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Hunger  作者: 金子よしふみ


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7/9

表彰式

 宿泊施設で爆睡をした翌日、閉会式が行われた。昨日までの熱気が嘘のような冷気。もうすぐ春休みだというのに、肌感は冬のそれである。京都の生徒も秋田の生徒も心なしか顔が引きつっていた。寒いのはたまらないのだろう。

 表彰が順を追って行われ、結局彼らは十位だった。鮮明に番号が付けられたわけではないが、審査員奨励賞までのカウントがそうだった。

 はんが。でも、甲子園。美術部。でも、甲子園。文部科学大臣賞を勝ち取った顔には歓喜が、中小企業長官賞の顔には驚嘆が、新潟県知事賞の顔には涙があった。それは白球を追う選手と寸分違えるものではなかった。 

 閉会後、教員が校長への報告をしている傍らに審査員の一人が来た。いわく、三人は、共同作業とは言いがたいので、作品の良しあしの前に低評価になってしまったらしい。

「しかし、あれでは浮世絵だな」

「はあ」

 白いひげをさすりながら審査員から皮肉じみたことを言われ、大人の対応のできない鵜飼はただ力なく同意じみた苦笑いを浮かべた瞬間である。若くはないその審査員が重そうに館内に走り出した。素っ頓狂にあっけにとられた三人から電話を終えた教員が一通りを聞いていると、息を切らして審査員が戻ってきた。

「君たちは知っていてあれをしたのかい?」

 三人どころか、教員も小首をかしげた。

「光の当て方だよ。江戸時代は行燈だった。つまり、光は横から絵に当たる。現代は天上からの、上からの光だろ。だから、君たちの絵を横から光を当ててみた。見事だ。なぜ、言わなかった」

「なぜって……」

 この中で美術に心得のある鵜飼に、教員も内海も梅川も視線を送るが、当の本人にとっては内海の下絵がこうだったし、梅川の腕前を生かすにはどうしたらと思っていただけのことであり、それ以上の説明はできなかった。

「それこそ浮世絵も専門部署に分かれて作業がされていた。君たちにもそういう信頼がなければ出来上がらなかっただろう」

「信頼? そんなもん知らない。自分の役割を全うしただけです。『私はあなたを信用します』、と言って関係を作るわけではないでしょ」

 これ以上進めると、またしても何を言い出すかしれない内海を、鵜飼は慌てて止めた。

「とはいえ、結果を覆すわけにもいかない。君たちの今後の活動がさらに活発するよう期待しているよ」

 審査員は満足そうにひげをなでながら行ってしまった。即席チームが間もなく解散するとも言えなかった。

「おい、内海、さっき続きなんて言おうとしていた」

「信頼なんて陰毛のようなものだ。いつの間にか生えている」

「言わせなくて正解ね」

 梅川の疑問に答えた内海の肩に手を持たれかけて心底ほっとした鵜飼だった。


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