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六話 魔法の効果が切れる夜の奇跡

魔法の効果が切れる日、一宮さんは食事に誘ってくれた。私は普段通りに仕事をして終わるつもりだったのに、どういうことなんだろう。麻木さんは渋い顔をしながらも車を貸してくれて。


「普段から外食が多いでしょ? だから、新しい店を探したかったんだけど一人で入る勇気がなくてさ。付き合ってくれてありがとう」


「いいえ、私なんかでよければ… 普段はどうしてるんですか?」


「適当に俳優仲間を誘うんだけどね。あいつら太りにくい体質なのかね。焼肉好きでさ。たまにはこういう大人向けの店もいいと思うんだけどね」


そう言いながら自分で車を運転して案内してくれたのは豪華な和食レストランで。その個室を予約してあって、板前さんがお寿司や和食を出してくれる贅沢さだ。


「お酒飲める?」


「少しなら大丈夫です」


「じゃあ、少し飲もうか。お勧めがあるんだ」


勧められるままシャンパンみたいな発泡日本酒を飲む。微炭酸で飲みやすくて、値段を忘れてしまう。クレジットカード使えるといいな。


「普段からこんな素敵なお店に一人で来るんですか?」


「普段からじゃないって! 自分にご褒美したい時とかは来ることもあるかな」


そう言いながら湯呑を取り上げて緑茶を啜る。華やかな人だなあとしみじみ思う。着ているのは私服のわりにオシャレしている。スラックスにTシャツとジャケットなんだもの。足元もきっちり革靴履いてるし。


「そういえば、今日はスーツなんて珍しいですね」


「まあ、今日くらいはね。ビジネスカジュアルって感じに合わせてみたんだ」


誰に? って聞くほど馬鹿じゃない。きっと普段からスーツばかり着ている私に合わせてくれたんだ。思わず日本酒のせいでなく顔が赤らむ。


「一宮さんって優しいんですね」


「いいや、俺は優しくする相手を選んでるつもりだよ。誰にでも優しくするのは苦手なんだ。麻木さんの作ったイメージは守ってるつもりだけどね」


「え…?」


どういう意味なのか? と問いかけようとした所で板前さんが前菜を並べてくれたので会話は打ち切られてしまった。


前菜から始まる和食のコース料理と上質なお酒にすっかり気分がほぐれてしまって。これこそ魔法にかけられたようだった。夢なら覚めないでと思うほどに。



食事をする時は夕暮れだったのに、お店を出た時にはすっかり夜も更けていて。私の酔い覚ましに閉まる寸前だったフラワーパークへ連れて行ってくれた。


「少し歩こう。夜はライトアップしていてキレイなんだ」


そう言いながら差し伸べられる手を私は当たり前に握り返す。日本酒を飲んで甘ったるく酔った頭じゃ、怖いものも恥じらいも何もない。


「私、一宮さんに感謝してます。あなたのおかげで私は自分を少しだけ好きになれそうです。ずっと自分に自信持てないままだったけど」


「知ってるよ。素晴らしくきれいなのにもったいないことしてるなって思ってた」


そう言いながらつないでいた手を引っ張られて、勢いのまま彼の胸に飛び込んでしまう。


「俺ばかり好きみたいで嫌だったんだけどね。でも、手放したくないよ」


困ったような声で言う。どんな顔をしているんだろうと思ったけれど、ぐっと強く抱き締められて何も見えなくなる。重なり合った胸がどちらもドキドキしっぱなしでどうしたらいいのか分からなくなる。


「きれいになっていくあなたを見ているのが嬉しかったのにね。でも、他にもあなたの魅力に気づく男がいるかもしれないって、気が気じゃなくなった」


「そんな… あるわけないです。この間、会社に行った時だって、私はまるで動物園の珍獣みたいに見られました」


「モデルでもないのに、あの格好で行けば当たり前だろうね。あなたの今の格好は男の好みじゃなく俺の好みだし」


そう言いながら私の頬に片手が触れて、そっと目じりに唇が触れる。それから頬に唇が触れた。


「一宮さん…?」


「俺、意外と束縛しますよ。だけど、同じくらい自慢もしたいんだ。麻木さんだけじゃなく俳優仲間とか沢山の男達にね。だから、俺の彼女になってよ」


嘘でも魔法でもなんでもいい。この一瞬を夢にしたくない…!!


真剣に思った。ずっと憧れていた。傍にいられるようになってもっと好きになった。一宮さんの方は魔法のせいかもしれない。それでも、私……


「あなたが好きです。私、ずっとあなたが好きでした…! 一人でなんか生きていけないくらい、あなたが好きです…!」


ありったけの勇気と少し残っているお酒に力を借りて、広い背中に腕を回しながら言った。


「俺もだよ。一宮じゃなくて琉偉って呼んでほしかった」


そっと額を重ね合わせながら言うと、あの薄くて形良い唇がそっと重なってくる。どうしたらいいのかわからなくて戸惑う私を抱き締めて、重ね合わせるだけのキスを何度かしたかと思うと、


「結婚を前提に付き合ってほしいなんてさ。俺らしくないなあ」


「私でいいんですか? 琉偉さん」


「敬語はなし。ね? 呼び捨てにしてみなさいって」


小さく頷いて私はもう一度重なってくる唇を受け止めた。…これで魔法が永遠になる。


心の隅でそう思ったけど、魔法がどこまでなのか? もうどうでもよくなっていた。…私を抱き締めてくれる人を幸せにしてあげられますようにと、祈っていた。


魔法に頼ってしまった分だけ、これからも努力していこうって心に誓って……


琉偉の運命を変えてしまった罪は私だけが背負う。そんな私を選んでくれた琉偉の幸せを私は何より願い、また守り続けてあげたいから。


「俳優業以外にこんなに夢中になれることがあるなんてさ。思わなかったよ」


自分にあきれて笑いながら言う琉偉を、私はまっすぐに見上げて笑い返した。罪を背負う覚悟を決めて…… 運命を歪める恐ろしさを理解して、それでも琉偉を恋しいと思ったのは事実なんだもの。


琉偉と五月のその後をどうするか?

すこし迷っています。ファンタジー関係なくなっちゃうし(-ω-;)

書くとしても18禁になっちゃいそうだしなあ。

続き読んでみたいお方は一言感想ください。

一言書いてくれと言ってくださるだけで頑張れます(`・ω・´)

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