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第百三十五話 青春の苦い思い出

○金の宝箱 その2○


シャーンシャーンシャーン


 桜が手にしたお宝を振れば、それは綺麗な音色を奏でる。


「すっごい良い音するよぉ~♪アハハ~」


「桜、私にも貸してみて。」


「い~よぉ~。」


シャーンシャーンシャーン


「うんうん、何か鳴らしてると気持ち良いわね、これ。」


「かおるさん、私にも貸して下さい。」


「はい、どうぞ。」


シャーンシャーンシャーン


「むふぅ、これはいいですねぇ♪」


 はしゃぐ少女達を尻目に乗り遅れた賢斗は冷静にお宝解析。


~~~~~~~~~~~~~~

『神楽鈴 奉神演舞』

説明 :魔を払う魔金製の神楽鈴。演奏演舞系効果が2倍になる。処女限定装備。

状態 :300/300

価値 :★★★★★

用途 :楽器。

~~~~~~~~~~~~~~


 ほう、今回のお宝は金ピカの神楽鈴か、何か茜ちゃんにピッタリの装備だな。

 にしても流石は金の宝箱、こんな大層な名前まで付いてるし売ればかなりの高額になりそうだ。


「賢斗さんも鳴らしてみますか?」


 ふっ、俺がそんな鈴を鳴らして子供みたいに喜ぶとでも?


「うん、貸して。待ってた。」


 いっくぞぉ~♪


ゴワァ~ンゴワァ~ンゴワァ~ン


 えっ、何この鈴の音とは思えぬ変な音、皆の時と全然違うじゃん。


ゴワァ~ンゴワァ~ンゴワァ~ン


「アハハ~、やっぱり賢斗は面白い音出すねぇ~。」


 五月蠅い、やっぱりって何だよっ!

 俺だって好きでこんな音を出している訳じゃないっつの。

 にしてもこんな只振れば良いだけの・・・


 あっ、そうか。


 この神楽鈴というのは巫女さん用の装備故か、処女限定なんつー可笑しな装備条件が付いていたんだったな。

 そりゃ男の俺が振れば変な音が・・・いや待てよ。


 処女限定?


 って事はつまりこの三人とも・・・はっ!


「いやっほぉ~う!金の宝箱バンザーイ♪」


ゴワァ~ンゴワァ~ンゴワァ~ン


「ちょっと賢斗君、その鈴鳴らすの止めてくれる?」


 先程まで一緒にはしゃいでいたかおるは一転、鋭い眼差しを賢斗に送る。


 えっ、いや、ちょっと早過ぎませんか?

 幾ら俺が顔に出易い性質だと言ってもこうもあっさりお宝情報をゲットした事実がバレてしまうなんて、う~む、これが女の感という奴か、怖い怖い。


 と賢斗が神楽鈴を鳴らす手を止めてみると・・・


ドシ~ン、ドシ~ン、ドシ~ン・・・


「あっ、やっぱり、あそことあそことあそこ。」


 ふむ、そういう事か。


 湖の中央から遠く湖畔を望めば3体のアイスゴーレムの姿が見えた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○氷上の戦い その1○


「賢斗君、どうする?

 あのアイスゴーレム達も討伐しておく?」


 と言われましても、相手が身動き出来ないならいざ知らず、真面にやったらかなり厳しい。

 せめて奴等がまた湖の氷地帯の割れ目にでも嵌ってくれれば話は別だが。


 湖畔までやって来たアイスゴーレム達は湖内に入る事無くその場でキョロキョロと辺りを窺っていた。


 にしてもあの様子は何だろう。

 ここまで来たは良いがまるで目標物を見失ったかの様な・・・

 あっ、ひょっとするとこれは。


ゴワァ~ンゴワァ~ンゴワァ~ン


ドシ~ン、ドシ~ン、ドシ~ン


 賢斗が神楽鈴を鳴らすとアイスゴーレム達はそれに引き寄せられる様に湖の中に入って来た。


 やっぱりか。

 これは恐らくこの神楽鈴 奉神演舞の装備条件を満たさない俺が使用した際のペナルティ効果。

 使えば望外に付近の魔物を誘き寄せてしまうデメリットが発生してしまうのだろう。


 でもこれ使い方によってはメリットだよな。

 特にこのマジコン大会に於いては魔物との遭遇率を上げる事が出来ればかなり有利な訳だし、聞いたところでは集魔の横笛なんつー高額な便利アイテムまで使うパーティーも居るらしい。


 まあ何にせよ、ボスの手前倒す算段のついた魔物を無視する訳にもいくまい。


「ふっ、この神楽鈴を使えば何とかなりそうですし、あいつ等も討伐しておきますか。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○氷上の戦い その2○


シャーンシャーンシャーン


 いや~、流石まだ男を知らない先輩は良い音を奏でてくれますなぁ。ニヤニヤ


「ちょっと賢斗君、変な目でジロジロ見ないでくれる?」


 はぁ~い♪


 まっ、それはそれとして魔を払うとか少し分かり難い感じだったが、やはり装備条件を満たす者がこの鈴を鳴らせば魔物を遠ざけてくれる効果が基本的にはある様だ。


 一旦アイスゴーレム達を遠ざけた賢斗は先程までアイスゴーレム達が出現していた場所から予想し適当なポイントに移動。


ジャキィーン、ジャキィーン、ジャキィーン・・・シャキンッ!


 おっ、流石はたまに氷が切れる剣、これなら予想以上に早く終わりそうだ。


 30分程経つと巨体のアイスゴーレムが上を通過すれば氷床が抜け落ちる切れ込みを入れた罠が10か所に完成していた。


 随分暗くなって来てるし、こんなんでも引っ掛かってくれるでしょ。

 って事でとっとと次の作戦に移りますか。


ゴワァ~ンゴワァ~ンゴワァ~ン


 おっ、来た来た。


 神楽鈴を鳴らしつつトラップへと誘導する賢斗。


 ・・・ドシーン、ドシーン、ドシャ――ン


 うむ、我ながらお見事っ♪


「じゃあこいつを倒すのは皆がやってくれ。

 胸にあるコアを破壊出来れば討伐出来るからな。」


 時間も無いし効率重視、この状態ならこいつ等に任せても大丈夫だろう。


「じゃあ私がマキシマムで行ってみるよぉ~。」


 いやそれはちょっと待て。


「ちょっと桜、それだと湖の氷まで溶けてしまうんじゃない?」


 うんうん。


「あっ、そうだねぇ~。」


 と最終的に彼女達が取った作戦はかおるのマテリアルヒートで背後からコアまでの氷をピンポイントで溶かすというものだった。


 偉い気の長い作戦だな、おい。

 魔物の修復能力の所為で微妙にしか溶けて行ってないし。


 するとかおるは魔鉄鋼の矢を手に持ち、マテリアルヒートと並行してガリガリと削り始めた。


 おっ、これなら少しはペースアップ出来そう。

 そしてコアが剥き出しになれば後は何本か矢を撃ち込んでやるだけだし、先輩一人でもイケそうだ。


 かおるの様子に納得した賢斗はもう既に出現していた次のアイスゴーレムに標的を切り替え移動していった。


ゴワァ~ンゴワァ~ンゴワァ~ン


 するとその個体もあっさり罠に引っ掛かってくれる。


 あら簡単♪やっぱりこいつ等は足元がお留守だよなぁ。


 賢斗は以前スタート地点で討伐したアイスゴーレムの事を思い出していた。

 しかし実のところこの彼の見解は間違っている。

 何故ならあの時に比べ幾らか天候がマシな今現在の状況に於いては、この巨体を誇るアイスゴーレムであれ素人が急ごしらえした罠くらい避ける程度の知能と注意力は十分兼ね備えているのである。


 では何がこの好結果を生んだのかと言えば、それは神楽鈴 奉神演舞のペナルティ効果によるもの。

 この効果を少し詳しく紐解けば鈴の音の発生源へと魔物を一心不乱に向かわせるといった内容であり、この一心不乱という部分が魔物の注意力を削ぎ拙い罠であっても簡単に嵌ってしまう真の原因になっているのである。


「お~い、手の空いてる奴居たら、こっちの討伐を頼むぅ~。」


 実質先輩以外何もやってないしあいつ等。


「ほ~い。」


 とやって来たのは桜先生。


「桜、マキシマムは止しておけよ。」


「分かってるってぇ~、だいじょぶだいじょぶぅ~。」


 少し賢斗が様子を窺っていると桜はアイスゴーレムの背後に杖を当てその杖が放つファイアーボールでゼロ距離攻撃を始めた。


 う~ん、まっ、これでも時間は掛かるが何とかなりそう。

 しかも完全に自分のMPの温存までしてやがる。


 納得した彼はまた次の個体へと標的を切り替えるのだった。

 そして・・・


「お~い、円ちゃ~ん、こいつの討伐頼めるかぁ?」


「はい、その言葉を心待ちにしておりましたよ、賢斗さん。」


「あっ、でも円ちゃんじゃ氷を溶かす有効手段が無かったっけ。」


「いいえ、御心配には及びません。」


 円は氷上に腰を下ろすと・・・


「とう、とう、とう、とう・・・」


 エアサイクリングで連続猫キックを放ち始めた。


 なるほど、これなら氷とか関係なく確実に倒せるな、うんうん。


 その後もやって来たアイスゴーレム達を次々とトラップに嵌めて行く賢斗。

 すると程無く作成した10個のトラップ全てが魔物の掛かった状態に。

 そしてそのタイミングで女性陣の様子を確認してみると・・・


 おっ、やっとあいつ等1体ずつ討伐したところか。


 彼女達は自己判断で次のアイスゴーレムを討伐すべく移動を始めた。


 んじゃ、俺もそろそろ討伐組に参加しますか。


ジャキィーン、ジャキィーン、ジャキィーン


 アイスゴーレムの討伐に慣れてきていた賢斗はハイテンションタイムの消化も兼ね、今回は帯電させた愛剣で斬撃を放っていく。


『ピロリン。スキル『雷剣』がレベル5になりました。』


『ピロリン。スキル『片手剣』がレベル4になりました。』


 よしよし、斬撃じゃないとこっちのレべリングにならないしなぁ。


 と順調にアイスゴーレムの体表を削っていくと・・・


ジャキィーン、ジャキィーン、キィーンガラガラガラァ


 へっ、何これ?


 突然その氷の身体は斬撃であるにもかかわらず粉砕されたかの様に大きく崩れていく。


『ピロリン。スキル『氷斬剣』を取得しました。特技『氷消瓦解』を獲得しました。』


 おおっ、こんなスキルが。


~~~~~~~~~~~~~~

『氷斬剣LV1(5%)』

種類 :アクティブ

効果 :氷に対し斬撃を与えると5%の追加ダメージを与える。習得特技が使用可能。

【特技】

『氷消瓦解』

種類 :アクティブ

効果 :氷に対してのみ有効の破壊の刃。決まれば斬撃ポイントを瓦解させ、大ダメージを与える。発動確率スキルレベル×5%。

~~~~~~~~~~~~~~


 にしても凄ぇな、この特技。

 まっ、氷系以外の魔物にはまるで役に立ちそうに無いけど。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○一番稼いだ探索者○


 午後9時、予定外のアイスゴーレム討伐に時間を取られた賢斗達はそれが終わるとそのままコテージに帰還していた。

 夕食その他諸々を済ませると桜と円はそのまま就寝。

 そして残る賢斗とかおるはその前にもうひと頑張り。

 賢斗の愛剣にルンルンメンテを施すとかおるは何時もの様に寝てしまった。


~~~~~~~~~~~~~~

『結構氷を切れちゃったりする雷鳴剣』

説明 :天候にかかわらず雷を呼ぶ事が出来る。雷属性(大)。雷耐性(大)。帯電持続(中)。電撃吸収(中)。氷斬特化(中)。ATK+21。

状態 :450/450

価値 :★★★★★★

用途 :レジェンドウェポン

~~~~~~~~~~~~~~


 おっ、もうちょっとで蛇足感が消えてくれそう。

 いや~、アイスゴーレム相手に頑張った甲斐がありましたぁ、うんうん。


 とまあそれはそれとして、今日は美少女達との最後の夜。

 思い残す事が無い様、今度こそこの眠り姫を部屋まで運びおやすみのキスをプレゼントしてあげねば。

 いや~、このマジコン大会には良い思い出が出来ちゃいそうですなぁ、ムフッ♪


 とかおるの両手を自分の肩に掛け一人ほくそ笑んでいると・・・


「あっ、多田さん。」


ビクッ


「女性をベットに運ぶ時はおんぶでは無くお姫様抱っこが一般常識ですよ。」


 ・・・何時の間に。

 しかもそんな一般常識くそ喰らえなんだが。


「そっ、そうなんですか?知りませんでしたよ。」


「ええ、これは初夜を迎える女性の夢でもありますから。」


 う~む、まあ初夜云々は置いてといて、ここは大人しく従っておくべきか。

 ここで俺が変におんぶにこだわれば自分の疾しさを露呈する結果になりかねない。

 そして何より今回のメインディッシュはこの後のおやすみのキスですしぃ♪


 と言われた通りお姫様抱っこに切り替え、かおるの部屋へと歩き出してみれば・・・


「何でついて来るんですか?水島さん。」


「えっ、だって私、紺野さんと同室ですし。」


 あっ、そうでした。


「それに何か間違いが起こると不味いかなぁ、なんて。ウフフ」


 口角を上げた水島は賢斗に意味深な視線を送っていた。


 ・・・これが青春の苦い思い出という奴か。


 その後かおるを部屋まで運んだ賢斗は活動再開予定である午前0時までの睡眠を取る為自室へと戻っていく。

 それを確認した水島はポケットからスマホを取り出した。


「あっ、先生、お待たせしちゃって済みません。

 ようやく皆さん寝てくれました。

 という事で早速ですが、昼以降のナイスキャッチの活動報告です。

 先ず獲得した魔石はレベル30の魔石を5個、レベル29の魔石を10個といったところです。

 これならかなり盛り返せたんじゃないでしょうか。」


「あらそう、うふっ、まあ発破も掛けておいたし少しは頑張ってくれた様ね。」


「オマケにゴーレムコアまで手に入れちゃったそうですよ。

 確かこのアイテムってこのレベルになると凄く手に入れるのが難しくかなりの高額になるって聞いた事がありますけど。」


「そうね、ゴーレムコアをドロップさせるにはその低いドロップ率の他に弱点であるコアを無傷で倒すとか言う特殊条件まであると以前聞いた事があるわ。

 その所為で5年前レベル28のゴーレムコアがアイテムオークションに出品された時はその開始額が1000万円を超えていたって記憶してるし。

 にしてもホ~ント流石と言うか何と言うか、次から次へと良くこんな凄い物ばっかり手に入れて来るわよねぇ、あの子達。」


「はぁ、それでですねぇ、今回のはまたちょっとビックリで、多田さんと小田さんが二人掛かりで倒すと結構簡単に手に入るらしいです。

 ちょっと気づいたのが遅かったんでぇ何て本人達は悔しそうにしてましたけど、今現在私の手元にはそのゴーレムコアが6つもありまして今夜はドキドキして眠れないかもです。」


 はいぃっ?6つも?


「ちょっと光、そういう大事な事は最初に言いなさいよっ。」


「アハハ~、すいません。

 あの時私だけ凄く驚いちゃったのが結構悔しかったんで。

 それと乗り物系アイテムの方ですけどこれはもう入手しちゃったそうです。

 何でも地下に潜れる乗り物らしいですよ。」


 えっ、さっきのは討伐に専念した結果じゃなかったの?

 いえ、そんな事より地下に潜れる乗り物系アイテムなんて・・・

 これは恐らく発見されてる中でもかなりの変わり種。


「あとその乗り物系アイテムの試運転の際、魔銀鉱石を1.2トンも手に入れたそうです。

 鉱脈丸ごと採掘して来たって言ってました。」


 鉱脈丸ごとって・・・含有量にもよるし一概には言えないけど、日本の聖地で採掘された魔銀鉱石1.2トン、その価値は一億円を軽く超えて来るでしょうね。

 そしてそんな事まで出来てしまう様な乗り物系アイテムとなると、もうその価値たるや計り知れない。


「最後に金の宝箱から珍しい装備品まで手に入れてます。

 これに関しては取り敢えず売るつもりはないみたいで預かってはいませんけど、魔金製のとても綺麗な神楽鈴で結構な値打ち物だと思いました。」


 ふっ、流石にもうこの程度では驚けないわね。


「あらそう、分かったわ、報告お疲れ様、光。」


「はい、では失礼します。」


 にしても昼からの9時間でトータル2億円以上を稼ぎ、それに加えて乗り物系アイテムまで入手か・・・

 今日この国で一番稼いだ探索者は間違いなくあの子達ね。

次回、第百三十六話 氷の門番。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新と改定お疲れ様です。 金箱の中身はこう来ましたか。 敵呼びという今一番必要な効果に敵避けという何時でも有用な効果、更に品物自体の価値も高いと言う、桜嬢の幸運値の高さがガッツリと出まし…
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