閑話 装備
前回アレで終わって今回をコレにしてしまう。 正しく悪行!
でも気になった事の一度や二度はあるでしょう?
とある日の午後。
場所はいつもの如くふたりの暮らす寮の部屋。
ササは連理の部屋に置かれたゲームのパッケージを、何故か不思議そうに眺めていた。
「のう、連理」
彼女のいつものフレーズだが、今までであれば大抵そう言ってくるのはプレイ中であった。だがゲーム機本体にもブラウン管TVにも電源は入っていない。
連理はやっていた腕立て伏せを止めるとササの方へ視線を向けた。
「どした? って何やってんだ?」
彼女はいくつものパッケージを広げ、見比べる様に並べている。
その光景は犯罪で押収された証拠品を広げているかの様だ。
「ちょっとな、気になったんじゃよ」
「何が?」
スッ、スッっとそのうちの何点かを連理の方へ寄せるササ。
先日同様、持ってきた記憶のないものは彼女が帰省時に持ち出したものだろう。
ワルキューレの冒険。
マドゥーラの翼。
スペースハンター。
夢幻戦士ヴァリス。
そして何故か裏返っているドラゴンクエストⅢ。
「…………これが、どうかしたか?」
アクション要素のあるフィールド型RPGとRPG要素のあるフリースクロ-ル型アクション、RPG要素のないフリースクロ-ル型アクションと横スクロール型アクション、それとコマンド型RPGだ。
共通点はある様に見えない。全部女性主人公かとも思うがドラクエはどう判断していいのか、やはりよく判らない。
「解らんか?」
「……全部主人公が女子?」
ワルキューレの冒険はそのまんまワルキューレ。
マドゥーラの翼はルシア。
スペースハンターのアルティアナ。
夢幻戦士ヴァリスの麻生優子。
ドラクエはまあ性別を選択出来るという意味で女勇者?
「近いと言えば近いんじゃが……。
連理よ、此奴等、何故こんな格好で戦っとるんじゃ?」
「格好?」
言われ、改めてワルキューレを見ると左右両方にスリットの入ったワンピースっぽい服装の上から胸鎧と、木製に見える楯と、羽根飾りのある革製っぽい兜。マントを羽織ってはいるが、まあかなりの軽装だ。
ルシアはと見れば、それは所謂ビキニアーマーっぽい代物で、胴、腕、脛と各所を防御している様に見えるが隙間だらけ。楯は持っているが兜はなく、髪飾りっぽいものはつけているが、胸の上半分程は素肌が露出しておりその辺りの防御力が0になっている。
で、アルティアナはと言うと、その装備の形状はどう見てもレオタードだ。一応肩部分にデザイン的要素しかなさそうな出っ張りはあるが、そこに防御効果は期待できそうにない。
麻生優子の装備は軽装のワルキューレを更に軽装にしている感じと言えよう。腕、脛、肩に部分鎧。 それはいいが胸鎧の形状はほとんど貝殻ビキニであり、その下に鎧下等をつけている様子はない。 それにミニスカートを着用し、兜、楯等は無し。スカートの下が金属だったら多少の防御効果はありそうだが、まさかそんなことはないだろう。
「つまり、ドラクエⅢは勇者じゃなくてこっちを見ろと?」
連理が指さすのは女戦士のイラストだ。こちらも所謂ビキニアーマーのみ。楯と兜を着けているだけマシなのかも知れないが、鎧下どころかそれ以外の衣類を身につけている気はしない。
ちなみにこんな中でワルキューレだけは下着を着けていないという隠れた設定がある。まあ、デザイナーさんが言っているだけの話で、公式にノーパンイラストが出ている訳ではないが。
「そうじゃ」
ここに示された女性陣、腹を守っていると言えるのはルシアひとりのみ、兜を被っているのはふたり、楯を持っているのが三人だ。
全員腕防具はあるが、護拳部分は無く、前衛として武器を振るうには不完全な装備であると言えるだろう。
その上おなか丸出しがふたりもいる。冷えとの戦いは必至だ。
「まあ、戦闘的に言うならなしだろうけど、デザイン的にはある程度は仕方ないんじゃないのか? キャラクターの顔を見せたいだろうし、リアルな兜は装備させにくいんだろ?」
「兜はそれで良いとしてもじゃ。 胴鎧は如何じゃ?」
「……まあ、ゲームプレイヤー人口は男のが多いだろうし……セクシーさでアピール?」
「販促かい!? そう考えると世知辛いもんじゃのう……」
「そもそもオレ達が言えた義理じゃないって気がするな」
ササが溜息でも吐きそうに言うので連理はスマホを弄りつつ応える。
街中でも不審に思われない様に、アレクの装備は見た目が普段着なのだ。
勿論防御性能は格段に高いが、見た目議論だと「お前が言うな!」と一喝されてもおかしくはない。
「それにどんな女戦士でもこの装備よりはマシだと思うぞ?」
連理が見せるスマホに映るのはビキニを着た少女のイラストだ。背景は真っピンク。下にはデカデカとアルファベットが並ぶが、いまいち読みにくい。
「そりゃそうじゃろ? 誰が水着なんぞ着て戦うんじゃ?」
ドラゴンクエストシリーズに水着や下着装備はあるが、ここでは除外しておこう。メインの装備ではないのだし。
「このキャラ」
「……のう、連理。 今わらわたちはゲームの話をしていたと思うんじゃが?」
「ファミコンのゲームキャラだぞ? 部屋にもある」
そのゲームのタイトルは「アテナ」。
立派なファミコンソフトである。
ビクトリー国 (凄い名前)の王女アテナは退屈な生活に飽きて、先祖の封じた魔王ダンテの世界である幻想界へ旅立つという、ぶっちゃければ「暇だから魔王の封印を解きました」なんて言っているとんでもストーリーだ。
旅立つ際に装備を失ったらしく、そのせいで彼女は水着らしい。もしかすると本来は下着だったのかも知れないが、真相は闇の中だ。
制作したのはSNK。
そのせいか、後のザ・キング・オブ・ファイターズの登場キャラである麻宮アテナの先祖という設定もある。が、麻宮アテナの出身は日本となっている。ビクトリー国、何処に行った。
「……剣を持っておるな」
「まあな」
暇を持て余し魔王の元へ向かうくらいなので恐らく剣に自信はあるのだろう。作中では棍棒やハンマー、弓や魔法も使う万能キャラではある。
「水着で剣を振るのか?」
「パッケージ裏では鎧を着てるけどな。 一応、鎧と兜を拾えばグラフィックが変わった様な……」
何故かメインとなっているイラストは剣と水着なこのゲーム。
だが初期に入手する武器は棍棒だし、剣を持つ頃には兜くらいは入手している場合が多く、剣と水着だけという組合わせは実は序盤だけ見られるかも知れないくらいの、ちょっぴりレアなものだ。
「つまり序盤はやっぱり水着で戦うんじゃな」
「防御性能0のな。
さっきのキャラ達の方がマシだろ?」
所詮イメージイラストなどフレーバー装備と言ってしまえばそれまでである。
「ああ、でもスペースハンターはレオタードっぽいけど違う可能性もあるんかね、設定的には」
「どんな設定なんじゃ?」
「確かサイボーグだかアンドロイドだか、そう言うキャラだったはず」
アルティアナ、16歳。立派なサイボーグである。
というか、そうでもなければその身ひとつで宇宙空間を行ったり来たりは出来ない。
何故か、たったひとりで七つの小惑星に隠れた反逆者達を倒すのが目的で、様々な武器を使うが、どれも使い勝手が悪い、微妙な性能だ。
中でも、パッケージイラストでは敵を切り裂き、格好良く構えているレーザーサーベル。どう見ても白兵戦用武器なのにゲーム中では振って斬る為の武器ではなく、投擲武器だったりする。この武器、当たり判定が小さく結構使いにくい。
そのくせ作中のメインとなる武器は何故だか如何してかは解らないが、タイムボムというボンバーマンの様な時限爆弾。時限爆弾と言う説明であるのに時間ではなく、設置場所からキャラが上下方向に移動したら爆発するという不思議性能。その際の爆風は左右へ向かう為、巻き込まれる心配はないが、別に入手できるハイパワータイムボムだと巻き込まれる場合もあったりする。
「――つまりレオタードに見える全裸じゃな」
「…………まあ、そういう可能性が無きにしも非ず?」
ちなみにこのゲーム、オープニングからエンディングまで通しても流れる曲が二曲しかない寂しい仕様も持ち合わせている。あるのはメインの曲とボス部屋の曲だけで、エンディングでもメイン曲が流れ続けるだけだ。
「それでも一番ヤバく見えるのは此れじゃろうな」
ササが指し示すのは夢幻戦士ヴァリス。
そのヒロイン麻生優子である。
「まあ、明らかにイロモノ装備だしなあ」
その姿は前述した通り、楯も持たず兜も被らず、胴体の防御は肩当てと貝殻ビキニの如くの乳当てのみ。
もうそこには急所を守るという防具の意味すら失われているのだ。
脳、頭への攻撃に対しては、楯も兜などはないので防げない。頭蓋骨だけが頼りである。頑張って避けろ、と暗に言っているデザインだ。
心臓に対してはどうかと言うと、貝殻ビキニが縦令どれ程硬くても守っているのは手の平サイズの範囲だけだ。しかも心臓というのは左側左側と言いつつかなり中央寄りの位置にある。ビキニでは防げないのだ。
むしろビキニが硬ければ、乳房に当たるはずの攻撃を鳩尾周辺へ滑らせる可能性すらあるだろう。
腹はどうかとは最早議論するまでもない。健康的で引き締まったおなかは丸見えなのだ。
そして腰部に見えるのはミニのスカートのみである。下着は穿いているだろうが、よもやそこだけが金属製の訳がない。極普通のおぱんつ様がそこにはいるはずだろう。
つまり防御性能は布二枚分だけである。
「それにしても不思議じゃな」
くだらなく、また意味もない話を意外と長く続けた後にササは囁く様に、呟く様に言った。
「ん? 何か変な事があったか?」
「こうして話してみると、此れが意外と重装備に見えてしまうもんじゃなあ、とな」
そう指し示すのは赤い鎧を着て、鋭い目つきをした女性のイラスト。先程の話題にも上がったものの主役でなかったが故か、あまり深掘りした話にはならなかった人物。
「まあ、筋肉のせい?」
見事に割れたシックスパックは正しく巌の如し。それだけで麻生優子の防御能力を超えているのではないかと思わせる腹筋に、生半可な攻撃は通用しない様に見える。ゲーム的には裸であっても高い防御力を持つのだから、他のキャラとはある意味次元が違っているのだが。RPGバンザイ。
姐御肌な風貌に感じるのは頼りがい。歴戦の戦士の様な肉体的機能美の中にある長髪は、その程度はハンデにもならないという自信の表われであろう。
そんな彼女の名は
――――女戦士!
名前じゃねぇ!?
プレイ済みゲームの中にコレ系のキャラはもういなかった……はず。
カイの冒険はやってたけどあれは回避ゲームだし、ムーンブルグの王女は前衛じゃないし、ゴールデンアックスはメガドライブかPCエンジンのはずだし……。
まあ、男主人公であればドラゴンバスターのクロービスとかは普段着(?)+剣なんで議論の対象にしても良かったんでしょうけど、まあ今回は女性装備なので。
ところでアテナってダメージで防具の破損とかあったっけ? いまいち記憶にない……。




