21。彼らを追いかけて
―― 一方その頃。
イースでは人間達と魔族達との激しい戦いが行われていた。
だが、ライズ率いる部隊は見事に目的としていた国を落とし、そこにある城を自分達の拠点として活動を広めつつあった。
もちろん他の部隊も順調に領土を広げていた。
……はずだった。
ライズの元に一本の伝達が入る。
その伝達を聞いた彼は、いつか来るであろうと思っていた事がついに現実になった事を噛み締めた。
「……やはり新しい勇者が動き出したか」
昔、イースに攻め込んだ時、魔王を倒したのは勇者と呼ばれる人間だった。
ライズはその話を聞いていた為、今回も現れるのでは?と警戒していたのだが、情報部隊からの報告でその勇者はすでに亡くなっていると報告を受けていた。
そして自分達や他の部隊の侵略が順調に進んでいたのだが、しばらくして部隊が次々と撃破されているとの情報が入る。
……それもたった4名の人間に。
そんな少数の人間達で魔王直属の軍がやられるわけがない。ただし、そのパーティーに勇者がいれば話は別だ。その人間の力は他の人間に比べて圧倒的に強かったのだから。
そして、今回入った報告で勇者の存在が明らかになった。
「ここにも勇者がいつ来てもおかしくない。警備も固めるのだ」
いつ勇者が自分の部隊の前に現れても良い様にに準備を進めるライズであった。
◇
「今日も一日お疲れ様です」
いつもこの家を見張ってくれているライズの部下にお礼を言って、朝食を差し出す。
「いつも悪いね」
「いえいえ、こちらこそ」
ダイスは今日も平和です。
そんな日々が続いている私の今の日課。
彼らは私を守る為に24時間体制でこの家の周りに配備してくれている。
と言っても流石に休憩なしとはいかないので、さらにその人達の信頼できる部下達が交代で彼らを補佐していた。
そして、私の日課となった彼らのご飯作り。
初めは遠慮して断られていたが、今では私がご飯を持って行くと快く受け取ってくれる。
実は、特にやることがない私はせめてものお礼と称して彼らに朝昼晩のご飯を提供しだしたのだ。
……ってのは嘘。
実はそれは私の立てた計画。
私はやっぱりイースに行くことを諦められない。
ライズ達に反対されたけど、私もみんなと一緒に居たいのだ。
だから、みんなの元へ行く為にも、イースとダイスを繋ぐワープホールの場所を特定したかったんだ。
ライズ達はもちろん、そのワープホールがある場所を私の警護をしてくれている人達も教えてはくれなかった。多分ライズから口止めをされているに違いない。
私に教えると絶対にこっちにくると確信しているのだろう。
だから、このライズの部下と仲良くなってこっそり教えてもらおう作戦を遂行することにしたのだ。
ご飯休憩をとっている最中、私は交代でご飯を食べる彼ら横に座り色々話を聞いていた。
「ねぇねぇ。今日もまたこの世界の話が聞きたい」
「しょうがないですね」
彼はご飯のお礼にと私にいろんな話を聞かせてくれる。この世界の事や、武勇伝とか色々と。ある特定の質問を除いては……
「ふんふん。それで、ワープホールの場所は?」
「だから、それは知りませんって」
ちっ。ダメか。
はぶらかすようにそそくさとご飯を終え、ライズの部下は仕事に戻る。
いつもそうだ。
ワープホールの話が出ると私をはぶらかす。
何度何度と聞いても結果、教えてはくれなかった。
だけど、ここで諦めたらダメなのだ。
今度は少し作戦を変えてみる事にした。
夜になり、私はいつもの様に晩御飯を作ると彼らへと提供をした。
「……あのこれ良かったら」
私はご飯と一緒にそっとあるものを差し出した。
それは酒だ。
「この酒はめったに手に入らない銘柄!?一体どこでこんな珍しいものを??」
……そんなに高価なお酒だったんだ。
この酒は家の食器棚にずっと飾ってあったもの。
以前ライズにこれはなんだと聞いたら頂き物の酒だとの回答が。
元々そんなに酒を飲まない彼なので、ずっと棚に飾ったあったから今回これを拝借した。
任務中に酒なんて飲めないと、拒否する彼らにいつも守ってくれているお礼だと称し上手く話を進めてみると、彼らは酒好きだったのか、この珍しい酒に心を奪われたのか、じゃあ一口だけ。と言って酒を口にした。
一口飲んでしまえはこっちの勝ちだ。
彼らは酒の味を噛み締めてもう一口と、手に持っていたコップに口をつける。
そんな彼らのコップが空になると、私はまた酒を注ぎ入れた。
その結果。彼らは酔っ払いへべれけ状態に。
そして、そんな彼らに早速本題をぶち込んでみた。
「絶対に行かないからワープホールの場所を教えてよー」
「それを言っちゃダメだと、ライズ様がだめだって言ってるんですよー」
「大丈夫だって、私口硬いし言わないよ?違うところから情報集めたって言うし?」
「いやー、でも……」
「大丈夫だって!」
「……しょうがないなぁ。もう。本当に俺らが言ったって、言わないでくださいよー?」
何度か押し問答をしてようやく折れてくれた。
やった!見事、場所を聞き出す事に成功しました!!
もっと早くこの作戦をやれば良かったよー!
私が喜んでいると、このやりとりをずっと見ていたフェンリルがため息をついている。
『ミジュ。一応聞くけど、行かないよね?』
「もちろん!行くでしょ!」
やっぱりか。と言う様な顔をしているが、それ以上は何も言わなかった。
私がずっと寂しくしているのが伝わっていた様だし、以前から口を酸っぱく行くのは辞めろと言われても拒否していたから諦めたみたいだ。
よし!これで準備は整った。
場所を聞き出した私は酔っ払った彼らをその場に残して、イースへ行くための準備をするため、家の中へと急いで入っていった。




