17。ギルへの気持ち
私を抱いたまま城への出口へと歩くギル。
恥ずかしいな……
それもそのはず。
通り過ぎていく魔族にチラチラと見られているのだ。
だって、私は今、マントを羽織っておらず、人間モロ丸出し。
周りから何であいつは人間を抱いているんだ?という疑問をした眼差しが私達を刺した。
でもギルはそんなこと全然気にしていない様子。
「……ギ……ル」
「お?解毒薬が効いてきたか?」
恥ずかしいさの余り、ギルの名を呼んだら声が少しだけ出た。
私の体は少しづつだが動きを取り戻している様だ。
良かった、薬が効いてきたみたい。
そんなのお構いなしなギルは、城の外へ出ると私を抱えたまま呪文を口ずさんだ。
「じゃあとりあえず、俺の家で休むぞ」
そう言うとギルと私の体はふわりと浮きそのまま速度を出しギルの家へと飛び立つ。
彼は武術に長けていたが、魔法も使えるんだ!?
何て少し感動してしまったが。
少し乱暴だけど、優しいギル。たった2回だけだけど、いや2回もだ。
私がピンチの時に現れて助けてくれた……
……なんだろう?なんか胸が熱くなる。
何なんだ……この気持ちは一体……
「どうした?俺の顔になんかついている?」
「いや……何も」
ぼーっと不思議な気持ちのまま彼の顔をずっと眺めていると、私の視線が気になったギルはそう問うた。
私の曖昧な回答に何故か彼は少し照れていた様な気がする。
――そして、ギルの家へと到着した頃には大分体も動けるようになっていた。
「もう1人で歩けるから降ろして」
「まだ完全に治ってないだろ?大人しくしていろ」
まぁ。城と違っと今は周りに誰もいない。
でも、何かすごく恥ずかしい気持ちになってそう言って見たものの、呆気なく却下されたので、大人しく従うことに。
家の中まで入ると、やっと彼の腕から解放された。
初めて降ろされて気付く。
やはりまだ1人では歩くのはしんどい様だ。
それを見かねたギルは自分の手を取り、肩を貸してくれた。
「椅子に座れるか?それともベッドで少し横になっているか?」
「大丈夫。椅子に座れる」
その答えを聞いた彼は私を椅子へと連れて行き、そっと座らせてくれた。
「ちょっと待ってろよ」
そう言うと彼は目の前にあるキッチンで私の為に何かを用意してくれているみたいだった。
そして私の前に出してくれたのは、茶色の不思議な飲み物だった。
私の目の前にあるテーブルにその飲み物をそっと置く。
カップの中からは湯気が出ており、そこから甘い良い匂いがした。
「熱いからゆっくり飲め」
手の痺れも大分良くなっている。
出してくれたコップを両手で持つとふーふーと息を吹きかけ一口飲んだ。
「甘い……」
「だろ?これはココミルという果物から出来た飲み物なんだ。なかなか手に入らないんだぞ?」
不思議な飲み物だ。とても甘くて体に染み渡る……。
あまりに美味しくて一口、また一口と飲みあっという間に飲み干してしまった。
その様子を微笑みながら隣で見ていたギルはまだ足りないのを察したのか、おかわりを注いでくれた。
そしてそれをまた一口含むと、手が急に震え出した。
先程までの緊張から一気に解き放たれて、今まで我慢していた恐怖が急に現れた様だった。
「大丈夫か?」
「何か、安心したら今頃恐怖が襲ってきたみたい……」
まだ痺れが残っているのかと心配そうに見ていたギルだが、私が苦笑しながら彼に答える。
そんな私の顔を見た彼は、私が持っていたカップをそっとテーブルに置くと、優しくぎゅっと抱きしめてきた。
「ギッ……!?」
いきなり抱きしめられてすごく動揺したが、それ以上にからの温もりが暖かかった。
しばらく彼の体に包まれた私の体は自然と落ち着きを取り戻し、いつの間にか震えは収まっていた。
「ありがとうギル。もう震えは治ったみたい」
だけど、ギルは私を解放してくれない。
「ギル?」
そうやってもう一度彼の名を読んでみたが、やっぱり離してくれない。
「もう少しだけ……」
とだけ返事が返ってくる。
それから、少しだけ時間が過ぎると、彼はゆっくりと体を離した。私は彼を拒否することなく、ずっと抱きしめられていた。
離してくれないと言いながら彼の温もりをもうしばらく感じていたかったのだ。だから彼が離してくれるまでずっと大人しく抱かれていた。
背中にあったギルの手が私の肩へと移動する。そして真っ直ぐ私を見た。
「なぁ。ミジュ。いろいろ大変な目に遭って辛いだろうけど聞いてほしい。こんな時に言うのも何だけど……おっ、俺な、お前のことが……好きになっちまったんだ」
「……えっ?」
突然の告白に戸惑う私だったが、なんかすごく恥ずかしくて、そして嬉しかった。
ギルは照れながら私を見つめる。
「その……お前は……俺の方どう思っている?」
そう言って。
私の答えを待っている彼はすごく顔が赤くなっていた。なんなら耳も真っ赤だ。きっと私も同じ感じなのかもしれない。顔が、体が熱ってドキドキしているのだから。そんな私も必死に彼への回答をした。
「私は……私もギルの事が気になる。この胸のドキドキとか体が熱いのは好きって言うことなのかな?」
好きかどうか彼についつい聞いてしまった。でも、本当に体が熱くてたまらないのだ。
「ほんとうか?それはきっと好きだ!お前は俺のことを好きなんだよ!!」
「……そうなのかな?」
その言葉にはにかんだ私に彼は不意にキスをした――
◇
――その頃、城の中にある一室でマルジンはとても悔しがっていた。
「聞いてないぞ!?ライズだけならまだしも、フリードの後ろ盾があるなんて!!これでは迂闊にあの娘に近づく事ができないではないか!」
「マルジン様、落ち着いてください!」
近くにいたマルジンの従事者が宥めるも、その怒りは止まらない。
近くにあった置物などを怒り任せに叩き割り、息を上げる。
「折角捕まえたと思ったのに。これではあの方に示しがつかんではないか」
ため息を吐きながら近くのソファへと項垂れるように座り込むとしばらく考えた。
とりあえず、しばらく様子を見るか。そしてタイミングを見計らって……
そうやって、ミジュを捕まえることを諦めてはいなかった。




