リリースから2日目
プレイヤーキルを伴うゲームでの同プレイヤーに対する執拗なキルに対する法案が成立した事によりゲームの1部機能見直しが行われることとなった。
リリース2日目と言う人が増えるか減るかを賭ける重要時期に。
『当サーバーは現在法案に基づくかの調査を行っています』
やろうとしてもこれじゃ意味が無い。
久々に早起きしても三文の得もない……
「今日のバイトって確かゲーム会社だったよな。正規として雇いたいとか言われてたし他のバイトやめてあそこで働くか」
本来は18時からだが、会社的に1日8時間働けばいつ来てもいいと言われている為、朝8時に向かった。
「おはよーございます」
「おぅ、やっぱ来たか」
「いやぁー新作ゲーム出たじゃないですか、あれでフレンドとやりたいなと思ったから。シフトずらせないかなって」
「んだよぉーまたおいちゃんの居ない時間に働きたいってのかァ?」
「竹宇土さん、朝に移したいんですよ」
「うぉぉ!マジか!ちょっと涙拭いてくるわ」
竹宇土と呼ばれた男は涙を拭いて戻ってきた。
「まぁズラすのは全く問題ないが、その分企画とか考えてもらうぞ~」
ここのゲーム会社は竹宇土さん(プログラマー)と竹宇土嫁(プログラマー&イラストレーター)の夫婦営業だったが最近売れる物、と考えると若い人の意見が必要と思ったのかバイトを募集してたのだ。
メンバーは僕、竹宇土夫婦、バイトの菅野目だけだ。
「大丈夫です。ってか毎度毎度こんなゲームしたいっての押し付けて申し訳ないと思ってる程ですよ」
「はっはは!でもよ、現に売れてるじゃねぇか」
「そうですね、昔は色々学ばないと行けなかったけど今は何かと自由ですもんね」
「まぁそりゃよ、働いてみたら嫌な所だった!が多いわけよ。当たり前っちゃ当たり前だがイマドキを生きてる奴らにゃきついんだろうよ。俺だって親の援助なかったらどっか就職する事になってたし」
「ですよねー、んじゃ早速始めますか」
朝礼を終えてディスクに向かう。
「竹宇土さん、これ企画書送っときますね」
「ん、次は中々独特だな。1回仮で作ってみるわ、生憎ウチのイラストレーターは起きが悪いから、出来る範囲でイラスト頼むわ」
「あの、菅野目さん来てますよ」
メガネを掛けた薄暗い女性が竹宇土さんの耳元で囁く
「のわっ!!」
「必要なイラスト教えてください」
「この、サイコロと障害物のイラストを」
「了解です」
「そういえば菅野目さんレーター志望だったね」
「そうだな、癖が強いのに影が薄いからなんとも気付きにくい」
竹宇土さんがプログラムを、菅野目さんがイラストを。
それぞれ担当している間、僕は自社のゲームをプレイして不具合を察知している。
そうこうしているウチに昼を知らせるチャイムがなった。
「お、昼か。俺はもうすぐ終わるから2人ともさき食べ行っといてくれ」
「「はい」」
菅野目さんと地下へ降りる。地下には居酒屋、ファミレス、コンビニと。なぜそこにあるシリーズが並んでいる
「珍しく空いてるね」
「いっつも昼の真っ只中だからな」
ファミレスに入った。
「おーお!昼間から見せつけちゃって!カップルは割増だよ!」
バイトの高瀬が現る。コイツは初対面の時からこんな勢いだが仕事が出来るから妥協している。
「3名で、後でひとり来る」
「あいぁーいいつも通りねー」
「あぁ、席は適当でいいよな」
「おけみー」
と、今日はそこまでだが竹宇土さんが来ると大声で笑い合うためなかなかの迷惑客になってしまう。
結局食べ終わる頃にも竹宇土さんが来なかった為、菅野目さんと世間話をして上に戻ってくる事になった。本当はこれくらい静かに飯を食べたいんだよ。騒ぐと楽しいけど疲れるからな。
「おぉー、すまんな飯間に合わなくって。とりあえず完成したからやってみてくれ」
テスト用スマホを渡された。スタートボタンを押すとサイコロが回って数字が出てきた。
このゲームはサイコロを振って出た数字が初速度となり、障害物を避ける度障害物に書かれている数字分加速するゲームだ。ぶつかると数字分減速する。
数字が0になると止まってゲームオーバー。
同じ数字でぶつかると割り算で1になるようになっている。つまり4と4なら1、1になった後2以上にぶつかるとゲームオーバー
「あー、5で6にぶつかるとマイナスになってバックしますよ」
「まじか、すまん!直すわ」
数分後
「これでよし」
「あーおけ、加速も問題ないです」
「後はこれを載っけてと。よーしおまえら!少し早いが今日は上がりでいいぞ」
「いや、16時までやらないと法律的にやばいですよ」
「だぁー、そうだったわ。めんどくせぇ世の中になったもんだな」
「まぁ僕はいいですよ、まだ『10大陸』メンテ中らしいので」
「わたしはサイコロのバリエーション増やしておきます。今後、金は6が出やすいとか組めるように」
「じゃ僕は不具合探しを」
「俺はレビューの確認するか……」
不具合探しをして居たが竹宇土さんが話しかけて来たせいで17時まで雑談になった。
「そういや時間の事は話したけど他のバイト辞めてって話はし忘れてたな。まぁまた今度でいっか。それよりメンテ明け!」
早速家に帰り準備をした。
「さーて、夜飯以外オールクリア。だがっ!この為に昼は大盛りにしたんだよな!」
ログインすると昨日の場所に出た。
「急にモンスター来たらどうするんだよ。リアルタイム式なんだからセーブ地点からだと終わるぞ」
まぁ今のレベルなら大丈夫か、と付近をブラついてると赤い装備の男が近付いてきた。
「おい、懐かしいじゃねぇか」
「えっと誰ですか?」
「俺だよ!『幻獣の森』でお前が見捨てたロウガースだよ!!忘れたとは言わせねぇぜ」
「お前か……今はいい装備してるじゃないか。ソロでも頑張れるようになったのか」
「あん?課金したんだよ、まったくだ。せっかく楽しんでたのにお前と会うとはな」
「俺は別に、そもそもお前が先走ったせいだろ」
「は?ヘルスロゥクラウスを撃ってパーティーを全滅させて経験値とアイテムをかっさらった分際で!!」
「いったろ。範囲撃つから下がってくれって」
「んな、あんな範囲って分かるわけねぇだろ?ぁ??」
「知らない、そもそも俺はソロラーだったんだぞ。範囲把握なんてしてる訳ないだろ」
「今認めたな!故意的って」
「それにアイテムは返した。装備の耐久値もMAXにしてな。経験値については狩場寄生でそれ以上稼げただろ」
「このっ!!」
「ウォルフの姉ちゃん!それと隣の人はお友達?」
「何だこのガキは、ちっシラケたわ。そういえばアップデートでプレイヤーキル機能のバランス調整がどうたらって言ってたな。気を付けな、改正されるまでは犯罪にゃならねぇからな」
「あぁ、だがその時は容赦しないぞ」
「ウォルフねぇ?」
「アイツは昔の仲間だ。コンシューマーゲームの時代にネットでパーティーを組んでてな。ちょっと厄介な狩場だったのもあって範囲攻撃したんだがアイツら避難が遅れてパーティー5人、俺を除くみんなデスしたんだよ」
「因縁ですか、良くないですね」
「俺が自分のスキルを理解してなかったせいもあるからあんまり強くは言えないんだがな。で、その事件以降引退したらしいんだが……また始めてたようだな」
「そーなんですか!まぁそんな過去の事はほっといてレベリング頑張りましょう!!」
「お、おー!ってなんでお前が師匠的ポジなんよ」
「いいじゃん!暗い顔禁止!はい今から5時間ぶっとうしでやるんだから!シャキッとしてね!」
「ほーい、んじゃ今日は50まで行くか!!」
「今Lv43だからもうすぐだよ」
「そんなに昨日やったけか」
「そうだよ!学校のみんなに自慢したら驚いてた!みんなLv23とかって」
「んん?ってそうかルルアは学生か」
「そうだよー!ウォルフの姉ちゃんも学生?」
「いや、フリーターだよ」
「そうなの?!だから強いのか」
「それは余計だ」
ペシッと<ルルア>の頭を叩いた。
「いったー、ジョークだよ」
「はっは!言っていいジョークと悪いジョークがあるぞ!」
「んもぉー!!」
それから順調に狩りを進め遂に<ルルア>のLvが50になった。
「うっしゃァァァァ!!!やったな!ルルアLv50だぞ!!」
「よっ、よっしゃぁぁ!!!ってなんでウォルフ姉ちゃんが僕より喜んでるのさ」
「いやーやっぱ成長を楽しむのはいいなって。ほら?過去に色々あって竦んでたんよ」
「そういう人多いよねー、やっぱ社会に適合出来ないからパーティーもってにょぇえ!!痛いっ!痛いっ」
<ルルア>の頭をグリグリした
「痛かったぁ……ズキズキする」
「ふっ、俺は適合出来ないでは無い適合して無いだけだ」
「ひぇぇ」
「さて、ルルアがLv50になった事だし狩場変えるか」
「ここの大陸狩場のレベル差が凄すぎてって聞いたけどあるの?いい場所」
「ないよ、ここからは危険になる。というかこれに似た事情が過去にあったから推奨は出来ない」
「いいよ!何かあっても僕は気にしないよ!その人達はわかってないんだよウォルフ姉ちゃんの良さを」
「はっは!しゃーねーだ!よし行くぞ」
───深淵の園───
「うわぁー暗いねぇ」
「暗いどころか本来なら何も見えないらしいぞ、だが闇属性の補正が高過ぎて光には弱くなるけど闇についてはやばいらしい」
「よーし!頑張ろっ」
「おー!!」
薄黒いモブがうようよ漂っている
「ウォルフ姉ちゃんこいつら攻撃当たらないよ!」
「お、おい先走るな」
「ひぇぇ!!襲ってきた」
「ライトスラッシュ!!!」──代償が発生しました。HP-60%──
付近のシャドウが4体切り刻まれる。
ライトスラッシュの閃光がまだ薄らと見えるせいかシャドウ達が散らばる
「うぉぉ!って!光属性の技?!」
「あぁ、どうしても必要でね」
「もしかしてコイツら光属性しか効かないの?」
「いや、スキルの書で手に入る各属性の最高スキルなら倒せるぞ」
「ねぇ、ここってさ適応Lvいくつなの」
「Lv300だぞ。光属性ならって話だが」
「え、闇属性だと?」
「闇属性だと500くらいじゃないかな」
「な、な、な、なんでぇ!!」
「ここで面白い話、俺が今打ったスキルの代償はなんでしょう」
「えっとMP-900とか?」
「HP-60%だ!」
「げえっ!高すぎない?補正あるにしても」
「そこだよ、闇属性に超絶ダメージって言う弩級スキルだからな」
「えぇー、超絶ダメージなんて選択欄になかったよ」
「解放しないといけないからな」
スキルは基本自由構成だが効果値等の詳細については1部、称号や実績などからしか得られない物もある。
「僕も解放できる?」
「多分無理だな。1分間で120体倒す神速と一撃で1万ダメージの大打撃を合わせた方位斬放を5分間使用しないと手に入らないからな」
「つまり2つの称号を達成して開放される実績をクリアしないといけないみたいな?」
「そうだ、だが今回パーティー機能にある共有化ってのを使えば一時的にだが撃てる様になる」
「よっしゃ!そしたらメイン撃破ボーナスですぐLv上がるじゃん」
「だが、HP60%消費だ。打つ度回復しないといけない」
「えぇーじゃぁどうすれば。結局足でまといになるじゃん」
「まだ能力枠残ってるだろ?」
「うん、残ってるよ」
「そこの能力に常にHPをマイナスってして代償にHP+って書けばいい。闇属性は無条件に代償が大っきいからな」
「そっか!前にやったやつ!あれ?前回復用作ったよね」
「60%も減るのに30%しか回復しないでどうする」
「それもそっか!よーし」
2分後
「できた!常にHP20%減少で代償はHP150%回復になったよ!」
ルルアには回復エフェクトがずっと表示されている
「え?」
「だから常に150%HP回復」
「バグか?いや、少し待ってくれ。その間にその能力のエフェクトを切っといてくれ、眩しいから」
どういう事だ、と<ウォルフ>はメニュー画面を開く。
横のヘルプを3回押した。
『代償効果が最大600倍になる補正がこの地にはあります』
ヘルプ3回でその土地の補正を確認できるのだ。
「ははぁーん、よーしルルア!ここで能力スロットが解放される度作るぞ!」
「なんで?」
「学校のみんなにはバラすなよ?ここにはな代償効果が上がる補正があるみたいなんだよ!つまり、逆代償系を作れば無双できるってこと」
「スロットまだ2個残ってる!」
「なら強化系と攻撃系を作るといいぞ」
「ん!」
「さて、今のうちにライトスラッシュ!!」
他にも数体狩っていく。
<忘れられた冒険者の思念>×68
<暗黒双樹の枝>×96
<B級冒険者の装備>×5
<E級冒険者の装備>×12
<破れたローブ>×23
「攻略サイト漁ったがまだこの辺は出回ってないらしいし、後でマケ行くか」
「ふたつ作ったよ!」
「頑張ってるルルア君に報酬だ。Lvを見てみろ」
「Lv63になってる!」
「作ってる間に何体か倒したからな」
「そういえばウォルフ姉ちゃんはいくつなの?」
「Lv89だな、一応ここの大陸ではランキング1位」
「うわぁーすごい!でもこんなに強くても100には行けないんだ」
「はっは!ゲームってのは積み重ねが1番強い武器なのさ。課金したってLvは上げれない、課金したって経験は積めない。要するにどれだけ基礎に浸る時間があったかだ。真のランカーは狩場事の性質を理解しているから上がるのが早いのだ」
「よくわかんないけど頑張った人こそ最強って事だね!」
「あぁ、そうだよ。さて、続きを」
「まって、荷物がいっぱいになっちゃった」
「ならマーケットに行くか」
マーケットはリアルタイムでアイテムとゲーム内通貨が行き来する場所だ。
「ルルア、今いくらある?」
「56390ドロスかなー」
「なら緊急脱出ってボタンを押して、5000ドロスで近隣の街までワープできるから」
「りょーかい!」
街に着くとそこそこの人数で溢れている。
「人でごった返してるな」
「確かに、ゲームならサーバーだっけ?で分けて欲しいね」
「まぁしょうがない、サーバー分けとかしちゃうと人が少なく見えちゃうからね」
「そうなのかー」
「まぁさてさて、マーケットの方に行くか」
マーケットに着いたが人が全く居ない。
「少ないねぇ」
「だなー、そもそもここに売りに来れるほどアイテム持ってる人が居ないのかも知れんな」
「早く機能説明をして!!来たこと無いから手続きとか説明して」
「まぁそうがっつくな。とりあえず即席でお金が欲しい場合と別に今はいい場合の二種類で手続きが違う。先に即席の方を教えるか。手続きとしては最初にオークションって受付に向かう、そこでそのアイテムの欲しい人を探して売りに出す」
「つまり需要と供給を高速でする感じだね?」
「そう、欠点は欲しい人が居なければ売れないし仮に居ても値段交渉が失敗すれば売れない。次は別に今は要らないけど売りたいって人向けの掲示板とショップかな。掲示板には今売れているアイテムがメインで並んでショップは検索して買うって言うシステムだから売れ時のアイテムを持ってるなら掲示板に持っていき、その他ならショップに受け渡す」
「えっととりあえずショップでいいのかな?」
「ああ、いいよ。掲示板はまぁイベントの時くらいしかフルに機能してないしな」
「じゃぁとりあえず入れてみるね」
「あぁ、まぁ売れるには時間がかかるからアイテムをぶち込んだらまた、狩場に行くのが時間の有効法かな」
「よーし!とりあえず全部入れといた!」
「お、潔いいな」
「うん!必要アイテムは装備したし」
細かい機能説明をして街中をブラブラ歩いて23時を迎えた。