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13。謎の老人

 その頃、部屋に閉じこもった私は考えていた。


 ギルは本当に悪い人なの?確かにまだ出会って間もないけど……


 あの秘密基地で話した時の彼の無邪気な顔。

 純粋で自分よりも年上の様だが、どこか少年のような雰囲気が漂う彼。


 私はギルのことを思い、もう一度会いに行こうと思った。そして本当のことを聞くんだ。


 きっと秘密基地に行けばまた会えるはずだよね?

 だってまたここに来ていいか?って聞いてきたし……


 そしてその日、ミジュは部屋から出てくることはなかった。


 ――翌朝。


『ミジュ?機嫌直してよ?』


 フェンリルは器用に前足を使ってミジュの部屋の扉を開く。

 だけどそこには彼女の姿は無かった。


 いない事に焦ったフェンリル。目の前に見える窓が開いてカーテンがなびいている。窓から出て行ったみたいだ。

 急いで、朝食を作っている最中のライズに彼女がいない事を伝えると、血相を変えて家の外へ出た。


「ミジュー!」


 叫んでみるが返事はない。この近くにはいないのだろうか?

 周辺をフェンリルと共に探すがやはり彼女の姿はなかった。


「心当たりがあるとすれば、お前達が言っていた秘密基地か?」


『そうかもしれない』


 ライズもフェンリルも秘密基地にミジュが向かったのかもと考える。

 フェンリルは大きくなり、ライズはその彼にまたがる。

 そして二人は急いで秘密基地がある場所へとミジュを探しに向かった。



 ――その頃ミジュは。


「やっぱり、こんな朝早くはいないかー」


 すでに秘密基地へと到着していた彼女。

 ギルのことを探すが人の気配は感じない。


「ふぅ」


 岩場に座りギルの事を待とうとも思うが、今日彼が現れるとは限らない。

 それに自分がいなくなったのに気づいてライズ達がここに向かってくるかもしれない。ライズ達に会う前にギルと話をしたかったけど。


 甘い期待を胸にここまで来てしまった。

 そう易々と上手くことが運ぶわけがないのだ。


 それからしばらく待ってみたのだが、やっぱりギルは来なかった。

 仕方なく諦めた私は、重い腰を上げ立とうしたら、後ろの方で足音が聞こえた。


 もしかしてギル来てくれた?

 期待を胸に振り向いてみるとそこには見知らぬ老人がいる。


 誰?魔族だよねあの人。

 耳が尖っていて、それにツノもある。というか……


「おやおや、お嬢さん。もう帰るのかえ?」


「……あなたは誰?」


 直感的に何かすごく嫌な予感がした。あの老人に近づいちゃダメだという本能的な何かが。


 少しずつ近づいてくる老人に対して、私は後退りして一定の間隔の間合いを取る。


「おや?そんなに怯えて」


 恐怖しているのが顔に出ていたのか、ニヤリと笑いそう言った。またその顔も不気味だ。


 怯えているのがバレている。弱みを見せてはいけない。

 ここは強気に出ないと。


 私は老人に何者かと再度先ほどより強い口調で質問した。

 だけど、老人はニヤニヤと笑うだけでこっちの質問は無視された。


「ちょっとワシと遊んでくれんかの?」


 質問とは別の回答が返ってくると、彼が指を鳴らす。

 そこにはいつの間にか、二体の魔物が現れた。


 えっ?一体どこから魔物が!?


 その魔物をみると、どう見てもとても強そうなのがわかる。一体はスケルトンだ。手には剣と盾を持っている。

 もう一体は魔法使いか?ローブを纏って手には杖を。顔はフードに隠れて見えない。



 今までは魔物に襲われても、助けが入ったり逃げ回ったりと何とか回避できていたが今は1人。


 ……私に魔物を倒せるのか?


 いや、今はそんなことを考えている暇はない。

 やらなければ死んでしまう。


 ミジュはとりあえず時間を稼ぐことが出来ればいいと考えていた。

 なぜならきっとライズ達がこちらへと向かっているはずだから。

 いや向かっていると信じたかった。


 生死が関わる戦い。覚悟を決めたミジュはライズ達の約束を破り召喚魔法を使った。


『ルーラシン、エルス、ダルク!』


 そこに現れたのは岩が集まって出来た大男。岩と岩の隙間は岩が熱せられているのか赤い色が見える。


 ミジュは火の使い手である魔獣を呼んだのだ。


『ダルク、あの魔物一体の相手を』


『承知』


 これで二対ニだ。


『行くよ!ダルク』


 私は掛け声を合図にこちらから動いた。

 ダルクが炎で魔法使いを翻弄させている間に、私は間合いを取りスケルトンめがけて攻撃を仕掛けた。


 だが、あと少しのところで避けられる。


「くそっ!?」


 女の子だけど、ついつい汚い言葉がでてしまったわ。

 なんて思っている場合ではない。


 ミジュとダルクは連携プレーで魔物達と対峙した。そしてその様子を見ていた老人。


「これが召喚魔法かぇ。これは面白い」


 ミジュが呼び出した魔獣を見て微笑む。


「ほれほれ!お嬢ちゃん推されとるぞ?」


 私達が必死で戦っている横で老人の激が飛ぶ。

 何あの人!?なんて思ったが、老人を睨む余裕もない。


 今、目の前の魔物達との戦いに必死なのだ。


 それにしても……

 私は初めて魔物と戦ったが、なんとか対応出来ている。

 これはライズの稽古のおかげのようだ。今まで魔物に立ち向かう勇気がなかっただけ。


 ライズは私の事戦いに向いてないって言ってたけど。

 もしかするとなんとかなるかもしれない。


 ハァハァと肩で息をしながら目の前の敵に集中する。


 そんな戦闘の最中、1羽のコウモリが老人の元へと飛んできた。

 そして彼の耳元へと近づく。


 伝言を伝え終わったのか、しばらくするとコウモリはまた羽を羽ばたかせて森の中へと去って行った。すると老人はさっき魔物を出現させた時のように指を鳴らす。

 今まで戦っていた魔物は紙となってヒラヒラと舞い落ちた。


「なかなかいいものを見せてもらったよ」


「ちょっと待ってよ!あなたの目的はなんなの!?」


 相変わらず私の質問には答えない。

 それどころかそのまま後ろを向いて森の奥へと消えていった。


 先程まで激しい死闘を繰り広げていた場所は何事もなかったかのように静けさを取り戻す。


「行っちゃった……」



『ミジュ様。いかが致しますか?』


『ありがとうダルク。もういいわ』


 ダルクはその言葉を聞くと一礼をして消えていく。

 そしてその場にはまた私一人になった。


「なんなのーもうっ!」


 なんとも言えない気持ちでそう叫び、戦いの疲れでその場には座り込む。


 でも、正直相手が引いてくれて助かった。……でもあの人は一体何者?かなり危険な感じがしたし。

 召喚魔法を見せてしまったけど大丈夫だったかな?

 緊張が解けたせいか今頃になってそんな心配が押し寄せる。


「……ミジュー」


 遠くの方から声が聞こえたライズの声。

 やっぱり迎えにきてくれたんだ。


「ここだよー!」


 ライズ達に分るように声を上げる。

 そして無事私の元までやってきた。


「どうしたんだ!?」


 傷だらけの私を見て二人とも驚いていたが、魔物に襲われたことを話すと更に驚いていた。


 彼らは声を揃えて「『またっ!?』」なんて言った時にはついつい笑ってしまった。そんな彼らはちょっと恥ずかしそうにしていたが。


「立てるか?とりあえず帰ろう」


 ライズに起こしてもらいフェンリルに乗せてもらう。そしてなんとか無事に帰路へと着くことができた。


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