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12。一目惚れ

 助けた小さな魔物を見送った後ミジュとギルードは秘密基地へと来ていた。


 初めはとても警戒していたのに。なんだかんだでギルードと意気投合し会話は尽きることはない。

 ちなみにギルードって言いづらいので、ギルって呼んでいる。


「ねぇ。私人間だけど、ギルは何にも思わないの?その、魔族の人って人間は奴隷としてしかみないんだよね」


「あぁ。俺も初めてお前に会った時に気安く声をかけるなって思ったよ?」


「やっぱり。じゃあなんで今は普通に接してくれるの?」


 少し仲良くなったので確信を聞いてみることにした。


「お前はなんていうか、なんか他の人間と違うって言うか」


「どこが?」


「お前のその能力だよ!」


 頬を赤らめながらその言葉を力強く言い放ったギル。

 実は彼はミジュに一目惚れをしていた。

 人間だからとは思ったが、なんというか前に会った時に、眠っているミジュを見た彼は自分のタイプにドストライクだったのだ。でも恥ずかしさもありつい、気になっていた別のことを話して誤魔化した。


 ギルの思惑通りなのか、苦し紛れで言った言葉に全く気づかないミジュ。


 だが、彼女の能力が気になることも本当だ。


「私の能力?」


 ギルはどうやらミジュが召喚魔法を使用したこと時、うっすらと意識があったみたいだ。初めは夢だと思ったと言っていた。

 でも、よくよく考えてみるとかなり深い傷をそう易々とは治せない。それも人間が。

 と言う事はあの夢だと思われた魔物は現実に出現し自分の傷を癒した。そう考えるのが道理だった。


 その事を聞かれるとミジュはドキッとする。

 フェンリルにもライズにもこの召喚魔法のことは周りには知られるなと言われていたのに。

 帰ったらこっぴどく叱られそうだ。


「あのね。お願いがあるんだけど」


「その魔物のことは誰にも話さないで欲しいの」


「なんでだ?」


 ミジュはこの魔法は知られてはならない事を話す。

 するとギルはうーんと悩んだ。


「じゃあお前の魔法のこともっと教えてよ。そうしたら誰にも話さないよ」


 なんて提案してきた。ミジュは秘密のために仕方なくこの召喚魔法の事を知っている限りギルに話すのだった。


 ◇

「すげー」


 ギルの前で召喚魔法を披露してみせた。


 彼に魔法のことを話すと実際に見てみたい。ということで、目の前で簡単な魔物を召喚して見せたのだ。


「こんな魔法やっぱり初めてみるな」


「だから、珍しいから秘密にしろって言われてるの。悪い奴にいいように利用されるかもしれないからって」


「確かに。でもおまえ、その能力があれば奴隷では無く、魔王の配下に入れるんじゃないのか?」


「えっ?私が?」


 確かに……珍しい魔法だ。昔に使える人が絶滅したと思われていた魔法。もしかすると人間界では使える人がいるのかもしれないけど。今このダイスで使えるのは私だけみたいだし。


 魔王の配下になり、奴隷から抜けるっていう手もなかなか良い。

 ずっと隠れ住むこともないし。ライズと一緒に働くことだって出来るかもしれない。


「いいね!それ!」


 なかなかいいことを言ってくれたギルに礼を言う。

 彼もまあね!と鼻高々に返してきた。


 それじゃあ思い立ったらすぐに行動だ!


「じゃあ、私これから急いで帰るから」


 そそくさと身支度を整えて颯爽と帰ろうとする私にギルになぜだか慌てて止められた。


「何よ?すぐにでも今話したことを行動に起こさなくちゃ」


「そっそうか。あのさ、お前ここに良く来るの?この前も居たし」


「毎日ってわけでは無いけど、息抜きによく来るよ?」


 その言葉にギルは嬉しくなる。


「俺もまたここに来てもいい?」


「いいんじゃない?」


 その言葉に嬉しくてミジュの見えないところでガッツポーズをするギルであった。


 ギルと別れた私は家へと急だ。


 といっても急いで帰ったところで彼らがまだ帰ってきてるとは限らない。だけど、早くこのことを話したくてうずうずしていたのだ。


 魔物に襲われたり色々あって疲れてはいたが足取りは軽かった。

 自分は奴隷の確率が高い。であればこの魔法を使えることで、奴隷からから抜け出せるかもしれないのだ。そう思うと家まで距離がある道も苦にならず、思っていたより早く家に着いたのであった。


「ただいまー」


 家のドアを開けて声をかけてみるが、反応がない。やはりまだ帰ってきていないようだ。


『ミジュなんで家の外にいるんだよ』


 後ろから聞こえてきた声はフェンリル。そしてライズもいる。

 どうやら同じタイミングで帰ってきたようだ。


「そんなことはどうだっていいの!ライズ!話したいことがあるから早く家の中へ入ろ?」


「話?」


 ライズはフェンリルの方を見るがフェンリルも分からないといった様子。

 ミジュに急かされながら家へと入っていった。


「じゃあいい?」


「なんだその話って?」


「うふふ!あのね?」


 私はライズ達にこの召喚魔法を使えることを見せライズと同じように魔王の配下に入りたいことを話した。

 ライズはいきなりそんなことを言い出したミジュに驚いていた。

 まさか魔王の配下になりたいなんて。


『ダメだっ!』


 悩んでいたライズよりも早くフェンリルが険しい形相をしてミジュを睨む。


 その様子に2人は驚いた。


「どうしたのフェンリル。そんなに怒って」


『だから、魔王の配下になるのはダメだって言っているんだ』


 まさかフェンリルからこんなにダメ出しを喰らうなんて想像もしていなかった。

 ライズに助けを求めてみるが彼もどうやら反対意見のようだ。


「ミジュ。魔王の配下になるっていうことはとても大変なことなんだぞ?今回軍団が再結成された理由は、またイースに乗り込む為でもあるんだ」


 また魔族と人間の戦いが始まるんだ……


 ライズは私の目をじっと見つめて優しい口調でたしなめた。


「ミジュは人間と戦えるのか?下手をしたらしぬかもしれないんだぞ?」


「……」


「お前は戦いには向いていない。だからここに静かにここに住んでいれば何にも不自由なく暮らせるんだ」


「……うん」


 それ以上は何も言えなかった。ただ、配下になれば奴隷から抜け出せる。ただその想いだけで配下になりたいと言った自分は浅はかだ。


『でもどうしてそんなことを急に思いついたんだ?』


「えっ……」


 フェンリルが際どいところを突いてきた。焦った私を2人は怪しく思ったようで責められ、今日あったことを洗いざらい話すことになった。


『召喚魔法を使っていたのがバレていたって!?』


 フェンリルはため息をつく。


「その男は前にお前達が助けたって言ってたやつか?」


 その横で、ライズは以前聞いた話を思い出していた。


「そうなの。また魔物に襲われちゃって。その時に助けてくれたんだ」


 申し訳なさそうに話す私を横目にため息をつく1人と一匹。


『いや、あの時俺も魔法を使うのを止めなかった。だから悪いのは俺にもある。だが、またあいつに出会うとはな』


 ここには二度と近寄るなと伝えたはずなのにまた現れるとは。何か目的でもあるのか?フェンリルはその男の事を考えていた。


「それにしても、また強力な魔物が現れるとはな」


 何度もいうが、この山にはそんな強い魔物は普段存在しない。なのにミジュは二度も遭遇している。


 そして、その魔族の男の登場。


「フェンリル、どう思う?」


『それはその男が魔物を引き連れてミジュを狙っているということか?』


「その可能性もある」


 二人の会話に私は間を割る。


「ギルはそんな人じゃ無いよ!?その魔物から助けてくれたんだよ?それに話をしたけど、とても悪い人には見えなかった」


「ミジュ……?」


 私はギルのことを悪く言われてなぜか心が怒りに震えていた。

 あの人はそんな悪い人では無い!なのになんでそんなことをいうの?

 ミジュはそういうと、彼らを置いて部屋に閉じこもってしまった。

 取り残されたライズとフェンリルは考える。


「とりあえず様子を見るか?」


『あぁ。俺がミジュに張り付いて様子を伺ってみるよ』


 二人はとりあえずその男がミジュに近づかないように見守ることにした。



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