第十七話 勇者になった日
○第1回探索者委員会○
4月17日午後3時40分。
放課後の視聴覚室には全学年クラスの探索者委員が集まり、教壇に立つ二人の生徒が自己紹介を始めていた。
「一応この委員会の委員長に先生方から指名されてる3-Cの古谷浩二だ。
こういうのが俺に向いてるとは思わないが、まあ急造委員会なんでその辺は勘弁して欲しい。」
「私は副委員長に指名された3-Aの紺野かおるです。
至らないところもあるかと思いますが、精一杯務めさせて頂きますので、宜しくお願いします。」
う~ん、ちょっとビックリ、あの幽霊部のトップ2がここで表舞台に降臨か。
まあ探索者経験豊富な3年生という条件は見事にクリアしてる気はするけど。
「一応初めに決めてほしい事案を先生方から指示されてる。
一つは生徒間での引率のルール化。
もう1つは探索者資格を持つ生徒の探索予定の具体的な把握方法の構築だ。」
古谷が真面目に話を進め、周囲が神妙な面持ちで静かに聞き入っている中、賢斗の頭に陽気な声が届く。
(いやぁ驚き。賢斗君が居るぅ。)
(いちゃ悪いですか?先輩。)
(全然悪くないし寧ろすっごく嬉しいよぉ。
こういうのって絶対嫌がるタイプだと思ってたし、場違い感に感動すら覚えちゃったり、あっ、失敬失敬♪)
ちっ、ご機嫌じゃねぇか。
(いやこれが全力で嫌がった結果ですけど、何か?)
(うふっ、さては隣の可愛い子に釣られて来ちゃったのかなぁ。
どうなのその辺?正直に言えば悪い様にはしたりしなかったりするわよ。)
何の保証にもなってねぇぞ、コラ。
(いいから真面目に副委員長やって下さい。)
(えへへ~、怒られちゃったぁ~♪)
ちっ、こんな念話を送りながらも、真面目な顔して前に立ってられるんだから恐れ入るよ、ったく。
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○委員会の議題○
かおるとの念話に気を取られていると、お隣の委員長からプリントを渡される。
「一応、今回は早急に決めてくれとの話だったので、俺と紺野で事前に今回の議題についての案をまとめておいた。
内容を確認した後、異議のある奴は言ってくれ。」
ん~なになに。
生徒間の引率は探索者1人に対し1名まで。
引率する探索者はレベル3以上とする。
引率を行う際は、事前に予定の前日までに探索者委員に報告義務を課す。
報告を受けた探索者委員は、探索者委員長若しくは副委員長に速やかに連絡する事。
探索者資格を持つ生徒は、毎週月曜日にその週の探索予定を探索予定記入用紙を書いて、探索者委員に提出。
探索予定記入用紙には専用のフォーマットを作成し、日付、滞在予定時刻、侵入ダンジョン、構成メンバーを記入してもらう。
探索予定記入用紙を受け取った探索者委員は、各自その予定を審査し、危険と思われるものまた判断の付かないものを探索者委員長若しくは副委員長に速やかに連絡する事。
うわぁ~面倒臭さ過ぎだろ、これ。
賢斗はこんな感想を述べているが、世間的に見ればこうした委員会が設けられている高校の方が多くこの内容も他校の物を参考にしている。
またこれまで彼の高校でこの様な委員会が無かった点に触れるなら、歴史の浅い新設校といった事情と今まで大きな不祥事が起きていなかった点がその背景にあったり。
けどまあニュースにもなってたし、流石にこのくらいのシバリは必要かもなぁ。
これに異議を唱える勇気も湧かんし。
となると今後は少しでもこの探索者委員の仕事を減らす方向にシフトチェンジしなければいけない訳だが・・・
う~ん、あっ、そうだ。
全力でクラスメイトの探索者資格取得を阻止すれば良いんじゃないか?
おお、中々の妙案だな、うん。
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○委員会終了○
「じゃあ異議も無いようなので、この内容で先生方には報告しておく。
実際の運用は来月からになるだろうから、意見等があれば、それまでに出来る範囲で対応するから言ってくれ。それでは解散。」
あれ、委員会終わっちゃった。
「それで多田君、さっきの話だけど今日じゃなければ大丈夫かな?
ほら、私をダンジョンに連れてってくれる件。」
う~ん、真面目過ぎるのもいい加減にして欲しいんだが。
幾ら断ってもグイグイ来るし。
「いや今白山ダンジョンには特異個体っつー強い魔物が出現中なの。
そいつが討伐されるまでは俺もダンジョンに入るのを控えてるんだって。」
「じゃあその魔物が討伐されたら教えてね。
それまで私も待つ事にするから。」
う~ん、どうすりゃ諦めてくれるんだ?
あっ、そうだ。
「委員長の誕生日って何時?」
「えっ、あっ、5月4日だけど。」
よしっ、結構近い。
「それならもう直ぐ探索者試験を受けられるし、資格取って一人でダンジョン入れる様になった方が早いんじゃないかなぁ。」
「うん、勿論試験は直ぐ受けるつもりだけど、やっぱり最初は誰かと一緒じゃないと不安よ。」
・・・そう来るか。
あっ、でもそこまで待てる話なら何とかなる様な。
「ん~、じゃあ俺が委員長と一緒にダンジョンに入ってくれる奴を探しといてやるよ。」
「そんな事言われても見ず知らずの相手とダンジョンに入る方がよっぽど不安なんですけど。」
やはり手強い。
俺も見ず知らずの奴とそれ程変わらんだろうに。
だが・・・
「じゃあ分かった分かった。
そいつが気に入らない時はもう俺が委員長をダンジョンに連れて行く事にするからさ。」
「えっ、まあそういう事なら別に構わないけど。」
ふぅ、最終的に俺が連れて行くという保険をぶら下げてようやくか、かなりの強敵だったな。
とはいえ只のクラスメイトの男子的距離感の俺でOKならモリショーだって大丈夫な筈。
ふっ、この保険が使われる事はあるまい。
唯一不安点があるとすれば、モリショーが探索者試験に落っこちる事くらいだが、まあ8割の合格率を誇るあの試験なら幾らあのバカでも大丈夫だろう。
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○寄り道○
帰宅途中、白山協会支部に寄った賢斗。
目的は特異個体の討伐情報を確認である。
「あのぉ、すみません。特異個体の討伐って終わりましたか?」
「あっ、多田さん。今応援の方達が来てくれたので、明日くらいにはって感じです。」
まだだったか~。
じゃあ今日は一先ず帰るとして明日また来てみるか。
と振り向いたところで声が掛かる。
「よう、多田。何してんだ?」
声に視線を向ければ、そこには探索者委員長に就任した古谷が立っていた。
「あっ、特異個体の討伐状況を確認に来ました。
先輩はどうしたんですか?」
「ああ、俺はモンチャレ大会の参加申請だな。
そういや今回紺野はどうするか聞いてるか?
お前等一緒にパーティー組んだって聞いてるけど。」
「いや~特に聞いてないっすけど。」
「そうか。」
う~ん、そういや先輩、今回はどうするんだろ?
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○勇者になった日 その1○
4月18日水曜日午前8時30分。
学校に着くと休んでいた三名の女子が登校してきていた。
他のクラスメイト達との会話に笑顔を覗かせる彼女達に教室内の雰囲気も和み始めていた。
何にせよあとは特異個体が討伐されて高橋の奴が学校に来れば事態は収束して行きそうだな。
そして昼食時になると、もう以前の活気を完全に取り戻した人間も。
「賢斗っち、俺今探索者資格試験に向けて猛烈に勉強中だから、受かったらご褒美欲しいっしょー。」
取り敢えず気持ち悪いからその高速瞬きは止めろ。
「まあ俺も今回お前には何としても合格を勝ち取って貰いたい気分だ。
ちなみに聞くが、何が欲しいんだ?」
まあこいつの考えそうなご褒美なんて想像がつくが。
「そりゃもちろん賢斗っちのパーティーに入れて欲しいっしょ―。」
だろうな。
「まあそれは無理だが、合格した暁にはお前に良い話を・・・」
とそこへ話に割り込んで来たのは、学校を休んでいた三人の中の一人。
「ねぇ、多田君。私も多田君のパーティーに入れて欲しいんだけど。」
「ちょっと西田、お前は高橋とパーティー組むって言ってただろぉ?
横から話に割り込むなっしょー。」
あっ、そうそう、西田さん。
「モリショーには言ってません~。
私は多田君にお願いしてるんですぅ~。」
「そんなこと言って、高橋が戻ってきたらどうするっしょ~?」
「まだちゃんとパーティー登録してなかったし、あんな口だけの勇者様とはもう関係ないんですぅ~。」
にしても精神的不安定じゃなかったのか?
西田の奴は、ったく立ち直りの早い奴だな。
賢斗そっちのけで言い合いを続ける二人。
もうお前らでパーティー組めばいいのに。
あっ、そうだ、どうせなら委員長とモリショーとこの西田でパーティーを組ませるってのはどうだろう。
そうすりゃ探索者委員の俺の負担が一気に減りそうだし・・・おおっ、これはなんて見事な・・・
「それに限界突破はダンジョンで御トイレ我慢してたら取れるぞ~とか、言ってることが下品過ぎてついて行けないわよ、高橋君なんて。」
えっ、何ですと?
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○勇者になった日 その2○
学校帰り、賢斗は今日もまた白山協会支部に立ち寄る。
「あのぉ、すみません。特異個体の討伐って終わりましたか?」
「あっ、多田さん。つい先程討伐完了の報告がありましたよっ。」
おっ、ラッキー。
にしてもこの人に完全に名前憶えられてしまったな・・・まあ結構通ってるから当然か。
受付を離れると、賢斗は早速この情報を二人に念話連絡した。
しかし話が急過ぎて今日これからは無理とのお返事。
明日の朝からパーティー活動再開の約束を取り付けたところで協会を後にした。
それにしても高橋の奴は、スキル取得講座で漏らしたのだろうか?
いや限界を突破する必要があるのだから、漏らさずには取得できていない気がする。
ハイテンションタイムに入ってウ○コとか・・・う~む、これは自尊心との戦いだな、うん。
そんな事を考えながらの帰りしな、賢斗は途中のコンビニに立ち寄る。
真っ直ぐ総菜コーナーへ行き既定の焼き鳥弁当を籠に入れると、カップ麺コーナーへ。
さて、今日の汁物もいつものこいつで・・・
とワンタン入りカップ麺を手にしたところで、隣に置かれた新製品が目に入った。
何これ、メチャクチャ辛そうなんですけど・・・
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○勇者になった日 その3○
午後10時、白山ダンジョン大岩ポイント。
コポコポコポ
賢斗は大岩ポイントの大岩の陰で、持ってきたカップ麺へ水筒に入った熱湯を注ぐ。
俺は別に只夜食を取りに、こんな時間に態々大岩ポイントまで来た訳ではない。
昼間の西田さんが言った限界突破の取得方法。
まあ実質的には勇者君こと高橋が言っていた事だが、便意を我慢する事で限界突破を取得したらしい。
あれこれとこの方法について考えていたが、結局こんな恥ずかしい方法を取ってまで限界突破を取得したいのかと自問自答を繰り返した俺はあることに気付いた。
うちの桜の取得方法は快感の限界を超える方法、高橋の場合は便意の限界を超える方法と違う取得方法になっている。
要は何らかの感覚限界を超える事がこの限界突破というスキルの習熟方法であり、何も便意にこだわる必要はない。
という訳で今回俺がご用意したのは「激辛ラーメン スコヴィル1000」という新発売のカップ麺。
コンビニで売ってた激辛系の中でもこれが一番辛そうだった。
そしてこの激辛カップ麺を食べ辛さの限界を超える事で限界突破を取得できないかというのがここに来た目的である。
まあコンビニで売ってるような激辛カップ麺を食べたからといって、辛さの感覚限界を超える事等普通は無理だろう。
しかし俺には味覚ドキドキがある。
いや辛さは痛覚だから触覚ドキドキに分類されるのか?
まあ何れにしろハイテンションタイム中に食べれば、強化された感覚で辛さの限界を超え、きっと限界突破取得へと導いてくれるだろう。
ペリペリペリ
上蓋を剥ぎ取り、粉末スープと液状スープを入れると「激辛ラーメン スコヴィル1000」は完成した。
スープの色は最早オレンジではなく凶悪そうな真っ赤に染まっている。
この激辛カップ麺、ポテンシャル高過ぎないか?
あまりの辛そうな見た目に、少し心配になってくる。
しかしここまで来て逃げる訳にもいかない。
待ってろ俺の限界突破。
意を決してドキドキエンジンを発動する。
ゲホッゲホッゲホッ!
テンションタイム中の嗅覚ドキドキの効果もあり匂いだけでむせてしまう。
まだ食べてもいないのに、このカップ麺が尋常じゃない辛さなのが伝わってくる。
これ食べて本当に大丈夫なやつか?
ゴクリ・・・異様な緊張につばを飲み込む。
割り箸を2つに割って右手に構えるが、心なしか手が震える。
これならウ○コした方が良かったかも・・・いやイカンイカン、食事前に変なことを考えるな。
今はこの凶悪そうな激辛カップ麺を食べる事だけに集中するんだ。
すぅ~~~~とゆっくり大きく息を吸い込む。
いざ、実食っ!
彼は息を止めると直ぐ様ドキドキジェットを発動、ハイテンションタイムに突入した。
そしてそのままの勢いで一気に麺をすくい上げると、口の中へ運ぶ。
麺が口内に入った瞬間、バチンッと視界に電気が走り身体が動かなくなる。
一気に大量の汗が噴き出し始め、舌に、いや口内全体に激痛が走る。
次第に顎の筋肉の痙攣が始まり歯がガクガクとぶつかる。
そして手も震え出しその痙攣は全身に広がっていく。
聴覚が失われたのか、耳にはもう何も届かない。
視界も暗転し始め、何が起こったか分からないまま彼の意識は遠のいていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
○勇者になった日 その4○
30分が経過していた。
あ~お花畑が見える。
どこだここ?
あれっ、死んだ父さんと母さんが手を振ってる。
痛っ!なっ、足が痛い・・・・・・はっ!
ようやく意識がはっきりしてきた賢斗。
起き上がろうとするも、身体が異様に重い。
そんな状態の中、彼はやっとの思いで身体を起こし周囲を確認してみる。
足の痛みの原因は、零したカップ麺のスープが掛かかったことによる火傷。
口の辛さはハイテンションタイムが終了している為か、今は大騒ぎする程でもない。
身体が重いのは、極度の痙攣によるものだろうか。
時計を確認すれば時刻は午後10時40分。
俺は30分以上気を失っていたのか?
あっ、このままだと不味いっ。
今回賢斗が申請した帰還予定は午後11時、早く戻らないと捜索隊を出されてしまう。
彼は痛い太腿あたりを気にしつつも、重い身体に鞭を打ち、急いでダンジョン出口へ向かった。
15分後、何とか帰還申請を済ませ建物の外へ出た。
自販機でミネラルウォーターを買うと太腿の辺りに振り掛ける。
ああっ、痛つつっ!
くっそぉ、酷い目にあった。
自販機にもたれたまま30分程休んだ彼はようやく自転車を片足で漕ぎ帰路に就いた。
帰りしなに24時間営業のドラッグストアで火傷の薬を買い、アパートに戻ると既に日付は変わっていた。
直ぐにズボンを下ろし太腿を確認すれば、カップ麺のスープが掛かったと思われる部分が10cm大の水膨れになっていた。
ズキズキと痛む患部に恐る恐るといった感じで買ってきた軟膏タイプの火傷薬を塗り、そのままベットに倒れ込むと大きく息を吐いた。
ぷはぁ~、しっかし恐怖のカップ麺だったなぁ、「激辛ラーメン スコヴィル1000」。
・・・本気で死ぬかと思った。
同時に賢斗の頭には明日の学校やダンジョン活動への不安が過る。
しかし予想外の大怪我による極度の疲労はそれまで張り詰めていた彼を容易く深い眠りへと誘っていった。
あ~ダメだ、眠い・・・
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
○勇者になった日 その5○
4月19日金曜日午後0時10分。
あ~よく寝た。
えっ、お昼過ぎ?
不味い、学校に連絡入れてない。
痛っ!
賢斗が体を起こそうとした瞬間、全身に痛みが走った。
これはかなり酷い筋肉痛だな。
這うようにテーブルの上のスマホを手に取り、何とか学校に体調不良で休む連絡を入れる。
その後朝のダンジョン活動をすっぽかしてた謝罪念話を少女二人にしてみると、彼の予想に反し彼女達に怒った様子はなく、寧ろ真剣な優しさだけが感じ取れた。
もう今日はこのまま家でじっとしていよう・・・動くと体が痛いし。
あっ、そういえば限界突破は取れたのだろうか?
賢斗はここに来てようやくその冷静さを取り戻すことが出来た。
まるで取得した記憶なんてものは無いが、一応確認してみるか。
えっ・・・何これ?
~~~~~~~~~~~~~~
名前:多田賢斗 16歳(168cm 56㎏ C88 W78 H86)
種族:人間(疲労大)
レベル:3(32%)
HP 12/12
SM 0/10
MP 6/6
STR : 9
VIT : 6
INT : 10
MND : 16
AGI : 11
DEX : 8
LUK : 5
CHA : 8
【スキル】
『ドキドキ星人LV10(-%)』
『ダッシュLV10(-%)』
『パーフェクトマッピングLV10(32%)』
『潜伏LV10(-%)』
『視覚強化LV10(-%)』
『解析LV10(-%)』
『聴覚強化LV10(-%)』
『念話LV3(89%)』
『ウィークポイントLV2(51%)』
『短剣LV1(44%)』
『忍び足LV1(42%)』
『空間魔法LV1(8%)』
『隠蔽LV3(54%)』
『限界突破LV1(0%)』
『感度ビンビンLV1(0%)』
『九死一生LV1(2%)』
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思わず解析結果に言葉を失う。
スッ、スキルが3つも増えてる。
まっ、まあ順を追って見て行くか。
まず取得した3つの内、最初に取得したであろうスキルは限界突破。
これに関しちゃ喜ばしいが、取得を目指していた訳だし特に疑問は生じない。
2番目に取得したのは感度ビンビンか。
実際には気を失っていたから記憶にないが、これもまあ火傷とかして患部の痛覚が鋭敏化し取得したのではと推測がつく。
あっ、そうだ、折角だから今直ぐ使おう。
こいつなら痛みを感じなく出来るだろうし。
おっ、よしよし、上手く行った。
さて、では問題の3つ目を見てみよう。
九死一生・・・このスキルだけは初見だし、まるで予想がつかん。
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『九死一生LV1(2%)』
種類 :パッシブ
効果 :即死級のダメージをスキルレベル×10%の確率で無効化できる。クールタイム10時間。
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・・・この効果内容から察するに、あの辛さは即死級だったという事か?
となるとあのお花畑と両親は黄泉の国の入り口だとでも?
う~ん、どうやら俺は気を失っている間に死線を彷徨っていたらしい。
カップ麺食べて辛さでショック死とか、笑えないんですけど。
にしても棚ぼた的に取得したとは言え、レベル1だと微妙だな、これ。
効果内容はかなり凄いんだがレベル10になるまで怖くて当てに出来ないし。
とはいえ大体分かったし、今はこれくらいにしとくか。
一通り検証を終えた賢斗は息を大きく吐き体の力を抜いた。
しっかし、これが最大級の疲労状態って奴かな?
ステータスにも(疲労大)ってなってたし、スタミナ値もゼロ。
こんなの何時に成ったら回復するんだ?
あっ、でも疲労ならテンションタイムになれば回復出来るかも?
感度ビンビンで感覚遮断出来る様にもなってるし、今なら何の問題も無い。
おおっ、もっと早く気付けば良かった。
ドキドキエンジン、発動っ。
ドクン、ドクン、ドクドクドクドクドッドッドッドッ・・・・・・・・・
う~ん、感覚遮断している所為か、疲労が回復している感覚もまるで分からん。
解析でもまだ疲労大のままだし。
・・・ハイテンションでいってみるか。
ドッドッドッキィィィィィィィィ・・・・・・・・・・・・・・
程無くハイテンションタイムが終了した。
・・・やはりよく分からんかったな。
とはいえステータス表示は(疲労中)にまで回復してる。
よし、ちょっとまだ怖いけど・・・
賢斗は感度ビンビンを解除してみた。
お~、まだ痛みはあるが、随分楽になった気がする。
よし、この分なら今日中にこの疲れを抜く事が出来そうだな。
まっ、それまではこのまま大人しく休んでおくか。
にしてもアレだなぁ。
高橋の奴が限界突破を取っただけであれだけ騒がれたんだし、俺もこれで勇者の仲間入りって事で良いのかなぁ?
う~む・・・父さん、母さん、俺昨日勇者になったよ。
次回、第十八話 モンチャレへの切符。