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異世界転生を断ったら、女神に断られました【2000文字】

作者: 有梨束

真っ白いふわふわの、雲の上と言わんばかりのところに座っていた俺にその人は言った。

「あなたは若くして亡くなりました。そんな貴方に好きな世界への生まれ変わりをプレゼント致しましょう〜!」

「結構です」

「………え?」

両手を広げ、仰々しくしていた羽の生えたその人は、俺の言葉に固まった。

「えっと…、どこでも好きなところにお送りしますよ!異世界でもなんでも!」

「結構です」

「え……?」

本気で戸惑っているらしく、笑顔のまま俺を見下ろしている。

俺は俺で、普通にその人を見る。

「ええ!?輪廻転生ですよ!?何にでもして差し上げられますよ!貴族の息子でも、王子でも、絶世の美女でも、勇者でも、魔王でもっ!」

「なりたくないので遠慮します」

「ええ…」

絶句したその人は、フラフラと俺の元まで降りてきた。

「本当にいいんですか?」

「はい」

「女神の慈悲、いらないんですか…?」

やっぱり、神の類なんだ。

本当にいるんだな、女神って。

いや、そんな涙目で見られても。

「特殊能力でも、チートでも、不老不死でもなんでも授けますよ…!」

「食い下がりますね」

「こちらもこれが仕事ですので!」

「それはご苦労様です」

態度の変わらない俺に、女神はとうとう膝をついた。

そして、ぐずぐず泣き始めてしまった。

「うわ〜ん、どうしましょう〜!このままでは消化できませ〜ん!」

女神がおいおい泣いている。

まじか。

何かしてあげたくても、今の俺にはハンカチ一枚ない。

これ、俺が悪い?

「ぶえええん、ぐずん」

「あの、何か困るんですか?」

泣き止む様子もなければ、先にも進まないので、仕方なく訊く。

女神はガバッと勢いよく近づいてくる。

「困ります!まず私の仕事が滞ります!」

「それは知りませんけど」

「そして貴方の魂の消費分が足りませんっ!」

「というのは?」

「人には人生を通して消費しなくてはいけないエネルギー値みたいなものがあるんです」

「はあ」

「貴方は元々のエネルギー値も大きいから、消費が追いついていないんです!」

女神はふえぇとしおしおしながら、鼻を噛んだ。

チーン。

…えっと、なんだ?

寿命を使い切っていないから、使い切って欲しい、みたいな?

そんな面倒臭いシステムだったんか。

消費のために、もう一回人生リスタート…。

勘弁してくれ。

「…それってどれくらい足りてないんですか?」

「乙女ゲームの主人公になって、逆ハーレムで全員から愛されるくらいです…」

「具体例のはずなのに、何一つわからない…」

「つまり、ご都合主義人生を迎えないといけないくらい、有り余ってるんですっ!!」

そんな力説しなくても。

拳を握り締めて、俺の顔スレスレに近づいてくる。

「俺もう一回人間やりたくないんですよ」

「人間じゃなくてもいいですよ!」

「疲れますし」

「人間じゃなくてもいいですよ!!」

「とりあえず一回休みたいし」

「人間じゃなくても、い・い・で・す・よ!!!」

ダメだ、聞いちゃいない。

鼻息荒い女神、美貌が台無しだぞ。

あー、何もしなくても許される生き方ができるやつ、探すしかないのか…。

人生歩むのは当分いいから、無機物系がいいな。

「じゃあ、博物館の宝石で」

「へ?」

「それなら丁重に扱われるし、俺何もしなくていいし」

「貴方の消費分からいくと、怪盗に盗まれて数奇な運命を辿りそうですね」

「…じゃあ、その辺の石ころでも」

「数多くの小学生に登下校で毎日蹴られても足りないですね」

「……じゃあ、いっそ山とか」

「毎秒噴火して忙しそうですね」

「………ちなみに、乙女ゲームに転生したらどうなるんですか」

「総勢キャラクター100人くらいに囲まれて、死ぬまで愛でられるのでは?」

多すぎる…!

それは違う意味で死ぬのでは?

「乙女ゲームにしますか!?」

「絶対嫌ですっ!」

「うえーん!じゃあどうやって消費するんですか!もう残業やだよおぉ〜!」

ブラック企業かい。

泣きたいのはこっちだ。

女神は転生させたい、俺はしたくない、…あっ。

「神になるっていうのは?」

「へ?」

「そんなに消費量が余ってるなら、神くらいイケるんじゃないですか?」

「へ…、できなくないです、ねぇ…?」

女神はうんうん唸って、そして神妙に頷いた。

「できます、たぶん」

「じゃあ、神様になります」

「…どこの神をご希望ですか?」

「ここの」

「えっ?」

「この天空の神になります」

そう宣言すると、ブワアッと風が吹いて、次に目を開けた時には俺に羽が生えていた。

「マジじゃん…」

「すごい、神の誕生を初めて見ました…」

感動している女神の余韻をぶった斬るように告げた。

「では、今日から俺が上司なんで」

「は、い?」

「ここの神であり、最高位に君臨しました。つまり貴女の上司です」

「え…、っと」

「ボサっとしてないで働いてください」

「えっ」

「俺の転生拒否を認めなかったんだ。今日からは部下として馬車馬のように働いてもらいますよ」

「ええええええ!?」

「神に背くと怖いですねえ」

「助けて、神様ぁ〜!」

「女神に慈悲なし!」




毎日投稿19日目。お読みくださりありがとうございました!

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