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第百九十九話 メタリックゲコドンソード討伐作戦Ⅱ

 今年もお付き合い頂きありがとうございました。よいお年を。

○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その5○


 サンフラワー島から相模湾沿岸各所へ戦火が広がりを見せる中、今作戦の中核を担う探索者もメタリックゲコドンソードの下に到達する。


 キィィィ――――ン


 分体をばら撒きやがったか、ほらよ、挨拶代わりだ。


 ボム、ボボン、ボォーン


 フッ、メタル系の魔物にゃアシッドボムがよく効くぜ。


『ツーツー、おい銀二、多田少年はどうした?』


「んあぁ、よくわからんが賢坊の奴は嬢ちゃん達に捕まってな、そのままあいつ等所有のリトル何とかって潜水艇に連行されていったぞ。

 まっ、去り際に助けを求めるアイツの目を見て俺は思ったね。

 ああ、これもあいつのエンターテイメントのひとつだと」


『んだとぉ、大事な作戦に遅れを来すエンターテイメントなんかくそ喰らえだろうがっ!』


「いやまあ俺だって一応嗜めようとはしたんだぞ。

 けど年端もいかない少女等に睨まれたら俺等みたいなおっさんはタジタジだろぉ?

 まあ何にせよ賢坊には言われた通り通信用インカムを渡しておいた、連絡取りたきゃそっちで勝手にやってくれ。

 遅れる分の穴埋めならこの銀二さんがしっかり責任持って、うわヤバっ、ブチッ」


 ブォォォォ―――――ン


「なっ、うわぁぁぁぁ――――っ!」


 くそっ、あの尻尾剣なんて威力してやがる。

 避けても風圧だけでトラックと正面衝突した気分だぜ、っとぉキン、キキン、キン

 しかも回転しながら飛んでくる分体共もかなり厄介。

 大見得切っちまったがこいつぁとんでもなくスリリングな時間稼ぎに・・・チッ、囲まれた。


 ブゥオン、ブゥオン、ブゥオン

 逃げ場を求め急上昇するスカイデーモン、その背後には複数のメタリックウロコドンが追従する。

 とそこへ更に上空・・・


「中山殿ぉぉぉぉぉ!」


 見事にひっくり返った番傘片手に急降下してくるのは歌舞伎衣装に身を包む丸みを帯びた巨漢の男。


 なっ、ありゃ梅の奴か?

 助っ人なら大歓迎ってところだが・・・


「助けてくださぁ~~~い」


 いやお前何しに来たんだよ。


 グルグルグルゥブンブンブンッ


「酸味爆発、松竹梅ぃ!」


 バコォォォ~~~ン


 無造作に振りまわした拳があろうことかクリーンヒット、敵2体を巻き込みそのまま海に落下していった。


 バッシャア~~~ン


 ったく馬鹿を助けてる余裕なんざ・・・くそっ。


 ブロロロロォン


 波間に浮かぶ大男をひっくり返せば白目をむいて気絶中。

 そこへ空から近づく二人の女性。


「銀様お久し、あっ、セスナから飛び降りたのはやっぱり梅君だったかぁ」


「傘一本でスカイダイビングするような馬鹿はこの珍獣しか居ないわよ、澪姉」


「お前等も助っ人に来てくれたのか?」


「まあそういうことになるかなぁ、ともかく目立ってこいって事務所からも指示受けてるし」


「そうか、ともあれ梅の奴が瀕死の状態だ、悪いが救護班のところまで運んでやってくれないか」


「えっ、このくらい梅君だったら平気よ多分」


「そうそう、梅干しは身体にとってもいいんだから。

 はい、あ~ん、紀州南高産だよぉ」


「うっ、うぅぅ・・・パチリッ!うめぇですこの梅」


 奏から梅干し瓶を受け取った梅の丈はその中身をガラガラと口の中へ放り込む。


「元気百倍、松竹梅ぃ!」


 全くどうなってんだ?こいつの体。


「元気になったのなら早く乗れ梅の丈」


 中山がスカイデーモンにサイドカーを出現させると梅の丈は海上からそれに乗り込んだ。


「助かります、中山殿」


「まっ、お前みたいな馬鹿でも居ないよりはマシ、少しは役に立ってくれよ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その6○


「おい、まだ多田少年との回線は繋がらんのか?」


「はっ、どうやらまだインカムを装着していないようでして・・・」


 ぐぬぬ、あの小僧。


 とこちらはその小僧様がおられるリトルマーメイドの船内、彼の現在の様子といえば・・・


 あともう少し我慢できていれば優越感という名の気持ち良さが手に入ったというのに。

 キコキコキコキコ・・・


 動力ユニットのペダル漕ぎ係を一手に任されていた。


「お前等さぁ、さっきから何やってんだよ。

 早く行かないとあの厳つい隊長さんに怒られちゃうだろぉ」


「お黙りなさい賢斗君。

 たとえ世界が滅ぼうと抜け駆けレベルアップ未遂の罪は消えないわよ」


 イカれたビックリ箱ってのはこういう人を言うんじゃないですかね、中山さん。


「そうですよぉ、抜け駆けアタックがしたいなら私でもいいじゃないですか、さぁ来い」


 喧嘩腰に告れと強要してくるこんな巫女さんまで居るんですよ?


「少しは反省してますか?賢斗さん」


 何をだ?世間一般的にみて俺の考えは至極真っ当だぞ。


「大切なマーキングポイントに何かあったら円は何処で惰眠を貪ればよいのですか」


 くそっ、悩む余地なくベットの上だ、ビックリ箱3号。

 つーかマジでそろそろ・・・


「できたぁ!」


 へっ、できたって何が?


「さすがは桜、絵心を感じますよ」


「エヘヘ♪」


「あはっ、スラ太郎君とっても凛々しいですぅ」


「わっかるぅ~♪」


「そうそう、これなら私達も安心安全。

 わかってるじゃない桜」


「まぁ~ねぇ~♪」


 まさかこいつ等、また桜画伯に全ベットするつもりなのか?


「じゃあそろそろ賢斗にも見せちゃおっかなぁ、じゃ~ん♪」


 パラリ


 作品名『それゆけ、スラマーメイド号!

 愛と勇気の融合合体 IN ギガントドーナツ』


「ねぇ、今回はこれでどっかなぁ~?」


 どうかな?と言われましても大きくなったスラ坊の上にリトルマーメイドが乗っかってるだけの状態を融合合体などと言い張る肝の座りっぷりにビックリです。

 こんなの流石にすぐバレちまう・・・いや待てよ。

 仮にこのハッタリがバレたとしよう。

 するとどうだ、この賢斗さんの常識デストロイヤーなどという汚名は払拭され、ワンチャンちょっとお茶目なドジっ子お兄さんとして再認識されるのでは?


「おおっ、これまた随分な力作じゃねぇか」


 まっ、ドジっ子お兄さんってのもどうかと思うが何事も妥協は必要だ。


「不覚にもこの賢斗さん、桜画伯のヘタウマ絵日記にまたしても感銘を受けちまったぞ」


 勿論今回の作戦的には問題が生じてしまうだろう。

 だがこの賢斗さんにとっては常識デストロイヤーという誤ったイメージの方が大問題である。


「やったぁ、ふんふんふふ~ん♪」


 バレちゃダメとは一切言われとらんし演技に関する全ての裁量権をこの賢斗さんに委ねたことを後悔するがいいDDSFよ。ハッハッハ


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その7○


『さあなんとここで先程鵺との激闘を終えたばかりの赤羽氏がこの解説ヘリまでやって来てくれましたぁ』


『はいどうも、ご心配をおかけしましたがもうこの通り、全快と言うにはもうしばらく休息が必要ですが他のメンバー共々ピンピンしてます。

 ともあれこの実況ヘリからなら全体の状況を正確に把握できますしこの後の動向を決めるためまたこちらのスタッフのご好意に甘えさせていただく形になりました』


『いえいえ我々スタッフ一同も大変助かる次第でありますよぉ♪

 で早速ですがこの状況を赤羽さんはどう見ておられますか?』


『現在数多の魔物がサンフラワー島に押し寄せていますがDDSFの部隊、そして協力する探索者達の活躍により上陸は阻止できています。

 しかし留意すべきはあの分体増殖のクールタイム、普通あれだけの分体増殖であれば週一、月一レベルであってもおかしくはありませんが相手は伝説級の怪物。

 こんな希望的観測は簡単に覆えされる可能性も考えておくべきでしょう』


『確かに今居る分体を倒し切る前にまたあの分体増殖が来たら分体の数は増える一方。

 このループが繰り返されれば被害は無尽蔵に広がってしまいそうです』


『ええ、一見均衡状態に見えますがその実刻一刻と終わりの始まりに近づいている。

 最悪早ければあの分体増殖の周期は1時間、それまでに何らかの手を打てなければ完全に詰みます』


『となるとやはり本体であるメタリックゲコドンソードが討伐されるのが一番でしょうか。

 今中山銀二氏と梅干しパンチャーズの梅田梅の丈氏、そして踊り子シスターズの二人が本体付近で交戦中ですし』


『まあ確かに、ですがレベル70といえばSランクパーティーが束になって戦うレベル。

 あんな少数でアレを討伐できるとすれば私が今世界最強だと思っているSランクパーティー、英国のプラネットメモリーくらいじゃないですか』


 ほう、ミスター赤羽はなかなか見識も広いですね。


『そして恐らくDDSFは今切り札足りえる何かの到来を待っている、私にはそんな風にこの状況がみえますね』


 ザップ~~~~ン

 メタリックゲコドンソードから3km地点、突然海面が大きく盛り上がり始めた。


『おおっ、あれはまさかっ!

 DDSFが待つ切り札がついに到着・・・おや?!』


 キィィィ、バタン


 なぜこのタイミングで貴方が現れるのです・・・


『フッ、そういやこの国にも居ましたね。

 常識外れという一点で世界最強にも匹敵する男が』


 ミスター多田っ!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その8○


「あれ、漁師の人が逃げ遅れたのかと思ったらお前等かよ」


「馬鹿野郎ぉ!こっちは危うく転覆するとこだったぞ」


「あっ、うん、ゴメンゴメン。

 じゃ、そゆことで」


「ちょっと待てや多田ぁ!

 少しは説明していけ、今お前が乗ってるそいつは何なんだ?

 一見巨大化したスライムの上に潜水艇が乗っかってるようにしか見えんが」


 いやそれで大正解、それ以上の説明なんかできませんけど。


「ええ、僕も気になります」


 つってもこれはこれでいい機会、一応この攻めに攻めたハッタリが通用しないところをこいつ等相手に確認しておきましょう。


「ん、これか?よくぞ聞いてくれました。

 これこそ優れた攻撃性能と遊泳能力を手に入れた至高の海エリア特化ビークル。

 魔物と乗り物系アイテムが夢の共演を果たした究極融合合体スラマーメイド号だっ!いぇ~い」


 ほれ、「そんなわけねぇだろ」とか言ってこい。


「きゅっ、究極・・・融合・・・合体・・・だと?」


「君はまた僕らの遥か先へ・・・」


 おい、その反応は止せ。

 さっきスラ坊がリトルマーメイドを乗っけてるだけって言ってただろ。


「ヒョコッ!生簀もあるよぉ~♪」


「なっ、まさかあの怪物を生簀でお持ち帰りするつもりなのか?」


「ありえない、あのサイズがその潜水艇に収まることなどありえませんよ多田君!」


 うん、だからお持ち帰りするとか言っとらんでしょ。

 つか先生、ややこしくなるからここは顔引っ込め・・・あらら。

 こんなことしとるから敵が集まってきちゃった、あっ、そだ。

 レベル30程度に苦戦してみせれば流石のこいつもハッタリだと理解しそうだな。


「いよぉ~しスラ太郎君、とりま接近してくる敵の殲滅いってみよぉ~」


「了解です、マスタぁ」


 ぼわぁ~ん、発光した巨大スラ太郎さんは・・・


 プシュプシュプシュプシュプシュウゥゥゥ!


 立ち昇らせた5本の水柱でメタリックウロコドンを貫いてみせた。


「すっ、凄ぇ・・・」


「こうもあっさりと・・・」


 なんだろう、この予想外の破壊力・・・


 キィィィ、バタン


「おい、ちょっと待ちやがれ、多田ぁ!」


「逃げるのは卑怯ですよ、多田君」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○メタリックゲコドンソード討伐作戦 その9○


 中に戻ると船内モニターには・・・


『これぞ海エリアブーストの真骨頂っ!

 レベル30のメタリックウロコドン5体を一瞬で葬り去ってしまいましたぁ!』


 あっ、なるへそ、そういや海に入ったスラ坊の強さは今まで確認したことなかったな。

 つか今のスラ坊の活躍生配信されとったのか。


『にしても海に入るとブリリアントアクアマリンスライムはまるでずんぐりとした巨大人魚。

 あの形態なら泳ぎもお手の物といった感じがしてきます』


 とりま俺のハッタリまでは聞こえてないみたいだが。


『赤羽さん、あのスライムならもしかしてメタリックゲコドンソードを倒せるなんてことは?』


『いや幾ら海エリアブースト型といっても倍近いレベル差がありますからね。

 とはいえ先の多田賢斗の口の動きはあの形態を魔物と乗り物系アイテムの究極融合合体だと言っていました』


 ってしっかり伝わっとるし。


『稀代の天才策士と言われる彼が今この場面で姿を現した理由。

 もしあのブースト強化されたスライムが小型とはいえ乗り物系アイテムが生み出す動力エネルギーまでも利用可能な状態にあったなら。

 DDSFの待っていた切り札が正に彼という可能性すらありますよ』


 にしてもAランクのトップ様が只巨大化しただけのスライムを大真面目に考察とか。


『えっとぉ、その魔物と乗り物系アイテムの究極融合合体というのはいったい?』


『あくまで推測ですが魔物固有の吸収スキルはレベルが上がると相手の攻撃はおろか武器までも吸収し自分のモノにしてしまう厄介な能力。

 これをあのスライムが持っていたなら一時的に乗り物系アイテムを吸収しその力を利用できていても不思議ではありません。

 と言ってしまうのは簡単ですがこれがどれほど至難の業か、そんな希少スキルを持った高レベルユニークのテイムと希少な乗り物系アイテムの入手。

 この2つの難関をクリアしなければ実現し得ないあの多田賢斗だからこそできたテイムモンスターの究極強化形態ともいうべき姿なのではないでしょうか』


 説得力あり過ぎてこの賢斗さんまで意外とアリな感じに聞こえてくるぞ。

 まっ、実際ホントにできてたら鼻高々ってとこだけど・・・


(スラ坊は吸収スキルなんか持ってないしな)


(えっ、どどっ、どうだったかなぁ、アハ、アハ、アハハハハ)


 えっ?何だろうこの反応。

 ペットは飼い主に似るとよく言うが・・・


(ひょっとしてリトルマーメイドの力を吸収できちゃったり?)


(やっ、やだなぁ、僕がそんなことするようなスライムに見えますか?マスタァ)


(いやそれはつまりできるけどしていない、と聞えとるわけだが)


(ぎくりっ!)


 う~む、正に瓢箪から駒。

 まっ、よくよく見れば何もしとらんリトルマーメイドの動力ゲージが半分以下になっとるのはおかしい。

 とはいえこの件は一旦後回しか。

 流石に今は作戦ポイントに急がねばってあいつ等まだついて来てやがる。


 キィィ、バタン


「お~いお前等ぁ、いい加減金魚のフンみたいについてくんな」


「いや多田よぉ、それを言うなら人魚のフン・・・なんじゃねぇか?ニヤリ」


「あっ、うまい!」


「スラ坊、あの漁船沈めてしまえ」


「待て待てっ、友達友達ぃ!」


 ・・・プイッ、あっ!

次回、第二百話 メタリックゲコドンソード討伐作戦Ⅲ。

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更新ありがとうございます。今年一年ありがとうございました。よいお年をお迎えください。
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