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58。記憶の片隅に

 マリアが何とか二人を宥めたおかげで、少し冷静になった彼ら達。


 だけど、何とか剣は鞘に収めてくれたものの彼らの言い争いは終わらなかった。


 そこにレンが提案を持ちかける。


「お願いだ。今戦力が欠けるとミジュもミラニも助けれない。だから、とりあえず今回だけでも協力してくれないか?」


 それぞれ助けたい人がいるのは同じ。


 レンから懇願された二人は少し悩んだが、ライズはミジュを、ジュウキはミラニを助けれなくなるのは困ると考える。二人ともしょうがないと仕方なく彼女達を助けるまではと共に行動してくれる事になった。


「ミラニを助けるまでだからな!」


「こちらとて同じだ!ミジュを助けるまでだからな」


 何とかその場がまとまりほっとするレン達。彼女達がいるのはすぐ近くだ。早く助け出さなくては……と再度気を引き締め目的地の城へと急ぐ事にした。


 ◇

 コポコポ……

 コポコポ……


 ミジュの口へと繋がれた長い管。液体の中にいる彼女が息を吐く度に漏れる音。


 そして……しばらくするとミジュは目覚めた。


 あれ……私は一体……ここは……


 必死に記憶を辿る。今なぜこの状態になっているのかを……


 そして、そういえば……と彼女は少しずつだが記憶を思い出していく。


 確か……部屋に閉じ込められた後、しばらくしてまたニールが現れた。そして嫌がる私をまた無理やり引きずり沢山の透明な筒がある部屋へと連れて行かれたんだ。そう、私が初めに通った部屋。いろんな種族が眠る場所だ。


 そこで私はまた気を失ったんだろう。きっとニールが私に何かしたに違いない。


 で、今目が覚めたらこの有様だ。


 ここからどうにか逃げようと体を動かしてみるが、手足が拘束されている。なにより私は衣服を剥がされて素っ裸の状態だ。


「お目覚めのようですね」


 液体の中でぼやけているが間違いない。ニールだ。私が目覚めたのに気づいたニールは私が入っている筒の近くに現れた。


 ニール!!


 怒りの言葉を彼に向けたいが、口には管が、そして周りには液体。思うように話すこともできず、ただ、睨むことしかできない。


 そんなニールは私の怒りを感じ取ったのか、ふふふと笑いながら、私の周りをゆっくりと行ったり来たりと歩いていた。


「安心してください?あなたはアザック様から預かった大事な検体です。素直に私の言う事に従ってさえいればいずれそこからも出られるでしょう。」


 歩いていた足を止めて私の顔を見るニール。


「あなたの姿が本来の姿になるまでもうしばらく辛抱してくださいね?」


 本来の姿……?


 ニールはその言葉を私に伝えると、近くの机の上にあった緑色の液体が入った試験管をそっと持ち上げる。


「早速ですが、これから試してみましょうか?」


 そう言うと、その怪しい液体を私の筒の中へと注入した。


 嫌だ……何を入れたの!?それに……何なの?本来の姿ってなに!?


 パニックになりながらそう思っている時だった。


 体が急に熱を持ち始める。


 熱い……さっき入れられた液体のせい!?


 全身がまるで火に包まれているかの様な熱さを感じる。ニールは私の様子を観察しているようだが、今はそれどころではない。


 耐えられず体をバタつかせるが、拘束されているのだ。動けるはずもなくただ、熱さを必死に堪えながらもがき続ける私がここにいた。


 苦しいよ……辛いよ……


 こんな熱さを耐えられるはずもなく、だんだん意識が遠のいていく。


 朦朧とする意識の中で一人の女性の姿が浮かび上がった。だけど顔にはもやがかかってはっきりと分からない。


「あなただけは幸せに生きて……」


 そう言って私の頭を撫でると私に背を向けてどこかへと歩いて行ってしまう。


「お母さんっ!!」


 自分でも咄嗟に出た言葉。お母さん……?あの女性は私のお母さんなの……?


 私の忘れられた記憶の破片。頭の片隅に少しだけ残っていた記憶がその女性を自分の母親だと伝えたのだろうか?


 そして、私はまたそのまま熱さに耐えかねて意識を手放した。



 ◇

 一方レン達は――


 魔物を倒しつつも無事に城まで辿り着く。


 周りを警戒しながら、入り口のドアをゆっくりと開けた。


 ミジュが入った時のように中は薄暗い。


 みんなが城の中に入ると、ライズが鼻が効くフェンリルにお願いしてミジュの匂いを探してもらう。


「フェンリル頼む」


『分かった』


 その様子を見ていたジュウキ。


「おい、あいつ今喋ったよな?さっきの戦いでは体がデカくなったしあいつはミジュの使い魔か何かか?」


 普通なら魔物が人間の言葉を話すだけで驚くのだが、驚きもせずに隣にいたレンに聞く。


 実際、ジュウキの部下達はフェンリルが大きくなった事にも驚いていたし、彼が言葉を発した事に驚いている。


 そんな彼らを他所にフェンリルはミジュの匂いを探し、ついに彼女の匂いを見つけた。


『こっちだ。あの先の方からミジュの微かな匂いが続いている』


「よし、行くぞ」


 ライズの掛け声と共に、フェンリルが先頭に立ち皆を引き連れて城の奥へと向かった。

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