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1。プロローグ

 

 ――真夜中



 雲が空を覆い、稲妻が走る。

 そして雨が地面に激しく降り注ぐ。


 そんな悪天候の中、一人の女が眠っている少女を抱き抱えて急足でどこかへ向かっていた。

 濡れない様になのか、少女は頭から体まで布で包み込まれている。


 そんな少女とは逆に急いでいる女の服は雨で濡れ、長い黒髪は顔にべったりと張り付いていた。

 きっと綺麗だったであろう赤色のドレスも泥と雨で汚れてる。


 だが、彼女はそんな事を気にする余裕もない程急いでいる様だった。

 時々少女に被せた布がはだけると黒髪の女性は雨に濡れない様にと布を再びかぶせながら。


 そして、その少女の髪も女性と同じ綺麗な黒髪であった。



「ここまでくれば……」


 時々後ろを振り返りながら何かに警戒していた女性。

 大陸の端にある洞窟に到着すると、抱いていた少女をそっと地面に置き自分もその場にしゃがみ込んだ。


 女性は地面に置いた少女の頬を愛おしそうに触り、温もりを感じるかの様に手を当てる。


 そんな彼女の顔からは今にも涙が溢れそうな表情だ。


「お願い。無事に生きて……」


 少女の頬からそっと手を離し立ち上がると、手に印を結び呪文を唱える。


『フェンリル……ここへ』


 彼女が謎の言葉を発すると人間の大人位の背丈い白い竜が目の前に現れた。


『お呼びでしょうか』


 その竜は彼女に向かって一礼をするかの様に頭を下げる。


『フェンリル、分かっているわね?この子をお願い』

『……ご主人様。かしこ参りました』


 その女性はその竜に子供を託した。


 眠っている少女を竜の背に乗せると、落ちない様にとフェンリルと名を呼ばれた竜は羽をゆっくり広げら雨の中空へと飛び立つ。


 それを見送った女は彼女達の姿が見えなくなると、力尽きたのかその場に倒れゆっくりと目を閉じた。


 そして動かなくなった女性。

 その首につけている金色のリングだけが、雨水に濡れて怪しく光を放っていた――




 ◇


 太陽が空から暖かい日差しを地上へと降り注ぐ。


 海も穏やかで空には海でよく見られるカモンが列を組んで風に身を任せながら飛んでいる。


 ちなみにカモンとは鳥型の小さな魔物。

 人間界で言うカモメという鳥によく似ている。


 ここは魔族や魔物達が住む世界。『ダイス』


 人間が住む人間界『イース』という世界もあるそうだ。『ダイス』と同じ気候で山や海など地形もほぼ同じらしい。

 ただ、違うのは住んでいる種族だけという事。生活だって人間と同じで、自分でご飯だって作るし、いろんな店だってあったそうだ。


 ――話が変わるが、魔族と人間は仲が悪い。


 人間は魔族達を脅威と思い、魔族達もまた同じ。

 人間を脅威だと思っていた。


 昔はそんな事は無かったのだ。

 と言っても、お互い違う世界が存在しているなんて知らなかっただけ。だから、それぞれ平和に暮らしていただけだけなんだけど。


 でも、ある時『ダイス』の住人が『イース』へと通じる道【ワープホール】を発見してしまう。


 住民は興味本位で【ワープホール】に近づいてしまったが為に、足を踏み外しその中へと入ってしまう。そして驚愕する。


 【ワープホール】のその先には自分達と同じ様な世界があったのだ。


 初めは『ダイス』の何処かに転移した物だと思われたのだがそれは違ったのだ。なぜなら、この世界にきた彼は、とある生物を初めて見たのだから。


 自分達と容姿は似ているが肌の色が違う肌色だ。耳の長さだって自分達みたく長くない。


 敵が味方か。得体の知れない生物に咄嗟に近くの茂みに身を隠しその場をなんとかやり過ごし、男はこの事を自分の世界のもの達に知らせる為、急いでまた来た道を戻り自分の世界へと帰ったのであった。


 自分の世界に帰ったその者は、自分の体験した話を街のみんなに言い回った。


 ……が。そんな別の世界が存在するが訳ない。

 話を信じず、嘘呼ばわりする者が大半だった。

 信じてもらおうと【ワープホール】まで皆を案内もした。だが、そこに存在していたはずの【ワープホール】は何も無かったかのように消えていたのである。



 しかし、当時の魔王だけはその噂話に興味を示した。


 魔王は昔、読んでいた本を思い出したのだ。

 その本には【ワープホール】のこと。異世界と異世界を繋ぐ架け橋の事が書かれていた。


 早速魔王はその世界のことを知る為に、『イース』に行った者を呼び出し話を聞きいた。


 そして、【ワープホール】があったとされる場所に行ってみると、消えていたはずのそのものがあったのだ。


「こっ、これです!!これで私は別の世界へ……」


 なぜ今まで消えていたのか?そんな疑問もあったが、それ以上に別の世界を見てみたかった魔王はゆっくりとそれに足を踏み入れる。


 そして……

 今自分の目の前にある景色……聞いていた通りだった。

 自分達が住む世界と同じだったのだ。


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