第二十四話 連休は清川で
○連休は清川で その1○
5月2日木曜日午後5時。
夕方のダンジョン活動を終えると賢斗達は協会のフードコーナーでミーティングを始めていた。
「桜は今日探プロ契約する予定だって?」
「うん、そうだよぉ~。」
「先輩の方はどうなってます?」
「うちも何とかOK出たから今夜中川さんが桜の家を回った後で来てくれることになったわ。
まあ大学に行くって条件付けられちゃったけど。」
「おお~、じゃあ明日からはあの拠点部屋でミーティングも出来そうですねぇ。」
「良いよねぇ~、あの部屋ぁ~。」
「それで賢斗君、明日からはどうするのかな?
第2予選前の4連休だし私は予定を開けてあるけど。」
おおっ、先輩気合入ってんなぁ。
「あ~私はお姉ちゃんと円ちゃんの三人で、明後日からキャンプに行く約束しちゃったよぉ~。」
こっちは遊ぶ気満々か。
「じゃあ俺と先輩は二人で白山ダンジョン通いでもしますか。」
俺も先輩と同じく予定は空いている。
現状桜が最大火力な訳だし、桜抜きで先輩と二人で魔法スキルのレべリングをするってのも有りっちゃ有りかな。
「ちなみに桜、キャンプってどこ行くんだ?」
「清川キャンプ場ぉ~。」
清川さんかぁ、良いなぁ。
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○クローバー拠点部屋○
翌日5月3日金曜日午前9時。
ナイスキャッチ全員の探プロ契約は無事完了し、賢斗達は今後の打ち合わせをする為以前通されたクローバーの奥の部屋へとやって来ていた。
ガチャリ
ドアが開くと中川と水島が入って来る。
「はい。皆さんお早うございます。」
「「「お早うございます。」」」
中川に挨拶していると水島が飲み物を賢斗達の前に置いていく。
「どうぞ、みなさん。」
そしてタイミングを見計らった中川が言葉を続ける。
「今日は今後の事についてのお話、そして皆さんのステータスの確認をしたくて来て貰いました。
それでまず今後の事についてですけど、当分の間はナイスキャッチに依頼するお仕事は無いと思っていて下さい。」
この前もそんな事言ってたもんな。
「協会からの護衛依頼には最低レベル条件が有ったりだとか、他の外部からの依頼にしても最低レベル条件付や指名依頼が殆ど。
今のあなた達ではその条件レベルも足りていないでしょうし、世間的認知度も足りていないといったところがその理由です。」
ごもっともごもっとも。
「したがって現状のクローバー側から貴方達への要望としては、今貴方達が参加してるモンチャレ大会に於ける決勝大会進出。
そこで活躍することで世間的認知度を上げて欲しいという事がまず一点。
二点目は将来的にレベル条件依頼を受ける事が出来る様身体レベルのアップに日々励んで行って貰うといったところになるかしら。」
ふ~ん、って事は探プロ契約したと言っても、当分の間は今までとやる事は殆ど変わらないのか。
「それと今後うちとあなた達が一緒に頑張っていく際の約束事としてダンジョンに行く際はここに1回顔を出して予定を報告する事。
閉店中の時間帯でもそこの伝言板に書き込みを残しておいてね。
ダンジョン内に居る間は携帯端末が使えないけれども、こちらとしても貴方達がダンジョン探索をしている事くらいは把握しておきたいという事です。」
それならやっぱりダンジョンに行く前は毎回ここを集合場所にした方が良さそうだな。
「あとこの部屋はこれから自由に使って貰って構わないけど、今後は店の方からではなく裏の店員用の出入り口から入って来て下さい。」
まあもう客じゃないしな。
「最後にあなた達のマネージャーにはこの水島を担当させるので、何かあればまずこの娘に聞いてみて下さいね。」
へぇ、水島さんが俺達のマネージャーになるのか。
「皆さんよろしくお願いします。
あと今のところ店番も兼任してるので、今後はここに来ても飲み物はセルフで宜しくです。」
トレイを胸に抱えた水島は軽くお辞儀をするとニコリと微笑んだ。
全く知らない人よりはそっちの方が助かるな。
テンパってなきゃ普通に良い人そうだし、うん。
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○ステータス開示○
「じゃあ今度は皆さんのステータスの鑑定をさせて貰おうかしら。」
おっと、いけね・・・隠蔽を解除しておかねば。
「まずは多田さんからで良いかしら?」
「はい、それは構いませんけど・・・。」
「けど?」
「驚かないで下さいね。」
「ふふっ、安心して頂戴。
これでもプロ鑑定士ですからそう簡単には驚かないわよ。
それにもう笑ったりもしないから大丈夫。
貴方と桜さんのステータスは1度見させて貰ってるしね。」
やはりあの時ドキドキ星人スキルは笑われていたのか・・・知ってたけど。
中川は余裕の笑みを浮かべて賢斗の鑑定を始める。
しかし彼女の顔は次第に驚愕の表情へと変わって行った。
う~ん、見事な顎の下がり具合、こりゃ相当驚いてんなぁ。
だから驚かないでって言ったのに。
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名前:多田賢斗 16歳(168cm 56㎏ C88 W78 H86)
種族:人間
レベル:4(31%)
HP 14/14
SM 12/12
MP 15/15
STR : 11
VIT : 7
INT : 11
MND : 17
AGI : 13
DEX : 9
LUK : 5
CHA : 9
【スキル】
『ドキドキ星人LV10(-%)』
『ダッシュLV10(-%)』
『パーフェクトマッピングLV10(-%)』
『潜伏LV8(2%)』
『視覚強化LV10(-%)』
『解析LV10(-%)』
『聴覚強化LV10(-%)』
『念話LV3(99%)』
『ウィークポイントLV4(36%)』
『短剣LV1(77%)』
『忍び足LV1(42%)』
『空間魔法LV6(32%)』
『隠蔽LV7(88%)』
『限界突破LV2(27%)』
『感度ビンビンLV3(52%)』
『九死一生LV5(14%)』
『回復魔法LV2(4%)』
『MP高速回復LV4(41%)』
『雷魔法LV2(10%)』
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つってもこんなもん見せられちゃ、普通は驚くよなぁ~。
流石の俺もこのスキル数が異常だという自覚くらいある。
・・・カンストスキルまで結構あるし。
「たっ、多田さん、一体どうやってこの解析スキルを?」
「えぇぇぇ~、この子解析スキルまで持ってるんですかぁ?」
おや、二人して解析スキルに食いつくの?
他にもっと凄いビックリポイントがあると思うんだけど・・・限界突破とか空間魔法とか。
「あっ、いや、それを聞いたら職権濫用ね。ごめんなさい。」
あ~スキルの取得方法とかは、探索者の知的財産みたいなもんなんだっけ・・・
「それにしても呆れるくらい凄いわね。
回復魔法に雷魔法、空間魔法に至っては聞いた事すら無いわ。
他にも幾つか知らないスキルが含まれてるし、それでいて身体レベルがたったの4って、ホント異常としか言い様が無いわね。」
その後スキルの詳細鑑定に取り掛かる中川。
しかし鑑定スキルの効果説明は解析スキルと比べかなりざっくりした内容。
賢斗がその都度補足していく形でそれは進み終わってみれば1時間以上が経過していた。
「流石にカンストしてるスキルがこれだけあると、時間が掛かってしまったわ。
多田さんもお手伝い有難う、とても助かったわ。」
「あっ、いえ。」
「じゃあ次は小田さんの鑑定をさせて貰おうかしら。」
「ほ~い。」
また補足した方が良いかもだし、俺も桜の解析しておくか。
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名前:小田桜 16歳(152cm 42kg B79 W54 H80)
種族:人間
レベル:4(21%)
HP 10/10
SM 8/8
MP 16/16
STR : 3
VIT : 4
INT : 16
MND : 4
AGI : 3
DEX : 6
LUK : 115
CHA : 14
【スキル】
『ラッキードロップLV10(-%)』
『念話LV3(91%)』
『限界突破LV4(48%)』
『視力強化LV10(-%)』
『火魔法LV6(18%)』
『感度ビンビンLV7(11%)』
『MP高速回復LV7(0%)』
『魔力操作LV4(32%)』
『ウィークポイントLV1(21%)』
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桜の鑑定を始めた中川はまたもや賢斗の時と同じ反応。
まあそうだわな。
頭の中は常時ぽかぽか陽気だが、レベル4にして高火力を生みだす魔法特化型ステータスとスキル構成。
スキル数こそ俺に及ばないが、バケモノじみたLUK値だけを取ってみたって十分驚愕に値するし。
「ふぅ~、はい、小田さんの鑑定も終わりました。」
とはいえ流石はプロ鑑定士。
中川の立ち直りは賢斗の時と比べれば早くその鑑定作業は30分程で終了を迎えた。
「じゃあ最後は紺野さんのステータスを見させてもらうわね。」
「はい、宜しくお願いします。」
賢斗も引き続き中川の鑑定作業に付き合う。
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名前:紺野かおる 17歳(158cm 49kg B86 W58 H84)
種族:人間
レベル:4(95%)
HP 14/14
SM 10/10
MP 8/8
STR : 12
VIT : 8
INT : 9
MND : 16
AGI : 9
DEX : 14
LUK : 10
CHA : 22
【スキル】
『キッスシェアリングLV10(-%)』
『弓術LV4(75%)』
『索敵LV3(3%)』
『念話LV9(22%)』
『リペアLV7(33%)』
『感度ビンビンLV10(-%)』
『視力強化LV10(-%)』
『聴覚強化LV10(-%)』
『潜伏LV5(21%)』
『セクシーボイスLV1(0%)』
『限界突破LV2(70%)』
『風魔法LV2(2%)』
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いや~先輩のステータスを解析すんのは久々だな。
普段は何だかんだと嫌がってるし・・・って何?これ。
セクシーボイスLV1(0%)っ!
まさか先輩が俺に隠れてこんな艶めかしい素敵スキルを取得していたとはっ!
これはもう詳細に調べずにはいられないでしょ~♪
「あのちょっと多田さん、この・・・」
中川が賢斗に何か聞きたそうにしているが、彼は今それどころではない。
賢斗はセクシーボイスの詳細解析結果に全意識を傾けていた。
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『セクシーボイスLV1(0%)』
種類 :アクティブ
効果 :セクシーボイスで相手(雄限定)を魅了状態にする。効果時間30秒。
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ほっほ~う。
発動にはやはりお色気たっぷりの生声が必要になるのか・・・
う~む、なんと素晴らしいっ!
これを先輩に使わせるには・・・むぅ、恐らく一筋縄ではいくまい。
ならばこの作戦の立案には細心の注意と・・・
「ねぇ、ちょっと多田さん、聞いてるぅ?」
ユサユサ
思考に耽っていた賢斗は肩を揺する中川の声で現実に引き戻される。
「あっ、はいはい。」
「スキルシェアリングについての解析内容を教えてくれないかしら。」
「あっ、そのスキルはですねぇ・・・」
今それどころじゃないってのに・・・
「じゃあもしかして貴方達のスキル数の多さとか異常なレベルアップは多田さんのドキドキ星人スキルを紺野さんのスキルシェアリングという特技で共有した結果なの?」
ん、おおっ、流石は出来る女、直ぐにそこに気付くとは。
そう、彼女こそうちのスキル共有の要であり、ガードが緩そうで固い小悪魔弓使い。
確かに俺以外のメンバーのスキルに関しては、先輩が居なかったらこうはなっていないだろう。
「流石ですね、正解です。」
「もし・・・もしもよ。
このスキル習熟システムを使ったら、私も多田さんの持ってる解析スキルを取得出来たりとかするの?」
おっ、スキル習熟システムかぁ。
なかなかナイスなネーミング・・・今後は俺もそう呼ぶことにしよう、うん。
「多分可能だと思いますけど。」
「そっ、そう、ごめんなさい、話が少し逸れたわね。
これで今日のステータス鑑定は終了。
皆さん、付き合って貰って悪かったわね。」
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○連休は清川で その2○
午後1時、中川が出て行った拠点部屋ではナイスキャッチの三人が昼食代わりのポテチを摘まんでリラックス。
「そういや桜のキャンプって、何日間の予定で行くんだ?」
「2泊3日だよぉ~。」
ふ~ん、清川で2泊3日のキャンプかぁ。
やっぱ良いよなぁ、あそこは景色も良いし。
「桜ぁ、例えば俺と先輩がその清川キャンプってのに一緒に行っても大丈夫だったりするか?」
「う~ん、多分大丈夫だと思うよぉ~。
お姉ちゃんの趣味はソロキャンだから、1人用のテントも持ってるしぃ~。
あっ、それに車も結構おっきいからだいじょぶぅ~。」
「いやキャンプ用具とか交通手段の問題じゃなくてだな、その一緒に行く人達の人柄的に。」
「あ~それは全然だいじょぶだよぉ~。
今回はお姉ちゃんと円ちゃんに私の火魔法をダンジョンで見せたげる予定だし~。
賢斗とかおるちゃんの魔法も見られるよぉ~って言えば、きっと喜ぶと思うんだぁ~。」
ふ~む、そういう事なら多少気を使わせてしまいそうだが、俺と先輩は日中は殆どダンジョンで過ごすだろうしお邪魔しても大丈夫そうだな。
「なら先輩、俺達も連休は清川に行ってみませんか?
あそこは人も少ないし、ハイテンションタイム中に攻撃魔法使っても周囲を気遣うことなくのびのびやれると思いますよ。
そして何より清川は景色も最高です。」
「そうねぇ、まあ連休中の白山ダンジョンは結構混んじゃうし、私だけ残ってても仕方ないものね。
君がそこまで言うなら付き合って上げるわよ、私も。」
「じゃあ桜、悪いけどその二人にお願いしておいて貰って良いか?」
「おっけ~。
賢斗とかおるちゃんが一緒に来るなら私もお休み中にハイテンションタイムが出来るしねぇ~。」
と話は纏まり賢斗達は来たる4連休を清川で過ごす事になった。
次回、第二十五話 魔法見学会。