空飛ぶ乳酸菌
掲載日:2026/04/03
その日、乳酸菌は空を飛んだ。
桜の咲き誇る春の空は、あかるく乳酸菌を迎え入れてくれた。
「いらっしゃい、善玉菌」
「よく来てくれたね、空へ」
爽やかな甘さと酸っぱさに薄く染められて、シュワシュワと広がる健康的な薫り。空の口の中に、ヤクルトを飲んだあとのように、乳たんぱくのかたまりが残る。
心細かった乳酸菌も、空にあかるく迎えられて、あはっと笑った。
ぼくは人間の健康の奴隷なんかじゃなかったんだ──
ぼくは人間の腸内を整えるためだけに産まれたんじゃなかったんだ──
空に溶けた乳酸菌は、空と一緒になって、いつまでもいつまでも、やがて雨にまじって地上へ帰るまで、空の上を自由に飛び続けた。




