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10。一難去ってまた一難

 

「えーっ!?フェンリルも行っちゃうの?」


「すまんな。初めていく場所で転移魔法が使えないんだ。だからそこまで、フェンリルに乗せて行ってもらいたいんだ」


『俺がいない間はあまり遠くに行くなよ?』


「えー。つまらない」



 今日はライズが外へと出かける日。


 いつもは転移できる道具で出かけるのだが、話の通り今日はいつもと場所が違うらしく、フェンリルがライズを目的地まで送り届けることになった。


 私も本当は一緒に着いて行きたいと駄々をこねてみたのだが、ライズが絶対にダメだと言うから仕方なく留守番となった。



 ――実は遡る事一週間前、ライズが突然私達にとんでもないことをカミングアウトしてきたのだ。


 その日は夕食も済ませて各々自由な時間を過ごしていた夜の事だった。


「ちょっといいか?ミジュ。フェンリルも……」


 改まったライズに呼ばれて何事かと思ったが、言われるままにテーブルについた。そしてみんなが椅子に座ったのを確認したライズは咳払いし、話し始めた。


「今までお前達に黙っていたことがあるんだ」


「うん……」


 ライズが緊張しているのを初めて見たかもしれない。

 そして次に発した言葉に目を丸くした。


「実は俺は魔王の元で働いているんだ」


「うん…………えっ!?」


 ライズが魔王の配下だと?

 でも彼は人間だよね?もしかして話に聞いていた選ばれた人間というやつか?驚いた私達はライズを質問攻めにする。


「本当なの?なんで?ライズって人間だよね?」


「あぁ。俺の力を買われてな。前魔王の頃から仕えているんだよ」


 やっぱり選ばれた人間なんだ。


 ライズが言うには昔人間と魔族の戦いに巻き込まれた彼はこの世界に連れてこられた。

 初めはそこで奴隷として扱われていたそうなのだが、自分の人生を変えるべく力をつけて今の地位を勝ち取った。

 そして、ライズのことが当時の魔王の耳に入り仕えることになったそうだ。


 でも、元魔王が勇者に倒されてから当時の魔王の軍団は一旦は解散し、皆しばらくの休暇が与えられた。

 そしてもうすぐ、新たに軍団が再結成されると通達が来たそうだ。


「俺にはこの仕事しかないからな」


「そうなんだ」


「で、これから俺は家を空けることが多くなると思う。お前達はどうする?あの時は怪我が治るまでの間と言ったが、このままここに住みたければ住んでもいいぞ?」


「本当っ!?」


 いつかここを巣立たなければ行けないと思っていたのでとてもありがたい申し出。もちろんすんなりとライズの申し出を受け入れた。


 実はこれはライズが前から考えていたこと。


 彼は人間に恨みを持っていたこともあり本当なら怪我が治ったら家から追い出そうと思っていた。人間とはあまり関わりたくなかったのだ。

 なぜなら、自分がこの世界に連れて来られたのは、身内が自分の命欲しさに、ライズは身代わりにされたのだ。


 でも彼女と一緒に暮らしているうちに血は繋がってはいないが本当の妹の様に思えていた。いや、それ以上の思いが彼にはあった。

 だから、このままミジュ達をここに住まわそうかと思っていた。


 そんな事とは知らずに喜ぶミジュ達を見て、行って良かったと思うライズである。


 ――で話は戻る。


 ミジュはライズ達を見送ると大人しく家に篭る……訳はなく、早速一人で外へと出かけた。


 いつもはフェンリルと一緒に向かう秘密基地。

 だけど今日は一人で行ってみる事にした。ちょっとした冒険だ。まぁ、この前みたいに知らない人がいたら困るけど、その時はその時だ。


 この頃の私の力は大分上がっていた。


 ライズのスパルタ稽古の甲斐もあり、召喚魔法にも磨きがかかってきた事もある。


 だから、ちょっとした魔物なら怖くない。自分で対処できた。

 もちろん召喚で魔獣だって呼び出せるし。


「ちょっと距離はあるけれど」


 フェンリルに乗って行けばすぐ着くが今日は歩き。でも時間はたっぷりある。だからテクテクといつも通る道を行く。


「こうやって歩いてみると普段分からない事もあるもんだな」


 いつもは爽快に道をかけていくのでなかなか周りを観察しながら歩かない。だから綺麗な花を見つけた時はなんか幸せを感じた。


 新しい発見を都度しながら無事に秘密基地まで到着をしたのである。


「やっと着いた」


 結構歩くと遠かったな。


 歩き疲れた体を休ませるために、到着早々服が汚れない様に地面に持ってきたシートを敷いて座る。

 そしライズが昼ごはんにと準備してくれていたサンドウィッチを頬張る。


 うん!うまい!ライズってご飯も美味しいし、強いし欠点なんてないんじゃないの?


 なんて思いながら、サンドウィッチをあっという間に平らげた。


「ごちそうさまでした!」


 お腹も満たされたし、何だか眠気がやってきたが、流石に1人の時に寝るわけにもいかない。


 ちょっとのんびりしてからテクテクと秘密基地周辺を散歩することにした。


 だがしばらくして、何かの声に気づくことになる。


「………………………ッキ」


 なんだろう?何かが途切れ途切れ声が聞こえる気がする。


 歩くのをやめ、私は耳をすまして辺りを伺う。


 あっ!まただ。また聞こえた。


 それは威嚇ではなく助けを求めている様な、悲鳴のような鳴き声。


 何かが襲われているの??


 その声が気になり、声がする方に行ってみる事にした。

 鳴き声の大きさから言ってそんなにめちゃくちゃ遠くは無いはず。

 そして途中途中、耳を澄ませながら声がする方へ。


 探していた声が間近まで迫ったところで、こちも身を隠しながら更に近くへと向かう。

 何が起こっているのか分からない為、草むらからそっと顔を覗かせ、声の正体が判明する。よじ登ったのか、高い位置にある木の枝の上にピンク色をした小さな魔物が必死に声を出して鳴いていた。


 そして木の麓を見るとその小さな魔物を襲おうとしているのか別の大きな魔物が威嚇をしている。


 助けようにもちょっとあの魔物強そうじゃない?頭二つありますけど……。前に読んだ本に出てきたケルベロスみたいな姿してるし。


 なんでいつも私はそういう魔物に出会ってしまうのだろうか?


 だけど、ほかっておく訳にはいかないし。

 でも、正直、正面から戦いを挑む勇気もない。

 さっきどんな魔物でも倒せる気がすると言ったが……その状況が今目の前で起きているととてもできないと悟った。


 とりあえずあいつをここから遠ざけなくては。


 なんかいい案がないものか?なんて考えていたらいい事を思いついた。


 そうだ、あの子に頼もう。


 ここで召喚魔法を使うと魔物にバレてしまいそうなので、ちょっと離れた場所まで移動する。


 ここならバレないかな?


 周りを確認し、私は早速召喚魔法を唱えた。



 現れたのはダチョウの様な鳥。名前は「ピョルタン」

 全身茶色で鋭いクチバシが特徴だ。

 力はないが足の速さはピカイチ。


『ピョルタン。あなたの足の速さを見込んで頼むわ。あの木の根元にいる魔物をここから遠ざけてくれる?』


『了解ビョン』


 ピョルタンは草むらからヒョイっと飛び出すと、魔物の前でお尻をフリフリ。

 ピョルタンの行動に魔物はまんまと引っかかった。彼を目掛けて一直線に襲ってきたのだ。


 そして、そのまま私がいる方とは逆の方角に二匹は走り去って行った。


「今だ!」


 ピンクの魔物がいる木の元へと駆け寄る。


「おいでー!」


 そう呼びかけてみたが上から降りて来る気配はない。

 なにより、また悲鳴の様な声で鳴き出した。

 私もどうやら敵と思われている様だ。


「私は敵じゃないよー?ねぇ。降りておいで?」


 そう言ってもやはり怯えている様だった。


 しょうがない木に登って捕獲するか?


 木に登ったことのない私がだったが、意を決して登ってみる事した。


「ふんっ!」


 足が引っかけらそうな木の窪んだところを探しながら登っていく。

 初めてにしては上出来だ。下を見ないように順調に上に上がり、小さな魔物ががいる枝の所まで到着した。


 怯えを少しでも無くせるように、咄嗟におやつに持ってきていたビスケットを竜に見えるように手のひらに置き近づける。


 はたして魔物はビスケットを食べるのだろうか?


 そんな疑問も少し湧いたが、何もないよりはマシ。この子の目の前で、手を揺らしビスケットの存在をアピールした。

 甘い匂いがしたのか鳴きやむと、そのビスケットを恐る恐る口に。


「やった!!」


 ビスケットを食べ終わると、もっと食べたいのか私の手をぺろぺろと舐める。


「くすぐったいよ」


 ポケットからもう一つビスケットを取りまた与える。

 すると、警戒心を解いてくれたのか私の肩に乗ってくれた。


「よし!」


 急いで木を降りとりあえず秘密基地まで戻ろうとした。


 だが、その時私の魔力の消費が突然切れた。

 それはピョルタンがやられて、召喚が切れたということ。

 嘘でしょ?足の速いピョルタンがやられるなんて。


 魔獣が消えるには一定の条件がある。

 私が戻っていいと言う時。

 一定時間が過ぎる。(魔力が無くなる)

 魔獣が瀕死の状態になる。


 今、私はピョルタンを戻そうとはしていない。時間に関してもまだ余裕だし、魔力だって枯れてはいない。そうなると瀕死の状態になったと言う事だ。


 まずい。早くしなくてはあいつがまたここに戻ってくるかもしれない。

 ミジュは木から降りると、肩に乗っていた小さな魔物を抱き抱えるると大急ぎでその場を後にした。


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