×と○と罪と
レビュー執筆日:2018/7/11
●ソロ作を経て、RADWIMPSの新しい一面を覗かせる一枚。
【収録曲】
1.いえない
2.実況中継
3.アイアンバイブル
4.リユニオン
5.DARMA GRAND PRIX
6.五月の蠅
7.最後の晩餐
8.夕霧
9.ブレス
10.パーフェクトベイビー
11.ドリーマーズ・ハイ
12.会心の一撃
13.Tummy
14.ラストバージン
15.針と棘
ボーカル・野田洋次郎のソロアルバムを経て発売されたRADWIMPSの7thアルバム。ソロアルバムはバンドサウンドの薄いある意味「ソロアルバムらしいソロアルバム」だったのですが、その影響か、今作はバンドサウンドにとらわれない楽曲が増えています。『実況中継』や『パーフェクトベイビー』では打ち込みを積極的に取り入れていますし、ピアノ弾き語りの『ブレス』や『針と棘』はかなり音数を絞っており、ソロで出してもおかしくなさそうな感じの楽曲になっています。
RADWIMPSの大きな特徴である「リスナーを驚かせるような仕掛け」については今までと比べて少し抑え目になったように感じます。もちろん、打ち込みと生楽器を組み合わせた激しいサウンドで神様と仏様の視点から言葉を綴る『実況中継』、つい口ずさんでしまいそうなほど分かりやすいメロディに乗せて「君」に対する恨み言を炸裂させる『五月の蠅』のようなインパクトの塊のような楽曲もあるのですが、基本的には前述のような「仕掛け」は薄めでメロディをシンプルに伝える楽曲がメインとなっています。その最たるものがアルバムの冒頭を飾る『いえない』で、曲全体を美しい旋律で埋め尽くすバラードとなっており、まさにRADWIMPSの新境地と言ってもいいでしょう。
しかし、それゆえにアルバム全体で見ると少し地味な印象が拭えません。『ラストバージン』のように地味ながらも心にしみるような楽曲もあるのですが、前述の『ブレス』や『針と棘』はメロディや歌詞に引っ掛かりが少ないうえに演奏時間が長く、冗長に感じられます。また、この二曲は雰囲気がかなり似通っており、収録するならせめてどちらか一曲にした方が良かったのでは。
もちろん、他のアーティストの作品と比べれば充分にインパクトはあります。しかし、「全曲シングルレベル」だった前作と比べて妙に大人しくなってしまった雰囲気があることは否めないので、この評価とさせていただきます。
評価:★★★★