25。イースの人間達と出会って
「ヒールッ!」
ススだらけで怪我をしているフェンリルに魔法使いのマリアが回復魔法を使ってくれた。
「これで大丈夫よ。でも、しばらくは休ませてあげて」
私はマリアにお礼を言いフェンリルをそっと抱く。
良かった……
まだ意識は戻っていないけど、そんなにひどい傷ではないそうで。マリアが魔法で治してくれた彼をホッと見つめた。
私は改めて彼らに謝罪とお礼を言った。そして自己紹介も含めてね。ただし、魔族側の人間だと言うのは伏せた。そして、先ほど加勢してくれたラピュスのことも聞かれたけど、とりあえず魔物をてなづけるの上手くてとはぐらかしといた。当たり前だけど。
私が自己紹介をすると流れで彼らも自己紹介をしてくれた。
まずはマリア。職業は魔法使い。防御と回復の魔法を得意とするそうだ。でも強力ではないが攻撃魔法も使えるそう。容姿はサラサラの金髪のロングヘアーで緑の瞳。一つ一つの動作が丁寧だし、どこぞかの国のお姫様の様にとても綺麗だ。
そしてタク。ずっとラピュスと対峙していた男。職業は武道家。短髪の黒髪で青い瞳。
服のせいか、見た感じはすらっとしていてそんなに筋肉質には見えないが、華麗な動きと持ち前のパワーで敵を倒して行くそうだ。確かに身軽でラピュスの攻撃をヒョイヒョイと避けていたし、ツルを力任せにむしっていた気もする。
最後にレン。癖っ毛で茶髪で瞳は金色。彼のことを聞いた私はとても驚いたんだ。何と彼はこの人間界で言う勇者だそうだ。
「勇者!?だからあんなに強かったの?」
私から褒められたと勘違いしたのか彼はなぜか照れている。
「いやぁ……でもまぁ、まだ駆け出しだけどね」
いやいや、駆け出しでこの強さ。将来は一体どんな化け物になるのか。絶対ライズ達の脅威になるじゃん!
それにしても話は聞いていたけど、本物の勇者をこの目で見れるとは。
興奮していた私の横でレンが何か気にしていたのか、マリアに話しかけていた。
「マリア。そのフェンリルってやつあまり動かさない方がいいんだよな?」
「そうね。せめて一晩は動かさずに寝かせてあげたいけど」
「んー。じゃあ決まりだな。今日はここにテントを張る。ミジュ、お前もその相棒と一緒に俺達とここで休めよ」
その言葉にえっ?と驚いてしまった。
「いいの?こんな見ず知らずの者を泊まらせちゃって大丈夫なの私、実は敵かもよ?」
「昨日の敵は今日の友っていうだろ?それにお前からはそんな悪者の感じはしないからな」
敵の人間にお世話になるのはどうかとも思ったが、右も左も分からない森の中。フェンリルもまだ完治していないし彼らの提案に甘えさせてもらえることにした。私も彼らの事、悪い感じしないしね。
話がまとまった所で、タクが自分のリュックからテントを出した。それを地面に置いてテントについていたボタンを押した。
すると、小さく畳まれていたテントはパタパタと広がり、あっという間に完成した。
「どうぞ!」
完成したテントにマリアが私を招く。
招かれた私は中に入ると、とても驚いた。
……人間のテントって変わっているんだね。
見た目と違って中が広い。外から見ると1人用にしか見えないのに中は4人なんて余裕の広さだった。
「すごい……広い……」
私が感動していると、マリアがフェンリルを寝床へと案内してくれる。
そこへそっと彼を下ろして布団をかけ頭を撫でた。
ゆっくり休んでね、フェンリル。
彼は起きる事もなく、スヤスヤと眠っている。
「さあ、ミジュ。お腹空いたでしょ?」
フェンリルを寝床に寝かせると、マリアがそう言って来た。
……そうです、実は結構お腹がギュルギュル言っています。
私が返事をするよりも先にお腹が返事をしてしまい、それを聞いたマリアは笑いながら今度はテントの外へと招いてくれる。
外へ出ると、レンとタクはいつの間にかご飯の準備へと移っていた。
薪の上に吊るされた鍋にはスープが。
「いい匂い」
「もうすぐできるからそこら辺に座ってちょっと休んどけ」
私はレンの言葉に甘え、近くにあった大きな石の上に腰をかけてマリアと一緒にご飯ができるのを待つことしばらく……
「ご飯ができたぞー」
待ちに待ったレンの呼び声に彼らの元に近寄ると、さっきいい匂いがしていたスープがお皿に盛られている。それ以外にもパンや果物も。
「……美味しそう」
「沢山あるからたらふく食え」
レンが私にそう言葉をかけてくれた。
お言葉に甘えて、早速スープの器を手に持ちスプーンですくうと口に入れる。……とても温かく美味しい。
ダイスの世界では人間は悪と言われている。そしてダイスにいる人間達も自分達は悪だと教育されるみたい。
でも今目の前にいる彼らを見てそうは思えなかった。
私の前にいるレンとタクが何やら言い合いをして、それを呆れて見て彼らを叱っているマリアがいる。
そんな三人はいつしか笑い合っている。
そんな光景を見てほっこりとしている自分がいる。
フェンリルを助けてくれて、見ず知らずの私に食事や寝床までも提供してくれて。
私は記憶がないから人間が悪かどうかなんて正直分からないけど……
まぁ、私自身も人間だし。ライズも人間だし。
……でもライズは人間を嫌っているからイースの人間は悪い奴らなんだなと思ってた。
だから彼ら達を見てふと感じたんだ。本当に人間が悪いのか?もしかしたら私達ダイスの世界の人たちが悪いんじゃないかとさえ思えてきた……
「どうしたの?お口に合わなかった?」
「ううん……すごく美味しいよ?」
「良かった。沢山食べてね」
私のスプーンを持ってが止まっていることにマリアが気付いて、心配してくれる。
私は彼らと出会って、人間に対する考え方が少し変わった。




