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第二部 五話 一輪のバラとパンジーのネックレスは宣戦布告の印

私が昴流さんから襲われかけるというのは事務所の偉い人たちにとって、どんな風に見えたんだろう。翌日から私は琉偉のマネージャーの一人に戻ることになっていた。


「俺の方で昴流のマネージャーを叱っておいた。売り出し中のタレントとマネージャー以前に男女を二人きりにするとは、危機管理能力がなさすぎるってな」


麻木さんが車を運転しながら簡単に説明してくれた。そういえば、鈴木さんはあの夜以来見ていないな? 昴流さんのマネージャーを外されたのかな… 真面目ではあったのにな。真面目なだけじゃ務まらないってことかも?


そんなことをぼんやりと考えていると、急に私の肩に腕が回されて、


「五月は悪くないんだからさ。もっと堂々としていればいいんだよ」


黙り込んでいた私が落ち込んでいるように見えたんだろう。琉偉が慰めるように言ってくれた。挑発的なことを言ったのは事実なんだよね。私らしくないことを。


「仕事ぶりは悪くなかったらしいからね。複雑だろうが相性のせいだと思うしかないよ」


「そうかもしれないけど… 仕事を途中で投げ出しちゃったようで気分が落ち着かないなあって」


「だけどさ。元に戻れる? 初日に分かってよかったと思えばいいって」


そう言いながら私の頬に触れるだけのキスを落とす。その顔はひどく上機嫌にも見えて、彼の立場からすれば昴流さんは本当に新人なんだと分かって、少し同情しそうになった。


容姿に恵まれて、機会にも人にも恵まれて生きてきた。昴流さんでなくても奪いたくなるだろう。一つくらい勝ちたくもなるのかもしれない。けれど…


「そうね。そう思うことにしようかな」


私にだって選ぶ余地はあるし、琉偉を選んでいるんだもの。あんまり同情していても琉偉に申し訳ないから。昴流さんにも良くないし。


「琉偉、急だが昴流くんに動きがあったぞ。お前が主演を務める舞台のオーディションを申し込んでる。同じ事務所でケンカになるんじゃないかって、鈴木くんからだ」


「いいんでない? 負ける気はしませんよ。俺」


麻木さんの言葉に琉偉が楽しそうに笑いながら返す。その目は輝いていて、まぶしいほどだ。…この顔をずっと見ていたいと思ったのかもしれない。


そう思ったけれど、もう少しだけ秘密にしておこうと思った。今は麻木さんがいるし、一応仕事中でもあることだし。


「小菅さんにも連絡だ。お詫びに花とアクセサリーを贈ったから受け取ってほしいということだ。事務所に届けてあるとさ」


「え? お詫びですか…」


「画像も送ってきてるぞ。バラの花が一本とパンジーって花のネックレスだな。相変わらずこだわり症だな」


そう言いながらスマホを差し出し、琉偉と一緒に画像をのぞき込む。


「すごい…! 可愛い! 本当にもらっちゃっていいのかな」


「いいや、まったく可愛いものではないんだよね。バラの花言葉は一本だと一途な愛、パンジーは私を思って… 俺に対する宣戦布告としか思えないな」


舌打ちしそうな顔で琉偉が頭をガシガシとやっている。少しイライラしているみたい。そんなにうがった見方をしなくてもいいと思うけどな。


「琉偉ったら… そんなに頭を使ってたら疲れちゃうって」


「君のことに関しては話が別だね。まして、昴流くんのことはそんなに嫌いじゃないだろう?」


「好き嫌いで考えたこともないって… あくまでも仕事をしに行ったわけだし」


イライラしている琉偉をなだめる為に言ってみるけど通じない。琉偉にとっても昴流さんみたいな人は意外だったのかも。だけど…


「琉偉と私がしっかりしていればいいことだって。ね?」


「じゃあ、今日の夜には愛を深めあっていい? いい加減に限界なんですけど」


肩に腕を回して抱き寄せながら囁く。その意味が分かって、耳まで顔が赤らむ。


「琉偉! いい加減に公私混同をやめろ。そろそろ着くぞ」


麻木さんに叱られたけど、気にする風でもない。穏やかでのんびりした一宮琉偉の素顔があるだけだ。


「はいはい。今日も稼ぎますよ。昴流くんっていう可愛くない後輩もできたことだしね」


「可愛くないって… まあ、確かに可愛い系ではなかったけれど。これから舞台の上で会うことも増えるのに大丈夫?」


「公私混同はしない。でしょ? 心配しなくても俺は勝ちますって。プロの仕事ってのを見せてやろうじゃないの」


すごい自信だ。これくらいでもないとやっていけないのが芸能界で。私はそんな芸能界に身を置いて生きていくことを選んだ。しかも、ほとんどは隣で台本を確認している人を好きになったからって言う不純な動機で、魔法に頼って…


一生背負っていかなければならない罪かもしれない。だとしても、魔法が本物であり続けるように努力していきたいから。


今日の夜はきっとその覚悟を示す良いきっかけになるのかもしれない。内心で恥ずかしく思いながらもそう覚悟を決めていた。


お待たせしました( ^^) _旦~~

昴流くんはこれからも出番があるかもしれないですね。

昴流くんのこだわりが発揮されるシーンも書きたかったし、琉偉と良い意味で火花散らしてるシーンも書いてみたかったので。

次回は(-ω-;)どうなるかな。17.5くらいの限界に挑戦することになるかもしれません。

その時はお付き合いくだされば幸いです。感想くださればもっと幸いです。

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