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2。出会い

 

『イース』の世界を見た魔王。


 実際に見たその世界はとても魅力的なものだった。更にこの世界のことを知る為、魔王は配下に命令し話に聞いていた自分達と容姿が違う種族『人間』を探し、見事生捕りに成功するのである。


 魔族の世界に連れてこられた人間は自分達の世界のことを魔王に教えた。

 もちろん魔王はその者が恐怖しない様に優しく丁寧にもてなしたからだ。

 その計らいもあり、人間はペラペラと自分の世界のことを話してくたのだ。


 人間の話を聞いた魔王は更に魅力を感じ、自分の世界だけでは物足らず『イース』も自分の領土にしたいと考えだした。

 その為に、自分の世界の者達にこの国を滅ぼさんとする脅威を持った者達がいると思い込ませ、戦いを仕向けるのに成功する。


 魔族は魔物を伴い、人間を滅ぼすべく魔王自ら出向き人間界へと乗り込んだ。


 だが、自分達が最強だと信じていた魔族の者達は人間の力を身余り長引いた戦いをしいらた。

 そして、勇者と言われる人間に返り討ちにあい初代の魔王は朽ち果ててしまう。


 結果は人間の勝利。


 魔族の者は逃げる様に自分の世界に戻ると、【ワープホール】は初めから何も無かったかのように消えてい無くなっていた。


 ――そして人間と魔族の戦いは終結した。と思ったのだが。


 人間は攻め込まれた事により魔族達に対する脅威が生まれた。

 魔族達も自分達の王が人間に殺され、さらに脅威が生まれるのであった。



 そして……しばらくして魔王の意志を継ぐものが現れた。

 それは魔王の息子。



 彼は自分の親を殺した人間を恨み、必ず【ワープホール】を見つけ、また『イース』へと攻め込む為に着実に準備をするのであった――



 ◇


 魔族の世界『ダイス』の青い海に、少女と小さな魔物が波打ち際に倒れている。


 そこに通りかかった一人の人間の男性。


 その倒れている少女達に気付くと、何かを少し考えてから彼女達の元へと向かった。


「おい、大丈夫か??」


 気を失っているのだ。反応はない。

 そしてそっと体に触れると冷たい。


 男性は死んでいるのか?と思ったが、念の為心臓の音を確認する。体に耳を当ててじっと音を確認すると心臓が動いているのがわかった。

 隣に倒れている小さな魔物にも生死を確認したが、こちらも気を失っているものの、小さな心臓の鼓動が聞こえた。


「生きている。それにしても……」


 何よりも少女の体の細さに異常を感じる。


(人間。奴隷か?どこからか逃げ出してきたのか?)


 『ダイス』では戦いで捕まえた人間をこの世界に連れ去り奴隷として扱っていた。だからこの世界にいる人間はほとんどが奴隷だ。


 ただし、例外もある。


 魔族の為に貢献してきた者や力がある者は奴隷から除外され普通に暮らす事ができた。


 だが、その見た目からこの少女はそこ例外には値しないと考える。


 男はどうしたものかと考えたが、背負っていた鞄を下ろすと気を失っている魔物をそっとしまい、背負い直す。そして少女を抱き上げると急いで自宅へと帰っていった。



 ◇

(あなただけは幸せに生きて……)


 女性が私に悲しそうな顔でそう話しかける。

 とても懐かしい顔。でも誰だか思い出せない。


 そんな彼女はその言葉を残して私の前から遠ざかって行こうとする。


「……待って!あなたは誰なの!?っ!?痛っ……」


 その言葉と同時に体を動かしたからだろうか?痛みで目が覚めた。


 ここは……?一番初めに目に入ったのは天井だ。どこかの部屋の中の様だ。それにしても、さっきのは夢……?だったの?


 夢の中で去ろうとする女性に手を伸ばしたのだが、現実でも同じ動作をしていたせいか腕に痛みが走ったのだ。


 痛みの元を確認しようと腕を見ると包帯が巻かれている。


 それに体を動かそうとすると他の部分にも痛みがはしる。

 横になっていた体を痛みで捻らせると更にあちこち痛みを感じるのだ。


「……痛い」


 動くと痛みが響く。でもここがどこだかわからない。だから今

 自分が何処にいるのかを知る為に、痛みを堪えながら横になっていた体を労わりながら起こした。


 頑張って起きるとまず先に自分の体を確認してみる。


 痛みの原因はこれか。


 腕同様にあちこち包帯が撒かれてる。きっとこの包帯の下には傷ついた私の体が隠れているのだとそう思った。

 そしてもう一つ。包帯が巻かれているということは、誰かが手当してくれたということ。


「おい。傷に障るぞ」


 私が自分の体の確認をしていると誰かが私に話しかけてきた声が聞こえた。


 その声の方を見ると椅子に腰掛けていた男性が声をかけていた様だ。


「あなたは?もしかして私の怪我の手当を?」


「あぁ、そうだ」


「……ありがとうございます」


 どこの誰だかは知らないが処置を施してくれた彼にお礼を言う。

 だが、男性は淡々と話し出す。


「礼はいい。体の調子はどうだ?命に別状はないが、しばらく安静にしていろ」


「はい。あの、あなたは……」


「あぁ。俺はライズと言う。お前は?」


「……私の名前はミジュ」


「そうかミジュ。お前は近くの浜辺で倒れていたんだ。覚えているか?」


「私が?どうして浜辺で……」


 なぜ浜辺で倒れていたのか?なぜこんなに体に傷があるのか?記憶を遡ろうとしたが、全く思い出すことができない。


「……あれ?」


「どうした?」


 ライズが見つめる横で私は以前の記憶がないことに気づいた。


「名前は覚えているんだけど。それ以外が思い出せないの」


「記憶喪失……ということか?」


 必死に過去のことを思い出そうとするが全然思い出せない。

 名前は分かるのに、どこに住んでいたのか、どんな生活をしていたのか。全く思い出せない。


「こいつが、お前と一緒に倒れていたんだが分かるか?」


 私が頭を悩ませていると、記憶を少しでも思い出させようとしたのかライズはベッドの近くでクッションの上に大事に寝かされた小さな可愛い魔物らしき生き物を指さす。


「……この子が私と一緒に?……分からない」


 その魔物を見てみるが初めて見る顔。

 ライズも私の解答に少し困った顔をしていた。


「分からないか……」


 頷くことしか出来ない私。少し考えた彼はため息をつく。

 善意で助けてしまったものの、まさか記憶喪失とは……

 このまま追い出しても魔物の餌になるだけだし、後味が悪いな……


 考えたライズは私に言う。


「傷が治るまでだ。その間はこの家にいても良いが、回復したら出ていくんだぞ」


 仕方なくミジュを養うことを決めたのであった。

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