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メリーゴーランドと世界の中心

「さて、残るアトラクションは二つとなりました」


 残るはメリーゴーランドと観覧車。


 次はこの遊園地の中心にあるメリーゴーランドへと向かいましょうか。


 メリーゴーランドはどこからでも遠くない距離です。あっさり着きました。


「さて――」

「――――――?」


『どうせまた何か怖い話かあるんでしょ?』なんて顔をしながら言われましてもね?


「まずは、ここの噂について説明いたしましょう」


 ここのメリーゴーランドは――って、百聞は一見にしかずですね。


「見ての通り、『誰も乗ってないのに勝手に廻る』のですよ」


 ゆっくりだが、勝手に廻って動くメリーゴーランドを見せる。


 子供はキャッキャッと無邪気に突撃しては馬に乗り込んでいく。


「そして、『明かりが灯ってとっても綺麗』とも噂があります――が、これも見ての通りです」


 別にこれがヒトダマでしたー!なんてオチもありません。


「という訳で、『お客様』にとっては恐らく拍子抜けとなるであろうアトラクションです」

「――――――?」


 何で?と申されましても――。


「何でも何も――この裏側は一度『視』ましたでしょう?」

「―――?―――!」


 私が言うと、納得がいったように『あぁ!』と頷く『お客様』。


「給料のないこの職場ですが、電気は発電する事で賄っているというわけです」


 まあ、普通の電気も生きているんですがね。


「とっても綺麗に明かりが灯るのはそれだけきっちり発電されている事でもあるのですよ」


 いやぁ、あっさりホラーな話が終わってしまいました。法螺話にしても良かったんですがね。


「それでは、『お客様』はゆっくりとお楽しみください。私はこちらの係員がサボっていそうなのでお話をしてきます」


 そう言って、『お客様』と一度別れました。


 さてと……。


 私は、ハリボテ同然のメリーゴーランドの管理室に入ります。


「んぁー?お客様ぁー?ここは、関係者以外立ち入り禁止でござ――ほわぁッ!?」


 テーブルに突っ伏していたボサボサ髪の高校生くらいの少女が起き上がると、その見た目に似合わない業務的対応をする。


 しかし、こちらの顔を見るなり、奇声を上げました。


「またサボってましたね?(しの)(のめ)さん?」

「せ、拙者!働きたくないでござる!」

「子供の安全の為に監視するだけです。他と比べて、一番簡単ですよねぇ?」

「そうは言っても、拙者こんな見た目ですしおすし」


 彼女の見た目について、簡単に申し上げると――『サ■コ』。


 いわゆる前髪が長すぎて、恐ろしい雰囲気を纏っているのです。


 ちなみに、彼女の髪は切っても切っても伸びます。それはもう怪しい日本人形並みに伸びます。


「ウザギちゃんの着ぐるみがあるでしょう?」

「拙者、暑いのは苦手でござる。ふひひ……」

「凍え死ぬような死を楽しみます?」

「ひ、人殺し!人でなし!」

「死人だというのに、殺される前から変な事言わないでくれます?」

「ひぃっ!?」


 ……まあ、人殺しに関しては否定出来ないのが悲しいところですね。


「まったく……貴女、見た目に反して声は可愛いんですから頑張って下さいよ?貴女の長所を活かさないで、何故ここにいるのですか?」


 と、堂々と私は嘘をつきます。


「ふ、ふひ……嘘でござる。拙者を働かせる方便でござる」

「本気だったら――どうしますか?」


 私は東雲さんの前髪をあげて、目を合わせる。


「……えっ?」


 東雲さんは目を丸くする。


「本気で貴女の声が好きだと言ったら?」

「じょ、冗談に決まってるでござる。だ、騙されるわけないでござる!」


 彼女はやや興奮気味の慌てた様子で、自分に言い聞かせるように叫ぶ。


 まあ、その通りなんですがね?


 部下()働か()せる()為に、甘い言葉()()()()のは当然です。


 しかし、まあ、別に嗄れた声ではないんですから、もう少し頑張ってもいいと思うのは本音です。


「信じてくれないようですね。では、私が安眠の為に録音した貴女の台詞をじっくりたっぷり聴かせれば――!」

「アチシ、脱兎の如く逃げるピヨン!」


 私が黒い録音及び再生が出来る機械を取り出しながら言うと、いつの間に着替えたのか、ウザギちゃんの着ぐるみを着て逃げていきました。


「まったく、小野さんとノエルさんを見習っていただきたいものです」


 一人残った私はそう呟くのでした。

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