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29。甘いひととき

 魔族達との戦いと、ライズの説教によってかなり疲れていた私とフェンリルはライズが用意してくれた部屋のベッドでスヤスヤと眠っていた。


「もっと狭い部屋でもいいよ?」


 ライズの説教の後、長旅で疲れているだろうと用意してくれた部屋はかなり広かった。ていうか、私とフェンリルには広過ぎたのだ。


 さすがはお城の中の一室。お姫様が使っていたのか?壁には豪華な絵、そして貴金属が飾ってある。広い部屋ばかりだからと、私はその一部屋をあてがわれたのだが、何か落ち着かないなぁ。


「そうだ!ライズ一緒に寝る?」


 なんて言ってみたけど、顔を赤くしてすごく拒否された。


 私達は兄弟みたいなものなのに。別に一緒に寝てもいいじゃん。なんて思っていていたら、私の横にいるフェンリルがなぜか苦笑していた。


 そして、ライズもまた変な事を言われると思ったのか、忙しと言って早々に立ち去ってしまった。


しょうがない……部屋も広いがベッドも大きい。だからフェンリルを抱き枕に私は寂しく眠りについたのである。


 それから私が眠りにつくのは時間が掛からなかった。落ち着かないと言っておきながら、あっという間に眠りに落ちてしまったことは内緒だ。



 眠りに入ってどれ位時間が経ったのだろう?


 夢なのか?現実なのか?頭の片隅にバタバタと足音が聞こえてきた。その足音がだんだんだんだん近く大きくなってくる。そして……


「ミジュッ!!」


 その声と同時に勢いよく開いたドア。その音に驚いて目が覚める。


 ライズから連絡を受けたギルはすぐ様、フェルドリア王国へとやって来たのだ。


 まだ頭がはっきり回らない中、何事かとベットの上で横になっていた体を起こすと、ギルが部屋に勢いよく入って来て、思い切り抱きつかれたのだが。


「ギ……ギルッ!?」


 いきなり抱きつかれた私は体制を崩し、私の上にギルが乗り、馬乗り状態になった。

 彼の顔がすぐ目の前にあり、一気に目が覚めた。


 会いたかった人が今、私の目の前にいるのだから。


「会いたかったぞ。ミジュ!」


「ギルッ……私も……」


 嬉しさのあまり涙が溢れ出す。そんな涙を流す私にギルは笑いながら涙を手で拭いてくれた。


 そしてお互い見つめ合い、そして唇が重なった。



『……ごほんっ』


 場が悪そうなフェンリルがそっぽを向いて咳払いをした。

 私達が周りのことを気にせずにキスしだしたから、どうやら俺はここにいるよーと教えてくれたみたい。


「あっ……ギッ……ギル!何でここに??」


 フェンリルの咳払いに我に返った私達。周りを気にせずに粗ぬ事をしてしまったことに2人で恥ずかしくなり、とりあえず何でもいいから私は言葉を口に出したのだけど。


「ラッ、ライズがミジュがイースに来たって教えてくれたんだよ。で、居ても立っても居られなくてここまで来たんだ」


 と、彼もタジタジになりながら私にそう教えてくれた。


 えっ?……というか、ギルはフリード様の片腕的存在よね?


 こんな所に来てても大丈夫なのかしら?とあらぬ心配をしたが、ちゃんとフリード様に許可を取って来たとのこと。なら良かった。


 目が覚めた私は、ギルとベットに腰掛けて久しぶりにお互いの話をした。

 彼はイースへ来てからの事を色々話してくれた。そんな私もギルが旅だってからのダイスでの生活なんかを話した。


「寂しかったんだから。でもギルがペンダントを祈って光らせてくれたお陰であなたと離れていても繋がっていれた。だから1人でもダイスで頑張れたんだよ」


「そうか。良かった。でもお前、我慢できなくてイースに来ちゃってるけどな」


「だね!」


 ハハハと笑い、ふと目が合うと顔と顔が自然に近づき会う。そしてまた、唇が合わさった。


 ちなみにフェンリルは私達に気を利かせてた様で、ライズの所に行ってくると、部屋を出て行った。


 だから今は2人きりなのだ。短い時間の間で今まで会えなかった分、これでもかという位一杯甘えたのは言うまでもない。




 ――また会いにくる。




 その言葉を残してギルは帰っていった。

 私はまだ、彼の温もりの余韻に浸っている。


『ギルにも会えたし良かったな』


「うん」


 彼を見送り城の外まで見送った後、そうフェンリルに言われたが、本当に今までの寂しかった気持ちがイースに来たことにより満たされた気がした。


 ライズにも会えたし、ギルにも会えた。


 そして、私の首からぶら下がっているペンダントが光った。


 ギルからだ。


 私もギルに返信するようにペンダントを握って祈った。




 ◇

 ――イースに来てから数ヶ月が過ぎた。


 私は今ライズと一緒にフェルドリア王国を奪い返そうとしている人間達から守っている。

 と言っても、ライズは私には戦わせようとはしないけどね。


 心配なのもあるみたいだし、私が人間の事をそんなに嫌ってないのも知っているから、出来るだけ戦わせないようにしてくてるみたい。


 だから、いつも裏方に回ってみんなを助けていた。


 ご飯を作ったり、戦いがあった時は怪我人の手当てをしたり。

 

 いつ自分の身に危険が迫るかも分からないこの世界だが、何だかんだと、忙しく充実した日々を送っているんだ。


 ちなみにギルとはそんなに頻繁には会えないけど、彼は時間を見つけては少しだけでも来てくれる。それに、彼の現在の住処を教えてもらったので、全然来てくれない時は逆に赴き、彼の帰りを待っていたりもしている。ただ、2分の1の確率で帰ってこないけど。



 彼が所属するフリード様の軍団は、ライズみたいに奪った土地を死守するのではなく、特攻隊の役目を受けているみたいで、次から次へと人間達の国を攻め落としているそうだ。


 だから、新たな土地を求めて戦い続ける為、戦いの状況で中々帰れない時もあるんだって。


 ギルは強いけど、攻めに行くのは守る以上に危険が増す。だからいくら強くったって何があるか分からない。


 だから、毎日寝る前にペンダントを握って無事を祈っている。

 もちろん向こうも私の祈りに反応して祈り返してくれた。



 私はこうした日々がしばらくずっと続くのかと思っていたけど、あることがきっかけでこの日常が変わることになる……


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