閑話 鍵
結局クリア出来なかったんだよな、コレも。
今で言うレトロゲームは難易度が高い!
逆木連理と共に暮らす、すっかりゲーマーと化した狐っ娘ササは今日も今日とてコントローラーを握っていた。
「また難易度の高いモノをやってるなあ、お前さん」
ぼやく様に言う連理だが、最近ササはメキメキ腕を上げている。
かつて敵にお手玉をされていた『ドラゴンバスター』は何とか表のステージだけであればクリア出来る様になったし、『ワルキューレの冒険』もマメにレベルを上げ、何とかエンディングに辿り着いていた。
ただ『スペランカー』はどう足掻いても進めないと匙を投げたし、『ウルティマ』は開始三十分で諦めていたが。
まあ、『ウルティマ』のフィールドを一歩進むごとに食料が減っていくというのは、ゲームとしてはかなり厳しいシステムだし、こちらのレベルが上がると敵のレベルが上がるのもキツい。
かつてクソゲー呼ばわりされ、様々な人たちがクリアする事を諦め、匙を投げる所か物理的にゲームソフトを投げる人まで現われたという一品である。
『ウルティマ2』ではそんなシステム周りは一新されたが、逆にヌルゲーになってしまった、残念な一品でもあった。
ちなみにこのゲーム、街中で「たたかう」コマンドが実行可能である。 何故か。
だが、常識的に考えて街中で誰かと戦い、殺してしまえばどうなるかは解るだろう。
そう。 指名手配されてしまうのだ。
滅茶苦茶強いが、もし王様を殺せば、王殺しとして全ての街で追われる羽目になる。
また、セーブ屋も殺せるが、そうするとセーブが出来なくなる。
何の為にあるのか解らない、不思議な自由度のあるゲームでもあったのだ。
「序盤は何とか進める様になったぞ?」
そういう彼女のプレイするのは全50ステージにも及ぶアクションパズルゲーム『ソロモンの鍵』である。
『ソロモンの鍵』と呼ばれる魔法書を求め、とある道士が地下にある星座宮を発見、『鍵』に辿り着いたのだがそれを手にした時、本の魔力が暴走、世界は天地開闢以前のカオスとなってしまう。
善なる精霊達は魔法使いダーナに世界の修復を命ずるのだった、というとてもブラックな職場の様なストーリーである。
「その道士に責任を取らせろ」とか「複数人でやれば楽だろ」とか「何もしない善なる精霊ww」とか色々あるが、まあこの時代のゲームなんてこんなものである。 何故かひとりの人間の肩に全てがのし掛かるのだ。
そんなダーナくん、魔法使いと言ってはいるものの使える魔法は二種類のみだ。
ブロックを破壊、もしくは作成する『換石の術』と要アイテムのファイアーボールだけである。
このふたつの魔法を駆使してそれぞれ4ステージずつある白羊宮、金牛宮、双子宮、巨蟹宮、獅子宮、処女宮、天秤宮、天蝎宮、人馬宮、魔羯宮、宝瓶宮、双魚宮の黄道十二宮+エクストラステージを2つクリアしなくてはいけない。 これで50ステージだ。
厳密にはそれぞれの星座宮にボーナスステージや+αもあるので+12ステージあるが。
さて、そんなササだが、確かにステージは白羊宮を越え、金牛宮に移動している。
とは言え、白羊宮くらいは大抵の人がクリア出来るのだ。 敵が少ないし、パズル要素もそう難しくはない。
だが、この辺りからいよいよ敵キャラは増えたり、厄介な場所に設置されていくし、そこにパズル要素が入り込むと難易度が跳ね上がるのだ。
この敵キャラたちはダーナを倒しに来るだけではなく、彼の作るブロックを破壊していく ――攻略そのものの破壊工作も行うという存在なのだ。
白羊宮のステージでは、敵キャラは「触れると死」なだけの存在なのだが、金牛宮以降は明らかにパズル的な攻略を邪魔する場所に配置されているのである。
例えば足場の必要な場所に彼等がいるだけで攻略難易度は上がる。 足場が壊されてしまうからだ。
ちなみにこのゲーム、倒したらそれまでの敵と無限湧きする敵の2パターンがある。
カミーラの鏡と呼ばれる破壊不能オブジェクトから次から次へと敵が湧き出てくるステージもあるのだ。 とても厄介である。
「あれ? やっぱり駄目かの? どうしたら……あ~~!?」
金牛宮最初のステージは左右にガーゴイルが縦に四体ずつ配置された「ガーゴイルの古井戸」というマップになる。
ダーナの出現位置は最下段。 出口の扉は最上段、というか空中にある。
足場はないものの、換石の術で階段状に足場を作っていけばクリア出来そうなのだが、そこに左右のガーゴイルが炎を吹いて邪魔をしてくるのだ。
ガーゴイルの炎は破壊可能なブロックを壊す。 つまり足場を破壊してしまう。
それだけでなく喰らえば当然ダーナもあの世行き。
炎は左右交互に計八段飛来するので身を守るだけならまだしも、足場まで守るのは不可能に近い。
垂直に上がる様な、最短距離でクリアをするのはほぼ不可能なのだ。
もっとも、敵を貫通するスーパーファイアーボールを使えば、ガーゴイル達を即全滅させる事も出来るが、まあ金牛宮程度で使うのは勿体ないだろう。
「別に急がなくても下から一匹ずつ倒していけばいいだろうに」
「ファイアーボールは八つも持ってないのじゃ」
「いや、落として倒せよ」
このゲーム、ダーナは落下で死ぬ事はないが、敵は落下で倒せる。
敵の乗ったブロックを換石の術で破壊し落下させるのは基本戦術のひとつだ。
「此奴等の乗っておるのは壊せん……って、そういう事か!?」
このマップでガーゴイルの乗っているブロックは破壊出来ないモノだ。 そのたった一マスの上を彼等はウロウロしながら火を吹いてくる。
この足場を換石の術で創ったブロックで広げてあげると、彼等はこの破壊可能なブロックの上に乗ってくる様になるのだ。 そこでブロックを破壊してしまえば当然落下するのである。
■敵→2・移動 ■ 敵
■■▢ → ■■▢ ←3・消すと落ちる
■ ↑ ■
■ 1・ブロック作成 ■
「く~~~、何故気づけんのじゃ、わらわ!?」
「まあ、お前さんだし」
「酷い事を言うの!? おぬし!?
それがちゅっちゅちゅっちゅしとる女子に対する態度かの!?」
「……お前さんはオレにどんな期待をしているんだ?」
連理はジト目でササの背後に回ると彼女の肩に手を置いた。
「……れん――いたたたたたたっ、痛い、痛いのじゃ!?」
「肩こりすぎじゃないのか、え~、彼女さんよ~」
「いたっ、ちょ! ホントに痛いのじゃっ!?」
のちに、大音量でAVを見ていた者がいるらしい、という妙な噂が寮内で流れたとか流れなかったとか。
前述しましたが、ワタシはソロモンの鍵はクリア出来なかったんですよね。 何とか双魚宮までは辿り着いたモノのそれ以上は進めず断念しました。
ウルティマも諦めた口です。 2は全職業でクリアしましたが。




