46。罠
洞窟を案内してもらった後、私はとんでもないことに気づくことになる。
ギルに貰ったペンダントがない。
自分の無事を知らせる為に、それに早く私の事を見つけて欲しくてペンダントに祈りを捧げようと思っていたのに……首から下げていた彼から貰ったペンダントがいつの間にか無くなっていたのだ。
ミラニが兵士に呼ばれた為、一旦彼女と別れた私は洞窟内を探してみたり、落ちていなかったか周辺にいる人に聞いてみたりしてみたけど無い。外に落としたのかもと、洞窟から出ようとしたら兵士に危ないからと止められるし。
……無いよ。どこに落としちゃったの??
あちこちを必死に探し回っていると、ミラニが用事を済ませ再度私の元を訪れて、今度は食事に誘われた。
「ここに来てから何も食べていないでしょ?」
そう言われたんだけど、正直食欲はない。
だけど、気を遣ってくれているのか、せっかくのお誘い。断る事もできずにミラニとジュウキとで一緒に食事をすることになったのだが、食事中もペンダントのことで頭がいっぱいで、せっかく貰ったパンとスープもほとんど口をつけずに残してしまった。
やっぱり落としたのは外?でも、ニールに連れられている最中に落としたのであれば見つけることはほぼ不可能。
そんな悩んでいる私の様子に気づいたミラニ。
嘘をついてもしょうがないし、彼女に大事な物を落としてしまった事を告げた。
「洞窟内に無いとしたや、やっぱり外で落としたもしれないのかぁ。でもむやみに出ると魔族に鉢合わせに可能性もあるし……」
「お願い!とても大切な物なの。少しだけでもいいか探させて?」
ミラニはしばらく考えた後、ジュウキの方を見る。
彼はやれやれと言う顔をしていたのだが。
「少しの時間だけだぞ」
意外な言葉。まさかそう言ってもらえるとは思わなかった。
「さっすがー、ジュウキはわかる男だね?」
ミラニがはやしたて、それを嫌がるジュウキ。
そんなジュウキに私も頭を下げてお礼を言った。
――準備はいい?
外に魔物がいない事を事前に他の見張りをしていた兵士達が確認を済ませ、私、ミラニ、ジュウキの三人で外に出た。
「とりあえずお前が落ちてきた所まで戻りながら探そう」
ジュウキが周囲を見張り、私とミラニでペンダントを探す。
だけど結局私がニールから助けてもらった場所まで探しながらやってきたが見つからなかった。
「やっぱり、ここに来る以前に落としちゃったのかな……」
「ミジュ。もうちょっと頑張って探してみよ?」
本当は草の根分けてでも探して見つけたい。ミラニも必死に探す私を励ましてくれる。
だけど、これだけ探しても見つからないし、彼らに迷惑がかかるを申し訳なく思い、ペンダントを探す事を諦めることにした。
「……ミラニ、ジュウキありがとう。もう諦めるよ」
「ミジュ……」
「大丈夫!きっとその内ひょっこり現れるかも知れないし」
ミラニが心配そうな顔で私を見つめていたので、そんな彼女を心配させない様に最大限の笑顔を作り、ミラニを安心させた。
「そろそろ日も暮れるし戻ろう」
丁度ジュウキからもその言葉が出て、洞窟へと戻る事に。
だけど、来た道を引き返そうとした時、少し離れた草の茂みで何か光ったのを見た。
彼らに少しだけ待ってもらい、近づいてみると見覚えのある光。
それを見て私は確信した。そうだ、これはペンダントの光だ!いつも私が見ていた光。ギルが祈りを捧げて光っているんだ!!
見つかった事に嬉しくて、慌ててペンダントが落ちている場所まで走り出すと、ジュウキが何かを察知したのか突然大声を上げた。
「ミジュ!!そっちに行ってはダメだ!?」
「えっ!?」
だが時すでに遅し。
彼の言葉に立ち止まった私は、足元から急に何かが飛び出して体制を崩して転んでしまう。
そして転んだ私に近づく足音が聞こえる。
顔を上げると、そこにはニールの姿があった。
「ニールッ!?」
「やっと見つけましたよ」
手には私のペンダントを持ちこちらを見下ろしている。彼の祈りが終わったのかペンダントの光は失っていた。
「そのペンダントは私のだ!返せっ!?」
手を頑張って伸ばすも、届くことはない。ニールは手から垂れ下がっているペンダントを自分の顔の近くに寄せてじっくりと眺めていた。
「不思議な物ですねこれは……とても興味深い。それにしてもやはりこのペンダントは大事な物でしたか。持っていて正解だ」
そう、ペンダントを囮にニールは待ち構えていたのだ。
「ミジュ!?」
「ちっ!やっぱり罠か」
ジュウキとミラニは私とニールのやり取りに状況を把握した様だ。私を助けようとこちらに向かい走り出した。だが、さっき私の足元から飛び出してきた魔物が彼らの行手を阻まれてしまう。
「魔物!?」
「とりあえずやるぞ!ミジュを助けるんだ!あいつはやはり魔族と繋がっている。貴重な情報源を手放してたまるかっ!?」
そんな私を助ける為に2人が魔物と対峙を始めた。
一方、2人が魔物と対峙しているのを確認して私の方を改めて見るニール。
私の手を引っ張り上げると魔法で手足を拘束する。
「もう、今度は逃げられませんよ?ちゃんと大人しくしてて下さいね」
「離してっ!?」
そう言って抵抗したが、拘束されているせいで上手く動けない。
ニールはそんな抵抗出来ない私を抱き上げ、魔物にこの場を任せて早々にその場を立ち去ろうとした。二度も同じ過ちを侵さないようにと。
――だが、その時だった。
「やっぱりかっこいい登場の仕方はこうでないと!」
どこからか、謎の声がする。
ニールも不意をつかれたのか、ハッと周りを見渡す。だけど今近くにいるのは自分が放った魔物とそれに対峙しているミラニ達だけ。
一体どこから声が聞こえてきたのか……
「ここだよ!ここっ!」
その声は空から聞こえて来る。
ニールも私も、何ならミラニ達もその声に空を見上げる。
すると、空から誰かが降って……いや、落ちてきた。
「うわーっ……っとと……」
落ちてきた人は途中でスピードが緩くなり、地面に激突する事もなく、無事に着地に成功する。
その後から別の2人がゆっくりと地上へと降り立つ。
「サンキュウな!」
「全く私が魔法を使わなかったら貴方死んでたわよ?」
「本当だよな……まさか飛び降りるとは思わなかったぜ」
切羽詰まっている現状のはずなのに、彼らのその言葉に緊張感はない。
懐かしい声、そして懐かしい姿……私は涙が溢れてきた。
だって……私の目の前に勇者一行が現れたのだから。




