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42。悲しみ

 ――ここはフェルドリア王国とは真逆に位置する場所にあるリリス王国。


 リリスでは、先ほど魔族と人間の戦いに決着が着いた所だった。


「どうだ?」


「はっ。周辺をくまなく探索しておりますが、逃げたか死んでいるかで、生きている人間は確認できませんでした」


「分かった。引き続き生き残りがいるかを確認し、発見したら殺せ」


「はっ」


 ギルは王が座る椅子にどっしりと腰を下ろして、そう部下へと司令を出す。


 彼の近くには王とその側近と思われる死体が転がっている。


 この国の主人を抹殺したのだ。生き残った人間は大半が逃げ出し、それでも立ち向かって来たものには返り討ちにしたのである。


 ギルはため息を着いて天を仰いだ。少しの間の休息だ……これから報告やら後処理などでまた忙しくなるのだ。本当はミジュと喧嘩別れしたのだから、早く会って仲直りをしたい。だけど、まだ当分無理そうだ。


「さて……」


 しばらくしてギルは椅子を立ち上がると、近くにいた別の部下に別の指令を出す。


「俺はこれからフリード様にこの事を報告してくる。だから、それまでここの留守を頼むぞ」


「はっ。かしこまりました」


 そう伝えると、ギルはフリードが陣を張っていた隣国アクアゾルへと転移魔法を使って飛び立った。


 ――だが、彼はフリードへの報告に行った際に悲しい報告を聞くこととなる。


 ギルがアクアゾルへと到着すると、フリードの下っ端の部下達が彼を出迎えてくれた。


「ギル様!もしかしてもう国を落とされたのですか!?」


 あまりにも早い帰りに驚く彼ら達。


「当たり前だろう?俺を誰だと思ってるんだ?」


「「さすがはギル様……」」


 部下達の尊敬の眼差しを受けながらその横を通り過ぎ、フリードが待つ場所まで向かった。



「フリード様」


「ギルか?お前がきたと言う事は決着がついたか」


「はっ」


「相変わらず仕事が早いな」


 転移魔法を使いフリードの元までやってきたギルは彼の前にひざまづくと国を一つ滅ぼした事を報告した。そして、その言葉に労いの言葉をかけるフリードだったのだが……


「丁度お前に話さなくてはいけない事があってな」


「私にですか?」


 それから少し間が開いたが、フリードはゆっくりとはっきりと彼にその言葉を伝えた。


「……ミジュとライズが戦死した。遺体は跡形も無いそうだ……」



 その言葉にギルは何も言う事が出来ず、ただ目を見開くことしか出来なかった。


 だが、そんな彼を他所にフリードは話を続ける。


「先ほど入った偵察部隊からの情報だ、間違い無いだろう。だがギルよ……言っておくがこれは戦争だ。彼らの死は予想していたはずだ」


 それでも、まだ何も言う事が出来ないギルは、そっと立ち上がると彼にお辞儀をして無言でその場を後にしようとした。


「今からミジュがいた場所へ行ってもどうにもならないぞ?それに……もしそんな行動を取ったら職務放棄とみなして私はお前を殺す」


 フリードの冷たい眼差しとその言葉を背中で受け取ったギルは、一瞬立ち止まったがまた歩き出した。


 一歩、一歩と歩き何とかフリードの前から下がった。

 歩く事も精一杯だった彼は、人気のない場所まで行くと崩れる様に座り込んだのである。


「…………ぐっ……ミジュ……」



 悲しくて……苦しくて……悔しくて……やり場のない怒りを目の前にある床に向けて、思い切り叩く事しか出来なかった。

 そして自然と涙も溢れ出す……


 何度も何度も床を叩き続けて手から赤い血が滲み出す。それでも彼は叩き続けた。そしてそれをしばらく続けていたが、ふとその行為を辞めて天井を見上げた。


 本当は今すぐにでも彼女の元へと出向きたい。たとえ死体が無くても、彼女が最後にいた場所に行きたいのだ。だが、フリードは今それを許さなかった。


 それは彼なりの優しさだとギルはもちろん知っている。

 今その現場に行ってしまったら、自分の感情を抑える事が出来ないだろう。敵味方関係なく怒りに任せて暴れていたに違いない。そう、フリードがギルを制止することで彼の暴走を止めていた。


 だから……今はまだお前の所に行く事が出来ないミジュ。自分を大事に思ってくれているフリードの為にも……

 俺の気持ちに整理がついたら必ず行くから……だから待っててくれ。


 そう思いながらギルは首にかかっているペンダントを両手で握りしめながら祈りを捧げた――


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