31。胸の痛み
泣き疲れた私はいつの間にか眠ってしまっていた様だ。
目を覚ますと、頭の上にいた太陽が水平線へと沈みかかってる。
『ミジュ起きたか?』
私が目を覚ましたのに気づいたフェンリル。よく見ると、大きな体のまま私を優しく包んでくれていた彼。
ずっと寄り添っていてくれた事にお礼を言った。
「くしゅん!」
空気が冷たくて寒い。彼の毛皮で守られているが、隙間からは冷たい風が入ってくる。
『陽が落ちて冷えるし、そろそろ帰ろう、ミジュ?』
「……うん」
沢山泣いて眠ったら感情が落ち着いた。このまま此処にいてもしょうがないのは分かっている。だから、もう一度ライズとギルにちゃんと冷静に話をしようと思う。だから、城へと戻ることにした。
次ももしダメだったら……。それはその時考えればいい。
……でも、やっぱり会うのは気まずいなぁ。
こっちから飛び出しておいてどんな顔をして会えばいいんだろう……そんな事を悩んでいたのが顔に出ていたのか、フェンリルが私の頬をぺろっと舐めた。大丈夫と笑顔を私に見せたくれたのだ。
うん。帰ろう。ちゃんと冷静にライズとギルと話をするんだ。
そう再度決意して城へと戻った――
◇
「……何この匂い」
『鼻がやられそうだ』
城への帰路を辿っていたら、途中からフェンリルが何か嫌な匂いが漂ってくると訴えて来た。私は何にも匂いを感じなかったのだけど、城の方へと近づくに連れてその匂いが分かった。焦げ臭くて、何かが焼けた様な匂いだ。
フェンリルはその匂いに更に反応してすごく嫌な顔をしているが。
これはただことではない。それにこちらの方角からと言う事はもしかして……
私は胸に不安を抱き、フェンリルに城へと急ぐ様に指示を出した。
――急いで戻り今、城下町の上を飛んでいるのだけど……
空から確認した城の手前にある城下町は、元々、ボロボロだったのが、更にボロボロに朽ち果てている。ここで戦いが繰り広げられていた様だった。
まだ、そんなに時間が経っていないみたいで、所々火の手が上がり、人間や魔族が倒れているのが分かる。
「やっぱり。レン達がもうすでにやって来たんじゃ……?」
こんな光景を見て、ライズとギルの安否がより一層気になる。
「城へ急ごう!フェンリル」
フェンリルを更に急かし城へと向かう。そして、到着するとすぐさまライズがいる王の間に向かった。
「ライズ!!」
扉を思い切り開き部屋の中へと入ると、椅子に座っているライズがいた。それを見て一安心。良かった、無事だった。
でも、よく見ると服の下には包帯が巻かれている箇所がちらりと見える。
「ミジュ、戻って来たのか。無事で良かった」
そんな彼も私の顔を見るなり安心した様子。
「私の事なんてどうでもいい!それよりライズ……その怪我。一体何があったの!?」
そう言って焦っていた私を彼は落ち着かせ、私がいない間のことを話してくれた。
やはり私が思っていた通りだった。
私がこの城を飛び出してからしばらくして、勇者が攻めて来たそうだ。報告の限りでは戦いはもう少し後だと思っていたが、すでに彼らは此処の土地までやって来ており、奇襲を仕掛けられた。
(ちなみにギルはその時すでに此処から立ち去った後だったそう。)
彼らは近隣の国から集まった精鋭と協力してこの城に攻めて来た。
だが、こちらも負けてはいない。ライズは魔族の配下や魔物を伴って合間見れた。そして彼は勇者と直接対決を果たした。
そして勝敗は…………
ライズが勝利した。
でもあと一歩の所で邪魔が入っり勇者を逃がしてしまったそう。
良かった……。レン達は無事みたい。
「それでミジュ。その時に勇者の仲間の1人を捕まえた。勇者を誘き出す大事な人質だ。世話を頼む」
「それって……」
続けて発したライズの言葉。一体誰が捕まったの?
ライズの話を聞いた後、私は牢屋に行って直接確かめることにした。実際に顔を見て見ないと信じられないから。出来れば別人が捕まっている事を祈っていた。
牢屋は地下にある。前に城の中を探索して場所は把握済みなのだ。
急いで、牢屋に行くと、入り口には兵士が1人見張りをしていた。
ライズに言われて捕虜の世話をしに来たと言うと、囚われた勇者の仲間が捕まっている牢屋の前まで案内してくれた。
私が牢屋の中を確認すると、そこには懐かしい姿の人物が、背を向いて牢屋の隅でうずくまっていた。
「……マリア」
私の問いかけの声に反応したマリアはゆっくりとこちらを見た。そして私の顔を見て驚いていた。
「何で……ミジュがここに?もしかしてあなたも捕まったの!?」
その言葉に対して返答が詰まったが首を横に張り、自分は魔王側の人間だと言うことを話した。
「今まで黙っていてごめん」
彼女に合わせる顔がないな。だけど、偽りの話をしてしまった事を謝ると、マリアはなぜか笑顔になり逆にお礼を言われたのだ。
「本当のことを話してくれてありがとう。きっと言いづらかったんだよね?」と。
その時胸がチクンとした。
「なんで?あなたは今捕まっているのよ?私はあなたの敵なの。なのに。なんで、そんなに優しいの??」
「……だって、ミジュ。あなたは私の友達だから」
更に胸がチクチクとする。
これ以上かける言葉がなかった。だって私はあなたを騙していたのに。なのに彼女は私を攻撃するどころか、優しく包み込んできたのだから。




