43。脱出
「ん……」
寒さで目を覚ました私。なぜか風が身体中に当たり体温が下がっていた。
そして、目を覚まして思う。私は今、一体どこにいるの?これはどういう状況??
だって……私の目の前には地上が広がっているんだもの……
だけどこれは夢かと思ったけど、すぐさま現実だと言うことに気付かされる。
「もう目が覚めちゃいましたか……ミジュ様?」
聞き覚えのある声がする。その声のする方に顔を向けるとやはりニールだ。
どうやら彼は飛行魔法を使って空を飛んでいる最中で、そして私は彼に抱えられている様だ。手も後ろで縛られていて自由に動かせない。
「ニール。これは一体……」
彼の顔を見て何故こんな事になっているのか相変わらず状況が分からなかったが……少しづつ、次第に意識がなくなる前のことを断片的に思い出してきた。
確か……あの時、彼が牢屋に私を呼びに来て……それから、部屋に行ったら……そうだ、ギルが会いに来たと思ったのに。それからの何か甘い匂いがして……そこから記憶が無い……。
そうだ、マリア達とは途中で別れたんだ。彼女達は無事に逃げ出せたのかな?
「ミジュ様もうすぐ着きますから、もう少しだけ我慢してください」
彼は昔からの名残で私を気を使ってくれたのか、そう声をかけてくれたのだが、今どこに向かって飛んでいるのか?と行き先を聞くと、私の方をちらっと見た。
「あなたに会いたがっている方が居ましたね……。何回か会ってますが覚えていますか??」
何回も会っている?一体……?
私が誰のことかと考えていると、ニールはヒントをくれる。
「そうですね、マルジン……と言う名を出したら分かりますか?」
マルジン……?ん……?もしかして……
そうだ、私の召喚魔法に凄く興味を示していたあいつだ。
森でも戦ったし、魔王城でも戦った。私の力は全く及ばずだったけどね。でもライズやフリード様のおかげであれからずっと付き纏われる事もなく、何事もなかったのに……
それになんでニールがマルジンと繋がっているの?
「そうですよね?そりゃあ、驚きますよね?何で彼と繋がっているのかって?ミジュ様はそんな顔をしていますね。ではお教えしましょう。私は元々彼の部下だったのですよ」
「……だから?マルジンに言われて私を?」
「正解。まぁ、それなりの報酬はいただく予定ですがね」
正解って。だけど私は彼に反論する。こんなことをしたらまたライズ達が黙っていないことを伝えたのだが。
「あぁ……言い忘れていましたが、ライズ様は死にましたよ?」
「……え!?」
突然の告白に驚いている私に続けて話す。
「嘘ではありませんよ?だって、私が放った刺客に襲わせましたから。まぁ、直接死んだ所は確認してませんけど、彼は虫の息でしたし……それに近くにいた、疲れ切っていた勇者達も一緒に……」
うそ……ライズが?それにレン達も……
「……嘘だ」
「嘘じゃありませんってば」
何度もしつこく否定するニールは私に呆れてため息をついていた。
「ちなみにあなたも今回の戦いで死亡したことになっています。だからフリード様達の助けを期待しても望みはありませんよ?」
そう言われたが、ライズ達のことで頭がいっぱいで自分のことの話が入ってこなかった。
だって、彼らが死んだなんて!?
でも、私は彼の言っている事を否定した。きっと生きている。ライズ達が死ぬわけないんだ。だって直接死んだ所を見ていないと言っているんだ。だから……
だが、ニールは往生際が悪いと私に喝を入れてきた。
彼が死んだと聞かされて涙が溢れ出しそうになったが、グッと拳を握り涙を抑えた。
私は今やるべき事。それは、ニールから逃げなくては。このままマルジンの所に連れて行かれるのはいや……フェンリルやマリアはもしかすると別の場所にいるかもしれないし。なにより、ライズの元に帰るんだ!!
そう心に決めると、大人しく捕まっていた私は体をバタバタと激しく動かしさせて彼に抵抗した。
「ちょっと……!?危ないではないですか。ここから落ちたら死にますよ」
ライズ達の死を伝えれば私が大人しくなるとでも彼は思っていたのか?全く逆の行動を起こされてかなり焦っていた。そして……
私は思い切りニールに抵抗すると、彼は抱えていた私の体を耐えきれずに離した。
「しまった!?」
焦った彼と裏腹に、離れる事が出来たと喜んだのも束の間、それと同時にこの状況をどう打破すればよいのか……
とりあえず彼から離れることしか考えておらず、落下する私……
「……うぅっ……」
重力の圧を受けながら地上に向かって落ちていく。
早く、どうにかしないと……何か、召喚魔法を……
必死に着陸方法を考えていると、急にふわっと自身の落下速度が遅くなった。
えっ?一体どう言うこと??
地上に激突するのは回避されたが、私の落下速度が遅くなったことにより、私をまた捕まえようとこちらに近づいてくるニールが迫っていた。
「ミジュ様!」
「いや!こっちにこないで!!」
私が全力で拒否していると、耳元で知らない声が聞こえた。
「あいつは敵でいいんだな?」と……
藁を掴む思いで頷くと、私の体が誰かによって受け止められたのが分かった。




