初めての、お国崩壊。
………
目の前には積み上がった瓦礫の山とそれに埋もれた血濡れの死体。
私が今思う事は一つ。
「…やってしまった。」
『ココアとミルクのお菓子屋さん』
そう書かれた可愛らしい看板─今は面影もクソもないが─瓦礫の下敷きになっていることだ。アップルパイ、美味しかったのに…
これだけは完全な誤算だった。
私─というかオパール─が破壊してしまった高級店街の裏にこの店はあったらしい。そうと知らずに私は高級店街とその後ろに見える貴族の屋敷を破壊してしまった。
今まで苛立ちを感じる相手をぶっ飛ばして来たり、面倒なものは土地ごと消して来たりしたが、ケーキ屋や甘味処などの娯楽が沢山ある店だけはずっと避けてきて、国の破壊もしてなかったのに!!
初めてのお使いならぬ初めてのお国崩壊か!?
なんて考えながら悔しがっていると、
「あら、ミルクちゃん。私達のお店が無いわ」
「あら本当ね、ココアさん。それどころかお店があった一帯が瓦礫に埋もれているわ」
と、大体身長が五センチから六センチ位の髪の毛以外では全く区別の付けられない少女が二人歩いてきた。
「この調子だと、中にある物は全て破損しているでしょうねココアさん。」
「そうねミルクちゃん。」
会話の内容からしてこの店の店主らしい。
これは、スライディング土下座の準備が必要だろうか。
「大変申し訳ありませんわ御二方。貴方達のお店を壊してしまったのは私ですの。お店の裏に高級店街や貴族の屋敷など、大層不愉快なものがあり、つい壊してしまいましたわ。」
「あら、そうでしたのね。でしたら仕方ありませんわ。ねぇ、ミルクちゃん」
「ええ、ミルクもこの国の貴族は好きではありませんもの。衝動的に壊してしまうのも、仕方がないことですものね。」
あれ?スライディング土下座回避?
「ですが、どうしましょうかミルクちゃん。支店とはいえ、この大国での稼ぎ所が無くなるのは惜しいことですわよ?」
「そうねぇココアさん。取り敢えず、本店に戻ってから考えましょうか。」
あ、これ支店なのね。本店別にあるのね。
「その国まで送って行きましょうか?元々此方に非がある訳ですし。」
「いえ、必要ありませんわ。私達小人族には秘密の扉がありますの」
「支店を壊した事に罪悪感を感じているのなら、是非、『ミルクとココアのお菓子屋さん』本店にいらしてくださいな?」
私の好きな店の店主は、心が広く、天使だった。
『覚えなくてもいい設定』
小人族…小さな人間。その小ささ故に何処にでも入り込める。手先が器用で、小人族が作ったとされる小物などは他種族に高く売れる。
故に、人畜非道な者が多い国などでは奴隷として売られていることもあり、他種族にいい印象をもって居ない。
ミルクとココアは結構寛大な方。