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第二百話 メタリックゲコドンソード討伐作戦Ⅲ

「あけおめだいまじぃ~ん」


 遅過ぎるだろ。


 本年も適当に宜しくお願いします。ペコリ

○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その10○


 じぃ~っとお空を見つめる賢斗さん。

 何やら考えごとでもしているのでしょうか。


 やっぱあそこがベストポジションかな。


「スラ太郎君、飛行形態にフォルムチェンジだ」


(えっ、ふぉるむちぇんじ?)


(いいから適当に翼でも生やしとけ。

 こういうのは見た目も結構大事だから)


 バサッ!


「樋口よ、そういやあのスライムって空中をぴょんぴょん跳ね回れるんだったっけか」


「ええ、でもあの程度の能力に一端の飛行能力みたいな雰囲気出されても、何だか急に拍子抜けですね」


 まっ、確かに歩数制限もあるエアリアルの空中歩行に翼まで生やすのは過剰演出。

 だが、フンッ!これからお見せするのは正真正銘の、おっ、これならイケそう。


 ザバァァァァ


(あれ、ちょっとマスタァ?勝手に体が浮いちゃってます)


(目ぇ回すんじゃねぇぞ、スラ坊)


「スラマーメイド号、テイクオフっ!」


 飛行能力だぁ!


(ってあれ、うわっ、うわっ、うわわわわわわっ、マスタぁぁぁあ!)


 キィィィィ――――――ン


 とやって来たのは上空1500m、スラマーメイド号は丁度メタリックゲコドンソードの真上辺りで浮かんでいた。

 ちなみに先程の種を明かすと何てことはなく賢斗が自身の破天荒型飛行スキルで浮力を生み出し強引に飛ばせていただけである。

 そして今現在、この空中で停止している状態はスラ太郎がエアリアルにより足場を作っていたり。


 キィィ、バタン


 ともあれこのサイズの巨大化はスライムさん曰く海から出れば10分と持たないとか、究極融合合体の背に降り立ったナイスキャッチの面々は早速ここへ来た目的に取り掛かる。


 スラ坊は既に条件を満たしてるからいいとして・・・ブォン

 ん、何これ?まっ、今はそれどころじゃないか。


「先輩、そんじゃあユニサスから行くんで大人しくしててくれるよう指示してもらえますか」


「わかったわ。

 ほらアラく~ん、ちょっとだけ大人しく浮かんでてくれるかな」


 パサッ、フワリ


 ナイスキャッチの経験値共有事情はこれまでかおるのEXPシェアリングに頼り切り。

 またその一方で手の甲にキスをしなければならないという仕様から魔物であるテイムモンスターへの適用は避けられている。

 とまあこれまでは幾分不都合を感じる場面も多かったわけだが・・・


 よし、これで抱っこ完了・・・ひょいっ!


 繰り出された前足蹴りを少年は華麗に回避。


 ったく、人の善意を足蹴にしおって・・・


「やっぱユニサスは先輩が面倒見てくださいよ。

 自分の相棒だったら手の甲にキスくらいできるでしょ」


「まあ私もそうしたいのは山々なんだけど、でもやっぱり無理よ。

 だってほら、お馬さんのここは前足って言うでしょ」


 うん、こいつ等ホントにめんどくさい。


 この行動に何の意味があるのかといえば最近おんぶスキルがレベル10で会得した新特技、おんぶにだっこの発動条件を満たすためである。

 してその効果のほどは3時間だけ条件を満たした相手との獲得経験値共有を可能に、効果時間の仕様以外はほぼかおるのEXPシェアリングと同じだがこういう手札は幾ら多くても困ることはないだろう。


「パッ、はい、これで小太郎も発動条件を満たしましたよ、賢斗さん」


 いやそもそも小太郎は普通のペット枠・・・

 だがまあ待て、元はといえばおんぶスキルカンストもこのお嬢様のお蔭、ここで無碍に扱うわけにもゆくまい。


 ちなみに経験値共有の方法はこの他にも幾つか存在し資金的に余裕のあるパーティーでは専らリンクストーンという一定確率で壊れる消費型アイテムが使われていたり。

 なんやかんやと五右衛門さんに続き烏天狗を抱きかかえると下準備はOKである。


「でもさぁ、こんなのカンストしてるのってきっとママさん探索者と賢斗くらいだよねぇ」


 いや、ママさんだって赤子をおぶってダンジョンには入らんだろ。


 あとはこの中の誰かが攻撃をひと当てしておくことでパーティー全員で怪物の経験値をガッツリおこぼれ頂戴する夢の欲張り棚ぼたシステムは完成する。

 だがそのひと当てにも今回は注意が必要、常套手段の石ころなど使おうものならこの高度1500mという高さが結構な威力を生み出してしまう。

 まあそうなったところであの怪物からしてみればという可能性も十分なのだがこの人達は意外と危険に敏感な方々であった。


「じゃあ先輩、お願いします」


 してそんな夢見る臆病者達のお悩みに完全回答したのがパワーレべリング時の頼れるお助けアイテム。


「わかったわ、適当に上に打っても当たっちゃうのよね?ギィィィ」


 威力はほぼ皆無だが狙った獲物は逃しませんと神社の娘も大絶賛の緑山神社謹製必中の鏑矢である。


「はい、かおるお姉さまぁ、命中率に関してはピカイチですよぉ」


 パシュン、ピィィィ~~~~ヒョロロ~♪

 くるんっ、ひゅ~~~~~ん・・・コツッ


 甲高い音を響かせた矢は風向きなどお構いなしにメタリックゲコドンソードの背に落下、その役割を見事果たすのだった。


 さぁて、これでようやく五輪砲タイムだな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その11○


 ザップゥ~ン

 メタリックゲコドンソードとの距離約1kmの地点。

 一撃ミッションを熟したナイスキャッチ御一行は再び海上に舞い戻る。


 武蔵と怪物の位置関係を考えると大体この辺か。

 あっ、そだ、そろそろインカム着けないと。


「え~多田賢斗から作戦指令室、応答願います」


『ったく、ようやくインカム着けるのを思い出したか坊主。

 作戦進行中状況が変わることなど幾らでもある、そういうのは貰ったらすぐ装着するもんだ、多田少年』


「あっ、すんません、そういうもんなんすね。アハハ」


『まあそれはそれとして・・・

 あれだけ期待を煽るお前さんのド派手な仕込みと前振りには文句のつけようがない、ここまでの仕事としては上出来だ。

 世間はもうすっかりお前さん等があの怪物を倒すんじゃないかって大いに盛り上がってるみたいだぜ』


 前振りって何のことかな?


『とまあなんにせよ始める前にもう一度だけ確認しておくぞ、発射タイミングは60秒後、軌道修正はこっちで勝手にやるから君達はなるべくその場で待機。

 弾道はカウントゼロで君達の真下を通過、そのタイミングでそっちも最終アクション。

 どうだ、ちゃんと頭に入ってるか?何か質問があれば今ここで訊いておけ」


「いえ、大丈夫であります」


『ではこれより五輪砲発射のカウントダウンに入る』


 59・・・58・・・


 まあ何はともあれ、最終アクションはピカピカッと光って誤魔化すしかないわな。

 画伯のヘタウマ絵日記じゃスラ坊が口からビーム吐いとったけどそれ再現しちゃったらスラ坊のお尻が火傷しちゃうし。

 にしても光るといえば・・・


 47・・・46・・・


『鏑矢というのは古来より合戦開始の合図として使われてきました。

 先程のあれはやはりあのメタリックゲコドンソートの討伐予告と受け取って良いのではないでしょうか』


『まあ本当に討伐できるかはさておき、彼の一連の行動からはその意思が十分伝わって来ましたね』


 33・・・32・・・


『そして今スラマーメイド号は何やら発光状態に突入。

 その頭上には只一人、サングラスをかけた多田賢斗氏が立っています。

 今度はいったい何をしようというのでしょうか』


 22・・・21・・・


「チッ、飛んでったと思ったら結局海の上で勝負するんじゃねぇか。

 ったく、何やってんだか。キンキキン、ブォンブォン」


「でもまあようやく真っ向勝負するみたいですよ。バキュンバキュン」


 15・・・14・・・


 あんな姿を見ると今の彼にとってはもう雷鳴剣は一つの手札に過ぎないと感じてしまいますね。

 ですが、そうだとしても最早雷鳴剣の後継者は貴方しかいません。

 今更嫌とは言わせませんよ。


「雷牙っ!」


 ゴロゴロゴロォ・・・


 15・・・14・・・


 てっきり巨大乗り物系兵器を拝見できるものと・・・

 全く、彼のお蔭でまた私の予想が外れてしまいそうです。

 とはいえたとえ遊びであってもこの私を打ち負かしたミスター多田の実力がここで見れるのはありがたい。

 これはこれで良しとしておきましょうか。


 8・・・7・・・


「隊長、内海班長の意識が回復したそうです」


「そうか」


 待ってろおやっさん、今仇は取ってやる。


 5・・・4・・・


「キンキキンキン、くそっ、梅の奴ぁ呑気に寝てやがるしこっちはもう限界だぞ。

 早いとこケリをつけてくれ、賢坊っ!」


 3・・・2・・・1・・・ゼロ


「放てぇっ!」


「貴方のハートを狙い撃ち、チュッ♡」


「いくぞスラ太郎君、オリンピックビームだ!」


 ピカァァァァァ~~~~~~~っ!


 少年が右手を前に突き出すと辺り一帯ホワイトアウト。


 ギュオォォォォ――――――――ン


 海を割りながら轟音と共に5色のビームは伸びてゆく。


 ザッパァァァァ――――ン


 荒波が数十mの高さまで立ち昇りその驚異的な破壊力が通り過ぎた後には胴体部を失った怪物の姿。

 残されていた部位もチリチリと霧散を始め、海がその穏やかさを取り戻す頃には完全に消え去っていた。


『なんと凄まじい威力のビーム砲、やりました、日本の若きSランクが伝説級とまで言われたメタリックゲコドンソードを見事に討伐。

 ここに一つの伝説が生まれましたぁぁぁぁぁぁ!』


 ウォォォォォォォ―――――ッ!


 まさに戦いの終結を感じさせる光景。

 これで全てが終わったのだと人々は歓喜の声を上げ、ある者は涙しまたある者は拳を握りしめる。


 だが・・・ちゃぽん


 そのあまりにも小さな違和感は密やかに海へ落ちていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その12○


「メタリックゲコドンソードの魔物反応完全消失、討伐成功です。

 各所に散っていたメタリックウロコドンも動きを止め海中へ落下、反応も消失しています」


 分体諸共消滅したか、まっ、偶にはこういう時もないとな。


「うむ、皆もご苦労だった、メタリックゲコドンソード討伐作戦は成功したと見ていいだろう。

 沿岸の今泉班、また協力者各位にもこの情報を伝達してやってくれ」


 っしゃあっ!!!


「といっても我々にはまだ仕事が残されている。

 内海班は現在スリープモードに移行している武蔵の動力回復を待って速やかに第三海保に帰還。

 木下班は本体消滅ポイントに向いドロップ品の捜索回収、この場に居ない今泉班には以降被害状況の確認に当たるよう伝えておいてくれ。

 あと対処半ばの南硫黄島ダンジョンについてだがそっちはまた後日対応することとする、以上だ」


『ツーツー、鉄か、今日はもうそっちには顔を出さずにこのまま引き上げる。

 気ぃ失ってる梅の奴を早いとこ救護班のとこに連れてかなきゃならねぇからな』


 フッ、お前がそこまでボロボロになってる姿は俺も久し振りに見たぜ。


「ああ了解した、報告は後日で構わない。ガチャ」


 さて、帰頭する前におやっさんの顔でも・・・


「あのぉ~ちょっといいですか?隊長」


「ん、どうした?」


「ナイスキャッチの多田さんなんですがちょっと様子が変というか・・・」


 メインモニターにはメタリックゲコドンソードの消滅ポイントで海面を見つめる少年の姿。


「まあ今回は演技に徹してもらったからな。

 若い奴に有り勝ちな自分の手で倒したかったなんて感傷にでも浸っちまってるんだろ」


「あっ、そういうことですか」


 作戦終了とか言ってたけど、う~ん、どうしよう、未だにアナウンスさんがお仕事ボイコットしとるんですけど・・・

 まあよくよく考えたら分体達も元は本体の一部だし、メタリックゲコドンソードの討伐経験値が分体と戦った探索者達にも等しく分配されてしまってる可能性はある。


(キィィィ、バタン、スラ太郎君、今度は少し潜ってみよう)


 だが少なくともこの賢斗さんはあの怪物が魔石を落とすところを見ていない。


 スラマーメイド号は一路海底を目指す。


 もしあれが見間違いじゃなければ、力を失った怪物がまだ生き延びてる可能性も・・・


 プクプクプク・・・


 おっ、あったあった。


 メタリックゲコドンソードの喉元から剥がれ落ちた逆さ鱗はまるで生きているかの様に怪しく明滅を繰り返していた。


 にしても解析結果がアンノウンってこんなこと初めてだな。


「スラ太郎君、あのデカい鱗をちょっとツンツンしてみなさい」


 ツンツン・・・ツンツン・・・ツンツン・・・シ――ン


 音沙汰なし・・・

 なんだ、魔物の一部が消滅せずに残ることもあるんだな・・・

 とでも言うと思ったかっ!


「スラ太郎君、もう少し強めに行ってみなさい」


 ツツツツツツツゥゥゥゥ~~~~~ン・・・ビクッ!


 あっ、やっぱ動いた。


「ピコーン、ピコーン、たっ、大変です隊長。

 メタリックゲコドンソードの反応が復活しました」

 次回、第二百一話 メタリックゲコドンソード討伐作戦Ⅳ。

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― 新着の感想 ―
あけましておめでとうございます。今年一発目のお話も面白かったです。
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