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あなたを思ったのは赤い絨毯の上

作者: 高瀬 啓

短い文ですのでお気軽にお読みください。


11月18日のひどく寒い季節に私は二年間付き合っていた彼氏にふられた。

といっても二ヶ月もの間会ってなく、電話もなかったためもう切れていたと思っていた縁。


私は茜色に染まった紅葉の絨毯を静かに歩く。

時おり感じる風が実は目に見えない刃物で自分の心を刺さしてるのではと疑うほどだった。しかしそんなことはない、ただの風だ。


何も考えたくないと思ったとき彼が頭の片隅に現れる。不愉快な顔だ。

彼はクラスの人気者だった。女子からも男子からも好かれ先生からの信頼も熱く、容姿もよく、運動もでき、誰もが100%と思う人だった。

でも私は知っている。

彼は料理はできないし、洗濯機も洗えない。寝るときのイビキはうるさいし、機嫌が悪いとすぐ無口になる。

彼は100%ではない。

偽りの100%だ。

だから100%でない私を選んだ。



恋とは不思議なものだ壊れると「やっぱり100%の相手なんてない。みんなは80・90で満足してるんだ。世の中そんなものだと」と言い、出来上がると「100%はあるかもしれない」と言う。


一人の私が話しかけてくる。

「こう考えてみない?彼がみんなから100%に見えていたのは、彼は本当は50%で、50%のあなたといたからじゃない?あなたたちは二人で100%だったんじゃない?だからあなたには彼が100%に見えなかったし、彼もあなたを100%とは思ってなかった。きっとそうよ」

足が止まる。

都合のいい考えだと言い聞かせる。

再び足を動かす。

さっきよりも大きな音をたてて紅色の絨毯へと向かう。


この世界に100%の人と出会えたのは何%だろう。かなり少ないはずだ。しかし、みんな誰かと過ごしている。相手は100%じゃないのに。


紅色の絨毯を歩きながら考える。

僕は気づく。人といるとこが100%の居場所になりそこにいる誰もが100%になりえるのだと。僕は一人では100%にはなれない。


僕は思う。それじゃあ僕はもったいないことをした。心地のいい居場所を手放した。僕は100%じゃない。


顔が涙で濡れ、風がひどく刺さる。

若いからじゃない、彼女と100%でありたいから彼女を選ぶ。

僕は茜色に染まった絨毯へと走る。


なんて声をかけよう。

「僕を100%にしてください、なんてどう?」

それはかっこいい言葉じゃないけど、50%の精一杯の言葉だ


お読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いいたします。

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