったくこのバカ猫が。


「不甲斐ないあにきを持つとおいらも苦労するにゃ~♪」


 ほう、いい度胸だ。

次回、第四十二話 マイダーリンの呪縛。

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― 新着の感想 ―
[一言]  おお、小太郎かっこいい!漢だな
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