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第十三話 パーティー名とランキング

○パーティー登録 その1○


 4月13日土曜日午後5時、協会の魔石買取所にはダンジョンで入手した魔石を買い取って貰おうと三組のパーティーが並んでいた。

 魔石の買取は探索者ランキング制度の運用上探索者法により協会の買取所でしか売る事が出来ない。

 そんな事情も相まって地方のしがないここ白山ダンジョンといえどもこの時間帯は多少混み合う。


「すみませ~ん。魔石の買取お願いします。」


「はい、いらっしゃいませ。

 では探索者証の提示と、魔石はこちらのトレイに載せていただけますか。」


 声を掛けると白い手袋を嵌めた女性職員が応対。

 賢斗が魔石をトレイに載せると、職員は一つずつ魔石の大きさを計測後魔力量測定機にセットしていった。


 さて、幾らになるかなぁ~。


 魔石の評価基準はその大きさと含まれる魔力量ランクの二項目によりその価値が決まる。

 大きさに関しては極大、特大、大、中、小、極小の6段階、魔力量ランクに関してはA~Eの5段階評価となっている。


「極小Bランクが19個で7600円の買取額になりますが宜しいでしょうか?」


「あっ、はい。」


 レベル2のゴブリンの魔石も一個当たり400円か。

 う~ん、まあそこまで苦労もしなかったし妥当な気もするが、三人で一日掛けてこの程度ではコンビニバイトの方がよっぽど稼げるな。

 学校の休みを月8日として計算すれば、3等分したひと月の実入りは2万円程度。

 週末のパーティー探索だけで生活費を捻出するのは無理?

 いや、今後はもっと効率が上がる筈だし・・・


「それで皆さんは今回初めての魔石買取という事ですので、パーティー登録や口座への入金、またランキング登録の方は如何なされますか?」


「えっ、何ですか?それ。」


 前回は現金貰ってはい終わりってなもんだったけど・・・


「では少しご説明させて頂きますね。」


 とここから期せずして受付嬢の長ぁ~い説明が始まった。


「まず口座の方ですが、パーティーを組んだ探索者の方ですと、パーティー登録する事で個人口座の他にパーティー口座も開設できます。

 また各個人口座への入金割合等も任意に設定出来ますので、こちらで現金を受け取ってから配分するといった手間が掛かりません。

 探索者証の発行と同時に個人口座の開設は済んでおりますが、パーティーをお組みになられた様ですし、この機会に是非パーティー登録の方もご検討頂けないかとお伺い致しました。」


 あ~個人口座の開設はもう済んでるから一人で来た時は敢えて何も言われなかったって事か。


「また口座へ入金する事で協会が公示している探索者ランキングに自動登録されますし、パーティーランキングにはその全額が、個人ランキングにはその等配分された額が反映される仕組みとなっております。

 探索者ランキングにご興味がおありの方でも安心してご利用頂けますよ。」


 って事はつまりこの前俺が買取って貰った奴はランキングに反映されていなかったのか。

 何かちょっと損した気分だな、おい。


「ちなみに探索者ランキングへの登録をしたくないという方でも、口座だけの利用が可能となっておりますのでその点もご安心下さい。」


 ふ~ん、そんな人も居るのか。

 まっ、学校や会社に内緒で探索者してる人も居るかもだしな。


 その後もこの職員の説明は続いた。

 主にランキングに関する説明だったのだが、それを掻い摘んで要約すると・・・

 ランキングが規定順位以上になるとランクが上がり様々な特典が生じる。

 そして個人部門とパーティー部門でその特典は共通であり、またランクアップする規定順位が同じに設定されている為母数が少ないパーティー部門はランクを上げ易くなっているといったところである。


 う~ん、そんなにパーティー登録させたいのか?この人。

 軽い気持ちで聞いたのに、いきなりこんなにガッツリ説明されたらビビるだろっ。


「ちなみにランクが上がった時の特典って何ですか?」


 あっ、やべっ、聞かなきゃよかった。

 また長い説明が・・・


「それではこちらをお持ちください。」


 身構えていた賢斗に女性職員は同じ小冊子を3冊差し出した。


 おおっ、助かった。

 これを読めば良いんですね。


 三人は小冊子をパラパラ読み始める。


 その小冊子に書かれた特典内容はダンジョンにある各協会支部の宿泊施設の利用や協会からの指名依頼、買取金の課税控除等々、ランクが上がるたびにメリットが増えて行くといった内容。

 その他付随効果として各企業へのアピールも期待出来るといった事も記載されていた。


 ふむ、まっ、別に登録料が掛かる訳でも無し、ここは・・・チラッ


 賢斗が二人の様子を窺えば、桜はニパッと笑い、かおるは静かに頷いた。


「じゃあそのパーティー登録の方お願いします。」


「畏まりました。それでは・・・」


 口座への買取金の配分はパーティー口座に1割、残りを三人で3等分、つまり一人当たりの取り分は3割といった内容で賢斗達の意見は一致した。


「はい、承知しました。」


 パーティー口座のお金はある程度貯まったらポーション等の共有アイテムを買う資金ってところだな。


 にしてもようやく終わりか。

 魔石の買取なんか直ぐ終わると思ってたのに、やっと帰れ・・・


「それであのぉ、皆さんのパーティー名を教えて頂けますか?」


 へっ、パーティー名?


「えっと、そのぉ、まだ決めてないというか・・・」


「そうでしたか。

 では決まりましたらこの申請用紙に記入の上、またこの受付にお越し下さい。」


「あっ、はい。」


 まだ帰れなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○パーティー登録 その2○


 賢斗達はフードコーナーに向かうと緊急ミーティングを開催。

 議題は勿論パーティー名である。


「いやぁ、パーティー名なんて完全に頭から抜けてたなぁ。

 みんな、どんなのが良いと思う?」


「だったらさぁ、ラッキードロップにしよぉ~。」


「いやまあちょっと良い感じに聞こえるけど、桜のスキルも雑誌に載っちゃってるんだし、そんな名前にしたら俺達のメンバーにスキル所持者が居るって宣伝してるようなもんだろぉ?」


「あっ、そっか~。じゃあドキドキ星人もダメだねぇ~。」


 俺がそれを提案していたかの様に言うんじゃない。


「でもこういのっていざ考えると中々思いつかないもんよねぇ。」


「俺もダメっすよ。

 名前を付けようと意識すると急に何にも思いつかなくなりますし。

 という事で桜、後は頼んだぞ。」


 ここはインスピレーションの宝庫である桜にお任せするのがベスト。


「じゃあねぇ、ラッキー星人とかはぁ~?」


 くっつけてきたか・・・ヒネリが足りない。


「次、行ってみよう。」


「う~ん、イグニッション・ダブルぅ~。」


 ん、ちょっとかっこいいかも・・・って着火魔法じゃねぇか。


「次っ。」


「むぅ~、じゃあねぇ、ナイスキャッチ・ダブル星じ~ん。もうこれで決まりぃ~。」


「桜、もう一声っ。」


「もぉ~、賢斗も何か出してよぉ~。」


 ・・・こいつのインスピレーションも限界か。


「じゃあ、そのナイスキャッチ・ダブル星人からダブル星人を取り除こう。

 ナイスキャッチってのでどうだ?」


 うん、さっきのパーティー名からふざけた要素を取り除くとこうなる。


「え~~~~プンプン。」


「いやいや、ナイスキャッチってのは桜が言ったやつだろぉ?何が不満なんだ?」


「ダブル星人が入ってなぁ~い。」


 入って居ない方が良くないか?

 センスの無い俺が言うのも何だが。


「ならそのナイスキャッチ・ダブル星人ってのはどんな意味があるんだよっ?」


「それはほらぁ、賢斗と初めて会った時私を上手に受け止めてくれたでしょ~?」


 あ~、スキル取得講座の時の話か。

 知り合った時のエピソードをパーティー名にするとか意外と真面な理由にちょっとビックリ。


 でも待てよ・・・この説明のどこにダブル星人要素があるんだろう?


「いや桜、お前の説明からするとダブル星人が入ってる必要性をまるで感じないんだが?」


「え~、だって何かダブル星人って強そうでカッコイイじゃ~ん♪」


 あっそ。


「じゃ、ナイスキャッチで。」


「え~~~~プンプン。」


「ふふ、中々面白い漫才が見れて楽しかったわ。」


 ・・・あんたもちっとは参加しろっつの。


 とやっつけ気味にパーティー名が決まると申請用紙に記入し魔石買取所へと再び向かうのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○パーティー登録 その3○


 午後6時30分、再び魔石買取所受付。


「済みませ~ん。」


 賢斗は先程の受付に申請用紙を差し出す。


「あら、パーティー名の方はお決まりになりましたか?」


「はい。」


「では買取金の方は各口座に既に入金されましたのでこちらがその明細となります。お受け取りください。」


 パーティー口座に860円、個人口座に2580円と、はいはい。


「それとこちらがパーティー登録証になります。

 このカードには、口座のキャッシュカード機能もございますので大事に保管してくださいね。」


 まっ、これは俺が一応リーダー何で預かっとくとして。


「あと個人ランキング、パーティーランキングの方も既に登録されましたので、後ほど情報端末等で探索者協会HPの探索者ランキングをご確認ください。」


 ほいほい。


「では、これで手続終了となります。お疲れ様でした。」


 やったぁ~、終わったぁ~♪


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○探索者ランキング○


 午後9時、帰宅した賢斗は夕食お風呂を済ませると机に座ってノートパソコンを開いていた。


カチカチカチ


 彼が見ているのは探索者協会のHPにある探索者ランキング。


--------------------------------------

138379位 多田賢斗(16) Gランク(初年度) ナイスキャッチ★ 2280円

138379位 小田桜(16) Gランク(初年度) ナイスキャッチ 2280円

138379位 紺野かおる(17) Gランク(2年目) ナイスキャッチ 2280円

--------------------------------------


 個人ランキング登録者数凡そ15万人。

 賢斗達の順位は当然その最底辺付近に居た。


 にしても見方が良く分からんな・・・おっ。


--------------------------------------

注意事項

※左から、順位、氏名(年齢)、ランク(探索者歴)、所属パーティー、横の★印はパーティーリーダー、買取金額の累計。

※順位更新は1時間毎のリアルタイム更新。

※ランク更新は毎月末。

※集計期間、1月1日~12月31日。

※月ランクは昇級後3カ月間固定。

※年間ランクは昇級後3年間固定。

--------------------------------------


 ふむふむ、なるほどねぇ。

 ランクって一度上がると、ある程度の期間、そのランクが保証されるのかぁ。


 にしてもランクが上がる規定順位ってどうなってんだろ?


--------------------------------------

ランク区分一覧

Aランク 100位以内

Bランク 1000位以内

Cランク 3000位以内

Dランク 10000位以内

Eランク 30000位以内

Fランク 50000位以内

Gランク 50001位以下

※Sランクはランキングによるものではなく、探索者協会推薦枠です。

--------------------------------------


 ふ~ん、Gランクって登録者の3分の2も占めてんだな。

 にしてもGランクからFランクに上がるには8万人以上をごぼう抜きする必要があるとか。

 50000位付近の人の買取累計はもう70万円くらいになってるし、集計開始が1月からってところでは4月から探索者になった俺が今から頑張っても無駄な足掻きだな、これ。

 よしっ、来年から頑張りましょう、うんうん。


 あっ、そういやパーティーランキングの方がランクを上げ易いとか言ってたな。


--------------------------------------

15645位 ナイスキャッチ(3) Eランク(初年度) 7600円

注意事項

※左から、順位、パーティー名(メンバー数)、ランク(探索者歴)、買取金額の累計。

--------------------------------------


 おっ、Eランクっ。

 つってもEランクまでは別に特典無かったよな。

 にしても登録母数が1万6000程だし、確かにあと6000組のパーティーを抜けばDランクな訳だが。

 ・・・10000位辺りの買取累計はもう400万円近くまで行ってるじゃん。

 こっちもこっちで一つランキングを上げるだけでもハードル高過ぎなんですけど。


 それに3000位辺りだと10名以上のパーティーがザラにある。

 これってつまりパーティーメンバーを増やす事で魔石売却額を大きくしてる団体さんが大勢居るって事だろぉ?

 まあ中にはホントにお仲間が多い方の居るのだろうが、メンバー数124人の森下探索者カンパニーとか、こんなの完全に企業だし。


 なぁ~んか、興ざめも良いとこだな。

 年内はどうしたってランクアップは出来そうにないし。

 まっ、ランキングなんて、今はどうでもいいか。

次回、第十四話 ファイアーボール・アンリミテッド。

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「PT名は感度ビンビンラッキードロップで!」 かおる&桜「却下で!!!!」
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