40。第三者
先制攻撃はフェンリルが仕掛けた。
思い切りを口を開きその中に魔力を集めてマリア達へと向かって放つ。
だが、これはマリアがバリアを張り失敗に終わったのだが、この攻撃は囮だった。
フェンリルはすごい速いスピードでタクをターゲットにして襲いかかった。だがタクも間一髪の所で避けてカウンターを繰り出した。
両者がどちらも紙一重の攻防を繰り出す。
お互いが力尽きるまで互角の戦いが繰り広げられた。
「なんなんだあいつは!これじゃあキリがない」
「フェンリルってあんなに強かったのね」
タクもマリアもフェンリルの強さに驚愕する。だが、そんなフェンリルも彼らの強さを同じ様に驚いていた。
『これが勇者一行の力ってわけか』
勇者と共に戦っているだけあってかなりの強者。
だが、このまま平行線のままでは勝負がつかない。ライズを早く安全な場所に連れて行きたい。だから、どうしてもこの勝負に勝たなくてはいけないのだ。そんな気持ちで彼らに立ち向かっていく。
――だがそこに第三者の邪魔者が入ることになる。
「はいはーい!皆さんそこまでです!」
両者が必死の攻防をしている最中、割って入って来たのはニール。
ボロボロの建物の頂上からこちらを眺める様に見下ろしている。
「新たな敵かっ!?」
ニールを見たタクは彼の姿が魔族だった為に警戒を強める。
だが、マリアは彼の姿を見た時、別の事を思っていた。
確か、あの人はミジュを連れて行った……ってあれ?彼が抱えているのって……
ニールとは距離があった為、はっきりとは分からなかったが、何かを抱えているのは分かった。そしてそのモノは人に見えたのだ。
だが、次の瞬間、それは確信に変わる。
なぜならフェンリルが叫んだからだ。
『ミジュッ!?』
「ミジュですって?」
フェンリル達が驚いていると、ニールは瓦礫や崩れ建物をヒョイヒョイとジャンプしながら、皆がいる場所までやって来た。
そして、今さっきまで戦っていたタク、マリア、フェンリルの前を通り過ぎた。まるで空気の様に思っているのか、見向きもせず……
「あんにゃろう。俺達は雑魚扱いかよ」
この行動にタクはキレ気味だ。
ニールがやって来たのは、力を使い果たして壁にもたれて座りこんでいたライズの所。
ニールの行動に気を取られていたフェンリルは、ハッと我に返り急いでライズの元に駆けて行ったが間に合わない。
目の前にいるニールに反応したライズは、何とか意識を保ち、ゆっくりと顔を上げ彼を見た。
「ニール……これどう言うことだ?」
先ほどから周りからミジュの名前が呼ばれていると思えば、今目の前に彼に抱えられたミジュがいる。
「ミジュ……起きろ」
消えそうな声で言葉をかけるが、ミジュはぴくりとも動かない。
ニールはライズの言葉にふふっと笑う。
「私が尊敬していたライズ様はその程度の人だったのですか?人間にやられてボロボロではありませんか?」
「俺は……そんな話を……しているんじゃない。……ミジュをどうするんだと聞いているっ!!」
ライズが怒りを込めた言葉をニールに目掛けて投げると「おーこわいこわい」と馬鹿にしたように言いながら、ライズの前を行ったり来たりして立ち止まる
「どうするか知りたいですか?そうですねー……。教えちゃおっかなぁ?でももうすぐ死んでいましますし……やっぱり秘密です!」
「ニール……お前……」
動く力が残っていればすぐにでもミジュを奪い返し、ニールを思い切り殴ってやりたい。だがそれが出来ないライズは拳を強く握ることしか出来ない。
そんな中、フェンリルはニールがライズとの話に集中している間にミジュを奪い返そうと飛び出したのだが……
『ぐっ……』
「フェンリ……ル!?」
「フェンリル!?」
ライズの声と同時にマリアの声も響く。
ニールにはお見通しだった様だ。フェンリルの攻撃をすぐさま察知し避け、フェンリルがバランスを崩した所を瞬時に出した剣で攻撃した。そして彼の剣がフェンリルの体を貫通したのだ。
一部始終を見ていたマリアはフェンリルの元へと走り、すぐに回復魔法をかける。タクもマリアと一緒に着いて。
「なんでこんなやつ助けるんだよ!敵だぞ?」
「私はミジュとフェンリルに助けられたの。だから、今度は私が助けるのよ」
回復魔法をかけているが傷が深く血が溢れ出してくる。少しでも、魔法が切れると命の危険があった。それほどの重症。
「これはまずいわ。タク!お願い!ミジュを!」
ミジュは嫌いではないが、敵と聞かされ乗り気ではないタク。だが、マリアの頼みを断ることも出来ない。それに、どうせあのニールって奴はここにいる生きている者を全て皆殺しにするだろうし。
タクは立ち上がり、ニールの前に立つと構えた。だが、その行動にニールは笑っている。
「折角で申し訳ありませんが、私はあなたと戦う気はございません。だって手が塞がっていますしね。でもあなた達をこのまま生かすことも出来ませんし……そうだっ!」
ニールは空いた手の指をパチンと鳴らした。
すると、地面が地響きを起こし始めた。




