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世界が僕を悪魔と呼ぼうとも  作者: めもめも莉莉愛
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第6話:新人研修2



辺りに声が鳴り響いた瞬間セツナは声のする方向へ駆け出していた。頭の中で10年前のあの日と出来事と重なり駆ける脚にも力が入る。


「大丈夫ですか!」


着くと同時に声を出し安否確認を行うも辿り着いた先では小柄な少女が複数体のルークに襲われており、瞬時に雷流での移動で弾丸と化し今にも女性に嚙みつこうとしているルーク目掛け勢いのままに右膝蹴りを叩き込む。



そしてセツナは後ろを向き再度少女に話しかける。


「あの!怪我はありまs「どぉぉぉおおおらっっしゃぁぁぁああああい!!!!」え?」


セツナは目の前の光景を疑った。先程まで襲われていたように見えた少女が自分の身体程もある尖ったトゲがついた、セツナでも持ち上げるだけで精一杯であろう黒い金棒を軽々と振り回しルークを三体まとめて吹き飛ばし、それでいて声だけは女性らしい可愛しく高い声で叫び声は完全におっさんのそれであった。



「そっちの異形は任せたよ!!こっちはアタシがぶっ殺すから!!」

「なんかよくわかんないけど!了解した!」


男勝りな喋り方で少女に異形の迎撃を任されたセツナは深く集中し身体を極限の脱力まで持っていく。

こっちへ向かって走りながらギリギリまでおびき寄せ同時に襲いかかる四体のルークへ対してカウンターの上段から振り下ろすような蹴りを放つ、その蹴りのあまりの鋭さと威力に日本刀による居合で斬られたような綺麗な切れ口を残し離れた場所にいた四体の身体が同時に両断された。



天穿ち 刃脚一閃じんきゃくいっせん



上体を下げ腰の回転、そして股関節へすべての力の波を加えつつ()により威力と速さを融合させた言うなれば脚で放つ居合斬りともいうべき術であり鋭すぎるその刃脚は衝撃波を生み離れた場所にいる相手をも両断する。



「いやー、何今の?蹴り?てか蹴りで離れた異形ぶった切ってたけど何の能力よそれ?」


いつのまにか少女の方は先に終わっていたらしく、戦いの一部始終を見ていた少女にそう声を掛けられた。


「なんかよくわかんない動きしてたし……初めて見る顔だけどもしかして一般からの入隊者?」

「一般からっていうのがなんなのかはよく分からないけど、アカデミーには通ってなくて今年16歳になって入隊資格が得られたんだ」


一般というのはアカデミーからの推薦入隊ではなく学や経歴など不要の入隊システムのことを指し出世がしづらいといわれているが一般入隊ながらレイのように若くして少尉に至ったものもいる為一概には言えない。



「うっそ!それで二つも歳下なの!世の中広いなあー、あ!自己紹介もしてなかったね。私の名前はリリアーナ・レイス、仲のいい人はリリィって呼ぶわ」

「よろしく、リリアーナさん。僕はセツナ、ファミリーネームはないからセツナで構わないよ」


お互い少し遅い自己紹介をした後ここへ飛ばされてきた時のことを話し合った。


「恐らく私たちをすっ飛ばしたのは軍の干渉系の空間転移の能力だと思うの……あの発現規模からしてもしかしたら顕現者かもしれないけどね。そして気づいたら禁区エリアの南の森、通称異形の森に私たちは立ってたってわけね」

「異形の森?」


聞き慣れない言葉にセツナが聞き返す。


「アンタそんな事も知らないで戦ってたのね……ここ南の森はね、危険度5thから4thの異形を中心に化け物共がひしめく人外の魔境なのよ。よく新兵の対異形との訓練として使われるとは聞いてたけどそれでも引率でクラス3ndの能力者は必須……そんな所に入隊初日の私らをぶち込むなんてあのジル・バレンタインとかいうおっさん、相当頭ぶっ飛んでるわね」


『死の弾丸』ジル・バレンタイン中将。クラス2ndの顕現者にして教官としても腕が立ち黄金世代と称される第206期生の新人研修もバレンタイン中将が行ったとされ、最近の隊士の不作振りに上が匙を投げ再びこの男に研修の監督という役割が回ってきた。


愛国心が強く面倒見も良いがかなり厳しい訓練を課す事で有名で自分にも他人にも厳しく、元はクラス5thの量産型の能力から顕現者にまで至ったのは伊達ではない。



「とりあえずこれも何かの縁だし一緒に行動しない?見た感じセツナも相当できるし私も足手纏いにはならないと思うよ?」


それはセツナにとって願ってもない事であり先程の戦闘で見たリリアーナの力が仲間として加わるのであればこれほど頼もしいことはない。



「こちらこそ是非お願いするよ。頼もしい仲間が出来るなんて幸先がいいよ」

「私もよ、ところでセツナはなんの能力者なの?見た感じ強化系っぽいけど……」


先の戦闘でのセツナの動きを能力と勘違いしたのだろう、それも無理はなくむしろあれだけの動きを無能力でやってのけるセツナの方がおかしい。


「さっきのは天穿ちっていう武術の術だよ、蹴りとか速く動いたりしたのとか。能力は存在はしているんだけどまだちゃんと発現の仕方がわかってなくて……とりあえず今は何系統の能力かも分からないんだ」


「能力無しであの動きって……そこらの能力者よりよっぽど人外じみた動きしてたわよアンタ。まあ能力の発現は人によって色々だものね、ちなみに私の能力は強化系クラス4th、腕力強化ってやつね。能力はそのまんまで腕力を強化するってだけ、ちなみにこれでももうすぐクラス3ndに到達するエリートなのよ」


シンプルな能力が多い強化系の中でも使いやすい部類に入る腕力強化、18歳にしてクラス3ndに到達するという、本人の話が本当ならば相当な天才でありクラスだけでいうならばあのレイやユリアと並ぶほどである。



「よーし!とりあえず今日は明るい内に寝床の確保を目標にしましょう!能力者といえど数分でも仮眠はとったほうがいいものね!ほら、行くわよセツナ!」

「うん、行こうか」


リリアーナを見ているとまるでこっちまで元気が出るような天真爛漫さをセツナは感じつつ、いきなり森へ飛ばされそこが魔境だと知り一日散々だったが、リリアーナとのこの出会いは悪くないなと思うセツナだった。












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