見えないようにする
短い現代ホラーです。
一人暮らしの始まりに起きた、ちょっとした出来事を書きました。
気軽にどうぞ。
希望の大学に合格した。
憧れの一人暮らし。さあ準備だ。そんな時期に諸々が被さってきやがった。
おかげで賃貸物件探しにも出遅れてしまったが、運よく、本当に運よく、家賃がとても割安な物件を借りることができた。
引っ越し、荷物を運びこんだ。
5階建ての5階の部屋。窓からの見晴らしがとてもいい。
段ボール箱を放置して、窓辺に横になる。
温かい日差しが睡魔を呼び込む。さすがに疲れた、寝る。
寒さで目が覚めた。もう夜だ。さすがにこの時期は、日が落ちれば寒い。
布団はどこだ?
明かりを点けぬまま、窓から夜景を望む。
街の灯りがとてもキレイね、ヨコ…、あれ?
ベランダに女の人が立っていた。
半透明というか、透明度90%くらいだろうか。
ちなみに透明度というのは、値が大きい方がスケスケである。
肩までのボブ、目には生気がない、ヤバイ会見をしている政治家並みに。
これはアレだ、ゆう…。
何だか怖い顔。でも美人さん。あー、服って着てるんだあ…。
窓を開けて、手でさっさっと。アレだと確信した、けれど何も起こらない。
うーん、どうしよっか。
とりあえず、1週間の様子見とした。
体調に変化なし。快食・快眠・快…、皆まで言わせんなっ。
昼夜、天候、一切関係なく、彼女は四六時中立っていた。立ち尽くしていた。
スケスケ度が高いからか、日中は見えづらいけれど。
家賃がとても割安になったのは、彼女のおかげなのだろう、きっと。
しかし、他人の目というのは、やはり気になるモノである。
他人様に見せたくない姿は、他人様には絶対に見られたくない、見たくない。
たとえ、それが同性であっても、だ。
オトメゴコロに例外は無い。
カーテン? アホか。せっかくの夜景、それも家賃のうちだぞ。
だから私は黒いテープを貼った。窓の内側、その顔の目の位置に1本だけ。
どうやら彼女も同じだったらしい。口元が緩んでいるからね。
遊びに来る友人たちには、古の幸運のおまじないだ、と言っておいた。
読んでくださり、ありがとうございました。
見える・見えないの境目には、案外いろんな距離感があるものです。




