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第四十七話 目には目を、歯には歯を。 ならば命には命で報いよ!

とあるの復讐鬼の襲撃記録……。




 その日、スレイヤーは震撼した。

.


 復讐の為にスレイヤーへと帰属し、ファンタズマやアクマを区別なく、魔物は全てアクマとして狩っていく者が居る一方で、狩られ、生き残った者達(まもの)が望むのもまた復讐である。

 アクマはヒトを狩り、ヒトは魔物を狩り、また魔物がヒトを狩る連鎖の中、策を巡らし己が敵へ彼等をぶつけようとする者も居た。

 その策に嵌まり、仇の思うがままにその刃を振るう者が居れば、それを見破り真の敵を見極める者もやはり居るのだ。



◇ ◇ ◇



 『祟り鬼』刑部(おさかべ) 重護(じゆうご)は復讐者だ。


 彼は元、四国に住む刑部狸(ぎようぶだぬき)のひとりだった。

 人間を隣人として見る彼の様な者は、荒れ木三度Lossの様な相互扶助組織や小組織でもそれなりにちからある所の助力を得て、個人的なツテで、または田舎の片隅などでひっそりと、それでもヒトと交わりを得られる様な場所で生計を立てていた。


 四国には刑部狸を繋ぐ独自のネットワークがあり、彼はそこで戸籍を得て人間として生活をしていた。

 地元を離れ、同じ様な生活をする同胞に出逢い、ヒトに倣って結婚式を挙げた。

 子宝にも恵まれ、その子も小学校の高学年となった。

 そんな幸せがずっとずっと続くものだと疑わなかった日々。

 彼が会社の出張で家を空けた、そんな日。


 家族は帰らぬ者となった。


 出張先でとっくに手遅れとなった連絡を受けた彼が急ぎ帰宅しその目で見たのは、既に半ば焼かれた我が家と、ヒトの姿ではあったのか本来の姿であったのか、そんな事すら解らない程、細かく千切られ砕かれ、バラバラにされた上、燃やされ焦げ付き灰になったふたり分の欠片。

 そして人間向けのパフォーマンスの様な痕跡の中に、彼女たち(かぞく)でもヒトでも有り得ない様な、あからさまな全く別の痕跡。それはファンタズマやアクマの仕業に ――ヒト以外が行った様に見せかけたフェイク。


 ――巫山戯るな!


 確かにそんなことを楽しんで行うアクマはいるだろう。


 ――ふざけるな!


 だが、それを態々『此方側』で見せつける様に行う者など極少数派だ。彼等の性質は闇に潜む方が『らしい』のだと、そう思い込んでいる者が大半なのだ。

 それはまるで強迫観念の様に心の中へ刷り込まれている。


 ――フザケルナ!!


 そう思わせることで矛先をずらす策略家もいるかも知れない。


 ――ふザ戯るナ!!!


 だがそこの残る悪意に凝り固まったヒトの臭いがそれを否定する。

 撒かれたガソリンとその燃えた臭気の中、ほんの僅かに残る臭いが彼に真実を告げた。


 ――フ■■る■っ!!! ■山■■■ッ!!! ■■■■■■!!!!


 ――■■■■■■!!! ■■■■■■!!!! ■■■■■■!!!!!!


 ――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!


――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!



 そして、彼はタタリとなった。


 強い憎しみは彼を苛んだ。

 深い悲しみは彼を離さなかった。

 激しい怒りは常に彼の中から溢れていた。

 終わりのない苦しみは彼の感情を壊していった。

 それら全てを醸したかの様な恨みは彼の心身を共に侵蝕していった。


 そこに生まれたのは一匹の修羅。ただ破壊するだけの化け物だ。

 彼は悪意の臭いを嗅ぐだけで暴走する怪物となり、只管にスレイヤーを、そうでない悪意持つイキモノを殺していった。

 一年程で何とか落ち着きを取り戻したものの、その性質は消えてしまった訳ではない。それは常に彼の中で燻っている。暗い昏い、真っ黒な恨みの炎。



 だから彼は止まらない。

 無関係の「悪意」を殺す事こそなくなったものの、そこにあるのは良心の呵責などではない。ただ寄り道を省いただけの、効率化に過ぎないのだ。


 落ち着き、効率化を考え出した彼がしだしたのは、拷問である。

 当時の彼はスレイヤーがヤクトルビルディングと言う大企業を隠れ蓑にする巨大な組織である事を知らなかった。復讐に駆られ、ただ只管に殺し、情報を得ることもなかった。

 だからこそ、散発的に彼等を襲うだけの「通り魔」に過ぎなかったのだ。

 彼は復讐の為の情報を得ようとする。

 とは言っても慣れぬ行為だ。つい殺してしまった数は十や二十ではない。どうせ殺すのだから、と余り加減をしなかったせいでもある。


 そんな彼がヤクトルビルディングの事を知ったのはクリスマス前の事だ。

 息子の墓前にプレゼントを置き、彼や妻と長らく語った。

 復讐を絶対のものとする為に、傷を癒し体調を整えた。


 彼は「隠れ里」ではなく「此方側」の施設を襲う。

 もう一般人を巻き込むことも厭わない。

 社内に識らぬ者(ピュア)がいる事は聞いた。

 出入りの業者もいる事だろう。

 だが、それが如何したというのだ。

 我らを殺し殺そうとする者達と同じ釜の飯を食うというならそれだけでも罪だ。

 殺そう。

 殺してやろう。

 ひとり残らず殺し尽くそう。

 スレイヤーを名乗る者は特に念入りに殺してあげよう。実の親でも判別出来ない程、バラバラに、粉々に。

 彼の愛した女性の様に。彼女との間に出来た愛し子の様に。

 そう、いっそ灰になるまで焼き尽くそう。

 風に吹かれ、その存在すら掻き消えてしまえばいいのだ。



 ヤクトルビルディングの支社ビルを半壊させた彼は、新たな情報を元に郊外の施設へ向かったのだ。

 その日のうちに、『奴』が逃げてしまわぬ内に。



◇ ◇ ◇



 施設内をアラート音が駆け抜けた。


 緊急時に鳴り響く激しい、酷く耳障りな音が明滅する紅い光と共に周囲を乱反射する。高音のベルも共振する様に鳴動し、内部の人間達の冷静さを奪い去っていた。

 そこへ響く破壊音に彼等の混乱は増すばかりだ。


「くそっ! 何が起きているんだ!?」


「知りませんよっ!」


「――拙い! 実験動物が逃げ出してるぞ!?」


「第三区画から出火だ!」


「隔壁はどうした!? 実験棟なら隔壁が閉まるはずだろう!!?」


「侵入者だ! 隔壁が破壊されてる!!」


「何であんな所で火が出るんだよ!?」


「侵入者がいるって言ってんじゃねーか!」


「あん!? それは実験棟だろうが!」


「冗談抜かせ!! あの特殊防御壁をどうやればこの短時間で壊せるっていうんだ!!」


「知らねえよ!? モニターを見やがれ! モニターを! もうぶっ壊れてんのが見えてねーのか!」


「……うっそん……」


「嘘じゃねーよ!」


「そっちの話じゃないわ!

 実験棟の壁が壊されてる! 第三と繋がってるわ!」


「うわっ!? カメラが壊された!」


 そこは冷静さを保てている者などいない、困惑と混乱の坩堝となっていた。

 だがそれも仕方のない事なのかも知れない。

 彼等はこの研究所内に於いて絶対的強者だった。

 離れた場所からモニター越しに実験を行い、実験体達の生死の取捨選択すらしうる彼等は研究所内では神に等しい。しかしそれはちからでも知性でもなく、あくまで研究者という立場によって得た強者の地位だった。

 その地位を信奉しない、その研究を重要視しない、その命に価値を見出さない者にとっては何の意味もない「強者」。

 彼等自身は直接的で強大なちからに抗う術はないのだ。

 それ故に狼狽える。 自身のちからの通じない相手に。

 狼狽えるしか、ない。


 ――ガシャーーーン!! ガラン! ガラン……


 そんな混乱が混乱を呼ぶ室内で高い金属音が鳴り響いた。

 突然の音に、研究員達の動きが止まる。

 その怯えたウサギの様な姿は酷く滑稽と言えるだろう。普段の彼等はそんな怯えた「実験体」を相手に、嗜虐的な笑みすら浮かべつつ切り刻み、薬剤を投与し、殺し、破棄しているのだから。


「静まらんか! 愚か者共め!!」


 金属製のトレイを床に叩き付けた初老 ――に見える男は、研究員達に一喝すると、比較的近くにいたひとりに声を掛けた。


「第八から十二までの隔壁を開けて、奥にいる実験体共を総動員しろ」


 男は研究員達を一睨すると慣れた様子で命令を下す。そこに躊躇いはない。


「あ、あいつらは我々の言う事なんて聞きませんよ!?」


 研究員の一人が狼狽えながらも事実を口にする。

 第八から十二までの隔壁の中へ閉じ込められているのは、度重なる実験と改造で精神の均衡を崩したアクマたちだ。

 同一の隔壁の中にいるのは、単独か、もしくは古くから親交のある者であり、それ故か、善くも悪くも互いに争うことはないのだが、同一隔壁外の相手に対しては酷く攻撃的だ。当然、研究員達の言うことなど聞くはずもない、凶暴な野生動物の様な存在である。


「考えろ。 命令を聞く必要などない。 ただ侵入者とぶつかればいいだけの話。

 既に理性も知性も欠片すらないアクマ共だ。 近場から順に開けていけば侵入者とのみ戦うだろう。 有効に使え」


「は、はい」


「実験棟から逃げた連中はどうしますか?」


「今はどうしようもあるまい。

 こちらが解決してから本社の連中に言っておけば十分だ。 そうすれば勝手に狩り始めるだろう」


「了解です」


「そこの。 調整体十四号もだ。 あいつも出せ」


「シトウも、ですか」


「十四号、だ。

 失敗作共では時間稼ぎにしかならんだろう。 テルム《奈落(プロフォンドゥム)》の使用も許可する。 急げ」


「承知しました」


「おい。 お前。

 侵入者の特定が出来ないのならカメラの映像をこちらに回せ」


「はいっ」


 大したことも出来ない「部下」達を瞼からはみ出る様なぎょろ目で見遣り、男は考える。

 死体か、死霊の類にすら見える痩せぎすな体格と、ぎょろ目鷲鼻という外見のせいで普段から年嵩に見られる彼だが、そのお陰でこの馬鹿な同僚たちは自分のことを上司や所長のように思っている節があった。


(使えん奴等だ。 だが今はワタクシが使ってやろう。 有効的に、最期まで、な)




ここの決着まで済ませるつもりでしたが長くなりそうだったので分割します。

朱音が襲撃完了報告をしてしまってるので大体の終わり方は想像できてしまってると思いますが。


○妖怪/幻獣化け狸『祟り鬼』「刑部オサカベ 重護ジュウゴ」・・・壮年の妖怪化け狸。

 本来温厚である化け狸だが、重護はスレイヤーに妻と子を殺されそれまでの生き方を変えた。ファンタズマではなくアクマとして、殺戮の為の殺戮を行う様になったのだ。そこにかつての面影はなく、殺し屋の様な研ぎ澄まされた殺意だけが存在している。

 人間変身時はくたびれたスーツを着た目つきの鋭い中年に。なお、狸らしからぬ筋肉質。

物理アタッカー、

 ◉一人称・・・ボク→オレ

 ◉ヘレティック・・・ストレングス、マギ

 ◉ミュータント・・・タタリ

 ◉クラス・・・サラリーマン、セールスマン、モンスター、化け狸、大工、設計技師、

 ◉ハイランダー・・・カオス、チャンピオン、

 ◉特徴・その他・・・復讐者、殺戮の拳、精神鍛錬、精神汚染、狂気、狂乱、暴走、人間変身、誓い/復讐を果たす、憎悪/スレイヤー、傾向/一般人は巻き込まない/敵対時は除く、夜目、猫舌、人喰い、闇に蠢くモノ、喪われた絆、殺し屋の瞳、悪鬼羅刹、深淵の悪魔、奈落の獣、暗視、威圧、気配感知、感覚強化、超嗅覚、幻のコトワリ、狂気の瞳、殺意の波動、重拳、粉砕拳、振動拳、渾身の一撃、振動粉砕、アーマーブレイク、アーマークラッシュ、鋼の拳、破壊の拳、金剛粉砕、烈破の一撃、獣爪撃、引き裂き、噛みつき、引き千切り、貫通、ブレイクアブソリュート、悪しき爪痕、獣の如く、憤怒の拳、悪鬼の咆哮、修羅の紋章、裂地震衝、障壁砕き、冷たい手、ドレインタッチ、汝に災いあれ、血塗られた殺意、ジェノサイド、悪の裁き、応急処置、育児、マンスレイヤー、呪詛の言葉、呪い纏い、呪詛の拳、ラッシュ、スティンガー、オーバーロード、マンティコア、反撃、カウンター、カウンターストライク、クロスブレイク、攻撃的受け、カウンターブレイク、反撃のオーラ、遠い記憶、日曜大工、電動工具、工具、図面作成、木工、組木細工、衝撃吸収、軽業、キャット大回転、セールスの基礎知識、礼儀作法、会社員の心得、顧客応対、電話応対、クレーム対応、二十四時間の戦い、呪詛、

 ◉使用魔法・・・幻覚、幻惑、混乱、困惑の波、歪みの視界、ディスガイズ、幻覚消去、幻の園、蜃気楼、誘眠、眠りの声、隠形、隠形結界、変化、千変万化、身体強化、肉体抵抗強化、身体変化、魔術抵抗強化、心の盾、魔獣の如く、皮膚硬化、変化の葉、悪鬼の爪、破裂音、作音、轟音、エコー、ノイズ、招雷太鼓、

 ◉称号効果・・・ミュータントとタタリの実質的なレベル上昇。ただし呪詛を得る。


*ハイランダーは本来ひとつしか取得できませんが、カオスはタタリのレベルが上がってくると自動取得するNPC専用のモノなので例外になります。

 ちなみに「二十四時間の戦い」はセールスマンやサラリーマンの高レベル取得可能スキルで戦闘可能時間の大幅な増加という効果を持つフレーバースキルです。

 TRPGだと極端に戦闘のターン数は増えないので実質的な効果は無きに等しいんですけど、入れたかったんです。

「2○時間○えますか~」って。


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― 新着の感想 ―
ここにも新たな復讐鬼が……。 (。ŏ﹏ŏ) ヤクトルビルをぶっ壊す! ᕦ(ò_óˇ)ᕤ ビルを壊されてスレイヤーサイドの皆さんも大混乱じゃないですか。 (´⊙ω⊙`)! 少しは戦力を減らせたのか…
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