第1話 GMレース
――ネプチュニア星系・惑星カイロス――
地平線の遥か彼方まで広がる、荒れ果てた大地。その大地には、かつての生活の面影が少なからず残っている。星間戦争以前には多くの街があった星ではあったが、戦争の影響でその街は廃墟となり、荒廃した大地の上に崩れていた。その光景を見れば、惑星カイロスには人も生物も何もかも消え去った様に見えた。しかし、
《――ッ!》
静かな大地の中、突如として鳴り響く地鳴り。地平線の彼方から巻き上がる砂煙。砂煙は次第に大きく激しくなり、廃墟と化した街に近付いてきた。その時、大地の地鳴りを聞き付け、静かな廃墟からゾロゾロと大勢の人々の姿が現れた。その彼等は皆揃って、砂煙が巻き起こる地平線の先を見ていた。地鳴りと砂煙が大きくなるにつれ、やがて砂煙から影が幾つもの現れた。人々はその影へと目を向け、ジッとその姿へ視線を向けていた。その次の瞬間、
《ビュッン!!ビュンビュン!!!ビュンッ!!》
高速の速度で、辺りに風を巻き起こしながら、機械の巨人達が廃墟の間を駆け抜けていった。人々は突風に飛ばされない様に身を屈め、巨人達が通り過ぎるのを待った。全ての巨人達が廃墟を過ぎ去ると、静寂と砂煙が廃墟を包んでいた。やがて、巻き起こっていた風が収まった頃、人々は揃って巨人が過ぎていった先を見た。そして、
「「「ウオォォォォォッ!!!」」」
廃墟には、人々の歓声が響き渡った。
――――
廃墟を通り抜けた巨人、汎用型有人機『GM』。元々は、重工業や建設機、宇宙開発機として発明された有人機であったが、時代の流れによって戦争兵器としても扱われ始めた。十年以上も続いた星間戦争の際も、連邦国と帝国の両国は大量のGMを戦場へと投入され、両国共に激しい戦闘で大量のGMが破壊、廃棄された。当然ながら、戦場にもなったこの辺境星域にも、数多くのスクラップと化したGMが遺棄されていた。辺境星域に住まう人々はこの遺棄されたGMを修繕し、自らを守る為、誰かを襲う為、様々な扱われ方をされていた。そして、このレースもその一つ。『GMレース』と呼ばれるGMを用いた、最も危険で命知らずのパイロット達、通称『ライナー』達が競い合うレースである。
――――
『さて、レースも折り返し地点を過ぎ、後半戦へと迎えました。現在、第三チェックポイントを通過し、残ったライナー達はゴールを目指しています。え〜、現在のライナーは既に八人のみのなっており、二十三人居たライナーの半数以上がリタイアしております。』
パイロット席の側にあるラジオから、二人の実況が聞こえてくる。
「~~♪」
長い赤髪をポニーテールに結んでいる少女は、操縦桿を握って鼻歌を歌いながらラジオに耳を傾けていた。
『現在の順位は一位のライナー、『蒼き貴公子』こと『グラン』が搭乗するMGM『オーベスク』。その後方に『鋼鉄の女王』、『ベルニカ』搭乗のHGM『ロギアス』が首位を争ってます。その後ろには、三位の『我が美貌たるは神の――』あ~、(長いなぁコイツの。)……おっと失礼。えー『アンデルセン』が駆る金色のHGM、『神羅剛雷天ら……』あぁー、『神羅』が続いております。更に距離が空きまして――』
実況が次々と、ライナー達を解説していく。そして、少女の解説が始まった。
『そして最後尾の八位を走りますは、『バットガール』こと『セリア』。LGMの『アストラ』は現在も何とか走っていますが、前方集団との距離を開けられてしまっています。』
「何とか~ってなんだよ、何とか~って。私もアストラもまだ全然余裕だし。」
セリアは操縦桿を握りながら、指でカチカチと音を鳴らして苛立ちを見せた。セリアはアストラを操り、遠い先を走るGM達の背中を追っている。しかし、その距離は中々に埋まらない。
『さて、今回の『DEAD or ALIVE』の最高倍率は……。やはりこのライナー、『バットガール』のDEAD・Betが今レースでも最も高い倍率となっております。掛け金もとんでもない額に。何故これ程と人気者なのか!?』
『その悪運の強さの為か、殆どの参戦レースにて機体が大破しているのに、何故かバットガールだけは生き残ってしまう。それ故にこの人気でしょう。果たして今回はどうなるでしょうか!?是非生き残っていたらインタビューでも――』
《プチンッ!》
少女はラジオのスイッチを、強く弾いて切った。
「やかましいっての!全く……、言いたい放題言いやがって!何が人気者だよ!目玉がクレジットで出来ているだけでしょ。」
『セリア、今は集中しな。』
セリアの無線から老婆の声が聞こえてきた。
「分かってるって、『婆ちゃ』。此処からが勝負――だからねッ!」
《ブォン!!!》
軽量二脚LMGアストラは四つのブースターを吹かし、離れていたGM集団と一気に距離を埋めていく。前方をGM集団もそれに気付く。その時、一台の四脚型MGMが上半身だけを後ろに回し、セリアを狙った。
『死ねぇ!バットガール!!』
無線から殺意の籠った男の声と共に、機体背面に積んでいるミサイルを一気に発射した。
「う、嘘っ。私狙いかよ!」
セリアは迎撃しようと、右腕のマシンガンをミサイルに向け、操縦桿の引き金を引く。しかし次の瞬間、
『ウェポンオフライン』
機械音声と共に、目の前のモニターにそう表示された。セリアの居る位置は、まだ発砲禁止エリア内だった為に武器を使えなかった。
「うげっ!?まだ此処禁止エリア内!?」
そうこうしている内に、迫り来るミサイルの集団。セリアは躊躇いながら、一つのカバーが掛かったスイッチに目を向けた。
「まだ使いたくなかったんだけど!」
カバーを上げてスイッチを押した。
《ドドドドンッ!!》
大量のミサイルが、セリアの駆るアストラの元へ降り注いだ。
『ハッハッハッハッ!やったぜ!これでテメェに掛けたDEAD・Betで一儲け――』
《ブオンッ!!》
爆風の中から、アストラがオーバーブーストを噴き上げて姿を現す。セリアの身体には、その速度の負荷が掛かる。けれど一瞬にして、空を駆け抜けて前方の集団へ近付いた。
「――ッ!はい残念でした!この童貞雑魚雑魚糞野郎!!」
セリアは身体に掛かる負荷に耐え、汚い言葉で罵りながら両腕のマシンガンを構えた。
『ウェポンオンライン』
《ババババババババッ!!》
モニターの表示が変わった瞬間、セリアは引き金を透かさず引いた。攻撃を仕掛けた四脚GMへ、上空から一気にマシンガンを放つ。四脚GMは初弾らは被弾したが、その後に続く攻撃は機体を左右に動いて避けていく。セリアは負荷に耐えて狙い続けると、
『オーバーブースト停止』
オーバーブーストが止まり、身体に掛かる負荷が消えた。オーバーブーストの勢いを殺さず、ブースターを噴き上げながら地面へ近付く。セリアは一呼吸を起き、相手にしっかりと狙いを定めた。
『このクソガキがッ!俺の為にくたばっちまえよ!!』
「あッはッはッはッ!!どうしたの!?口だけかよ、雑魚雑魚芋虫君!!」
セリアは撃ち続けながら、アストラを地面へ着地させた。その時、
『マシンガンオーバーヒート!オーバーヒート!』
警告音が機体から響く。両腕のマシンガンを撃ち過ぎたせいで砲身が過熱し、安全装置が起動して発砲が強制的に終わった。
『ハッ!次こそ確実に殺ってやる!!』
そう男は叫ぶと、右腕に装備したヘビーライフルをアストラへ向けた。しかし、セリアは笑みを浮かべて言い放つ。
「私ばっか見ていると、足元掬われるよぉ♪」
『アァッ!?何――』
《ドンッ!!!》
大きな砲撃音と共に、四脚GMの胸部が爆発した。その爆発を起こした弾丸は貫通し、アストラへと向かうがセリアは容易く避けた。
『貴方もDEAD・Betの対象よ?倍率は低かったけどね。』
そう砲撃を放った女の声が聞こえた。四脚GMの前を走っていたHGMの右肩には、先程の砲撃を放った大砲が煙を吹いていた。
「だから言ったじゃん。素人雑魚虫君がさ!」
既にその汚い言葉は、男にはもう聞こえない。セリアは鬱憤晴らしに、大破した四脚GMを通りすがりに頭部を蹴り飛ばした。頭部パーツは機体から外れ、綺麗に空を飛んだ。すると、
『ビッー!右脚部損傷』
警告音が響き、モニターに損傷箇所が赤く光る。
「げっ!?」
『……セリア。脚部に損傷が出たみたいだが、何したんだい?』
「……ん~?何でもないよ~♪うん。ちょっと小石に躓いただけだからさ~♪」
無線から聞こえる婆ちゃの声に、セリアは陽気に誤魔化して言った。しかし、無線の奥から仲間達の溜め息が聞こえた。
「い、一位になればチャラだよチャラ!」
セリアはそう叫び、アストラの体勢を直して加速した。
『良いかい?分かっていると思うが、オーバーブーストは後一回までが限界だよ?ここぞって時に使うんだい。』
「分かってるって!」
『(分かってないから言われてるんだよ……。)』
小声で仲間の声が聞こえた。セリアは額に皺を寄せ、後でその声の主を殴る事を心の中で決めた。
「勝てば良いんだよ!勝てば!!そうだよねぇ!?オバサン!!」
セリアは前を走るHGMへ近付く。前には三機のGMが列になって走っている。
『そうねぇ……。私はもう逆転出来そうにないし、後は小銭稼ぎが出来れば良いかしら?そうは思わない?……誰がオバサンだこの鴨ネギ小娘!!』
HGMは振り向き、右手と両肩の大砲を向けてきた。セリアはいち速くアストラを駆る。そして、
『ドンッドンッドンッ!!!』
大砲から一斉に砲撃が放たれる。セリアは砲撃を避け、前方集団へ近付く。やがて四機のGMは、廃墟郡へと突入した。
「鈍い鈍い!そんなんで、私とアストラが撃ち落とせる訳ないじゃん!!……ね?オ・バ・サ・ン♪」
セリアは相手を煽りながら、オーバーヒートから回復したマシンガンを放つ。しかし、左腕に装備されている強固な盾を構え、弾丸を弾き飛ばしていく。
『年上の口の聞き方がなってないわねぇ?……私だけがアンタを狙ってるんじゃないわよ!!』
女の声と共に、もう二機のGMが走りながらセリアの方へ向く。
『へへへッ!いい加減くたばって、俺達に大金を稼がせろ!バットガール!!』
『まぁ、此処は共闘といきましょう。命知らずな馬鹿娘に、本当の戦いを教えて差し上げましょう。』
そう言うと同時に、三機はセリアへ攻撃を仕掛けた。セリアはアストラを左右に動かし、廃墟を盾にしながら攻撃を躱していく。
「うわうわうわッ!?マジできもきもッ!!三人でじゃないと私を落とせないとか、どんだけ雑魚ゴミ共なの!?だから一生恋人も出来ず、頭の禿と顔の深じわが進んじゃうんだよ!」
セリアは反撃も出来ず、ひたすら避けながら相手を罵倒する。するとその時、一人がその言葉に反応した。
『失礼なっ!?僕は隣の奴らと違って、まだ禿げもシワもないし、出会いのない歳じゃない!』
『アァッ?』
『……小娘よりも先に、貴方から殺してあげましょうか?』
二機は攻撃を止め、爆弾発言をした相手に向く。相手は無線越しに言い訳と謝罪を繰り返した。セリアはその隙を突いて、空を飛んで一気に三機を抜かした。
『『『あっ――。』』』
「じゃあねぇ♪童貞お兄さんと禿オジサンと皺オバサンの三馬鹿トリオさん♪」
セリアは三人を嘲笑いながら、舌を出して手を振った。
『――ッ!このクソガキ!』
アストラが着地すると、三機はセリアへ再び攻撃を仕掛けようとした。しかし、セリアは周囲の廃墟へマシンガンで攻撃し、更にアストラのリアスカートから小さな爆弾を幾つも落とした。爆弾は地面を跳ね、追い掛けてくる三機の前へ転がった。その時、
《バンッ!バンッ!バンッ!》
『ウワッ!何だッ!?』
爆弾が爆発し、三機は急停止して足を止めた。爆発からは何とか逃れ、直ぐにでもスラスターを噴射しようとした。しかし、
《ガラガラガラガラッ!!》
三機の上空から、瓦礫が降り注いだ。セリアが先程撃ったマシンガンは、脆くなっている廃墟を破壊して、その残骸を下へと落とした。
「バイバ~イ♪」
三機は瓦礫に足を取られ動けなくなり、セリアは彼等にそう言い残して先を進んだ。
『クソがーッ!覚えてろッ~!!』
先に進むに連れ、無線越しからの罵倒が小さくなっていた。セリアは鼻歌を歌いながら、首位の後を追った。
――首位の状況――
首位を走っている二機、グランとベルニカは追い抜き追い抜かれを繰り返し、接戦を繰り広げられていた。互いが弾丸を放ち、それを避けた一瞬の遅れで相手を抜かす。それをひたすらに繰り返していた。
グランが駆るMGM、オーベスクはバランスが取れた脚部逆関節型の機体。跳躍力や機動力が長けており、更に装備しているヘビーライフルは強力で、HGMの装甲に有効打に出来る物だ。対するベルニカのロギアスは重装二脚HGMで、メイン武器に小型ショットガンとハンドガンに、少量の弾数を装填した大型キャノンを背部に搭載。更には重装甲を削って軽量になり、大出力大型ブースターを装備してスピード重視で攻めている。それでも重量が重く取り回しが悪いが、ライナーとしての腕前がそれを補う。グランも同様だ。この白熱した首位争いは、モニター越しに見る観客達の手汗を握る光景だ。……しかし、
『フッハハハハッ!漸く追い付いたぞ!この我を置いて楽しむとは、貴様等万死に値する!!』
後方からアンデルセンが駆る、一際巨体で黄金色に輝く重量ホバータンク型HGMの神羅(以下略)が、搭載された全ての武器を撃ちながら猛スピードで向かってきた。
『おっと。五月蝿いのが来たな。』
グランはベルニカから距離を取り、回避行動を取った。
『邪魔な奴だ。墜ちろ!』
ベルニカも避けながら、アンデルセンへ反撃を仕掛けた。しかし、飛び散る散弾は虚しくも装甲に弾かれるだけだった。アンデルセンは更に速度を上げ、一気にトップへと躍り出てきた。
『無駄無駄無駄ァ!そんな豆鉄砲、我が神羅剛雷天嵐雨二式影み――』
《バンッ!バンッ!――バキィッ!!》
『ヌオォッ!?』
アンデルセンが話している最中、グランがアンデルセンへ発砲した。神羅の肩に被弾し、警告音が機体内に響き渡った。
『前々から思ってたが長いんだよ。色々と。』
グランは更にライフルを放つ。アンデルセンは回避をしながら、グランへ集中攻撃を仕掛けた。
『貴様ァ!我が崇高たるこの機体に傷を付けるとはぁ!!?』
『喧しいよ、アンデルセン。そろそろ、私の耳の健康の為にご退場願おうか。』
ベルニカは隙だらけになっているアンデルセンの背部を、大型キャノンで狙い定めた。――その時、
「退いた退いた退いた~!!」
『『『――!!』』』
三人の無線にセリアの声が響く。三機の後方から、砂煙を巻き上げてアストラが駆けてきた。
『面倒なのがまた来たか。』
グランは横目でアストラを見た。セリアは鼻で笑い、
「みんなが遅いから追い付いちゃった♪私を待ってくれてありがとうねぇ♪」
と嘲笑いながら言った。すると、
『バットガールよ。我が前に居る事を忘れるなッ!』
セリアの無線から、アンデルセンの大声が響き渡る。
「五月蝿っ……。二度と喋らないで消えてくれる?馬鹿みたいな長いアダ名と、目障りなGMと一緒にさ?」
『何をぉ!?貴様にも分からんか!この偉大な――』
アンデルセンは長々と話し始め、セリアは呆れながら首位へ近付いた。……その時、
『追い付いてきたか、セリア。』
ベルニカはキャノンの砲身を、グラン達の目前へ向けて放った。
《ドンッ!!》
鈍い音が響き、グラン達の目前に弾丸が飛ぶ。
『なっ!?』
『ヌオォッ!?』
グラン達は咄嗟にブレーキを掛け、弾丸を避けた。弾丸はグラン達の前へ落ち、砂煙を巻き起こして爆発した。
『先に行かせて貰おう。』
ベルニカはそう言い残し、首位を先行した。グランは直ぐに前方へ跳躍し、砂煙を突き抜けてベルニカの後ろに付く。アンデルセンは出遅れ、砂煙から抜け出したその瞬間、
「おっ先~♪」
アストラが砂煙から出て、アンデルセンを抜かした。
『ま、待てッ!バットガール!!』
アンデルセンもブースターを吹かし、遅れながらもセリアの後を追った。
四機が並んで争う中、遂に最終チェックポイントを通過した。現在の首位はベルニカ、その後ろにグラン、セリア、アンデルセンが並ぶ。グランはベルニカを攻撃し続け、ベルニカは回避に専念していた。一方、セリアはグランの背を追い掛けながら、後方から乱射するアンデルセンへ反撃を続けていた。
「マジでウッザイッ!!さっさとくたばっちまえよッ!」
セリアはマシンガンを連射し続ける。しかし、アンデルセンは回避もせず、弾丸を受けながら一直線に走り続けた。
『フッハハハハッ!!見よッ!弾丸を跳ね除けるこの機体の素晴らしさをッ!』
アンデルセンは大笑いしながら、セリアへ発砲をし続ける。セリアは廃墟郡を駆使し、弾丸を避けていた。しかし回避を続けるにつれ、アンデルセンはより近付き、更に前方の二人と距離が遠退く。
「アァッ!もう、マジで鬱陶しいッ!!」
セリアは苛立ち、オーバーブーストのスイッチに指を掛ける。けれど、セリアは迷い直ぐには押せずにいた、オーバーブーストは機体へ多大な負荷が掛かる。婆ちゃに警告された通り、この後の事を考えれば後一回しか使えない。
『フハハハハ……!!』
無線越しにアンデルセンの笑い声が響く。セリアは更に苛立ちを募らせ、遂にスイッチを押した。
『オーバーブースト起動』
《ブオンッ!!》
オーバーブーストを起動し、四つのブースターが炎を噴き上げた。空を駆けて廃墟郡を抜けながら、開いていた首位との差を埋める。セリアは速度負荷に耐え、勝ち誇った笑みを浮かべた。その時、
『それが貴様だけの物だと思うなぁッ!!』
《バンッ!》
アンデルセンがそう叫ぶと、無線越しにでもスイッチを殴る音が聞こえた。その瞬間、神羅もオーバーブーストを起動した。幾つもの大型ブースターから炎を噴き上げ、セリアの後を追い掛けた。
『見よッ!この素晴らしき閃光の如き速さに、我が道行く全てを破壊する強靭たる身をッ!この姿、我が機体の名に新たに加えようではないか!』
神羅はその速さで、行く先阻む瓦礫を砕きながら一直線に飛んでくる。それは通常のHGMであろうとも、到底出来る様な光景ではない。セリアは驚き、更に汚い言葉で罵る。
「キモいキモいキモいッ!そこらの瓦礫に頭をぶつけてくたばってよ変態ナルシストクズストーカー変態野郎ッ!」
『貴様ァ!そろそろ我に対する暴言を改めよッ!?我であろうとも傷付いてしまうぞ!!』
セリア達は無線で言い合う中、アストラと神羅の距離は僅かながら開き始めた。出力事態は神羅の方が大きいが、巨大な図体の重量は並のHGMよりも重い。対してアストラは軽量型のLGM。出力は下回っても、その軽さでより速く飛んでいける。セリア達が言い合っている中、遂にアストラは首位に追い付きそして、廃墟郡を抜けるのと同時に先頭を走るベルニカを追い抜かした。
『オーバーブースト停止』
オーバーブーストが切れると、その勢いのままベルニカ達の前へ降りて走る。
「ベル姉ッ!後ろの変態ナルシストをどうにかして!……次いでに~♪グランお兄ちゃんも私の為に足止めして~?」
『変態ナルシスト……っ。確かにアレはそうだな。だが、それは聞けん頼みだ。』
『お前の様な口の悪い妹が居てたまるか、バットガール。』
ベルニカはアンデルセンに付けられたアダ名に、笑いを堪えながらセリアの頼みを断った。グランもセリアに言い返し、セリアに向けてライフルを発砲した。
「チッ……。当たるもんか!そんな弾がさっ!」
セリアは弾丸を回避しながら、首位を先行して進む。その時、
『セリア、聞こえるかい?』
無線から婆ちゃの声が聞こえた。セリアは返事をする。
「聞こえるよ~。どうしたの~?」
『ラジオは点けているかい?アンタの事だから、恐らく消していると思うが。』
「よくお分かりで。」
『ラジオを点けな?コース最後の峡谷で問題が発生したようだよ。』
そう言われ、セリアはラジオの電源を入れ直した。実況の声が機体に響く。
『……峡谷の状況です。現在、『機甲種・グワドラ』の群れが峡谷の底を駆けております。更に一部のグワドラが、峡谷を登りライナー達を待ち構えています!』
「群れ~っ?しかもグワドラとか、マジで邪魔なのが来たよ……。」
『機甲種・グワドラ』とは、星間戦争によって原生生物が変異した生物で、大きさはGMとほぼ変わらず、六足で動く獰猛な虫だ。特徴的な巨大な鋏が顎にあり、先端が鋭い長い尻尾を持つ。その二つの脅威は、GMの装甲を紙切れの様に破壊出来てしまう。おまけに、身体の前方から上部を守る甲殻は鋼鉄の装甲であり、GMの装甲とほぼ変わらない。その装甲があるが故に、『機甲種』と呼ばれている。
『武器の残弾はどの位だい?』
セリアはモニターで確認する。マシンガンは既に七割は撃ち切り、リアスカートのボムも残り僅か。マシンガンはグワドラの装甲を破れるも、倒すには相応の量が必要だ。
「そんなに無いね。」
『……仕方がない。極力回避に専念しな?無理に首位を走り続ける必要もない。くれぐれも、オーバーブーストは使うんじゃないよ?アストラはもう限界なのだから。』
婆ちゃは釘を指す様に言った。セリアは操縦桿をカチカチと指で鳴らし、歯痒い様子で返事をした。
「分かってるって……。」
セリアは気怠く返事をし、アストラを飛ばした。
そうして四機のGMが、順位の変動を見せず峡谷の崖道へと突入した。大きく開いた峡谷には自然が作り出した橋と、ボロボロの人工物の橋が左右の崖道に幾つも架かっている。そして、峡谷の底には黒い濁流が流れていた。その濁流こそ、グワドラの群れの姿だった。
「うわっ……、マジでキモ。ムリぃ……。」
セリアはグワドラとは対峙した事はあるが、群れを実際に見るのはこれが初めて。カメラモニターに映るグワドラの群れに、一層気味悪く見えていた。
(アレに殺されるのは勘弁。)
底に落ちてしまえば、LGMのアストラの装甲など紙切れ同然。他の機体でも助かる見込みは少ない。……だが逆に相手を落とせば、首位をキープ出来る可能性が広がる。
「……」
セリアはボムの引き金を、躊躇いながら指に掛けた。――その時、
《バンッ!バンッ!》
「うわァッ!?」
重厚な銃声が響き、引き金から指を離した。セリアは攻撃されたかと思ったが、その弾丸は峡谷の上へと着弾した。そして、セリアの前方にグワドラの死体が降ってきた。
「うわッ!何!?」
『セリアッ!ボーっとしてるんじゃないよッ!』
無線からベルニカの声が響く。セリアは峡谷の上を見上げると、底には崖に足を突き刺して此方を狙うグワドラ達が居た。
《GYAAAAAAAaaaaッ!!》
一体のグワドラの咆哮で、グワドラ達が一斉に四機へ飛び掛かってきた。
『フハハハハハッ!我に向かうその勇気、存分に讃えてやろうぞ!』
アンデルセンがグワドラへ攻撃を仕掛け、セリア達も攻撃を開始した。セリアはマシンガンを跳んでくるグワドラ達へ放ち、他の三人もグワドラの迎撃に専念していた。
「アァックソクソッ!硬いんだよ虫けら風情が!!」
上から飛び降りてくるお陰で、装甲がない身体の下部に弾丸が当たる。それで簡単に倒せるが、グワドラ達もそれを理解して空中で体勢をセリア達へ向けて前のめりになり、硬い装甲で弾丸を弾く。そして、巨大な鋏を開き襲い掛かってきた。
《ガキンッ!!》
セリアはグワドラの攻撃を避けて跳び、反対側の崖道へ着地した。けれど、反対側の崖にもグワドラが待ち構えていた。
「邪魔ァ!!」
アストラの軽量さ故の機敏性を生かし、立ち塞がるグワドラ達を避けて進む。通り過ぎたグワドラ達は、アストラを襲おうと背後から迫ってきた。
「これでも喰らえッ!」
セリアはボムの引き金を引いた。リアスカートから全てのボムが落とされ、追ってくるグワドラ達の足元で爆発した。
《GYAAAAAAAAaaaa!》
爆煙でグワドラ達の姿が見えなくなる。けれどそれは一瞬だけで、爆煙から死体を乗り越えてまた迫ってきた。
「ああっ!ホント鬱陶しいッ!」
セリアは背後のグワドラに視線を向けながら叫んだ。……するとその時、
『邪魔だ、バットガール。』
その声が聞こえた途端、ヘビーライフルの銃声と共にグランのGMオーベスクが、アストラの真横に降りてきた。セリアはブレーキを掛けて回避し、直ぐにオーベスクの後を追った。
「危なッ!?ちょっと、何処に目を付けてんのよッ!?」
『鈍い方が悪い。』
グランは言い返すと、機体を大きく前へ跳躍した。そして、そのまま谷底へと向かって落ちていく。
「ハアッ!?何やってんのグランッ!」
セリアは咄嗟にグランへ怒った。
だがその時、オーベスクが崖に足が着いた瞬間、崖を使って再び跳躍をした。それを左右の崖を使って何度も繰り返し、再び崖道へと戻ってきた。グランはグワドラが居ない崖を使う為、逆間接を最大限に利用した走りを見せた。通常の脚部では出来ない芸当だ。
「嘘じゃん……。」
セリアはその光景に呆気に取られていた。けれど、呆けている暇もない。背後のグワドラはセリアを追い掛け続ける。セリアは背後に向けてマシンガンを放ち続けた。……しかしその時、
《バババババッガラガラガラガラ!》
『マシンガン残弾なし』
モニターに非情な文字が映った。両腕に装備したマシンガンは弾切れになってしまった。
「アアッ!もう!」
セリアは透かさずマシンガンを捨て、走る事だけに集中した。だが、反撃せずにどうにか出来る状況ではない。セリアの前方に、グワドラ達が崖道を塞ぎ待ち構えていた。セリアは大きく跳躍し、崖道に架かる橋へ向かって跳んだ。…………その瞬間、
《バンッ!!――ドカンッ!!》
「ウワァァァァ!!?」
強い衝撃がコックピットにまで走る。機体内部からは、激しい警告音が響き渡った。
『セリアッ!大丈夫かいッ!?
無線から婆ちゃの声と仲間達の慌てる声が響く。セリアは何が起きたのか確かめる為、モニターに視線を向けた。そこには、右脚部が破損した表示が出ていた。
(撃たれたッ!?誰にッ!!)
セリアは慌てて空中で姿勢制御を行い、ベルニカ達を見た。しかし、グランは先へと進み、ベルニカとアンデルセンはグワドラの相手をしている。
(じゃあ誰に――)
《バンッ!!――ガキンッ!!》
「キャアッ!!?」
『左肩部損傷』
セリアが疑問に思っている中、再び弾丸がアストラへ襲い、左肩から下が完全に吹き飛んだ。今度は確実に、三人の誰の攻撃でもない事を確信していた。セリアは攻撃が来た背後へ向く。
そこには、グワドラが鋏を広げて口を開く個体が居た。その口の中に砲身の様な物が見え、アストラへと向けていた。
「嘘……。まさか、変異種!?」
そう声に出した瞬間、変異種のグワドラは身体の後部を膨らませた。それが攻撃の瞬間だと、セリアは透かさず理解した。セリアはアストラを動かし、機体を横に回転させた。次の瞬間、
《バンッ!!――ガツンッ!》
『ビッー!第四ブースター損傷』
弾丸が放たれ、アストラのブースターの一つを貫いた。しかも、ブーストが損傷してしまった事と、無理な姿勢制御をしてしまった為に、アストラの推力が失くなってしまった。向かっていた橋には届かず、そのまま谷底へと落ちていく。底にはグワドラ達の群れ。落ちたら命はない。
「――ッ!こうなったらッ!!」
セリアは躊躇せず、オーバーブーストのスイッチを押した。
『オーバーブースト起動』
《ブオンッ!!》
残された三つのブースターから炎が噴き上げた。橋の下を潜り抜け、崖道目指して上空を飛び上がる。
《バンッ!!》
「クッ――!」
変異種からの更なる攻撃を避け、一気に高度を上げた。後一歩という距離に達し、セリアは安堵の息を漏らした。……しかし、それも喜びの束の間だった。次の瞬間、
《ドカンドカンッ!!》
突然、動いていたアストラの二つのブースターが爆発した。その原因は、オーバーブーストによる過負荷が原因だ。更に、機体システムが過熱による異常が起こり、アストラは起動を停止した。
「嘘――。不味い不味い!動けッ、アストラッ!!」
非常用電源に切り替えるも、メインカメラを動かせる程度の電源。カメラ越しに見えた崖道は後僅か、ほんの少しでも飛べれば届く位置。けれど、セリアが操縦桿を動かしてもアストラは反応しない。
『セリアッ!』
「――ッ!?ベル姉ぇ!」
ベルニカのロギアスが崖道ギリギリを走り、銃を手放してアストラへ手を伸ばし、互いの手が触れ握った。――だが次の瞬間、
《バンッバンッバンッ!!》
新たに現れた変異種達の砲火が、二機へと放たれた。一発はロギアスが伸ばした腕に、もう二発はアストラの左側腰部と右脚部に当たる。ロギアスの腕は、アストラの手を握り締めたままもげた。
『――ッ!セリアッ!』
アストラは無抵抗に、そのまま谷底へと落下していく。セリアは谷底に広がる光景に、絶望の表情を浮かべていた。――しかしその時、
《HOOOOOoooooo!!》
大地を揺らす咆哮と共に、大空から谷底へ向かう巨大な影が現れた。それは大きな口を開いて峡谷の崖を壊しながら、グワドラ達の群れを地面ごと一気に頬張り、再び空へと飛び立つ。
「『エアリーホエール』!?」
アストラは、エアリーホエールの巨大な背中へと落ちていった。
『原生生物・エアリーホエール』は、全長十七メートルを越える、巨大な四つの翼と八つの副翼に大きな尾翼を持ち、背には電気を放つ柱の様な角が幾つもある空飛ぶ生物。原生生物の中でも最も巨大で、性格は基本的に温厚。けれどその大きな口は、街一つを簡単に呑み込めてしまう。そして、並大抵の事では怒らないが、怒らせれば周囲の地形を変える程に凶暴な一面もある。
「――痛ッ!」
落下した衝撃が機体全体へ伝わり、セリアはコックピット内で身体を打った。セリアは身体を起こして周囲を見た。奇跡的なのか、エアリーホエールの角には当たる事はなかった。食事を終えたエアリーホエールは、再び峡谷から離れ大空へと飛び立つ。セリアはグワドラからの危機にホッと一安心していた。しかし、
《GYAAAAAAAAaaaa!》
エアリーホエールの背中に数体のグワドラが居た。エアリーホエールの食事の際に、運良く背中に逃げたのだろう。グワドラはエアリーホエールの背中を齧り、抉った肉を喰らい始めた。
「うわぁ……。」
セリアの目に生々しい光景が映る。この状況でも、グワドラは捕食を優先にしている。そして、いくら巨体でも、背中に乗られてしまえばこうも無力なんだと、セリアは悠長に思っていた。――その時、
《HOOOOOoooooo!!》
エアリーホエールが大声で鳴いた。すると、
《ズルッ……》
アストラが一瞬だけ動いた。セリアはシステムが戻ったのかと期待したが、そうではなかった。エアリーホエールが若干、身体を横に傾けていた。その傾きもせいで、アストラは背中から滑り落ち始めた。
「ヤバいヤバい待って待ってッ!?」
セリアはコックピット内で慌て、アストラの再起動を試みた。けれどアストラは反応せず、更に傾きが酷くなって滑っていく。グワドラ達は、エアリーホエールの肉を貪りながらも、背中に足を突き刺して耐え続けていた。
その時、エアリーホエールの背中の巨大な角が青く輝き始めた。セリアは即座に理解した。
「ヤバいヤバいヤバいっ!!ここで更に放電は不味いって!?」
セリアはガチャガチャと操縦桿を動かすが、やはりアストラは動かない。そうこうしている内に、角が更に青い輝きを放つ。
「こんな所でッ!動いてッ!アストラーーッ!!」
《ガンッ!!》
セリアは思い切り、コックピットを蹴った。その瞬間、
『リアクター起動』
非常用電源からメイン電源へと切り替わった。
『システム再起動開始』
機械音声がコックピットに響き、モニターがアストラの起動を知らせた。
「やったっ!――って、うわぁ!?」
しかし同時に、アストラはエアリーホエールの背から落下した。そして、エアリーホエールの角から放電が放たれた。直撃は避けられたものの、放電の一部がアストラを掠めた。
『システムエラー検知。システム再起動に失敗』
無慈悲な音声が響く。
「このまま落ちたら不味い!お願いだから動いてッ!」
エアリーホエールはかなりの高さまで飛んでいた。何もしなければ、地面に落下した瞬間に機体は粉砕される。セリアはがむしゃらに、やれる事をひたすらに行った。地面が間近に迫ったその時、
『メインシステム起動』
「今ッ!!」
セリアは操縦桿を握り、残ったブースターを全力で噴かした。アストラは宙に飛び立とうとした。……しかし、
《ズドーンッ!!!》
アストラは飛び立つ事が出来ず、そのまま地面へと落下してしまった。辺り一面に砂煙に覆われ、遠くからエアリーホエールの鳴き声だけが響いた。
………………
…………
……
『今回のGMレース優勝は、蒼き貴公子・グランのオーベスク!二位はアンデルセンの神羅!あちょっ!――フハハハハハッ!今回は優勝を逃したが、見よ我が機体神羅剛ら――ハイハイ!凄いですねー!そして、三位はブーイングの嵐に包まれてます、鋼鉄の女王・ベルニカ!吹き飛ばされたロギアスの腕は、こんな見るも無惨な姿となりました。これも、あのバットガールに手を差し出したのが原因ですねー。ハッハッハ……。あ、嘘です嘘です!無言で首根っこを掴まないで下さい!体格差があるんですから!ほら私、こんなに浮いてますよ!?……はぁ。そして、遅れながらに三機のGMが……』
「……」
荒野に大破したGMが夕日に照らされる。その上でラジオを流し、悪態をつきながら非常食の干し肉を頬張るセリア。すると遠くから、一台の大きなトラックがやってきた。セリアは一瞥すると、再び荒野の地平線を見た。トラックが大破したアストラの側に止まると、一人の老婆と四人の男女が降りてきた。一人の男が、大破したアストラの装甲を触りながら状態を見る。
「あーぁ。またヒデェ損傷だよ……。セリア~、どうすんだよコレ。」
男が小言を言った。その時、
《ガツンッ!》
「イタァッ!?」
セリアが男の頭を狙ってラジオを落とした。
「セリアーッ!!」
男はセリアに叫んで睨むも、セリアはそっぽを向き知らん顔をする。すると、老婆がアストラの側まで近付き、セリアの方を見上げた。
「今回も元気そうで何よりだよ。セリア。」
「……婆ちゃ、最後のオーバーブーストは勘弁してよ。」
セリアがそう言うと、婆ちゃは笑った。
「なぁに、死ななかっただけ良いさ。今回もお前さんのDEAD・Betには掛けてないからねぇ。」
「孫に対して優しくないね~……。」
「金だけを飛ばす孫なんだから仕方がないだろう?死ぬ時は事前に言っておくれよ?有り金全てを掛けてやるからなぁ。」
婆ちゃがそう大笑いし、その場の全員も釣られて笑った。セリアは舌打ちをし、その場に寝転んで呟く。
「ねぇアストラ。私の家族が冷たいよ~……。」
セリアは指で、アストラの装甲を優しく撫でた。そして、そのまま目を閉じてアストラに身を委ねた。……すると、
『おーっと!彼処で倒れている死体は、まさかのまさか~?』
五月蝿い機械音と共に、騒がしい実況の声が聞こえた。セリアは眉間にシワを寄せ起き上がった。そこには大きなレンズを付け、二本のアームの片方にマイクを持ったドローンが飛んでいた。セリアが起き上がると、
『あ~っと……残念ッ!!今回もバットガールは生き延びてしまった!会場からはDEAD・Betに掛けた観客からのブーイングの嵐です!』
と音声と共に、ドローンは大袈裟な動きをして残念がった。そして、ドローンはマイクをセリアに向けた。
『さて、バットガールことセリア。今回のレースのご感想をどうぞ♪』
そう言われたセリアは、透かさず立ち上がってドローンを掴み、全力で荒野に蹴り飛ばした。
『ア~レ~……』
ドローンは綺麗に軌道を描きながら、宙を飛んでいった。セリアは大きく息を吸い込み、声を出した。
「バーーッカ!!アーーッホ!!クレジットの亡者共め!グワドラのエサになって死んじまえぇーーーーッ!!!」
荒野に響く程の大声で罵倒し、息を切らした。両膝に手を乗せ、前のめりになりながら息を整える。そして、
「だああァーーッ!今回こそ一位取れたと思ったのにぃーーーッ!!」
勢い良く空を向いて叫びながら、両手で髪の毛をグシャグシャに掻き乱した。婆ちゃ達はセリアの様子を見て笑っていた。




