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第二十九話 虚弱体質のお嬢様では探索者にはなれない

○コバルトブルースライム その5○


 清川ダンジョン1階層の大部屋内。

 コバルトブルースライムの存在を示唆した賢斗の言葉で、一同はそこに居るスライム達を注意深く眺めていた。


「あっ、いたぁ~。」


 桜が指し示した先には、一際鮮やかな青さを誇るスライムが1体。


 おっ、確かにあれだ。


「なっ、嘘じゃ無かっただろ?」


「ホントだったんだねぇ~。」


「でも賢斗君の言ってたのって2階層に居たレベル2の個体じゃなかった?」


 全く先輩は細かいことをゴチャゴチャと・・・いやまあそうなんだけどね。


「あれ、そうでしたっけ?

 いやまあ細かい事は兎も角、また昨日みたいに居なくならない内に早く倒してしまいましょう。」


「じゃあいっくよ~。

 ファイアーボール・アンリミテッド・トリプルッ!」


 おっ、MP節約のために3つに分割して撃ってるのか。


 コバルトブルースライムが水魔法を使うと言ってもそのレベルは1。

 他のブルースライム達と比べても強さ的には大差がなくオマケに弱属性は火属性。

 この威力が三分の1になったファイアーボールでも十分討伐する事が出来て居た。


 そして賢斗とかおるも戦闘に加わると、このスライム討伐は5分も経たずに終了。


「賢斗ぉ~、水魔法のスキルスクロールがドロップしてたよぉ~。」


 お~流石は桜先生、スライムジェルの瓶詰まで持ってるじゃないですか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○レア魔物との遭遇条件○


 戦闘を終え、今度は2階層の大部屋へと通路を歩く一同。


 成程ねぇ、あのコバルトブルースライムと遭遇するには、少なくともこのお嬢様が一緒に居る必要があるのかもしれない。


 レア魔物遭遇率+10%。

 この円の持つキャットクイーンの特技招き猫(雌)の効果は彼女が10体の同一種の魔物と一度に遭遇した時その効果が発現する。

 賢斗の頭にはコバルトブルースライムが先程また出現した理由についてこんな仮説が浮かび上がっていた。


 でも昨日出現したコバルトブルースライムが消えてしまったのはどういう事だ?

 レア魔物ってのがそういう性質を持っているって事なら話も分かるけど。

 まっ、この辺は現状知識が無さ過ぎて何とも言えないか。


 と彼は述べているがこれは中々的を得た見解。

 レア魔物というものは基になる魔物との遭遇率に依存して出現し、放っとくと消えてしまうといった性質を持っている。

 一方この遭遇率の抽選は10体以下の会敵では起こらず、少ない個体数と日々遭遇して行けば何時か出会えるというものでも無い。

 また参考までこのコバルトブルースライムの遭遇率に触れるならそれは0.2%。

 つまりこのコバルトブルースライムと遭遇するには通常10体のブルースライムとの遭遇を50回繰り返す事が必要になって来るのである。


 とはいえここに円ちゃんと一緒に来ればコバルトさんが居てくれる。

 これだけ分かれば十分だな。


 ちなみに世間一般的な知識、情報に於いてこのレア魔物と魔物が突然進化した特異個体は良く混同視されその区別が曖昧になっていたり。


 これに桜が加われば水魔法のスキルスクロールをコンスタントに獲得出来る訳だし♪


 この情報を知る者は現状高ランク探索者のほんの一握りといったところである。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○虚弱体質のお嬢様では探索者にはなれない その1○


 2階層の大部屋の中に入ると先程同様、そこに居るスライムを注意深く眺める。

 すると桜がまた一番に声を上げた。


「みっけぇ~。」


 やっぱり居たか。

 これでさっき考えてた出現条件にある程度確信が持てたな。


「よし、じゃあ円ちゃんもお疲れの様だし、予定通りここでハイテンションタイムを消化するか。

 桜はあのコバルトブルースライムを最初に討伐してくれ。」


「ほ~い。」


「先輩は昨日みたいにブルースライムを1体、HP1の状態で止めは刺さない感じにしておいて下さい。」


「えっ、何よ、昨日はほんのちょっと調子が悪かっただけなんだから、変な気遣いは無用よ。」


「いや、そういう事じゃなくてですねぇ、スライムを瀕死状態にして放置する事に意味があるんですよ。」


「それってどういう事?」


「まあその辺は後で説明しますから、取り敢えずお願いします。」


「賢斗さん、私は全く疲れてなどおりませんが。」


「あっ、うっ、うん、そうだね、アハハ」


 いや、足のプルプル始まってますよ?


 とスライムの討伐を開始。

 そしてハイテンションタイムの効果時間が終わる頃には、瀕死状態のブルースライム1体を残しそれは終了した。


「おっかし~なぁ~。」


「どうしたんだ?」


「えっとねぇ、水魔法のスキルスクロールが落ちてなかったんだよぉ~。」


 いや可笑しいのはお前のその感覚だ。


「それで瀕死させた意味は何なの?

 そろそろ教えてくれるかな?賢斗君。」


「ああ、それはまだ仮説の域を出ませんけど、ブルースライムって瀕死状態で放っておくと勝手にレベルアップするんじゃないかと。

 昨日の夜来た時レベル4個体が1体混じってた事と昨日先輩がスライムを瀕死のまま放置した事を結び付けて考えてみた訳です。」


 あのコバルトブルースライムとレベル4のブルースライムの件を別々に考えてみれば状況的にこれが妥当な推論。

 そしてもしこれが当たっているとすれば、結構有益な情報だし検証くらいはしておくべきだろう。


「ふ~ん、そんな個体が居たの。

 でもホントにそうだったらかなり役立ちそうな話ね。

 自分達の好きにレベル設定した魔物と、こんな低階層で闘う事が出来ちゃうって事だもの。」


 うんうん。


「ええ、だからその確認の為に先輩にお願いしたんですよ。」


「うん、分かった。

 でもそれなら時間を置く必要もありそうだし、1度ダンジョンから出ましょうか。

 MPももうないし。」


「ですね。じゃあ一旦戻りましょう。」


「では。」


ポンッ


 帰る段になると円は待ってましたとばかりに猫幼女に変化。


 えっ、何で今猫人化?


「今日も帰りはおんぶでお願いしますにゃん。」


 う~ん、さっきハイテンションタイムしたばっかだし、円ちゃんは今大して疲れていないよな?


「まあ良いじゃないの、賢斗君。

 ダンジョン出るころにはまた疲れちゃうだろうし、可哀相でしょ?」


 まあそりゃそうか。


 賢斗は猫幼女を背負うと歩き出す。


 にしてもこのお嬢様、俺達のパーティーに入ってくれないかなぁ。

 もしこのお嬢様がうちのパーティーに入れば、ラッキードロップと招き猫(雌)の相乗効果で大儲けも夢じゃない。


 とはいえ惜しむらくはこのお嬢様の虚弱体質か。


 招き猫(雌)の効果自体は居てくれさえすれば良い話だが、この体力の無さは本人が一番良く自覚している所だろうしそもそも探索者に成りたい等とは思わないだろう。

 そして仮にこのお嬢様を説得出来たとしても、周りが猛反対するに決まってる。


 ホ~ント、残念この上なしって感じだな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○虚弱体質のお嬢様では探索者にはなれない その2○


 ダンジョンを出てみると時刻はまだ午前10時半。

 時間の空いた賢斗達はダンジョン入り口に居た椿を誘いキャンプ場へと戻った。

 そして折角買って来た食材をダメにする訳にもいかないので、昼食としてバーベキューの準備を始めた。

 とはいえ準備と言っても切ってある食材を串に差しつつ火を起こして焼き時間を待つ程度のもの。

 程無く一同はかなり早い昼食を取り始めた。


モグモグ


「賢斗君聞いて。

 私の錬金スキル、レベル2になったのよ。

 それでお願いなんだけど・・・」


 食事中椿からそんな報告を受けた賢斗は、更に新たな特技まで覚えたという彼女にまた解析を頼まれた。


「ああはい。全然良いっすよ。」


~~~~~~~~~~~~~~

『錬金LV2(3%)』

種類 :アクティブ

効果 :魔素エネルギーを触媒として、素材から完成品を錬金する能力。基本成功率スキルレベル×10%。取得特技が使用可能。


【特技】

『レシピ解読Ⅰ』

種類 :アクティブ

効果 :価値★★以下のアイテムのレシピを解読可能。

~~~~~~~~~~~~~~


「レシピ解読Ⅰって特技ですね。

 価値★★以下のアイテムのレシピを解読出来るみたいです。」


「ふ~ん、そう。

 って聞いても何かピンと来ないわね。」


「その特技の効果的にはアイテムを見れば、その素材となるものが分かるとかそんな感じだと思いますけど。

 そして解読出来ないアイテムがあった場合は星二つの価値制限に引っ掛かってるって判断すれば良いんじゃないですかね。」


「あっ、なるほどぉ。

 やっぱり賢斗君は優秀だねぇ。」


「まぁ~ねぇ~。」


 うん、だからそこでお前が俺より得意気にするんじゃないっ!


 と椿との会話がひと段落すると今度はかおるが声を掛けて来る。


「ねぇ、賢斗君。

 そう言えば1階層でスライムを見た時、何で直ぐコバルトブルースライムが居るって分かったの?」


「ああ、あれはですねぇ・・・」


 賢斗はスライムの出現個体数のについて少し違和感を感じていた。

 それに加えその後自分が推測した出現条件の内容も含めかおるに説明してやる。


「ああ、そういう事だったの。

 でもそれって円さんが居れば何時でもあのコバルトブルースライムを出現させられるって事?」


「まあ何時でもって訳じゃないと思いますけど。

 つまり円ちゃんがブルースライムと遭遇した場合10%の確率でコバルトブルースライムも同時に出現するって感じですかね。」


「ふ~ん、でももし賢斗君の言ってる事が正しいのなら、それってかなり凄い事よ。

 だって桜のラッキードロップと合わせれば水魔法のスキルスクロールを簡単に手に入れる事が出来るんだもの。」


 そうそう、これは俺的に世紀の大発見。

 あのお嬢様の虚弱体質さえ無ければ、俺の金欠難を救う救世主となってくれる筈なんだが。


「まっ、そういう事になっちゃいますけどね。」


「嘘っ、ねぇ、円さんっ!

 帰ったら是非うちのパーティーに入りましょ。

 VIP待遇で迎えちゃうわよ。」


 本当になぁ・・・いや~残念無念。


「えっ、ホントぉ~?

 円ちゃんもナイスキャッチに入るの~?

 だったらいっつも一緒に遊べるねぇ~。アハハ~♪」


 まっ、そんな誘いを掛けたって当の本人が乗る訳がない。


「っとにもう、桜は仕方ありませんねぇ。

 とはいえ私も普段桜がダンジョンばかり行くので少し寂しい思いをしておりました。

 良いですよ、桜と一緒のパーティーに入って差し上げます。」


 ってあれ、何で断らないの?このお嬢様。

 つか誰か止めてやれよ、え~い、くそっ。


「いやいやいや、円ちゃんは身体が弱いからとてもじゃないけど探索者なんて勤まらないんじゃないかな?」


「そんな事無いわよ、今少しくらい体力が無くたってまたレベルアップしてきっと直ぐ改善されちゃうわよ。」


 そんな事言って先輩、目が¥になってますけど。


「そうだそうだぁ~。」


 いや桜は親友として止めてやるべき立場だろ。


「何を言っているのか分かりませんよ、賢斗さん。

 私は疲れ知らずな女です。」


 嘘けっ!


 にしても何だ?このアウェーな状況は。

 周囲の猛反対は何処に行ったんだろう?


「こらっ、円。もうちょっと現実を見なさい。」


 おお、流石は年長者。

 脱線したこの状況をちゃんと諌めてくれる人が居て本当に良かった。


 さあ、椿さん。

 虚弱体質のお嬢様では探索者にはなれないという現実を貴女の口からよぉ~くこの小娘共にご説明して上げて下さい。


「あんたまだ15歳なんだから探索者にはなれないでしょ?」


 あっ、そっか・・・いや、そこじゃねぇだろっ!

次回、第三十話 幸運とは予期せぬ時にこそ訪れる。

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