15。再会
「まだかな?」
部屋で待機してから結構時間が経った気がする。
でも、まだライズのお迎えは来ない。
用事が長引いているのかな?
フェンリルは私の膝の上で丸くなって寝ているし。
……暇だ。
寝ているフェンリルの頭を撫でたり、首の下をこちょこちょしてみたり。だがそれに動じることなくスヤスヤと眠っている。
うーん。私、これ以外やることも無いし。
時間を持て余しながらライズが迎えにくるのを今かと待っていると、部屋のドアに誰かがノックした音が聞こえた。
やっとライズが迎えにきた?
「どうぞー!」
私が扉の方に向かってそう言うが反応はない。
もう一回行ってみたがやはり反応はない。
手に荷物でも持って扉が開けれないのかな?
やれやれと仕方なく眠っているフェンリルをそっとソファに置くと入り口のドアまだ行き、扉を開けた。
だけど、ドアを開けても誰もいない。ドアの外も見回してみるがやっぱり誰もいない。
ノックの音は聞き間違いだったのかな?
ドアを閉めてソファへ戻ろうと後ろを振り返った時、そこには以前出会った例の魔族の老人が座っていた。それもフェンリルを抱いて。
一体どこから現れたの?それになんでここに!?
驚いた私にニヤリと笑う老人。
「また会ったね。お嬢ちゃん」
相変わらずの薄気味悪い顔だ。
見ているだけで背筋が凍る。でもそれよりも。
フェンリルはその老人に抱かれたままピクリとも起きない。
いつもだったら匂いや気配で反応するはずなのに!?
「……フェンリル!?起きて!」
彼を起こそうと大声でそう呼んでも起きない。スヤスヤと眠っている。
何で起きないの?
「起こそうとしても無駄だじゃ。それにしてもこの魔物もこの世界では見たことがない顔をしておるの」
「フェンリルに何をしたの!?」
フェンリルの体を撫でながら顔を観察している老人、私はそいつを睨みつけた。
全然起きないのはきっとあいつのせいなんだと悟ったからだ。
「安心せい。こんな珍しい検体、殺すのは惜しい」
検体だって?こいつは一体何を言っているんだ?
どうしよう。フェンリルを人質に取られた。このままではここから逃げ出すこともできないよ。
早く……ライズ来てよ……。
そう願ったが、老人は私の心を見透かした様に笑う。
「残念じゃがお主の待ち人はまだこないぞ?」
ニヤニヤとした口元がとても憎らしかった。
「貴方は一体誰なの!?この前の時といい、何で私達を狙うのよ!」
「狙う?そりゃあお前さん達はとても珍しい生き物だからじゃよ?」
召喚魔法が使えるから。ということか。
「だから。ぜひお前の体をワシの研究に活かしたいんじゃ。どうじゃ?もしお前さんが力になってくれるというのであれば、この魔物だけは特別に逃してやっても良いぞ?本当は色々と調べてみたいのじゃがな」
交換条件か。
どうしよう。このままだと二人とも捕まってしまう。だったらせめてフェンリルだけでも。
心が揺さぶられる。でも。
「分かった。だから彼を解放して」
「いい子じゃ。じゃあワシの手を取れ」
そう言うと老人はフェンリルをソファの上へと起き立ち上がった。
ゆっくりと、一歩一歩私の元へと歩み寄る。
「さぁ!」
彼はすぐ目の前まで来ている。
迫り来る老人を前に覚悟を決めた。
恐る恐ると彼の手をとる為に自分の手を伸ばそうとした時だった。
「うぐっ!?」
寝ていたはずのフェンリルが鋭い爪で老人を攻撃したのだ。
警戒していなかった突然の攻撃。老人はフェンリルの攻撃を腕にモロに喰らいよろめいた。
「フェンリル!」
『ミジュ!今だ逃げろ』
「待っ……待てっ!?」
必死に走ってドアから通路へ。私の後を追ってフェンリルも逃げて来た。
「フェンリル!?起きてたの?」
『悪い。さっき目を覚ました』
老人の魔法ににかかっていた彼だったが、魔法の効き目が浅かったのか解けて目覚めたそうだ。
だが、今はそれよりも……追ってだ。
私達の後ろから捕まえようと4人の魔族が走ってこっちに向かっている。老人と同じ服装だからきっと配下だろう。
それにしても、城の中はとても広く入り組んでいた。
道もわからず必死に走って追ってから逃れようとした。
でも、逃げて行き着いた先は大きな空間。そして行き止まりだ。
もう道がない。
どこかに隠された道があるかも知れないと思い、行き止まりの壁を必死に押したり叩いたりした。
でも何も見つからなかった。
そんな事をしていると、あっという間に追手に囲まれた。
こっちも相手に負けじと剣を鞘から抜きいつでも戦える様に構える。
それと同時に召喚魔法の呪文も口ずさむ。
魔王がいる城で召喚魔法なんて使ったらどうなるか分からない。
でも……
「ルーズ………ハグッ!?」
あれ?呪文を唱えようとしたら声が突然出なくなった。
それと同時に力も入らない。
……何が起こったの?
力を無くした自分の手から剣が落ちる。
そして足の力も無くなり膝から崩れ落ちた。
動けない……体の力が入らないし声も出ない。
唯一動くのは目だけだった。
そしてその目が捉えたもの。それはフェンリル。
彼も私と同じように動けず床へと倒れている。
「はぁはぁ……間に合って良かった。全くあまり騒ぎにはしたくないのに……」
この声は老人の声。
そうか、あいつに何か魔法をかけられていたんだ。
やられた……
「くそっ!この魔物風情が!!」
老人は腕を負傷させられた怒りがこみあげたのか、フェンリルに蹴りを入れた。
「……さて。お前達。この者たちをワシの研究室へ」
少し落ち着きを取り戻したのか、配下達に指示を出し、動けない私達は彼らに軽々と担がれた。
私の横にいたフェンリルも彼らに抱き抱えられているのが見えた。
「では。嬢ちゃん、後でゆっくりとお前の事を調べてあげるからの」
全く動かない体。悔しくて涙が溢れる。
そんな絶望した私の顔を見て、彼は勝ち誇ったような満面の笑みを浮かべながらこの場を後にしようとした。
の……だが……
えっ?何が起こった?
私の体がふわりと宙を舞った。
何?なんなの?
そして何かに受け止められた様な衝撃が走る。
「お前、よく襲われるな」
この声は……
そう。この声はギルだった。




