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第四十話 俺達はとんでもない化物を生み出してしまったようだ

○俺達はとんでもない化物を生み出してしまったようだ その1○


 5月15日水曜日午前6時30分、清川ダンジョン2階層大部屋内。


 今日も朝のダンジョン活動の為賢斗達は清川ダンジョンに来ていた。

 そしてハイテンションタイムは既に終えあとはスライム達の瀕死処理を残すのみ。

 何時もならこの作業は賢斗が担当していたのだが・・・


「むふぅ、では参ります。」


 今日それを担当するのは円一人。

 かおるが先日のワイルドウルフの毛皮から作成した簡易グローブを装備した彼女はやる気満々といった様子で走り出した。


テケテケテケ、ポフッ、テケテケテケ、ポフッ・・・


 おっ、何とかなってるみたいで良かった良かった。

 もしここのスライムでダメならこのお嬢様にとってクイーン猫パンチが完全に宝の持ち腐れになるとこだったし。


「終わりましたよ。皆さん。」


 ふむ、あんな動きでありながら俺より短い処理時間とは何とも腹立たしい。


「お~つか~れさぁ~ん。」


「円、そのグローブの使い心地はどうだった?」


「はい、とても手に馴染んでしっくりきます。

 有難う御座いました、かおるさん。」


 確かにとても素人が作ったとは思えんな。


「円ちゃんお疲れ。」


じとっ、ぱちぱち・・・円は瞬きしながら賢斗を見つめ続ける。


「それだけですか?」


 ええまあ。


「もぉ、賢斗さんはもう少し気の利いた言葉を掛ける事は出来ないのですか?」


 そういうパターンもあるんだ。


「いっ、いや~円ちゃんの俊敏な動きに目が付いて行かなかったからさぁ、何処を褒めたら良いのか分からなかったんだって。」


「ああ、そういう事でしたか。

 それでは仕方ありませんね。」


 俺も随分慣れて来たようだ、うん。


「それはそうと賢斗君。

 いつも10体全部を瀕死処理してるけど、1体だけに絞ってレベル10を超えるくらいに育てた方が効率良くない?」


 第3予選を想定し全個体をレベル9まで育成。

 その中から3体を討伐してみて討伐タイムの短縮を考えて行くというのがこれまでの流れであり今現在の方針であった。


「ん、どういう事っすか?先輩。」


 しかしこれは円の招き猫(雌)の効力を妨げ延いては金策面の効率低下の原因になっている。


「それはほら、そっちの方がもっとコバルト君とも沢山出会えるでしょ?ウフッ♪」


 対してこのかおるの提案ならばレベル9個体3体分の討伐タイム算出が多少難しくなるものの金策の効率化は望める。

 また決勝大会を見据えどの程度の格上までが討伐可能なのかを測る意味でも今後の役に立つだろう。


「ああそういう事っすか。

 確かにそっちの方が良さそっすねぇ。ニヤリ」


 しかしこの判断が後に予想外の事態を招く事になる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○俺達はとんでもない化物を生み出してしまったようだ その2○


 2日経過した5月17日金曜日午後5時30分。

 クローバー拠点部屋には買取額に色めき立つ賢斗達の姿があった。


「はい、今日の買取は全部で286万円ですよぉ。」


「お~♪」


「新しい弓でも買おうかしら♪」


「それにしても、ここのところ皆さん凄いですねぇ。」


「いや~、それ程でも~♪アハハ」


 いや~笑いが止まらない。

 ブルースライムの育成方針を変えたら、毎日こんな収入になるとは。

 そして口座の残高と合わせればこの中川コーディネートのお代も期日を待たずして支払可能。


「水島さん、俺の口座からこの間の装備の代金払っておいてください。」


「えっ、それは良いですけど、折角支払期日を9月にして貰っているのに、勿体なくないですか?」


「まあそうなのかもですけど、そこは気分の問題ってやつですよ。アハハ」


 やっぱ育成方針変えて大成功だったな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○俺達はとんでもない化物を生み出してしまったようだ その3○


 翌5月18日土曜日午前9時30分。

 週末を迎えたこの時間、このところ順調な活動に気分良く清川へと向かった賢斗達。

 すると転移先の清川ダンジョン2階層大部屋には明らかに大きさが異なるスライムが一体。


 う~ん、何だろう、どう見てもかなりデカいんだが。


 目算でもそれは1mを優に超えている。

 賢斗は取り敢えずその個体を解析してみた。


~~~~~~~~~~~~~~

名前:ジャイアントブルースライム

種族:魔物

レベル:12(12%)

HP 43/43

SM 14/14

MP 24/24

STR : 11

VIT : 14

INT : 13

MND : 11

AGI : 7

DEX : 18

LUK : 13

CHA : 5

【スキル】

『酸吐出LV5(3%)』

『物理耐性LV6(13%)』

『水魔法LV3(6%)』

【強属性】

水属性

【弱属性】

火属性

【ドロップ】

『スライムジェルの大瓶詰(ドロップ率30.0%)』

【レアドロップ】

『水魔法のスキルスクロール(ドロップ率0.01%)』

~~~~~~~~~~~~~~


 ・・・どうやら俺達はとんでもない化物を生み出してしまったようだ。

 これは所謂特異個体という奴だろう。

 名前まで変わっちゃってるしスペックが普通のブルースライムとまるで比較にならん。

 おまけに水魔法まで使えるとか・・・


「うおぉ~なんかカッコイイねぇ~、あのスライムぅ~。」


 ・・・まっ、迫力がまるで違うしな。


「もしかしてあれ、特異個体なのかしら。」


 ・・・恐らく。


「ようやく私の力をお見せできそうですね。シュッ、シュシュッ、シュッ」


 ・・・止めておけ。


 しかしこれは困った事になった。


 今現在賢斗達はレベル6、特異個体化した魔物のレベルを考えればもう応援要請をした方が良いだろう。

 しかしその頼みの綱の協会支部はここには無く、おいそれとそれをする事も出来ない。


「賢斗君、取りあえずやるだけやってみましょ。

 何もしないうちから応援要請するなんて何だか虫が良過ぎるもの。」


「そっすね。」


 こんなものを生み出してしまったのは間違いなく自分達。

 少なからず自責の念に苛まれる面々はかおるの言葉に頷いていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○俺達はとんでもない化物を生み出してしまったようだ その3○


「取りあえず相手の弱属性は火属性だから桜のファイアーストームがどの程度効くのか試してみたい。

 作戦はそれを見て決めるってことで。」


 指示を出すとスキル、経験値のシェアリングを済ませ大部屋内に入った。


「いっくよぉ~、ファイアーストーム・アンリミテッドぉっ!ボォファボォファボォファボォファ・・・・」


 火嵐が放たれ魔物へと進んで行く。


パシャ―――ンッ!


 がしかしそれは突如出現した水壁に衝突し爆散してしまった。


 なっ、うわっ!凄ぇ爆風。


「きゃっ。」


「平気か?桜っ。」


「う、うん。だいじょぶぅ~。」


「今のって水蒸気爆発かな。」


 あ~そういうことね。

 にしてもスライムの癖になんて賢い。

 これじゃあ俺の雷魔法も迂闊に使わない方が良さそうだ。


 ってちょっと待てっ、アイツ膨らみ出したぞっ!


「全員緊急退避っ!急いでこの部屋から出ろぉーっ!」


バシャー


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○俺達はとんでもない化物を生み出してしまったようだ その4○


 先程賢斗達がいた場所は酸で溶かされ白い湯気を上げている。


 ふ~、間一髪ってとこだったな。


「賢斗ぉ~、あれ、やっばいね~。」


「そうだなぁ。」


「一度撤退する?賢斗君。

 私としてはまだ風魔法がレベル6で覚えた範囲魔法を試してみたいんだけど。」


 へぇ、先輩にもまだそんな手札があるのか。

 風系の魔法で奴がどう出るかも気になるし先ずはそっちを見せて貰った方が良いかもな。


「じゃあそれやってみて下さい、先輩。

 有効そうな手札は全部検証しておかないと後で作戦も立てられないですし。」


「了解よ。」


「一応聞くけど桜と円ちゃんもまだ試しておきたい技とかあるか?」


「ファイアーランスぅ~。」


 いやそれまた爆発するだろ。


「私にはこの拳がありますよ?賢斗さん。」


 よし、お嬢様も特になしと。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○俺達はとんでもない化物を生み出してしまったようだ その5○


 二人を部屋の外に残し賢斗とかおるは再び大部屋内に入った。

 そして先ずはかおるが先程言っていた風魔法を放つ。


「ジェットストーム・アンリミテッド。ビュオビュオビュオビュオー」


 生み出された竜巻がジャイアントブルースライムへと向かっていく。


 さて、どう出る?


 するとジャイアントブルースライムは水壁を作らない。


ドンドンドン・・・


 結果効果範囲に居たブルースライム2体がジャイアントブルースライムと共に天井へと吹き飛ばされ激突、それと同時に消滅していった。


ボトン


 しかし肝心の特異個体はそのまま床に落ちて来た。


 ん~、HP 40/43か。

 奴にはあまり効かないみたいだな。


 吹き飛ばしたりする系統の魔法は狭い空間では効果が薄くなる。

 それに加え実質物理攻撃に近いこの系統の魔法は物理耐性持ちとの相性がすこぶる悪い様であった。


「あ~ん、折角良いとこ見せられると思ったのになぁ。

 後は任せたわ、賢斗君。」


 かおるはそんな捨て台詞を残し部屋の外へ出て行った。


 了解、つっても俺も方も上手く行くかどうか。

 とはいえ先ずはやってみますか。スタンっ!


 賢斗は電撃を帯びた短剣を手に音速ダッシュで飛び出して行った。


シュピンッ、HP 40/43


シュピンッ、HP 40/43


シュピンッ、HP 40/43


シュピンッ、HP 40/43


 おっ、膨らんだ。バックバック。


バシャー


 ひ~、怖い怖い。

 にしても全然効いてねぇな~、やっぱ。

 これだけやっても全然麻痺ってくれんし・・・


 う~む、これって今の俺達じゃ無理じゃね?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○俺達はとんでもない化物を生み出してしまったようだ その6○


 午前11時、拠点部屋。

 先程からジャイアントブルースライムへの対応を話し合っていたのだが良策は浮かばないまま見事に煮詰まる作戦会議。


「やっぱりもう応援要請するしか方法はないかなぁ。」


「でも清川は管轄外なんで協会支部は取り合ってくれませんよ。

 プロ探索者の知り合いにアテもありませんし。」


「そうねぇ、でもこう見えて私達も一応プロなのよ?賢斗君。」


 お~、確かに、実力が無さ過ぎて自覚が芽生えてなかったわ。


 とそんな話の傍らでは・・・


「小太郎~、出ておいでぇ。」


「円ちゃん、小太郎連れて来てたのぉ~?」


「はい、お休みくらいは一杯一緒の時間を作ってあげようかと思って。」


 円が怯える子猫を籠から出し桜と二人で憩いのひと時。


 かくして何の作戦も立たないまま水島が差し入れたパスタで少し早い昼食を取り始める賢斗達だった。


 にしてもホントどうすっかなぁ、モグモグ


「あにきぃ、どうしておいらのSOSを無視するにゃっ!」


 お食事中円から解放された小太郎は早速賢斗の元にやって来る。


「あっ、悪ぃ、悪ぃ、ちょっと考え事してたからさ。

 次からはちゃんと助けてやるって。アハハ」


「絶対だにゃっ。」


「ああ、了解了解、それよりお前腹減ってるんじゃねぇか?

 ほれ、ここのパスタ中々イケるんだぞぉ。」


 賢斗は半分程残っているパスタの皿を小太郎の前に置いてやった。


「ムシャムシャ、ニパッ、今度あにきがピンチになったらこのおいらが助けてやるにゃ♪」


 ふむ、やっぱこいつは食いもんで釣るのが一番だな。


「ふっ、ああ、頼りにしてるぞ、小太郎。

 あ、そうだ、お前に一つ言っとくけど円ちゃんの足には気を付けとけよ。」


「あ~あれはかなりヤバイ代物だにゃ。ムシャムシャ」


「・・・えっ?」


「・・・にゃ?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○俺達はとんでもない化物を生み出してしまったようだ その7○


 午後3時、清川ダンジョン2階層大部屋前。

 作戦会議を終えた賢斗達は再びそこに戻って来ていた。

 と言っても先程のミーティングでジャイアントブルースライムを倒す手立てが浮かんだ訳では無い。

 しかし賢斗はまだ一つ試していない手札が残っていた事を思い出していた。


「それで賢斗君は何を思い出したの?」


「いや~そういや俺にはスタンの他にも短剣スキルのパラライズエッジっつぅ敵を麻痺させる手段があるんすよ。

 そっちなら確率発動型だし相手の強さに左右されずに効果が発揮されるんじゃないかと。」


「ふ~ん、まあ試してみる価値はありそうね。」


「ねぇかおるちゃん、小太郎にもEXPシェアリングして貰っていい~?」


「えっ、小太郎?何で連れて来てんだよ、桜。」


「だってさぁ、昨日の朝円ちゃんが起きたら小太郎がヨロヨロしてたんだってぇ~。

 きっと小太郎も体力がないんだよぉ~。」


 いやその情報からすると俺には寝てる円ちゃんが猫人化してクイーン猫キックを放ったようにしか聞こえないぞ。


「だから小太郎もレベルアップさせてあげるのぉ~。」


 なるほどねぇ、まっ、小太郎のHPが増えれば俺も少しは安心してられるけど。


「賢斗さん、ご無理を言ってすいません。

 桜も余計なことは言わなくていいですから。」


「でも面白そうじゃない。

 子猫がレベルアップしたらどうなるかちょっと興味あるわよ、私も。」


「そうは言っても今回はまだ倒せるかどうかも分からない特異個体が相手ですよ?」


「まあそうだけど別に良いじゃない。

 部屋の外に居れば安全だし倒せればその分直ぐに結果が出る訳でしょ。」


 まあ確かに小太郎のHPアップも急務と言えるんだが・・・かなり危険な環境みたいだし。


「分かったよ、じゃあその辺は桜達の好きに任せるよ。」


「ほ~い、じゃあスキル共有もついでにしちゃお~。」


「そうね、それも面白いかも。」


 確かに面白そうだが・・・


「小太郎、お前ハイテンションタイムの事、ちゃんと分かってんのか?」


「バッチリにゃ~。」


 本当かねぇ~、まっ、いっか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○俺達はとんでもない化物を生み出してしまったようだ その8○


 これが上手く行けば桜の魔法が奴にも通用する事になる。

 頼むぞ、パラライズエッジ。


 大部屋に入った賢斗はジャイアントブルースライムへと突っ込んでいく。


シュピンッ、HP 43/43、シュピンッ、HP 43/43、シュピンッ、HP 43/43・・・


 HPは一向に減らないな、っと危ない、バックバック。


シュワー


 湯気を上げる床面、賢斗は回り込んで更に斬撃を加えて行く。


シュピンッ、HP 43/43、シュピンッ、HP 43/43、シュピンッ、HP 43/43・・・


 そしてその斬撃が丁度10回目を迎えたところで・・・


・・・ピタリッ


 よしっ、麻痺った。


『ピロリン。スキル『短剣』がレベル4になりました。特技『ストライクエッジ』を取得しました。』


 検証だけのつもりだったが今はチャンスっ。


「桜ぁっ!」


 賢斗がバックステップで距離を置くと桜は既に臨戦体勢。


「おっけぇ~、いっくよぉ~。

 ファイアーストーム・アンリミテッドぉっ!ボォファボォファボォファボォファ・・・・」


HP 33/43


 ちっ、桜の最大火力でもこの程度か。


「次は私達の番よ、賢斗君、ウィンドボール・アンリミテッドっ。」


「サンダーボール・アンリミテッドっ。ビュゥーボファ~バリバリバリィ~」


HP 26/43


 こっちはこんなもんか。


「先輩っ、もう1回ですっ!ビュゥーボファ~バリバリバリィ~」


HP 19/43


 その後もファイアーボール、ウィンドブレス、ファイアーボールと桜とかおるは続け様に魔法を放っていたが・・・


・・・HP 7/43


 ちっ、くそっ、あと一押しか・・・


 ここで二人のMPは尽きてしまった。

 賢斗にはまだサンダーボール2発分のMPが残っている。

 しかしこれは清川から帰る時の為に取っておかなければならない。


 こんな事なら・・・


 反省点は多々あった。

 最初にポイズンエッジの検証もしておけば、ジャイアントブルースライムのHPを幾らか削っておく事が出来ていたかもしれない。

 また賢斗とかおるが桜の火魔法を共有していたならもう既にこの特異個体を討伐出来ていたかもしれなかった。


 予想以上の惜しい結果に悔しさをにじませる賢斗。

 そんな彼の肩口からひょっこり子猫が顔を出した。


「あにきぃ、まだあのメスのキックが残ってるにゃ。」


 あっ、その手があったかっ!


「円ちゃんっ!クイーン猫キックだっ!」


「むふぅ、賢斗さん、その言葉をお待ちしておりました。ポンッ」


 円は優雅に一礼すると猫人化して走って行く。


「テケテケテケテケテケ、必殺、クイーン猫キィークッ!

 とうっ、ポコン。HP 6/43、とうっ、ポコン。HP 5/43・・・」


 よし、僅かだが確実にダメージを与えている。


「とうっ、ポコン。HP 4/43、とうっ、ポコン。HP 3/43、とうっ、ポコン。HP 2/43、とうっ、ポコン。HP 1/43・・・」


 よし、イケる、って、ヤバいっ!


 あともう一歩のところでジャイアントブルースライムに掛かっていた麻痺の効果が切れた。


ヒュルヒュルゥ~


 鞭の様な触手が円に迫る。


「円ちゃん避けてっ!」


 ちっ、聞いちゃいねぇ。


「とぅ~、ズルッ、ドテッ」


 最後の蹴りを放とうとして勢い余ってコケる円。

 スライムの触手が尻餅をついた彼女の頭をかすめて行った。


ヒュルヒュルヒュルゥ~バシンッ!


 あっ。


 瞬間、スライムは動きを停止し霧散を始めていた。


『パンパカパーン。多田賢斗はレベル7になりました。』


 ふむ、何とも拍子抜けな幕切れだがどうやら討伐出来た様だ。

 にしても最後はヒヤヒヤもんでしたなぁ~♪


「いや~円ちゃん、さっきは危なかったねぇ。」


「あっ、危ないとは何ですかっ、賢斗にゃん。

 さっきのはワザとに決まってますにゃん。」


 だったらそう見える様にして下さい。

次回、第四十一話 子猫のレベルアップに関する考察。

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