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59。変わり果てた部屋

 ミジュの匂いをたどって、フェンリルを筆頭に城の中へと突き進む彼ら達。


「この先には王の間しか無いが……まさかあいつら神聖な場所に巣を張っているのか!?」


 ジュウキは城の奥へと進むたびに怒りが込み上げるが何とか抑えながらみんなと共にフェンリルの後を着いていく。


 だが、彼の想像通り目の前には王の間が。


 フェンリルもこの先からミジュの匂いが続いていると伝えた。


 と、ここでジュウキの怒りは頂点に立つ。自分が崇拝している王がいた部屋に魔物が巣くっているのが許せなかったのだ。


「邪魔だ、お前ら行くぞ!」


「ジ、ジュウキちょっと待て!?」


 レン達をを押しのけ、彼らの言葉にも耳を貸さず、部下にそう命令して勢いよく王の間の扉を開けた。


 だが、そんな怒りは一気に吹き飛ぶ事になる。

 彼らが目にしたのは驚く光景だったのだから。


「なんだこれは……」


 目の前に広がる光景は以前とは全く違う。


 以前は部屋の至る所には装飾が施され、中央の道にはレッドカーペットが引かれ、そのカーペットの先には王がいつも座っていた椅子があったのだが……


 今は違う、いくつもの円筒状の透明なケースが列をなして設置されていたのだ。


 唖然とするジュウキを横に部下の1人がすぐ横にあったそれを恐る恐る見てみると恐怖で言葉にならない様な悲鳴をあげ、腰を抜かした。


「どうした!?」


 頭を抱えて怯える部下にそう問うが彼は恐怖のあまりなにも言葉にできない。


 何事かと自分もそれを確認してみると、そのケースの中には人が入っているではないか。

 だけどそれだけでは無い。他のケースも確認してみると、人間から魔族、魔物までありとあらゆる他種族が入っている。そして皆、口にはチューブがつけられてそこから泡が漏れ出している。


「これは……」


 驚きで言葉も出ない。


 ジュウキが辺りを確認している間に恐怖のあまり言葉を発することが出来なかった部下が少し落ち着きを取り戻した。そして泣きながら訴えた。


「あの中に入っている人は……俺の……兄です……」


「なんだとっ!?」


 まさか、自分の兄弟が入っているなんて想像もつかなかっただろう。彼は涙ながらにジュウキにそう話すと、さっき見た光景を思い出したのかまた泣き崩れた。


「そうか……」


 ジュウキもそれ以上何も言う事が出来ず、その者を後退させ、他の部下へと彼の介抱を頼む。


 きっと、魔族が攻め込んだ時に捕まってしまったに違いない。そして自ずと拳に力が入る。なんて酷い事をするんだと……


 ライズ達もジュウキ達に遅れて王の間に入ると例の円筒状のケースを確認していた。


「ひどい……」


 マリアも直視するのが辛いみたいだ。


「ニールがやりそうな事だな」


 ライズはそうつぶやいた。


 以前にも研究のためだと同じような事をやっていたニール。だが、あまりにも研究の仕方が残酷だとライズが禁止令を出していたのだ。


 生きたまま標本のように液体付けにして、いろんな薬を投薬して研究の成果を得る。


 研究対象は動くこともできず、ただ苦しみを耐えることしか出来なかったからだ。


「だが、まだ希望はある。この中にいる者はまだ生きているはずだ」


「本当か!?じゃあ今すぐに……」


 そうジュウキが言ったがライズは待ったをかける。


「今はまだダメだ。この戦いが終わってからじゃ無いと。助け出した所で足手纏いになるだけだ」


「そうだな」


 まだ助ける事は出来ない。でも、生きている……その言葉に後方で介抱されていたジュウキの部下は少し希望を見出し服で流れていた涙を拭き取った。


 ◇


 ライズは不審に思っていた。

 ニールの研究所らしき所にいるのに当の本人は現れない。一体なぜだ?


 並べられた多種族の横を通り、更に奥に進むと、一つだけ王の椅子があった場所に同じケースが置かれていた。


 それを見たジュウキはいきなり走り出す。


「まて!一人で突っ込むのは危険だ!」


 みんなの声が聞こえていないのか、ジュウキは止まらない。


 そして、彼は声を発した。


「ミラニ様ーっ!!」


 彼は彼女を助ける為にここまでやってきたのだ。だから、目の前にその姿を見つけた走り出したのだ。


 後少し、もう少しで彼女を助け出すことができる……


 そう思っていたのに……


 彼女の元へと到着する前にジュウキは雷の様なものに撃たれた。


「ジュウキッ!?」


 すぐさまマリアがジュウキ元へと行き回復魔法で処置を施す。他の者は彼女達の周りを囲み敵の攻撃を警戒した。


「やっとおでましか……」


 ライズがそう口にすると、上から浮遊魔法で降りてくるニールが。


 ライズ達の前に降り立つと深々とお辞儀をする。


「お待ちしておりました。ライズ様?」


 顔を上げたニールはにこやかでどこか気持ち悪かった。


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