序章〜転生魔女と神友。
新連載です。
楽しんでいただけたら、幸いです。
(2023.02.12)修正しました。
次話以降も、今後修正いたします。
読む前に、活動報告を必読お願い致します。
気が付くと、真っ白の部屋の中に私は立っていた。
傍からみれば、真っ白な膝上丈のワンピースを着た村娘という感じの8才くらいの黒髪黒眼の少女、それが今の私だ。
私はまたか、と思った。
また………死んだのかと。
私はいつも、この場所へ降り立つ時には必ずこの容姿、この格好で変わらずにいるのだ。
そして決まって私の死因は二つしかないのだ。
自ら命を絶ったか、他者の故意による殺害。
要は自殺か他殺かだ。
私の死因に事故というものはなく、必ず誰かしらの意志が働く。
そうして死を迎えた結果、毎回私はここ………神の間へと導かれるのだ。
自身の能力によって。
今の私の姿を何も知らない者が見ると、脆弱な少女にしか見えないだろうが、それは違う。
逆だとも言える。
私は異質である。
少なくとも自分は異質だと自覚があり、目の前に今か今かと降り立つ神友も認めている。
そうして私の事を知る者たちは、私の事をこう呼ぶのだ。
──────〈魔女〉と。
そのまま、私が立ち尽くしているとたった今降臨した神友が話しかけてきた。
「また、ですか。今回で、何回目になるんでしょうね。」
彼は、呆れた様子で私に話し掛けてくる。
「何回目かなんて関係ない。これは私の業だから。」
私は、無表情で彼の問いに淡々と正直な思いを吐露する。
「業………ですか。」
彼は呆れたような気遣うような表情を向けてくる。
彼は、私の気持ちなんて知る由もないし人間のことなんてどうでもいいだろうに最初にここで会った時の記憶からかずっと私のことを心配している。
「………贖罪って言い換えてもいいけど。今回は他殺だったみたいね。まぁ、死因なんてどうでもいいわ。どうせ死ぬことは確定だったし、遅いか早いかの違いでしかないから。それよりアル、久しぶりね。神様にこんなこと言っていいのか分かんないけど、元気だった?」
私は、このやり取りに懐かしさを感じ、彼に笑顔を向ける。
私にアルと愛称を呼ばれた金色の髪に藍眼の神衣を身に纏う神様………アルルフィリスは落ち着くためにひとつ溜め息を吐く。
「ええ、お久しぶりですね。今回は本当に驚かされましたよ。8年も生きていらしたことなど、最初以降ありませんでしたから。てっきり、もう戻ってこないと期待もしていたんですけれど。」
アルルフィリスは、転生を担う神である。
彼の仕事は、輪廻に行き着いた魂を無事に転生させること。そんな彼にもう数えきれないほどの私の人生を世話になっていた。
「それはないわ。だって〈贖罪〉は終わることはないから。十才までに死を迎えなければ、自死するつもりだったから。」
アルには悪いけど私的には、いつ死のうが予定調和であるため、何の問題にもならない。
私が死んだ姿を見て、例え現地の家族や友人だった者たちが悲しみに暮れたとしても、私には一切関係がない。
もう終わった人生なのだから。
私の中にある罪の証と何度でも贖罪………罪滅ぼしすることの出来る超常的な能力だけが、私の大事なものだから。
最初の死を迎えた際に、アルから与えられた固有異能『輪廻転生』
これは、私が死ぬと自動的に発動する異能だ。
効果は、たった一つ。
「それまでの人生で培った記憶および能力を保持した状態で、転生を繰り返すことが出来る。」
たったそれだけ。
「………自殺はあまり良くないですよ。魂にも負担がかかりますから。」
アルは困惑の表情を浮かべる。
「うん、分かってはいるんだけど、一番簡単だから。殺害してもらうように他人を誘導するとか面倒だし。それに……………。」
私はアルに届くか分からない程に限りなく顰めた声音で最後に呟く。
次の瞬間に私は、両手の指先から透明になっていく自分の身体を見た。
これは、転生の兆候だ。
「もう時間みたい。」
「………今度こそ貴女が永く生きてくれるように、祈ってますよ。」
「ふふ、ありがとう。長生きする予定はないけど、礼は言っておくわ。」
アルは私に改めて向き直り、いつも通りに祈りの言葉を瞑目して紡いでくれる。
長寿であるように、と祝福と願いを込めて。
「あ、」
私は、完全に身体が透明化する前にアルルフィリスに礼を言ったあと、思い出した事があった。
だから、残すことにした。
アルルフィリスならしっかり伝えてくれるだろう伝言を。
「リネアリーシャによろしくね。」
「っ、──────」
アルルフィリスの驚愕の表情と息を呑む音を最後に、私は笑顔で転生して行った。
もう、何回目かも分からない、数えることもやめてしまった私の転生を。
『まだ、私は私を赦せないから。』
アルルフィリスに届くことの無かった思いを自身に戒めながら。