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第二部 エピローグ スィートルームですごす夜

一部性描写をにおわせています。

ご注意ください。

私のスケジュールは基本的に琉偉と同じになっている。麻木さんは他にも色々と仕事を抱えていて忙しそうだけど、私は雑用係みたいなものなのと琉偉のメンタルバランスに必要な人材だと上の人が解釈しているかららしい。


「緊張しすぎだって。顔見れば分かるよ」


普段のデートよりずっと気合を入れてくれたんだろう。スーツにネクタイまで締めた琉偉が苦笑した。


確かにこんな無駄なことを考えないとやってられないくらい私は緊張している。覚悟は決めているけれど、アダルト系の何かを見たこともないんだから仕方ない。要するに私にはメイクラブというものを全く知らないんだ。


もちろん、それだけが気になっていたわけじゃない。けれど、訊いてしまっていいのかと悩んでいる。琉偉の過去なんて興味がない!といえば嘘になるし。


「五月、緊張してるのは君だけじゃないよ。俺だって同じだ」


そう言いながら腕を伸ばして優しく頬に触れた。爪の先まできれいな手に触れられて心地よく思うのは本当なのに、簡単には忘れられないのが辛い。


「琉偉… あなたの昔について教えてほしいなと思って」


「昴流から聞いたの?」


頬に触れられたままで頷く。場所は高級ホテルのレストラン。しかも夜景の見える個室なのに、私の胸の奥で昴流さんの言葉がこだましていて消えない。優しくされればされるほど苦しくなってしまって、隠してはおけなかった。


琉偉は私に触れていた手でグラスを取り上げて残り少ない白ワインを呷ると、


「デートしたのは五月が初めてだよ。それは嘘じゃない。セフレに選ばれたことは幾らでもあるけどね」


意味が分かりそうで全く分からないことをあっさり言ってくれた。


「あっはは! そんなに不思議なこと言ってる? 俺」


私は黙って頷く。私の中では恋人付き合いの発展した上でメイクラブという行為があるんだと思っていたから。


「かみ砕いて説明すると、舞台での興奮を冷ますためのアレコレに付き合うだけで後腐れのない関係しか結んだことなかったんだ。だから、俺にとっても五月との付き合いは新鮮だよ」


そんな関係が本当にあるなんて思わなかった。というか想像できない。舞台の上の琉偉はいつでも余裕に満ちて堂々として見えたから。極限の緊張まで笑いながら乗り越えてしまえる特別な人だとまで思っていたんだもの。


「君と出会ってからの俺は新鮮な体験ばかりしてたんだよ。手を出したいのに、出したくない。奪うように抱きたいのに優しく守るだけで終わらせたい。…こんなに仕事以外で悩むってあるんだと思ったね」


「そんなの… 全く知らなかった」


「見せない方がカッコいいからね。余裕に見せていたんだよ。俺の素顔のカッコいい所だけを選んで見せていた」


言葉を失う私に、琉偉は手ずからワインを注ぎながら続けて語る。私服がダサくて物持ちがよすぎる琉偉、朝ごはんをいつも片付けるように手早く食べてしまう。異常に着替えが早くて、その代わりに髭剃りは異常に時間をかけて丁寧にやっている。


私が俳優らしいと思うのは髭剃りに時間をかけている所くらいで、華やかさなんて欠片も見えなかった。


「どんどん沼の底に落ちていくのが分かった。もう君を放してはあげられないんだよ。誰かに依存するのは嫌いだったのにね」


「え…? 私を束縛するのはいいの?」


「君を束縛したいし、俺も束縛されていたい。一緒にいて苦にならない女というのが存在するんだと五月が教えてくれたんだよ」


そう言いながらジャケットの懐から指輪を取り出した。ベルベッドの箱に入ってないのが琉偉らしい所だけど、その少し気の抜けたところも愛しいと思う私がいるから。


「今すぐじゃないけれど、結婚しよう。俺は五月の自由を奪う愛し方しかできないけど、代わりに俺の自由を君に差し出すからさ」


私はシンプルなデザインにダイヤの埋め込まれたそれを迷わず受け取った。そして、左手の薬指に嵌めて見せる。琉偉は泣き出しそうな顔で笑うと、


「君を愛してもいいのかな。俺」


すこし迷っている様子で言った。意味を理解して顔が赤らむのが分かったけれど、


「いいよ。琉偉だけに抱かれたい。あなたの最後の女になりたいから」


泣き出したいほど恥ずかしいのを堪えて告げる。迷いはなかった……


「どこまで優しくできるかは分からないけれど、努力するから」


頷いてどちらからともなく個室を出ていく。時々、キスを交わしたりしながら。

琉偉は私をお姫様抱っこしてくれて… 嬉しかったけどこんな時ばかりは小柄でない自分が恨めしくなった。


だけど、小柄でない私だから琉偉は好きになってくれたのかもしれない。私はベッドまで優しく下されて、そのまま覆いかぶさってくる琉偉のネクタイを緩めながら、そんなことを考えていた。


何か考えていられたのはそれが最後で、あとは琉偉に翻弄されるばかりで何もわからなくなってしまった.


お待たせしました( ^^) _旦~~

これにて第二部は終了です。琉偉くんの過去ですが…(-ω-;)全年齢向けなのでこれが限界でした。

楽しんでくだされば幸いです。感想(-ω-;)くだされば幸いです。

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