表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

曖昧な夢

作者: 神原夏吉

monogatary.comでお題「夢の続きがみたくて」で投稿したものです。空白と改行を除き、1000字以内にしています。

 午前九時すぎ。カーテンからは明るい光が漏れている。

 ふと、自分の頰に触れると、少し湿っていた。

 なにか、夢を見ていたらしい。切なくて、嬉しくて、懐かしい夢。そんなような夢だった……気がする。

 だが、思い出せない。どうしても思い出せない。それなのに、なぜかもう一度見たい、続きが見たいと思っている。

 今日一日は、その夢のことで頭がいっぱいだった。

 最近は特に集中して受けている授業も、あまり頭に入ってこなかった。

 小学校から仲の良い友達にも話してみた。

「あー、たまにあるよね。感情だけ残って内容が曖昧な夢って。てか、久しぶりだね。葵が話しかけてくるの」

 言われて気付いた。そういえば、最近は勉強ばっかりしていて、和奏ともクラスが離れてるから全然話してなかった。

「あ、そうだね。なんかごめんね」

「気にしなくていいよ。まあ、少し寂しかったけど。でも、葵にとっては重要だもんね」

 その言葉を理解するのに数秒かかった。

「え!? ち、違うって! そうじゃないって!」

「冗談だよ、そんな慌てなくてもね」

 まんまと嵌められたらしい。自分だけ意識しているような気がして恥ずかしくなる。

 改めて、こうやってくだらないことを話すの久しぶりだな、と思った。



「昨日の夢か。確かに気になるよね」

「海斗もそう思うんだ」

「僕だって一応人間だからね」

 彼も、小学校からの友達である。頭が良い人も、一応人間味があるんだなと思った。

「それよりも、最近ずっと勉強ばかりしているそうだけど、なにかあったの?」

「いっ、いや別に。ちょっと成績がやばいかなと思って……」

 彼と話していると、なにもかも見透かされているような気がする。

「それは大事だと思うけど、無理はし過ぎないようにね」

 その時、ふと夢の内容が鮮明に蘇った。そうだ、そうだった。勉強よりも、頭が良いことよりも大切なもの。

「なにか思い出したみたいだね」

「……うん」

 正夢。それは、夢で見た内容が現実になること。根拠はないと言われているけれど、そんなことはどうでも良い。

 ただ、夢の続きがこれからずっと見られる気がして、少し嬉しくなった。

「ありがとう」

 自然と口からこぼれていた。そんな言葉に、海斗は少し驚いていた。

「お礼を言われるようなことはしてないけど、まあ、どういたしまして」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ