閑話 冒険
短めです。
うお座のO型は中々キツかったこのゲーム。
結局獅子座とかでクリアした記憶が……。
「のう、連理」
先日購入したクッションに腰掛け、ササはテレビの前から声を掛ける。
一時間程Wizardryをプレイし、何時ものように意気消沈した後に、別のソフトに入れ替えてた直後である。
「ん? どうかしたか?」
連理はキリの良いところであったレポートを閉じると、椅子に座ったまま身を逸らせた。キャラメイク、の様な画面は見えるがあれは何だったか?
記憶にはないが、単純に覚えていない可能性もある。キャラメイクなんてものは例えばRPGならクリアするまでに一度しかしない場合も多いだろう。
まあ、ササは何度も何度もやり直す場合もあるが。
「わらわ、星座とか血液型とかよう判らんのじゃが、如何したら良いかの?」
何故そんなことを言い出したかは解らないが、海老反ったまま答える。
「……あ~、生年月日が判らない、と。 それに血液型なんて調べてないよな」
「そうじゃな。 何時産まれたかなんて覚えておらんし、血液型とかも調べたことはないのお。 わらわ、病院とか行かんし……必要無いからの」
血液型が何に必要かと言えば輸血であろう。
だが病院自体に行くことがなく、また行ったとしても恐らくどうにもならず、それどころかスレイヤーに見つかり、悪化させられる可能性を考えると、血液型を知る必然性はあまりない。
「……とりあえず9月9日にでもしとけば?」
少し考えて、提案する。単純にわかりやすい日ではあるが、そう言う理由ではなく感慨深い様な思い出ある様な、そんな日ではある。
「何の日、じゃっけ?」
「オレが隠れ里に迷い込んだ日」
つまりササと出逢った日であり、彼女と口づけた日でもある。
「……おぬし、偶にさらっとそういう事を口にするのぉ。
まあ、それで良いわ。 その日の星座は何になるんじゃ?」
「あ~、と……乙女座、かね」
うろ覚えだったので、スマホ検索する。
ちなみに寮内はWi-Fi完備だ。
「ん、乙女座だな」
「おとめ座、と」
「で、血液型だが……狐だとネットでも出てこないな……。犬も、人間みたいなABO型じゃなさそうだ」
「おぬしは何じゃ?」
「オレはO」
おおらかで、その上直情型だと言われるO型。おおらかって駄洒落じゃないの? と思わなくもない。
「じゃそれで良いのじゃ」
ササがピコピコと操作してる画面を見ても、ピンとこなかった連理はその視線をゲーム機に挿さっているカセットに向けた。
――ワルキューレの冒険
カセットのラベルにはそう書かれている。
ピンとこないのも当然か、連理は未プレイのソフトである。
「色は……赤で良いかの」
説明書も見ずにサクサク進めていく様子は玄人のようで素人っぽい。
何せレトロゲームというのは兎に角ヒントがないモノが多い。
死んで覚える死にゲーは元より、謎解きメインのAVGですら試行錯誤を繰り返すコマンド総当たりが基本である。
この「ワルキューレの冒険」も然り。画面上にヒント等のモノは一切無い。チュートリアル? そんなものに頼るなど児戯にも等しい! と言わんばかりのノーヒント。
操作自体はドルアーガの塔やドラゴンバスターに通じるところはあるものの、それだけでクリアなど出来る筈もない。
説明書をきちんと読まなければキャラメイクの時点で失敗しかねないのだ。まあ、失敗といっても多少苦労してもよいなら追いつける程度ではあるが……。
まず、星座。
これでワルキューレの初期能力と今後の戦い方が変わる。単純に言えば直接攻撃タイプか魔法タイプか、それともバランス型か、だ。正確には魔法タイプが2パターンあるのだが、大きな差はない。
次に血液型。
これで成長の仕方が変わる。最初の内にレベルが上がりやすい早熟型か、後にレベルの上がりやすい晩成型か、その中間のバランス型か、それともランダムか。
ちなみに色は単純に好みである。どの色を選んでも差はつかない。
ササの作ったワルキューレであれば、おとめ座は能力値がバランス型で物理攻撃そこそこ、初期に回復魔法である「薬の術」が使える。ただO型は晩成型であり、中盤程までレベルアップ経験値が他より高いという特徴がある為、ゲーム的にはサクサク進めにくい。飽きっぽい人には勧めにくい血液型だ。
序盤にレベルが上がりにくい、というのは意外とストレスである。
次レベルまでの必要経験値が正比例していくA型がその辺りの気持ちは楽であろう。
多少の手間は掛かるが次点はABか。ランダムであるのを逆手に取り、レベルアップ前のキーワードを記録しておくのだ。それでレベルアップして次レベルまでの必要経験値が少なければ続けて、多いようであればやり直すのである。
序盤は兎も角中盤以降は総合的に時間の節約にもなるだろう血液型なのだ。
問題点はパラメータの上昇は全ての星座・血液型の場合に於いてランダムである点と、キーワードでやり直すと重要アイテム以外はなくなってしまう点か。
「おう!?」
ゲーム開始直後、ササが驚きの声を上げた。
このゲーム、敵キャラの出現はワルキューレを囲むように複数体が同時に現われる。
開始直後に出てくるコアクマンはあまり積極的に攻撃はしてこない様に見えるが、現われる数は四体。 まるで威嚇するかのように、周囲を飛び回る。
その際彼らは空を飛んでいるのか、障害物は無視される。
「おわ!? 何か紫になったのじゃ!」
「……あ~、毒状態だな」
マニュアルを見ながら連理が答える。
コアクマン、序盤から出てくる敵のくせに毒攻撃を仕掛けてくる曲者なのだ。何というか、殺意が高い。
動きはそこそこだが、障害を無視して飛び回る為殴りにくく、体力も意外とあり初期レベルのバランス型なら二撃三撃殴る必要がある。武器は剣であるから当然接近戦であり、殴る分攻撃を受ける可能性も上がる訳だ。
しかも解毒剤も手に入れていない状態での毒攻撃である。殺意が高い。
ワルキューレの初期配置は宿の傍であり、そこに宿泊してしまえば毒状態も解除される。だが、それでも殺す気満々に思える敵配置だ。
このコアクマン、実は解毒剤をドロップする可能性もあるのだが、毒を受けたから即落とす程甘いものでもない。
ちなみに毒解除の魔法「解毒の術」はどちらかと言えば後半に覚える魔法だ。
全体攻撃魔法「いなずま」の一歩手前である。透明になり敵を惑わす「ガラスの術」や、画面上の敵を金縛りにする「星笛」より上位。
それなりに進めていかないと解毒剤の所持を止められないのだ。
「宿に入れば敵はいなくなるし、泊まれば毒も解除されるみたいだな。 ああ、でも」
連理が言い終える前に、ササワルキューレはさっさと宿に引き籠もった。
毒を受傷した曲だけが流れる。
「でもって何じゃ?」
「一体も倒してないと金が減るだけだなあ、と」
言い切れなかった部分を語る。
「仕方ないのじゃ…………あれ、どうやれば泊まれるんじゃ?」
イヤな感じの曲だけが流れる。 徐々に体力が減っていく。
「ベッドに入ればいいんじゃないのか?」
「……どうやって? 入れんのじゃ!?」
ペラ……ペラ……
「…………お金がないと泊まれないってさ」
先程までのように、マニュアルを見ながら彼は言った。
減った体力と知力に応じて料金が発生。 解毒は別料金らしい。
「……所持金ないのじゃ!? 神の子なのに!? 極貧なのじゃ!?」
開始直後に所持金なんてものはない。
ショートソード一本の素寒貧であった。
そんなくだらない話をしている間も体力は徐々に徐々に減っている。というかもうレッドゾーンへ突入。
実は少し歩くと解毒剤が落ちていたりするのだが、そんなことを今の彼らが知る由もない。
「如何したら良いのかの……?」
「1・薬の術で体力を回復しながら敵を倒してなんとか宿代を稼ぐ。
2・あきらめて最初から始める。
3・限界まで……」
そこまで聞き、ササはにこりと微笑みを見せた。
そして、何ら躊躇いを見せず、リセット。
「……最後まで聞けよ。 まあ、大した差はないけど」
再度キャラメイクをする彼女の背に愚痴る。
「どうせ限界まで頑張る、とかじゃろ?」
「一応、宿に入ったら簡易セーブみたいだからさ、限界まで戦って宿でセーブしてから即continue?」
ぶっちゃけ、やったとしてもcontinue一回分の時間の節約にしかならないが。
ササはそれを聞いて連理の方へ向き直ると先程のようににこりと微笑んだ。
「じゃから~、おぬしは何でそうなんじゃ! 今の選択肢なら、あきらめて云々は最後じゃろっ!?」
連理の襟首を掴み前後にぶんぶんする。 シェイクだ。
「お前、さんが、せっかち、なんだ、って」
無抵抗にぶんぶんされながらそう言う連理。
ササはふて腐れたようにそっぽを向き、再び画面の前に鎮座した。
「いいんじゃいいんじゃ、もうO型になんかしてやらんのじゃ」
そう言いつつ彼女が選んだのはAB型だった。
のちにやたらと必要経験値を多く要求されるプレイを続ける彼女の姿があったとかなかったとか。
特にササには「不幸」とか特徴付けはしてない筈なんだけどこうなってしまった。まあ、日常生活は普通でもダイス目だけは只管悪い人とかもいるし、多分ササもその手の人なんでしょう、きっと……。
確か初期所持金は0だったと思うんだけど確認出来なかったんだよな……。違ってたらすまんです。




