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【大幅修正中】転生魔女は転生をやめる  作者: 詩唄-Uta-
転生〜四才編〜
8/9

半年前〜十凶紋〜

いつもお読みいただきありがとうございます。


今回は少し長めになりました。

こちらは主人公の転生にまつわる過去とは

別口での昏い過去となっており、

若干スプラッタな一面もあるかもしれません。

(表現自体はひかえめにしていると思いますが)

苦手な方はごめんなさい。


これからも細部は変更する可能性もありますが、

大まかな内容変更はありません。

順次修正中なので、お待たせして申し訳ございませんが、

何卒よろしくお願いします。

今から半年前。

それは、ヴァートリィ家がまだ仲睦まじく暮らしていた輝かしくも懐かしい時期。

両親と兄、私、そして使用人である従者たち。

いつでも笑顔が絶えることなく、幸せだった記憶。


それを壊したのは私で、台無しにしたのも私。

あの時に戻ることが出来るなら、同じことをしないだろう。

いや、同じ道を辿ってしまうかもしれない。

何故なら、あの日があったからこそ、今の私があるのだから。



==================


その日は朝から、心地よい木漏れ日が窓から差し込み温かな気温で私は目を覚ました。


「おはよぅ………………。」


半分寝ぼけた状態で、パジャマ姿のまま廊下を歩き、眼を閉じたまま朝の挨拶をした。

周りからは微笑ましく笑顔で挨拶を返してくれる使用人たち………従者たちが慌ただしく朝の支度で忙しなく動いていた。


私は朝から食堂へ向かい、そこで待ち構えていた両親や兄にも挨拶を交わして食卓の自分の席へつく。

両親や兄と食卓を囲み、和やかに朝食をとる。


「お父さま。今夜、例の件で従者をお借りしたいのですが。」


「分かったよ、セシリア。」


以前に両親から提案されていたことがある。

それは従者たちへ()()()()()()()()()というもので。

私は過去の経験から受け入れられることはないだろうと拒否していたが、両親が何度も優しく諭してくるものだから、渋々了承することになった。

お父さまは今夜決行するだろうと推測したためか簡単に私のお願いを承諾する。


「ありがとうございます。」


簡潔にその場で礼を述べたのち、食事を終えて何ごともなくいつも通りの時間を過ごした。

屋敷に家庭教師を招き、あらゆることを学習する。

マナー、ダンス、歴史、戦略、護身術など。

そして、最も重要な紋章のことも。


一通り家庭教師による教育を終えた頃、窓から外を覗けば昏く夜に差し掛かっていることに気づく。

私は、家庭教師を玄関まで見送ってから直接従者たちを集めていた部屋へ入った。

そこでは、公爵家で働く従者たちが二十人ほど集結しており、私は緊張混じりにあるものの意を決して、部屋に入るなり話し始めた。

私の紋章を、従者たち(かぞく)に。

私が生まれてから両親と共に見守ってくれた大事な………。













「は………?」


私が両手甲を覆い隠す紋章戯具を外して、そこに刻まれている()()()()()()()血統紋章を見せた瞬間だった。

最初はたった一音。

今となっては誰が言ったのかも覚えていない。

だがそれは、明らかな拒絶だった。

そして、それはすぐに形として証明される。

部屋の中で、至る所から血統紋章による攻撃が一斉に私を貫こうと飛んできた。


───私が異端であること。

それは主である父や公爵家の平穏を脅かすのと同義だ。

従者たちは()の存在を抹消する(けす)ために自身の血統紋章を発動し、拒絶の(あかし)として私を襲う。


やっぱりこうなると思った。

それは私の中でこの瞬間に浮かんだ正真正銘の本音だ。

彼らの中で私は受け入れられないって知っていたから私は両親の提案にずっと拒否の姿勢だった。

それでもと両親が何度も諭してきた上、私も今回の人生ではもしかしてという期待があったのかもしれない。

ヴァートリィ公爵家というものに絆されたのかもしれない。


「ははっ。」


眼を覆わんばかりの紋章発動の残滓であり、部屋中に舞い散る光粒を見て、私は失望した。

失望からか自分でも表情から感情が消えていくことを感じるが、口からは相反するかのように笑いが溢れた。

お父さまと従者には確かに主従関係が………主従愛や忠誠心がある。だけど、そこに私は含まれていない。

お父さまにも、従者たちにも誰にも愛されてなどいなかった、全ては他愛ない幻想だった。

幻想が今、打ち砕かれ粉々になって消え去り、現実を思い知った。

今までの人生と、何も変わらない、ただそれだけ。

私はまた同じことを繰り返す。

一度目の失敗で懲りたはずなのに、何度も何度も失敗する。


あの忌々しい最初の人生から何も変わっていない。

いくら主である父の娘でも異端である以上、排除の選択をとる。

それは当然だ。

私でもそうする。


能力(ちから)があり、権力があり、知識があろうとも、私には昔から欠如した部分があるのだから。

他人から愛される訳などないということを私自身が昔から知っていた。認めたくなかっただけのことだ。

だけど私は今回も諦められなかった。

生まれた時から優しく笑いかけてくれた家族に期待してしまった。

今回こそは愛というものを与えてくれるかもしれないと。

けれど両親も異端である私の血統紋章を受け入れられなかったからこそ、紋章戯具で覆い隠して、私のことを否定するのだろう。

異端を忌み嫌い、自らの視界に映ることのないようにしたのだろう。


この瞬間、私はどうでも良くなった。

排除の為だけに血統紋章をこちらへ向けてくる従者も、家族のことも、公爵家のことも。


そうして従者たちの紋章による攻撃が私の目前まで迫った時、私も自己防衛のために力を振るうことにした。

私がこの世に生を受けた瞬間に知り得たものを全て利用して、私は私の害敵を排除にかかる。


即時発動。

それは才ある者だけが行使できる技術。

世界中でもこの技能を使用できるのは五指に入るほどだろう。


紋章の発動には本来、数秒ほど紋章力と呼ばれる原動力を収束するための時間を要する。

即時発動は、大気に散らばる紋章力を自らの生命力で代用するので、その()()()()を必要としない。


私は左手の紋章だけ発動させ、大人よりも一回りほど大きい二対となる鎧騎士を一瞬で創り出す。

黒騎士と白騎士。

それらは各々、両手に武具を携える。

黒騎士には漆黒の大剣を二振り。

白騎士には白銀の大剣を二振り。


それからは一瞬だった。

すぐに創造主に殺意を向けた敵を目視で確認し、瞬時に従者たちの目前へ迫り、(十人)の身体を鎧騎士たちが手に持つ大剣で薙ぎ払い、私に敵対した従者たちは真っ二つに胴体と頭を分たれてあっけなく死を迎えた。

叫び声をあげることもなく。

それと同時に紋章の持ち主である宿主が死んだことで私に迫っていた紋章の効果も掻き消された。


「………………それで、あなたたちはどうするの?」


私はその場に残る血溜まりと死体を前に、私に紋章を向けることの無かった十人を睥睨する。

()()()()()()()()()()()()


彼らは、少女や女性、少年や青年、老人のような男性までいる。

その内の一人が前に出て、私に近づく。

私の目前まで近づいた女性は………………いきなり跪いて私を抱擁した。

私は突然のことに警戒して身体が強張る。


何で、とそんな言葉しか出てこない。

私は異端だと、攻撃してきた奴らがいたのを彼女たちは後方から見ていたはずだ。

なのに、何でこんなに優しい抱擁が出来るのだろう。


「………辛かったでしょう。よく頑張ったね。」


抱擁しながら、優しく頭を撫でる手の感触と彼女の優しさに触れ、私は決壊した。

たった二つの言葉に。

私は目尻から雫を流し、それがきっかけで私は気づく。

私は辛かったのだと。

いくら自分が異端だからと俯瞰していても、受け入れて欲しかった。

そんな悔しさや悲しみから私の涙腺は崩壊した。

抱きしめてくれた彼女の胸の中で子供らしく目一杯に号泣した。

私は彼女の背中で服を掴むように抱擁で返し、落ち着くまで泣き続けた。



暫く泣いた私は、目の前の彼女と私たちの様子を見守ってくれていた他の九人へ向き直るように見た。

若干赤く腫れているだろう眼で。


「大丈夫ですよ。ここにいるのは、姫様の味方です。」


彼女は優しく微笑んで私の肩を支える。


「味方?」


「ええ。私たちも()()ですから。」


彼女の言葉で咄嗟に声が出た。


「異端で、十人………、まさか、()()()?」


「ふふ、よく勉学に励んでいるみたいですね。」


肯定の意を示すように彼女は微笑む。


十凶紋(XxX)

イクセスとよばれる異名であり、周囲からは忌名の意味を込められている。

血統紋章は攻撃系統のものが殆どで、そんな中でもより強力かつ凶悪な能力へと変異を遂げた紋章。

最初の発現例が王族の一員である大公閣下だったため、当時の国王陛下がその能力を忌み嫌い、凶紋(忌名)がつけられた。

現在は十人、その凶紋持ちが認知されているため、十と名に冠し十凶紋と呼ばれ、国内外問わずに有名だ。


「改めて、自己紹介をしますね。私は、メルリナ・エル・グランフィラス。グランフィラス大公家の現当主であり、姫様の母であるアリエルの実姉です。」


つまるところ、母の姉、私の叔母だと名乗る彼女は、艶やかな光沢の黒髪ポニーテールにして同色の瞳を持ち十代後半にしか見えない容姿で。


「まぁ、姫様にも分かる通りこの黒髪黒眼(みため)なので、王位継承権の順位は低いですし、国王(あに)からも嫌われていますが、これからは私が姫様を御守りさせていただきます。」


彼女は最後に。

よろしくお願いしますね、と締め括って私の手を自らの両手で優しく包みとる。

私は彼女の優しさにまた目が暑くなり、涙が込み上げてきそうになった頃。


「おい、リナ。こいつら、どうするっスカ?」


第三者の声でハッとそちらへ眼を向ける。

そこには息絶えた従者たちの屍を見下す燕尾服の男性の姿と、他八人が温かな目線で私と彼女を見守っていた。

そんな彼らの前で私は羞恥心で自分の顔が赤くなるのを感じる。


「ちょっと、ジャック!そんな奴ら、放置でいいわよ。それにカレンとフィリア、いるわよね。隠れてないで出てきなさい。」


彼女───メルリナの一声で二つの影が現れた。

何事も無かったように。


「カレン、フィリア。貴女たちにも事情があることは充分理解しているわ。貴女たちの主に一部始終報告してもいい。でも金輪際、姫様と私たちに近づかないで。次は確実に殺る(ない)わ。」


彼女は私をお姫様のように抱えて立ち上がると、あとの九人を連れ立って、私の自室へ向かうためにこの空き部屋を出た。

私は部屋を出る直前に部屋に残った二対の鎧騎士を急いで消し、メルリナの胸で眠りに落ちた。



翌日、私は両親と兄たちの前で宣言した。


「お父さま、お母さま、お兄さま方。わたし、これからは別邸で暮らします。」


後ろにメルリナを控えている私の宣言に、両親と兄たちは絶句し、何も言えないようだった。

それからはメルリナに対応を任せ、兄たちとの間で一悶着あったようだが、気にせずに移住のため準備を進めた上でスムーズに、私は十凶紋という異端たちと一緒に別邸へと移り暮らすこととなった。



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