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52。出発

 マリアは私がニールに捕まっている間の事を教えてくれた。


 フェンリルのおかげでマリアが無事にタクと出会えた事。ライズがレンと戦った事、フェンリルがニールに刺された事、そして先ほど私達が対峙した魔物の事。


 ライズがマリア達を逃がす為に魔物に命をかえりみず立ち向かって行った事……


「それで、ライズが私達に言ったの。ミジュとフェンリルの事を頼むって」


 当初は渋々納得したタクだったけど、自分達の基地に戻り冷静さが戻ると私を助ける事を改めて反対した。ミジュの事は嫌いではないけど彼女は魔族側の人間。自分達の敵を助けてどうなるんだと。


 それにマリアは言い返したそう。


「もし、ミジュが私を助けてくれなかったら、私は今頃死んでいたかもしれない。それにライズだって。交換条件を突きつけられたからって、見ず知らずの人間を自分の命と引き換えに逃がしてくれたんだよ?」


 その言葉にタクは悩んだそうだ。正直なところ正解が分からなかった。それに勇者が魔族側の人間を助けたという話が広まったらと思うと……


 だけど、すでに目覚めて私達から一部始終を聞いていたレンはタクを諭してくれた。


「昨日の敵は今日の友っていうじゃん?何とかなるって」


 って。


 その言葉を聞いたタクは自分が悩んでいる事がバカらしくなったそうだ。レンはいつもそうだ。周りの目なんて気にしない。自分の信念のままに進む奴だった。だからそんな彼に代わって自分が正しい選択をしなくてはいけないと思っていたそうなのだが。


 結局、タクも本当はミジュの事を嫌いにはなれなかったのだ。


 ただ、マリアに言わせれば2人とも自由奔放なんだけど……って言っていた。確かに彼等を見ればそんな気もしないでもない……



 ――話は戻って。


 彼女達は避難してからしばらくして、現状を知る為に、自分達が逃げ出した場所まで戻ったのだそう。


 道中、すでに当主を失った魔族達は逃げたのか姿はなく、自分達の味方も生きている者は撤収を命じていたので、人間や魔族の死体だけが入り乱れて残されていた。


 ちなみに例のどデカい魔物の姿もなかったそうだ。ただ、奴が暴れた回ったのか、周辺は瓦礫の山と化していたのだが。


 これでは、助けてくれたライズも死んでいるに違いない。マリア達は彼が死んでいると思っていたのだが……


 ライズは生きていた。かろうじて息のある彼の姿があったそうだ。瓦礫の下敷きになっていたが、たまたまタクが瓦礫から出ている人間の手を発見した。


 どうやってかは知らないが彼はあの魔物を倒していた。もちろん彼女達は驚いた。自分達と戦って疲労し切っていたのにと。


 近くには大きなキラキラと光っている石が転がっていたので、多分それが例の魔物。


 以前少し話したが、魔物は死ぬとキラキラとした美しい石だけを残して死んでいくのだ。


 そしてライズを見つけた彼女達は彼を自分達の仲間がいる所で看病してくれているそうだ。


 マリアは私に言った。たとえ敵同士といえ、あの時、ライズが自分達の事を助けてくれた。それに彼は人間だ。なんで魔族の味方をしているのかは分からないがきっと事情があるはずだからと。


「そうだったんだ」


 マリアの話を聞いて自分がニールに捕まっていた間に目まぐるしく色々な出来事が起きていた。それにライズは私とフェンリルの為に自分の命をかえりみず……なんてバカな妹想いな兄だ……


 ……全く私は泣いてばかりだな。


 マリアから話を聞いた私は涙を流していた。

 前にライズ達のことを思って泣いた涙は悲しみからだったけど、今回は違う。


 離れていようとも私はライズに守られていたんだ。

 そんな感謝の涙。


 彼女の話が終わったタイミングでレン達がこの部屋へと戻ってきた。

 出発の準備も終わり、私達のことを心配して様子を見にきてくれたそうだ。


 そして少し時が経ち、今度はジュウキが姿を現した。


「出発の準備が整ったぞ」


 そう言い放っと早々に部屋を後にした。


 ついに出発か……


 みんなと一緒に部屋から出ようと知ると、ドアの前に立っていた兵士に呼び止められて、両腕を縛られた。

 これも逃げない様にする為だとか。


 そんな様子を見ながら近くにはマリアが「大丈夫よ」と私にそう言いながら寄り添っていてくれていた。


 ◇

 ニールの元までは、途中まで馬車で行き、山を超えなくてはいけないので自分達の足で山を登ることに。その先に山に囲まれた彼等が生まれ育った国があるそうだ。


 そしてメンバーは私とレン達、そしてジュウキと彼の部下十数名。

 あまり大人数で行っても洞窟で民達を守る者が減り手薄になってしまうので、少人数での参加となった。


 でも、ジュウキの部下は彼直々に鍛えている為かなりの精鋭だという事だ。


 そして、馬車に乗り込むとミラニを救う為に出発をしたのである。


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