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第二十七話 お嬢様の体質改善計画

○子猫の逃亡劇 その1○


ポンッ


 効果切れの1時間が経過すると猫幼女と化していた円は再び白い煙に包まれた。


「ふぅ~、皆さんご心配お掛けして済みませんでした。

 お蔭様で無事元の姿に戻る事が出来ました。」


 いやいやぁ、感謝したいのは俺の方ですよ、お嬢様。

 ・・・良いもの見せて頂けましたしぃ♪


「じゃあさぁお昼になったし一旦キャンプ場まで戻ろっかぁ~。」


 その言葉に賢斗とかおるも頷く、そして・・・


「小太郎~、おいで~。」


スタタタタタァー


 円が呼び掛けると子猫は怯えた様でダンジョンの奥へと走り出した。


「ちょっと待ちなさい、小太郎。」


 あらら、まっ、気持ちは分からんでも無いけど。


 すると「ちょっと捕まえてきます」と彼女もそれを追ってダンジョンの奥へ。


テケテケテケ・・・・


 う~ん、あのお嬢様もテケテケ走法か・・・子猫相手に速さで負けてる。


「桜ぁ、あれで追いつけると思うか?」


「どっかな~。円ちゃん体力ないしぃ~。」


「いや体力じゃなくて、速度的な意味で。」


「あ~無理かもねぇ~。

 他の人が追いかけた方が良いかもぉ~。」


「じゃあ何で桜はそんなに落ち着いてるんだよ?」


「だって私にも無理だも~ん。」


 ・・・そうだった。


 賢斗は音速ダッシュで駆け出した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○子猫の逃亡劇 その2○


 円の脇を駆け抜け、その前方30mを逃げていた子猫に追い着くと賢斗は小さな身体をそっと抱き上げた。


「小太郎、この奥の大部屋はお前が行ったら結構危ないんだぞぉ。」


「あっ、あのメスに絞殺されるにゃ。」


 あ~・・・うん。


「もう大丈夫だから。なっ?」


「騙されないにゃっ!」


 小太郎と話す賢斗の元に円もようやくやって来た。


「大丈夫?円ちゃん。」


 しかしその姿は疲労困憊といった具合で、両足がプルプルと震えている。


「ハァハァ、ご心配には及びませんよ、賢斗さん。

 私は全く大丈夫です。」


 いや見るからに辛そうですけど・・・


~~~~~~~~~~~~~~

名前:蓬莱円 15歳(160cm 45kg B81 W54 H81)

種族:人間(疲労小)

レベル:1(0%)

HP 2/2

SM 0/1

MP 1/1

STR : 1

VIT : 1

INT : 4

MND : 4

AGI : 1

DEX : 4

LUK : 3

CHA : 15

【スキル】

『キャットクイーンLV1(2%)』

『感度ビンビンLV1(0%)』

『限界突破LV1(0%)』

~~~~~~~~~~~~~~


 ああ、やっぱり・・・(疲労小)まで付いちゃってる。

 こりゃしばらくテントで休ませておかないとダメだなぁ。


 えっ、つか何っ!?この虚弱体質お嬢様。


 賢斗は先程解析した際、彼女が猫人幼女化した所為でステータスの数値が低くなっているものだと勘違いしていた。

 しかし何を隠そうこの蓬莱円という女子のステータスは素の状態でこれなのである。


 こんなんで、どうやって日々生活してんのっ!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○子猫の逃亡劇 その3○


 小太郎を小脇に抱え、円の手を引く賢斗がダンジョンの出口へ歩き出すとそこへ桜もやって来た。


「円ちゃんだいじょぶぅ~?」


 桜は未だプルプルと足を震わせている円を気遣って見せる。


「大丈夫に決まっています。

 桜は何を言ってるんですか?」


 しかし当の彼女はこの調子。


(おい桜、このお嬢様どうなってんだ?

 かなりの虚弱体質だし。)


(あ~、別に賢斗が気にしなくってもだいじょぶだよぉ~。

 円ちゃんは昔から身体が弱かったからさぁ、心配されると逆に意地張っちゃう感じなんだよぉ~。)


 ああ、なるほど。

 となるとこの態度も最早条件反射に近いモノなのかも知れない。


(それでこのキャンプの1番の目的を円ちゃんに体力をつけて貰う事にしたんだよぉ~。)


(でもこのレベルの虚弱体質でキャンプなんかしたら逆に体調崩すだろ。

 もう既に疲労の状態異常まで付いちゃってるし。)


(でもここに来なきゃ円ちゃんがスライムを倒せないでしょ~?)


 へっ、あっ。


(それってつまり桜が円ちゃんのレべリングを手伝ってやるって事か?)


(そうそう~。)


 確かに虚弱体質を直すには身体レベルを上げてやるのが一番手っ取り早いかもな。

 それに今の桜なら奥の大部屋のスライムくらい1人で全滅させるのも訳ない。

 円ちゃんの親友であるこいつがそうしたいのなら特に俺が口を挟む問題じゃなさそうだ。


(ふ~ん、まっ、それは好きにしたら良いけど、そういう事ならそれ行く前に先輩にEXPシェアリングを頼んだ方が良いと思うぞ。

 そっちの方が簡単かつ安全だろうし。)


(あっ、そうだねぇ~。

 かおるちゃんに頼んでみるぅ~。)


(おう、そうしとけ。)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○お嬢様の体質改善計画 その1○


 正午頃、円の歩調に合わせゆっくりキャンプ場へと戻ると、まだそこには椿の姿は無かった。

 そして昼食の食材はまだ車の中。

 お昼をお菓子とジュースだけで済ませる事にし、テントで円が休む中他の面々は各自が自由行動となった。

 そしてその自由行動の賢斗の様子は、椿が湖畔に用意していたリクライニングチェアの背もたれを盛大に倒し心地よい日差しと頬を撫でる優しい風を楽しみながらの優雅なお昼寝タイム。


 その2時間後。


 ふぅ~。


ゾクッ


 何か耳元に吐息を感じる。


ツンツン


 右頬に微かに触れる指先。


「起きる時間だぞ、賢斗君。」


 耳を擽る甘い声・・・

 何だろう、この込み上げる幸せ。

 美少女に起こされるのってこんなにも良いものなのか?

 ここは勿論寝たふり続行だな、うん。


チョンチョン


 今度は鼻先に触れる指先。


「みんな待ってるよぉ。」


 う~ん、まだまだ・・・


 ふぅ~。


 お~、それそれ。ニヤニヤ


「もう、起きてるでしょ、賢斗君。」


 ちっ、顔に出てしまったか。


 かおるに起こされた賢斗は桜と円が待つテント前のテーブルへ移動。


 おっ、円ちゃんもすっかり復活してんじゃん。


 何やら話があるそうなので取り敢えず聞く事に。


「で、どうしたの?」


「じゃ~ん。」


 威勢の良い掛け声と共に桜がテーブルの上に出したのは、A4サイズの1枚の紙。


『頑張れ円ちゃん!レベルアップで体質改善計画!ポロリもあるよぉ~♪』


 何だこれ・・・こいつ等相当暇だったんだな。


 そしてそのタイトルの下には中央でムキムキの金髪少女がポージングをし、それを少年一人少女二人の三人がキラキラした目で見つめている絵がクレヨンで描かれていた。


 計画内容を絵だけで表現するとか、斬新過ぎて何も言えん。


「ほら、桜に頼まれちゃったし。

 賢斗君が皆で協力しようって言ったんでしょ?」


 おおっ、この下手くそな絵にはそんな意味が。

 いやでも皆で協力なんて事は一言も言って無かった筈だが。

 とはいえ別に暇だしドキドキジェットのクールタイムもそろそろ終わる頃合い。

 まっ、付き合ってやるか。


「ポロリは桜が付けました。」


 うん、知ってる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○錬金のススメ○


 午後4時、円のレベルアップ計画の為再び清川ダンジョンへ向かった賢斗達。

 するとその入り口付近には見覚えのある車が一台止まって居た。


 直接こっちに来てたのか。


 ダンジョン入口を覗いてみれば椿がせっせとコーヒーの錬金をしていた。


「上手く行きましたか?」


「あっ、賢斗君。丁度今初めて成功したところよ。飲んでみる?」


「はい是非。」


ズズッ・・・


 ふ~ん、錬金の劣化ってのはこういう事か。

 そこまでアレな俺でも分かるくらい味が落ちてる。

 まっ、そうは言っても朝飲んだ時の奴が美味過ぎただけで、俺的にはこれでも十分満足出来るが。


「やはり錬金で淹れると味が落ちてしまうみたいですね。

 普通に淹れてくれた時の方がもっと美味しかった気がします。」


「そう?どれどれ。」


 椿もそのコーヒーを自分で飲んでみる。


「あっ、本当、これじゃインスタントの方がまだマシだわ。」


 いやいや、インスタント辺りに比べれば断然こっちの方が・・・

 あ~でもこの人の場合、比較対象のインスタントも凄いのだったりしてそうだしな。


「もう、折角こんな高い錬金釜まで買って来たのに。

 この一番安くて小さい錬金釜でも、15万円もしたのよぉ。」


 まっ、ダンジョン産のアイテム関係は総じてお高いですからなぁ。どれどれ


~~~~~~~~~~~~~~

『魔銅の携帯用錬金釜』

説明 :魔銅製の携帯用錬金釜。錬金成功率+5%。品質劣化防止(微弱)。

状態 :100/100

価値 :★

用途 :錬金道具。

~~~~~~~~~~~~~~


 あっ、これでも一応品質劣化防止効果が付いてるのか。

 それでいてあの程度となると、ホントはもっと不味いコーヒーだったって訳か。


「椿さん、さっきも言いましたけど錬金は基本的に劣化は付き物ですし、これでも微弱ですが品質劣化防止効果が付いています。

 それに目的はあくまで錬金スキルのレべリング。

 この錬金釜だと+5%しか成功率が上がりませんけど、スキルの習熟率の上昇も成功した方が高いでしょうし、早めにこれを買った事自体は決して間違ってはいないと思いますよ。」


「ふ~ん、習熟率とか言われても今一だけどつまり賢斗君が言いたいのはレべリングの効率を上げる為にコレを買ったのは正解だったって事よね。」


 うんうん。


「ありがと、少しは気分がマシになったわ。

 でも自分で飲む分は現状普通に淹れた方が良さそうねぇ、少し勿体ないけど。」


「アハハ、でもまあいきなり薬草使ってポーション錬金するよりは市販のコーヒー豆の方が安上がりだと思いますし、そこは必要経費だと割り切るしかないでしょうね。」


「そっかぁ。

 まあこうしてもう初期投資を始めたからにはちゃんとモノにしたいし、今朝賢斗君が言ってた錬金棒に錬金グローブも早めに買っといた方が良かったかしら?

 流石にさっきはこの釜の値段にビックリして全部を揃える勇気が出なかったけど。」


「まあ買える余裕があるなら早めに揃えた方が今後的には良いと思いますけど。

 その2つにもきっと成功率を上げる効果が付いてると思うんで。」


「うん、分かった、やっぱりちゃんとやるなら道具もちゃんと揃えないとイケないわよね。

 これも将来の為、後で貯金全部下ろして買って来る事にするわ。」


 う~ん、にしてもここまで人に勧めといて何だがこの錬金スキルってホント金食い虫だなぁ。

 レべリングの初期投資に何十万円も掛かるし、その上継続的な素材代まで。

 やる気と金のある人にしか太刀打ち出来ないスキルだわ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○お嬢様の体質改善計画 その2○


 椿と別れた賢斗達は150m先の大部屋へと歩き出した。

 そしてその部屋の前に着いたところで円の様子を窺えば・・・


 うわぁ~本当に体力ないなぁ、円ちゃん。

 ここまで歩いて来ただけで足元がプルプル震えちゃってるし。

 でもまあドキドキ星人を共有してやれば、回復ドキドキでこのお嬢様の疲労も回復出来るか。


「先輩、今回はEXPシェアリングだけじゃなく、ドキドキ星人スキルの共有にも円ちゃんを入れときましょう。

 そうすれば疲労も癒えると思うんで。」


 横目で円の様子を確認したかおるもニコリ。


「そうね、賢斗君も少しは気が利くじゃない。ちょっと見直したわ。」


 スキル共有等を済ませると賢斗達は大部屋内に入った。


 よしよし、ちゃんと居るな。


 部屋内には10体のスライム達が蠢いている。


~~~~~~~~~~~~~~

名前:ブルースライム

種族:魔物

レベル:1(12%)

HP 5/5

MP 1/1

STR : 2

VIT : 2

INT : 3

MND : 1

AGI : 1

DEX : 4

LUK : 3

CHA : 1

【スキル】

『酸吐出LV1(23%)』

『物理耐性LV1(33%)』

【属性】

なし

【弱属性】

火属性

【ドロップ】

なし

【レアドロップ】

『スライムジェルの瓶詰(ドロップ率0.01%)』

~~~~~~~~~~~~~~


 やっぱ弱ぇなぁ、こいつ等。


 賢斗が解析していると・・・


「ファイアーボール・アンリミテッド・ダブル・た~いぷフェニックスゥッ!」


 通常の大きさの火の鳥さんが2羽飛び立った。


 おお、ダブルで半減された威力がアンリミテッドで補完されてるのか、これならこのスライム程度余裕で討伐出来る。

 にしてもだんだん名前が長くなって来てんな、こいつの魔法。


 ってあれ、もう全然お嬢様がお乱れになってない。

 まあテンションタイムでも回復だけなら十分だけど・・・

 あっ、いや、そう考えるのは楽観が過ぎるな。

 俺は寝てたし時間は十分、その辺のレクチャーも既に終わってると見た方が正解だろう。

 ったく、こういう仕事だけは早いんだから。


 まっ、しゃーない、今回は真面目な目的だしそろそろ俺も討伐に参加しときますか。


 と桜の攻撃を皮切りに賢斗とかおるが戦闘に加わるとそれは直ぐに終わりを迎える。


『ピロリン。スキル『雷魔法』がレベル3になりました。『サンダーランス』を覚えました。』


 おっ、よしよし、ちゃんとハイテンションタイムも消化も順調ですなぁ。

 にしても火魔法と違ってレベル3でランス系の魔法を覚えるのか。

 ・・・あっ、そうだ。


「円ちゃん、レベルは上がった?」


「あっ、はい、実は先程頭の中でまたアナウンスがあったみたいなのですが・・・」


 おお、そりゃ早速確認してあげねば・・・


~~~~~~~~~~~~~~

名前:蓬莱円 15歳(121cm 23kg B58 W46 H62)

種族:人間

レベル:1(50%)

HP 2/2

SM 1/1

MP 1/1

STR : 1

VIT : 1

INT : 4

MND : 4

AGI : 1

DEX : 4

LUK : 3

CHA : 15

【スキル】

『キャットクイーンLV2(2%)』

『感度ビンビンLV1(33%)』

『限界突破LV1(0%)』

~~~~~~~~~~~~~~


 ・・・あら残念、レベルアップしたのはお騒がせスキルの方だったか。


 賢斗はついでにそのキャットクイーンスキルを解析してみる。


~~~~~~~~~~~~~~

『キャットクイーンLV2(0%)』

種類 :パッシブ

効果 :猫族のクイーンとしての本能を呼び覚まし、特殊能力を得る効果。


【特殊能力】

『猫人化』

種類 :アクティブ

効果 :猫人に姿を変える能力。スキルレベルの上昇により成長する。効果時間60分。解除不可。


『招き猫(雌)』

種類 :パッシブ

効果 :レア魔物を招きよせる能力。レア魔物遭遇率+10%。

~~~~~~~~~~~~~~


 ほ~う、また変な特技を取得してるなぁ、このスキル。


 猫人化の次は招き猫(雌)って・・・

 (雌)って事は(雄)もあんのかぁ?これ。


 まあそれは兎も角、レア魔物を招き寄せるって具体的にはどんな感じ?


「どうでしたか?賢斗さん。」


「あっ、うん、残念ながら上がったのはキャットクイーンスキルの方だったみたい。

 それで今回そのレベルアップで招き猫(雌)って特技を覚えてるよ。

 何かレアな魔物を招き寄せる効果みたいだけど。」


「そうでしたか。」


 すると円は賢斗をじっと見つめクイクイっと手招き。


 ん、何だろう、内緒話?


 彼が円に耳を寄せると・・・


「あっ、ホントですね♪」


 おい、俺はレアな魔物じゃねぇだろっ!

次回、第二十八話 コバルトブルースライム。

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