23。人間
やっと見つけた洞窟。
誰か先客はいないよな?とそっと中を覗いてみると……うん。当たり前だけど真っ暗だ。何も見えない。
中に入っても危険がないか、フェンリルに入り口から匂いや音で確認してもらったが特に何も反応はないみたい。なので、今度は洞窟に入って中を調べてみた。
荷物を詰め込んだリュックからランタンを取り出し火を点す。
そして、慎重にゆっくりと中へ入っていく。
しかし少し行くとすぐに行き止まりだった。
『とりあえず、夜が明けるまでここに身を隠そう』
「うん」
フェンリルが見張りをしといてくれるとのことで、私は少しだけ仮眠をとらせてもらうことに。
洞窟の入り口で彼は見張り、私は洞窟の奥で座り、壁に背をもたれさせ体を休めた。
そして私達はここで一夜を過ごした。
――日は上がり朝。イースに来て初めての朝だ。
「ミジュ起きろ!」
「……うーん。もう少し寝かせて」
「何かがこの近くにいるんだよっ!」
その言葉にとっさに慌てて起きた。
そうだった。私はイースに来たのだ。危険は常に隣り合わせだ。
フェンリルに急かされ、すぐ様彼の元へと駆け寄った。
「敵?こっちに来てるの?」
『分からない。だけどこれは人の足音だ。こっちに近づいて来ている』
魔族か、人間か。どちらにしろまずい。
すぐにこの場から離れた方がいいとも思ったが、気づかれる恐れもある。むやみに動くのも危険だと言う事で、洞窟のすぐ近くの大きな岩に身を潜めて、そっと動向を伺った。
フェンリルの言っていた足音が聞こえる方から私も少しだがその人であろう声が聞こえた。
そして遠かった声は遠くからだんだんこっちに近づいてくるのが分かる。
……声からして女性だ。
そして言葉がはっきりと聞き取れると驚愕した……
「ダーリン!私のダーリンどこにいったのー!?」
「!!?」
ダーリンって……
岩に隠れながら声の主を確認する。
ダーリンを探していたのは人間の女性だ。
私より年上かな?でもライズよりは年下だと言うのはわかる。
ちなみにライズは30歳。
その女性は私達に気づく事なくダーリンとやらを探し求めて素通りしていった。
「行っちゃったね……」
フェンリルと少しポカンとしてしまったが、危険なことにならなくて良かったと安堵も同時にやって来た。
『じゃあ、今のうちにさっさとここを出発するか?』
「そうだね」
さっきの女性の出していた大きな声でまた別の人間が来るかもしれない。私達は早々にこの場所を立ち去さることにした。
朝食がまだだった私達は昨日家から持ってきたパンを歩きながら食す。フェンリルは歩きながら食べずらいので私が食べ終わった後、抱っこして私の腕の中で食事をしている。
とりあえずどこかで魔王の軍団に出会えれば、ギルやライズの居場所がわかるはず。まずは魔族に会わなくては。
私たちはまず森を抜けることにした。
獣道をひたすら進み続ける。たまに小動物にも出会った。
でもみんなフェンリルを見てすぐに逃げちゃうんだけどね。
歩いて歩いて歩いて……どれくらい歩いたのかな?
……足が痛い。
さっきの人はダーリンと会えたのかな?なんてふと頭にそんなことがよぎったりする。
「この森すごく大きいんじゃない?全然出口が見えないね」
『やっぱりちょっと空から偵察してみるよ』
全然森から出られないし、疲れた私はフェンリルにそう言った。
私の問いにフェンリルも痺れを切らしたのか、小さいサイズのまま羽を羽ばたかせ森の出口を探す為に、空へと舞った。もちろん周りに注意しながらね。
フェンリルは私の頭上の空を旋回すると、目の届かないところへと飛んでいった。
そして飛び立ってから時間が経ってもフェンリルは中々帰ってこなかった。
やっぱりかなり広いのかしらこの森。
草むらに身を隠しながら空を度々見上げて彼を待っていたのだが、帰って来る気配が全然ない。
……困ったな、もしかしたら彼の身に何かあったのかもしれない。探しにいった方がいいのかな?と思っていると、周辺に雷が落ちたような轟音が響き、目の前が一瞬眩しい光で何も見えなくなった。
あまりの唐突な出来事に驚き周囲を伺う。
空には雷雲なんてない。なんなら青空だ。
……もしかして今のは魔法?
空をもう一度じっと見る。
なんだろう?今何か煙らしきものを出しながら黒いものが空から落ちてくる気がする。
それは地面に向かってどんどん落ちてくる。
何あの黒い物体は?
その時なんかすごく嫌な予感がした。もしかして空を舞っていたフェンリルではないよね??
その予感は的中した。地上へと近づいてくるその物体のシルエットは彼だった。
うそでしょ!?
「……フェンリルーッ!?」
必死に落ちて来る彼を追う。
あんなに警戒していたのに。
人間の仕業か?
とりあえず誰よりも先にフェンリルの元へと急いだ。
それが敵だとしても、味方だとしてもだ。
「はぁはぁ……」
フェンリルが落ちたところへ到着すると、先客が既にいた。それは三人の人間。
その1人が真っ黒になった彼を触ろうとしている。
「その子に触るなーっ!?」
私は無我夢中になって剣を鞘から抜いた。
そして、フェンリルに触ろうとした人間めがけて剣を突きつけた。




